遊戯王ZEXAL風の戦士たち外伝 紅蓮の博徒   作:ナタタク

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第3話 ぶつかり合い

「召喚!《ガスタ・ガルド》、《ガスタ・イグル》、《秘鳥フォーチュンチュン》!」

自宅の屋上で侑斗が風の目を発現させ、3枚のカードをDパッドに置いて3匹の精霊を実体化させる。

実体化した3匹はそれぞれ異なる方角へと飛んでいき、3匹にウィンダが手を振る。

「空からはフォーチュン達が…僕たちも」

「うん、璃緒ちゃん…無事でいて」

蓮から連絡を受けたのは侑斗だけではなく、竜司や瑠那、遊馬やカイトたちもいる。

ハートランドシティにいるメンバーがそれぞれの手段で仲間を探す。

蓮もまた、助けを求める連絡をした後で家を飛び出し、夜の街を走り回る。

「璃緒…どこにいるんだよ、おい!!」

おそらくは、あの電話の主の元に彼女はいる。

そして、彼は人間時代のホークのことを知っている人物。

(だとしたら、元バリアンってことか…にしても、俺に勝って、何を取り戻すってんだよ…?)

その言葉の思い当たるものを蓮は何一つ思い浮かばない。

あるとしたら、戦場で戦い、討ち取った兵士が恨みを抱いてバリアンとなり、記憶を取り戻したということなのだろうか。

走る中、再びDパッドが鳴る。

(電話よ、蓮。電話よ、蓮)

「璃緒…!?」

Dパッドに表示される、最近撮影した笑顔の璃緒。

着信音とともに聞こえる璃緒の声。

「璃緒、璃緒なのか!?」

「招待状をやろう、ホーク」

「てめえか…!」

「お前にだけ、教えてやる。ここで待っているぞ。一人で来い、でなければ…お前の一番大切なものを奪う」

「おい…璃緒に何かしたら…切れた…」

一方的な通信の後で送られる座標データ。

そこは繁華街にあるライブハウス。

雑居ビルの中にあり、丁寧に行き方まで記されている。

罠なのは明らかだが、行かずにはいられない。

 

