【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
【あらすじ】
ここまでの夏油勲編は〜!?
11月15日(第一幕)
夏油傑の息子にして宿儺の器の夏油
100点泳者、灰原
12月7日(第二幕)
夏油勲・灰原結は海賊客船グランメゾン号へ殴り込む。
狩野拓真・狗巻棘・パンダと一時共闘。
色々あって宿儺が暴れ散らかすも、辛うじて生き残る
12月17日 ← イマココ!
第2部 46話『夏油勲が往く! ネバーランド大侵入!!』
2025年12月17日――夏油
が、彼等は急遽、福井県に向かう事となる。
理由は、彼等の前に現れた――『憂憂』の提案!
「乙骨憂太という特級術師が孤立してまして。ピンチなので是非とも手を貸してほしいのですが……」
「ええっなんでオレらなんです!? そういうのは高専(?)の人をアサインすべきじゃ。それに
「かつて夏油傑を倒した猛者ですよ?」
「うっしゃあやったります喜んで引き受けます今度こそ仲間増やすぞォ!!!」
かくして、一同は新たなる戦地へ転がり込む。
北陸
―
――
―――
「ところでパンダさん、空性結界ってなんです?」
「あー特別な結界でな。いろんな演出ができる特殊ステージって思ってくれ。制御者の意志次第で、どんな場所にもなるんだ」
「どんな場所にもなる? じゃあ今回は……」
転移は、やりとりを終える間もなく完了する。地に足がつき、視野が開け、世界を認識する。そこに広がっていたのは――!
「なにぃっ、子供だらけのファンタジータウンだとぉ!? 」
楽園そのものの光景だった。
色彩豊かな街並み、陽気な音楽。
狐や兎の服に身を包み、無邪気に駆け回る子供たち。
距離感も警戒もないまま、三人はあっという間に取り囲まれた。
「わーなんか知らない子いる!? 誰ー!?」
「お姉さんきれー!」
「なんでそんな変な前髪してんのー!?」
「はぁっ!? おい誰だオレの
「ステイ、勲くんステイ! 私から離れないで!」
「結、お前も術式と呪力抑えろ! いったんは刺激するな!」
慌てふためく一同。
子供達に特に敵意も攻撃の意思もないことが尚更に困惑し混乱が広がる。
やがて子供たちの中心から、一人の少年が現れた。
自然と道が開くあたり、その役割が伺える。
「――やぁ、ようこそネバーランドへ! 僕はここのリーダー、皆にピーターパンって呼ばれてるんだ! よろしく!」
屈託のない笑顔。だがその目の奥に、微かな観察の色があった。
「って、大人の女? おかしいな……よく見ると、なんか正規手続きで
灰原は息を呑む。ピーターパンと名乗る男は、彼女の整った容姿を間近で見やる。
だが、幸いにも剣呑な空気はすぐに晴れた。
「おーい皆んな見ろ! パンダは踊れるんだぜ〜ほれほれ〜♪」
「なんかミニパンダ喋ってる! すげえなにあれ!」
「お姉さん来て、綺麗にしてあげる! きっと大人なドレスとか似合うと思うの!」
「えっそんな人を着せ替え人形みたいに、てか人数多っ!?」
はしゃぐ子供達は、すっかり珍しい存在で遊ぶことしか頭にないらしい。
その様子に、ピーターパンも肩をすくめて笑いをこぼした。
「……まっいいか。お喋りな女でもないようだし。みんな攻撃はしないでね、彼女はママなんだから!」
「はい!?」
「じゃあ勲くん、サッカーしようぜー!」
「おっ、おう!?」
勲はピーターパンと少年たちに、灰原は少女たちに手を引かれる。
二人は目配せを交わしつつ、誘導に従った。
――えてして灰原結は、少女たちに化粧部屋へと案内された。
「……すごい。本当にお化粧も服も、装飾品さえもたくさんある」
少女たちは年齢にそぐわぬほど化粧上手だった。
しかし灰原結を何より驚かせたのは、資源は潤沢さだった。
クローゼットには香りの良い彩り豊かな服の数々が。
化粧棚には用具が満載されており、いずれも新品同様なのだ。
「ねぇいいでしょ、私たちのお母さんになってよ!」
「ここなら必要な物は全部ある。でも親だけいないの」
「外にわざわざ行く理由ないでしょ。お願い、ずっと一緒にいて!」
もう、ここで暮らしてもいいんじゃないか?
