【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
安曇野禍福一行が去った後――。
名古屋地下鉄跡地。瓦礫が山のように積み重なったその場所を。
ひとりの女が、軽々と掻き分け、掘り返していた。
「あーもう。全くもって手のかかる弟子だよ、君は……」
愚痴とは裏腹に、彼女の手で触れた物体は抵抗なく動く。まるで
手探りの捜査のようでいて、目星はついていたらしい。ほどなくして、目的の“それ”を掘り当てる。
「しかし、なんなのかなコレは。おそらく肉片なんだろうけど……モザイクがかかったように脳が詳細を認識できない。概念的な認識阻害ともまた違って見える。生命の極点なんて、流石に専門外だ……」
掘り起こされたのは『
すでに生命活動を終えた『進化』という術式効果の結果に。
「ますます興味深い。もっと観察したいところだけど――仕方ないね」
女は、その手の――『天逆鉾』を突き立てた。
その結果、
「やぁ。おはよう、アーサー君。記念すべき初戦闘後だけど、何か感想は?」
肉塊は、元の少年の姿へと戻っていた。
裸体の彼に白布を羽織らせ、女は隣に腰を下ろす。
――額の縫い目が印象的な、
彼女が覗かせる、好奇心の滲んだ微笑に――少年は、嘆息した。
「……完ッ全に油断しました。少しでも学習機会を得たかったとはいえ時間をかけるべきではなかった。そもそも『進化』のテーマ設定からミスでしたね。凶暴になり、あげく自己制御できなくなってしまった」
「そうだね。呪力強化された鳥に特攻をさせる作戦――それ自体は強力だけど、君とは相性が悪い。能力を活かしたいなら、別の手を考えないとだ」
「はい。あと上司が職人気質すぎてやり方が合いませんでした。如何に
「まだそんな生意気言ってるのかい。あの人は『受肉』の第一人者なんだよ? 私の大先輩なんだから敬っときなって。四度目の受肉もないとは限らないんだから」
「いや知りませんよ。あのクソジジイのことなんか。案の定、灯台下暗しで倒されてるし……」
「……それはそうと
「アレが例外ってだけだ、気にしないでいい。正直、私も驚いているよ――呪霊を孕む体質自体は前例があるけど、精子を必要としないケースは初めて見た――あまつさえ
さしもの彼女も、言葉を切る。
この発言は、アーサーに対する禁句だったのだ。
「……私の前で、それ以上は言わないように」
「すまない。今のは私が悪かったよ……でも本当、術式反転の拡張なんて滅多にないんだ。彼女は呪術師としてよくやっているよ。
真面目に謝りつつ、彼女の饒舌ぶりはすぐに戻る。
少年には専門用語が多く、彼女の話は半分も伝わらない。知っているのは、多少の人物像くらいだ。
「いたくお気に召したようですね。それだけに解せません。何故あの女を攫わなかったんです?」
「いいや? 結局は呪霊を産めるだけでしょう? そのアプローチは既に研究し尽くし、検討を終えてるよ。なにより後々で五条悟に発見されかねない、手を出す価値はないかな――。」
「――『受愚戴転』の可能性は認めるがそそられない。あの術式による『呪力の最適化』が実現した場合、呪術は『呪いの呪霊』以上の成長余地を失う。あくまで私が願うのは、人の手による呪術の発展だ――むしろああいうシンプルな強さは、宿儺が好むように思うね」
「……人外になる術式を持つ俺を弟子にして、それ言います?」
やはり、この女の考えを図るのは無駄だろう。と少年は結論づける。
たとえ学習が追いついても、きっとやりたいことも発想も何ひとつ理解できないMadに違いない。
どうやら自分を気に入っているらしい、事だけが確かだ。
それが良いか悪いかは分からないが、
利用できるからには利用するまでのこと――。
「あの黒い輝きは何だったんですか」
「『黒閃』かい? あぁ。もう少ししたら教えるつもりだったんだけど。今は狙っては出せないクリティカルみたいなもんだと思ってくれ」
「それ後回ししていいもんじゃないでしょう…」
「君は初心者なんだ。
「……ええ。そうでした。目的にはまだ遠い」
自分の顔すら忌まわしい。
と言わんばかりに彼は、フード代わりに白布を目深く被った。
「焦る必要はないさ。君の学習能力と成長スピードならば十分に間に合う。私が保証するよ」
「はい。信用してます、そこだけは……ところで、あの赤ちゃんは以降どうなってますか?」
「んん? あー。君がよこした、この子かい? ご覧の通りだよ」