ライブハウス、ブラックマンデー。

雑居ビルの中にある廃れたライブハウスの中には数多くのならず者がいて、中央のステージでは2人の男による殴り合いが行われていた。

その様子を濃い青のコート姿で銀色の長髪をした青年が見つめ、その隣には璃緒の姿があった。

拳が腹に、頬に、顔面に当たり、血が流れるたびにならず者たちは歓声を上げる。

赤コーナーの男が青コーナーの男に蹴りを腹部に受けたことで吹き飛ばされ、あおむけに倒れる。

先ほど以上の歓声が響くとともに、青コーナーの男はとどめを刺すべく歩いて近づく。

「武器がないのは実につまらぬが、楽しむには十分か。申し訳ない、姫。できれば、かの御前試合のような素晴らしきものを用意したかったのですが」

「こんなものの何が楽しいというの…?」

今の璃緒はなにも拘束を受けていないにもかかわらず、体を自由に動かすことができない。

顔と口は動くため、できるのは声を上げることだけ。

「楽しいですよ、こうして手にするもののために互いにぶつかり合う。最も、あの蛮族が求めるのは名誉ではなく金ですが…ね」

二人の座る椅子のそばにはどこで用意したというのか、膨大な札束が置かれている。

彼らが集まったのはこの大金を手にするためであり、同時にここでは賭けも行われている。

野次馬たちはそれぞれが賭けた選手を応援し、金を求める。

どんなゲームであっても、金やかけがえのないものが絡むと想像以上の熱気が起こるものだ。

「ご覧ください、姫。まもなく決着です」

赤コーナーの男が間近まで近づいてきた相手に向けて、口にたまった血を吹きかける。

顔面に浴びた血によって視界を封じられ、動揺する男に向けて足払いをする。

転倒した男の顔面を赤コーナーの男の血にぬれた拳が襲い掛かり、それを受けた青コーナーの男が力尽き、気絶する。

決着がついたことでゴングが鳴り、歓声が響く中で勝者がフラフラとコートの男の下へと向かう。

「はあ、はあ…勝った…勝ったぞ…ハハハハ…これで、この金は、俺の…」

「見事だ。猿にしてはな」

立ち上がったコートの男は勝者の下へと歩き、彼にカードを差し出す。

「な、なんだよ…これ…」

「副賞のレアカードだ」

カードを受け取った勝者だが、カードを見つめた瞬間、彼の身体をカードから噴き出した紫の瘴気が包んでいく。

「これは…!!」

「カオスですよ。姫、われらにとってはなじみがあるでしょう?最も、あの者たちには見えませんし、分かりませんが」

璃緒とコートの男だけが見えるその瘴気が収まると、勝者の瞳の色が紫に変化する。

そして、カードを懐に収めるとコートの男にひざまずいた。

「彼にいったい何を…あなたは何がしたいの!!」

「取り戻すのですよ、姫…。私が本来手にするものだったすべてを」

「手にするものだったもの…?」

蓮と通信していた時も、そのようなことを言っていたのを璃緒は思い出す。

そして、その時の彼からは憎悪が感じられた。

「あなたは何者なの?蓮に何のうらみがあって…!」

「璃緒!!」

扉が力強く開く音が聞こえ、同時に聞こえてくる希望の声。

予期せぬ来客の登場に試合後の興奮が冷めきれなかったはずの野次馬たちが静まり返る。

周囲の視線を無視して歩く蓮だが、その野次馬たちの中から出てきた2人の紫色の目にならず者たちが蓮に立ちはだかる。

「待っていたぞ、加賀美蓮…いや、ホーク」

「てめえ…璃緒を返せ!!」

「ふん…私など眼中にない、か…」

「蓮…!!」

「璃緒!待ってろ、今助けに…!」

「私を無視しては困るな、ホーク。それほどまでに彼女を救いたいというなら、ここでのルールに従ってもらう」

「ああ…?」

何を言っていると言いたげな蓮だが、二人のならず者によって思い切り背中から突き飛ばされ、中央のステージで転倒する。

そして、起き上がった連の前には屈強な体をした禿げ頭の男が立っていて、拳を鳴らしていた。

その男の瞳は紫に染まっていた。

「ここでは5連続で勝ち抜くことで、勝者に有り余る富を与える。お前の場合は、姫…だな」

(姫…璃緒のことか?)

「ダメよ、蓮!こんな男に言う通りにしちゃ…!」

「少し、御静かに願いますよ、姫」

「ダ…う、んん、ん!!」

右手をかざされたと同時に、口が動かなくなった璃緒。

どうにか止めたいが、身動きも口も封じられた彼女にできることはない。

「璃緒!てめえ…!」

「さあ、戦え。そして、証明してやる!貴様にナイトの称号も、祝福も、ふさわしくないことを!!」

 

「くそ…蓮!おい、蓮!つながらねえ…」

バイクで街を走る凌牙は連絡のつながらない蓮の身を案じる。

急に何か胸騒ぎがして、まさかと思って先ほどから何度も電話をしているが、一向に出る気配がない。

彼のみに何かあったように思えてならない。

そんな中で、別の連絡が入る。

なにの用かわからないが、出ないわけにはいかなかった。

 