そんな思考が思わず浮かぶ。
この先、戦ったとして、これ以上の物を得られるのだろうか――。
(そもそも、純粋に私たちは実力不足だ。グランメゾン号の件から二週間も経ってない。あの時点で着いていけなかったのに、京都のレベルについていけるの? ――あんな化け物ばっかりなら……)
体が強張る。宿儺との遭遇という、消えようのない影が彼女の中には残されていた。
「おねえちゃん、大丈夫!? もしかしてアレルギーとかあった!?」
「あぁ大丈夫、気にしないで。えーと、次はこの服試してみない?」
笑顔の演技で誤魔化すしかない。
灰原結はそうしてやり過ごす。
――その一方、夏油勲は完全に周囲と打ち解けていた!
「うおおおすげぇ! これで四点目だ!」
「へっへーんこれでも体育の成績だけはトップだったんでね!」
子供とは単純な足の速さに目を輝かせるもの。彼の健全な肉体と健全なるスポーツマンシップを通し、すっかり少年たちの人気を獲得していた。
(うしうし、物理法則は働いてるな。初めこそ面食らったが、言うほどファンタジーな空間でもなさそうだ!)
周囲に合わせつつも、彼は状況把握も欠かさない。
サッカーボールの挙動に違和感はない。
ピーターパンも飛ぶ気配なし。
演出の加わった空間というが、特に異常は――。
「おわぁっなんだこの地鳴りはぁっ!?」
「おおっ隕石だ! 158063回目の隕石デーだ!」
「最近頻度多いよね〜」
「えっそのリアクションで済むのか隕石落ちてるのに――ってええ外焼け野原が見えるぞ平気なのか!?」
「大丈夫、この街だけは平気なんだ!」
「はぁ、まぁネバーランドなら隕石くらい落ちてくるか……?」
よし、異常なしとしておこう。
多少の違和感はあった。特に街の外――広大なジャングルが真っ赤に燃え盛り更地に変わる瞬間を目撃した。
が、現地住民のいう通り、実際のところ映像が見えるだけで街に被害は及ばない。日常風景のように見過ごす彼らに倣い、いったんは疑問を棚上げする。
――やがて食事の時間となり――夏油勲一同は、いつの間にか並んだ豪華な料理を囲んでいた。
「今日はアメリカンスタイルだ! コーラにピザ、BBQもあるよ! みんな取って取って〜!」
「――『
「なぁピーターパンさんよ、笹出せたりしねぇか。パンダなんだけどオレ」
「望めば出てくるよ。ほら、そこの机に置かれてるでしょ?」
「え!? あホントだ、いつの間に……(まぁぶっちゃけ呪骸だし物食えねぇんだけど。それでも要望を口にすれば反映されるのか……)」
どこから、誰がこんな料理をテーブルに用意したのか。誰一人として疑問を挟まず、躊躇いなく口に運んでいた。
勲自身も試しに食べてみるも、普通に美味い。呪霊玉ほどではないが美味いと感じられ、久々の肉汁を頬張りながら、周りにこう聞いた。
「ところで皆んな、乙骨憂太って子は知らないか?」
「知らなーい」
「聞いてなーい」
「見猿聞か猿なんとやら」
「知らないかぁ。まぁそうだよなオレより歳上だろうし……てか君ら何歳だ?」
「ひゃくさい!」
「千歳!」
「万歳〜?」
「時間感覚が適当すぎるだろ……まぁそうだよな。永遠の少年だもんな」
さて、そうなると疑問が出てくる。
ここは楽園そのものだ、苦戦する要素は見当たらない――乙骨憂太は何故、どこで孤立に追いやられているのか――。
と――その時、鐘の音が響いた。
「なにっ、なんだっ!? パンダさんこれは一体!?」
「たぶんこれも
「なにをどーしたらネバーランドが観音開きされるんっつーんですか! てかついさっき隕石落ちてましたよね、なんでもう木ぃ生い茂ってるんスか!?」
文字通り、地面が動き出す。
ネバーランドが横開きされ、二分される。
そしてシダ植物の生い茂る熱帯雨林の大自然。
その向こうから、ひとつの蛍火が舞い込む。
飛来する『光』は、住民達の周囲を旋回した。
ピーターパンはこう言った。
「あれは『右から二番目の星』! 妖精たちが来る兆しだ! みんな〜っ、門出の時間だよ~!」
住民一同は、光を拍手喝采で迎え入れる。
「勲くんこいつは!?」
「呪霊じゃないっす!」
「たぶんコガネみたいな式神だと思うぜ」
小声でやりとりする夏油勲一堂をよそに、拍手する彼らの間を、『光』は品定めするかのように飛び回り――やがて、一人の少女の肩に止まった。
少女は笑顔だった。一見してファンシーな光景そのもの。
しかし――少女の額にはダラダラと滲みでる汗が!