女の腕の中で赤ん坊は眠っていた。
女は『過去にそうした経験がある』かのように、ごく自然な動作で、赤ん坊を寝かしつけたうえで教鞭を取っていた。
――婪佳久が目撃した死体の夫婦。アーサーが駅に着いた時点でも、夫妻は死亡していたが、その手に匿われた赤子だけは健在だった――彼の判断と、この女の結界術によって、この子だけは領域外へ逃がされていたのだ。
「しかし、なんで私にこの子を? あの場では聞ける状況ではなかったが、見たところ目新しい術式でもないし、大した実験材料になりそうもないよ。どういう現場判断なのかな?」
「……違います。なんとか保護して欲しいんです」
……えぇ〜? と女は見るからに面倒な顔をする。
少年もまた、困った顔を見せる。
つい先ほどの、決意に固められた形相ではない。
単に、どうすればいいか分からない子供の顔だった。
「だって、私には人としての応対なんて、ましてや育てるなんてできないですし……」
「君ねぇ。自分で面倒見れない拾い子を押し付けるんじゃないよ……」
「――赤ん坊は何者にもなれるんです。どんな可能性も持っている。あなたのいう、人の可能性の塊ですよ」
「……自分は変われないから、ってとこかい」
無自覚ながらに彼の溢した言葉を、
彼女は僅かに目の色を変え、重く受け取った。
そして少しばかり考えを巡らせた後――、
「……まぁ、弟子の頼みなら無碍にはできないか。近場の高専のシェルター内に、結界いじって置いていく。『
「それがいいです。お願いします」
結界術の行使は、指をひとつ弾くだけで完結した。
彼女の腕の中にあった赤子が転移する。
「勘違いはしないように。君が君自身の成長に集中してもらうためだ。わかってるね?」
「勿論です
これで心置きなく――殺意を表に出せる。
少年の顔に浮かんだ刹那の穏やかさは消え、
冷え切った視線と煮え立つ声音が、露わになる。
その圧倒的な飢えと、執念と共に――。
「そして、世界を壊す。奴の価値を認めた者を、守りたいと思った願い全てを、私が破壊してみせる」
「ああ。そうだとも。せっかくの機会だ。頑張って最高傑作を――そして、天元を超えてくれよ」
その人間兵器の、進化が。
その女の新たな研究が。幕開ける――。
ここから数話ほど『第二幕 アーサー編』に入ります。箸休めです。
しれっとこの女、高専の特別秘匿防護シェルターの位置を把握しており、その気になればいつでも結界術で干渉できます。
高専術師は誰一人、この事実を認識していません。
というか、たとえ分かっていても対応しようがありません。
この女の結界術で対抗できるの、天元・宿儺・五条悟しかいないので。
【補足①】アーサーは天逆鉾でなぜ復活できる?
アーサーの『進化』の肉体変化は、『存在の更新』です。魂や存在そのものを変化させてます。
これをリセットした場合、
『進化』後の存在から、
『進化』前の素体に戻されます。
たとえ生物的に死んでいる状態であっても、生きてた頃の状態に戻されます。
(鹿紫雲と同様、一回それっきりの術式なので、こんなリセット挙動は想定されていません)
【補足②】なぜアーサーに死亡判定がないのか?
先述の理由(存在改変)から、
生死の可否すらも『進化』で変化しています。
コガネの死亡判定から逸脱するケースのため、
アーサーは事実上、絶対に死なない
【補足③】この女は『
普通に「すげー!」って興奮してたと思います。
それはそうと五条悟や真人に捕捉されないよう遠巻きに眺めるしかなかったんじゃないかな。
ちなみに安曇野禍福には毛ほども興味ありません。
人間切り詰めりゃまぁそのくらい強くなるかもだけど面白みはないかなーって。
(けど宿儺からは高評価貰えそう。「なんだお前速いな!」とか雑に褒められてスパッと殺されそう。石流みたいに)
1ストーリーに10話程かかるのは長すぎる?
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①長過ぎる。5話くらいでいい
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②5話でも長い。3話くらい短くあれ
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③もっと長くてもいい
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④話数よりも投稿頻度を週2にしろ