「ぐおおお!!」

殴り飛ばされた蓮が床を転げまわる。

顔の腫れがひどく、口にたまった血を床に吐き捨てる。

フラフラと起き上がった蓮はボロボロになった上着とシャツを脱ぎ捨て、上半身を裸にする。

「ほぉ…」

蓮の上半身を見たコートの男はニヤリと笑いながら声を漏らす。

何かで切り裂かれたかのような深い傷跡が胸から腹にかけて存在するその体は鍛え抜かれており、下手をするとプロボクサー並みといっていいほどだ。

4人目の相手となっている大柄な男が大振りで拳を振るい、それに応じるように蓮も拳を一直線に振るう。

クロスカウンターとなった蓮の拳を受けた大柄な男がフラリ、フラリと後ろに下がった後であおむけに倒れて気絶した。

「はあ、はあ…これで、4人抜き…おい、5人目は誰だぁ!!」

体は痣でいっぱいで、顔の傷もひどい。

疲れもあるが、それがどうしたといわんばかりに叫ぶ。

それに対して、椅子から立ち上がったコートの男が身に着けていたコートを脱いでステージに上がる。

「5番目をしてやろう。望みどおりに」

「てめえ…なら、今すぐにぶっ飛ばして、璃緒を連れて帰る!」

体中から感じるはずの痛みは怒りとアドレナリンによってあまり感じておらず、その間に蹴りをつけたい。

すました顔の男に向けて突進するように走って拳を振るう。

「ふん…」

顔に命中するはずだった拳だが、男はわずかに顔の位置をずらすことでかわし、反撃の拳で蓮の腹を襲う。

4連戦の中で感じた以上の重たい一撃は内蔵をつぶされるかのように感じ、強烈な痛みでわずかに後ろに下がる。

「悲しいな…2度生を終え、ただの人間となった貴様ではその程度か!」

「はあ、はあ…お前、は…」

痛みに耐え、正面から接近してくる男に再び殴ろうとする蓮の脳裏になぜかあの御前試合の時の記憶がよみがえる。

何人もの戦士を相手に勝利を積み重ねていき、最後の騎士にも勝利したことで得た海の祝福とナイトの称号、そして…。

「お前…まさか…」

「ようやく思い出したか…そうだ、貴様によって得るはずのものを奪われた男だ!」

「ガルダ…」

最後に戦った鎧姿の騎士の名前が蓮の口からこぼれる。

御前試合で勝ち進んだ二人、そのどちらかが名誉を手にすることとなっていた。

「もう終わった話だろう?今更何を…」

「今更だと…?それはこちらのセリフだ。2度の転生を果たした貴様がなぜ今も姫を独占する?なぜ今も祝福を持っている?」

(祝福…?)

ナイトの称号を得たときにかつてのメラグだった頃の璃緒から与えられた祝福。

確かにそれを受けたときは何か力を得たように感じられた。

だが、今となってはその感覚はない。

バリアンとなった頃も同じで、おそらくは1度目の死を迎えた際に肉体とともに失われたと思っている。

「私にはわかる。今もお前の中にそれがある…。そればかりでなく、姫の愛まで…恥を知れ!!」

「女々しいんだよ…終わったことに!!」

ガルダの言い分は蓮にとっては迷惑千万。

御前試合は今の時代から考えるとはるかに昔の話で、その間に2度も転生している。

目の前のガルダがどういう事情で今ここにいるのかは知らないが、そんな過去に囚われる彼がかつて、ドン・サウザンドによってゆがめられた過去に囚われていた仲間たちと重なって見えた。

最も、ガルダの場合は本当の記憶であり、それで暴走している分、余計にたちが悪い。

「終わったこと…?貴様にとってはそうでも、私にとっては違う。騎士の家に生まれ、幼き頃から長きにわたり、王族を守ることを使命として生きてきた。父も兄も、祖父もその使命に殉じていった。そして、私もまたその使命に生きること、そして死ぬ覚悟はできていた。だが…」

そんな一族の死の慰めとなり、それが正しかったことを証明することとなるナイトの称号と海の祝福。

それを得たのは目の前の男。

「それに比べて貴様はなんだ?祖国を守り切れずに失い、守るべき家族も領地もなく、各地を放浪した黒騎士。何もない貴様が陛下と姫に気に入られて御前試合に出て、私が得るべきもののすべてを奪った。そして、すぐに何もできずに死んだ。そんな貴様がいまだにナイトの称号も海の祝福を持っていることが…許せないのだよ!!」

「ざけんなよ…!!勝手に言ってんじゃねえ!!」

立ち上がり、ガルダに殴り掛かろうとする蓮だが、ガルダを守るかのように3人の紫の瞳のならず者が立ちはだかる。

彼らはニヤリと笑うと額にバリアンの紋章を出現させ、その体をバリアンの肉体へと変化させる。

「バリアン…!?なんで!?」

バリアンの肉体へと変化した彼らの身体能力は人間のものをはるかに上回り、おまけに3人がかり。

殴り飛ばされた蓮が床を転がり、あまりに痛みで立ち上がるのが困難になる。

「くそ…璃緒…!」

「死ね、そして返してもらう…すべてを」

最後は自分でとどめを刺そうと近づこうとするガルダ。

今の痛みとダメージでは起き上がったとしても、反撃することはできないだろう。

せめて璃緒を逃がしたいと思った蓮だが、それをすることも今の状態ではできない。

「く…そ…」

「蓮!!」

近づいてきたガルダを阻むように突然発生した光。

その光に目がくらむ彼らと突然のことに驚く蓮。

そんな蓮を誰かが肩で担ぐ。

「ここは引くぞ、蓮」

「お前…ミザエルか?それに、あれは…」

「ドルベだ。詳しい話はあとだ!」

「くそ…裏切り者ども、が!!」

光が収まり、彼らの目に映ったのは蓮の姿が消えたステージ。

ガルダは拳を振るわせた後で、椅子に座る璃緒の下へ向かう。

「ご覧になられましたか、姫。奴は屈辱にまみれ、逃げたのです。明らかでしょう。奴にナイトの称号がふさわしくないことに…」

 