「いやだ! やっぱりいやだ連れて行かないで――あぅっ!?」
(((殴られた!?)))
少女にへばりついた笑顔が剥がれ墜ちる。
その歳気のない必死な形相を、迷わず『光』は殴りかかっていた。
「ひ、ひぃっ……!」
「さぁっ、みんな笑顔で送りだそう! おめでとう、いっておいで!」
「「「「おめでとう! おめでとう!!」」」」
「「「「万歳! ばんざーい!」」」」
皆、一様に笑顔だった。少女の顔色が見えているハズなのに。
それさえも有り難がるかのように歓迎していた。
しかし夏油勲には、不思議と同調圧力が感じられなかった。
(なんだこの共感の欠如は! 危機感も当事者意識も全くない! 自分が選ばれたらどうなってたかを毛ほども気にしていない――!)
直感があった。あの少女も、選ばれない限り同じ事をしていたに違いないと。選ばれて初めて恐怖し、慌て出したのだと。
そして遂に――彼らの言う『妖精』がジャングルから姿を現す。
ズシン、ズシンと音を立て、重そうに頭を上下させ、見下してくる野生の眼差し。
その巨大な影の正体は――!
「いやどこが妖精だ、どー見ても人食う気満々の恐竜だろ!」
「倒す! 灰原さんやりましょう!」
「分かってる!」
弾かれたように二人は飛び出した。
全長にして4.3メートル。吠えるソレは図鑑そのもののフクイラプトル。呪力も感じる。
呪力によって強化された恐竜なんて場合、手のつけようのない生物兵器だ。
――否。接触した瞬間、勲は確信した。
「呪霊だこれ! 灰原さん間違いないです、恐竜なのは見かけだけだ!」
痛くも痒くもないハズの少年の拳。
それに触れた途端、フクイラプトルは僅かなフリーズを見せた。
――呪霊操術の『降伏の儀』は、自分より二級下位の格下なら、無条件に取り込める。
――だが対等以上の場合でも、抵抗せねば取り込まれる。
そして今、『降伏の儀」に抵抗への抵抗という、呪霊にのみ発生する挙動を見せた――コイツは『呪霊操術』の術式対象だ!
「なら、やれるわね! そのまま抑えてて! ――でりゃあっ!」
恐れず組みつく夏油勲。『降伏の儀』への抵抗に集中すべく、足を止めた肉食恐竜。
その無防備な背中を、遠心力いっぱいに振るわれた
鞭のスパーキングが、鱗を飛ばし肉を削る。
度重なるダメージと弱体化――その結果。
「いようし、ご馳走様でした! 謎のご当地恐竜呪霊ゲットだぜ!」
二人は辛うじて、『妖精』とやらの捕縛に成功した――。
―
――
―――
が、この状況は単なる呪霊退治では終わらない。
「お前たち、なんて身の程知らずな事を! 『妖精』を食べるなんて! しかも憲泰様の意思に背き、旅立ちの儀を妨害するなんて! ああもう、やっぱり大人の女である時点で吉凶だったのか!」
ピーターパンは激怒し、子供達も一様に「そうだそうだ!」と叫ぶ。
予期せぬ事態への困惑が、怒りに昇華され初めて顔に出ていた。
実力差を理解し攻撃こそしてこないが、今にも殴りかかろうという気迫で結ばれた一致団結。
夏油勲は、困惑を叫んだ。
「お前ら、さっきから何言ってんだ! これまでも仲間を生贄にしてきたのか!? それでこの生活を享受してきたのか。何より、なんでそれを皆んな笑って受け入れられるんだ!」
――その時、声が割って入る。
「――物分かりが悪いなぁ。そういう演目と思えんのかね」
ハット帽に背広姿。
その上からも分かる筋骨隆々。
「ようこそお客人、この
饒舌ながらも口だけしか笑っていない、爛々とした相貌でもって。
戦後御三家の遺物は精悍に、来客を歓迎した――。
最近やたら恐竜出るなカリヤンかよ。
この章ではサブタイは真面目に考えるつもりありません。
10話以上なのは確定ですが、可能な限り週2投稿で進めます。
【補足】
イノタク狗巻はシェルターで治療中で同行してません。
他の高専勢と遭遇した時やシェルターに誰かを連れてくときの案内人としてパンダが同行します
【この章のピーターパン要素の扱いについて】
フレーバー程度にしか扱いません。ピーターパンって書いてありますけどコイツは周りにそう呼ばれてるだけの元一般人です。
永遠の少年じゃないどころか成人男性です。
PS 劇団四季のアナ雪すげー楽しかったです。あとピーターパンを見直したらMichaelが思ったより楽しめました。