Dr.フェイカーの研究施設。

壁にもたれて床に座る蓮の頬に瑠那が消毒する。

「ひどいけがね…」

「くそ…」

すぐにでももう1度あのライブハウスへ行って璃緒を救いたい蓮だが、落ち着いたことで今まで感じていなかった痛みがよみがえり、体がようやくダメージに正直になった。

いくつかの骨折が検査なしでもわかるくらいで、肋骨が持っていかれたために力が入らず、立ち上がれない。

「助かったわ、ドルベ、ミザエル。蓮を助けてくれて。でも…なんでここに?」

日本を離れているドルベとミサエルからは時折凌牙やカイトを通じて連絡があったものの、ハートランドへ戻ってきたという話は聞いたことがない。

おまけに、ピンポイントで蓮を助けるように動いていたようで、何かあったことが容易に想像がつく。

「私たちはナッシュから情報をもらい、ある集団を追っていた。集団の名はジェイル。元々はバリアン世界の住民だった者たちが結成した…テロリスト集団だ」

アストラル世界とバリアン世界が一つになり、3つの世界は救われることになったが、それですべてが解決できたわけではない。

バリアン世界の住民の中にはアストラル世界での生活に適応できない人々、あろうことかドン・サウザンドの意思を継いで今のアストラル世界をバリアン世界へ変貌させることで滅ぼそうと考える者たちが集まり、ジェイルを立ち上げた。

「そのメンバーがハートランドで何かを企てているという情報を手にしてきてみれば…まさか、お前が巻き込まれているとは思わなかった」

「ああ…璃緒もな。そのジェイルってのは知らねえが、ガルドは俺と璃緒を狙っていた。ナイトの称号と海の祝福を取り戻すなんて言ってよ…」

「ガルドか…」

その名前から、ドルベはかつての御前試合のことを思い出す。

ドルベもあの御前試合に参加しており、そこでガルドやかつてホークだった頃の蓮のことを知っている。

「痛み止めか何かあるか?もう1度、あいつを…」

「痛み止め程度でどうにかなると思っているのか?それで助けることができるほど、甘い話ではないのはお前自身がわかっているだろう?」

「だが、あいつが…!」

「丸腰では戦えないだろう。だから」

ミザエルが部屋の隅に置いていたアタッシュケースを蓮の前まで持ってくる。

ケースを開けると、そこには赤い炎を模したDパッドとかつての戦いでクリストファー達が紋章の力を発動するために装備していたブレスレッドと同じものが入っていた。

「こいつは…」

「バイロン達が開発してくれた。これがあれば、かつての七皇だった頃の力を使うことができる。時間制限はあるが」

凌牙と璃緒を除いて、蓮達はあの戦いで一度死んでいて、ヌメロン・コードの力によって人間としてよみがえった。

それと引き換えに、バリアンとしての力をすべて失っている。

璃緒も、ベクターとの戦いで力を失っており、現在残っている唯一の力を持ったバリアンは凌牙だけだ。

バリアンに変身した彼のエネルギーと採取した血液から収集したDNAデータによって、クリストファー達が使っていたブレスレッドをマイナーチェンジした結果、できたのがこれであり、ミザエルとドルベも身に着けている。

そして、デュエルにおいてもその力を行使できるようにするためのそれに対応したDパッドもここにある。

ブレスレッドに埋め込まれている宝玉の色については、ケースの中のものは透明で、ミサエルは金色、ドルベが白色になっている。

それらを手にし、Dパッドを見た蓮はその中にあるカードを見る。

「ミザエル、ドルベ!このカードは…!!」

「開発の中でできたものだ。お前になら使えるだろう」

「ああ…ありがとうな」

受け取ったブレスレッドを付けた後で、新しいDパッドに受け取ったカードと自分のデッキをセットする。

その瞬間、ブレスレッドの宝玉がオレンジ色となり、蓮は集中する。

体の中に炎がともるような感覚とともに、蓮の姿はバリアンのものへと変化した。

「よし…こいつなら、やれる…」

傷の影響で本調子とはいかないが、それでもバリアンの力を取り戻した今なら、ガルダと戦うことができる。

立ち上がった蓮に対して、ドルベが肩に手を置く。

「待て、ホーク。その前に、ナッシュの話を聞け。お前が受けた祝福についてだ」

「海の祝福のことか?でもよ、あれはバリアンに転生した時に…」

「確かに、バリアンとなってからはその力は失われていた。私もナッシュも、そう思っていた。だが…今回の件、そしてお前とメラグとのつながりから…こう推測している。海の祝福はまだ、お前の中で生きている」

 

 

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