当作品のお気に入りも、皆様のお陰で五千を突破しました。本当にどれだけ感謝しても、感謝したりません。
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――私は妹の操の為に、魔法少女にならないことを決めた。だけど、親友の利恵のことを諦めた訳ではない。必ず彼女を見つけ出すつもりだ。
そう決心を固めたのだが、一般人の私では完全に手詰まりだった。魔法少女の知り合いなど、それこそ利恵しかいない。
だが、操との約束もあり私が魔法少女になる選択肢は存在しない。どうすればいいのだろうか。
多少持ち直したとはいえ、最近はずっと利恵のことで悩んでいた。そういえば、気分転換――もとい操を心配させてしまったお詫びとして、次の土曜日に『歌姫』のコンサートに行くことを約束しているのだ。
――通称『歌姫』。そう呼ばれる彼女の正体は、魔法少女ブルームーン。青い長髪に、同色のドレスが映える人物である。
魔法少女のイメージアップを狙ってアイドル活動やグッズ展開などを、魔女への対処をする傍らで『管理委員会』は力を入れていると、以前に利恵から聞いたことがあり。私も偶にテレビで見かけたりする。
残念なことに、利恵がテレビや公式イベントに出るような活動はほぼなかったが。確かに全体的に魔法少女には可愛い子が多い傾向にあるが、利恵は個人的な色眼鏡を除いても、上の方を目指せたと私は本気で思っていた。
当の本人は恥ずかしがって否定していたけど。
もしも――いや、利恵が無事に帰ってきてくれたら、真面目にアイドル路線で売り出すことを検討してもらおうかな? そうじゃない。利恵には
それはともかく、ブルームーンはアイドル系魔法少女の中で一番有名であるだけではなく、その実力も魔法少女の中では上位に近い。
そんな彼女のコンサートは毎回満席で、チケットが相場以上の値段で取引されることもあるぐらいに人気で、チケットの入手難易度は極めて高い。
もちろん私は今回のコンサートのチケットは入手済みだ。それは今も自室の机の引き出しの中に、鍵をしっかりとかけて保管している。
この二枚のチケットは私が買ったものではなく、利恵から譲ってもらったという経緯がある。
その時のことを私は思い出す。
『……優衣さん。仕事の関係で頂いたものなんですが、良ければ一緒に『歌姫』のコンサートに行きませんか?』
顔を赤くしつつも、私を上目遣いで誘ってくる利恵。当然、私は即答した。
本当であったら、利恵と一緒に行くはずだったコンサートのチケット。操のご機嫌取りに使うようで申し訳ないと思いつつも、行かずに無駄にするのも悪いと言い訳をして。有り難く使わせてもらうことにする。
それに利恵のことだ。何だかんだで許してくれるはず。彼女が帰ってきたら、埋め合わせとして私にできることなら何でもするつもりだ。
キーンコーンカーンコーン。
朝のチャイムが鳴り、私は思考を中断した。ぼんやりと窓の外を眺めつつ、頭の片隅で利恵のことを考えていると。
何やらクラスメイトが騒がしい。その原因を探るべく、私は視線を教卓の方に向けてみる。そこには、このクラスの女性教師に連れられて教室に入ってくる一人の少女の姿があった。
この学校では見たことがない顔のはずなのに、どこか既視感がある。それは置いておき、一学期の半ばを過ぎた頃という中途半端な時期に転校生とは何か訳ありだろうか。
いや、私にはあまり関係ないだろう。
そんなことを考えながら、私は担任と少女のやり取りを聞き流していた。
「――はい、皆さん。静かにしてください。こちらは今日から、このクラスの新しい仲間になる天音さんです。では、天音さん、自己紹介をお願いします」
「はい、分かりました」
そこで一拍を置き、転校生の少女――天音さんは口を開いた。
「私の名前は天音月子です。両親の仕事の都合で、このような時期での転校となりますが、どうぞよろしくお願いします」
まるで鈴を転がすような声に、意識を半分以上別のことに向けていた私も含めた全員が、天音さんに注目していた。
自己紹介の最後に一礼をして、顔を上げた天音さんと一瞬だけ視線が合った。心の中を覗こうとしているような錯覚に陥るが、それも一秒に満たない刹那。
天音さんは何事もなかったように振る舞い、担任の指示に従って空いている机の方に移動していった。
(……何だったんだろう? さっきの視線は?)
いくら考えても答えは出てこない。もしかして私が覚えていないだけで、天音さんとは過去に会ったことがあるのだろうか。
時間は過ぎていき、お弁当の時間になった。利恵が登校しなくなってから一緒に食べさせてもらっている子達のグループの所に行こうとした瞬間。
私は天音さんに声をかけられた。
「……あの、すいません」
「私に何か用? 天音さん」
「突然で申し訳ないですけど、お昼をご一緒にいかがですか?」
「え、うん。別にいいけど」
「よかった……」
そこそこ発育の良い胸に手を当てて、嬉しそうにそう呟く天音さん。その仕草に、思わず同性ながら少しドキッとしそうになるが、軽く頭を振ることでリセット。
しかし問題はそれで終わらず、どういう訳か天音さんと二人だけでのお昼ご飯になった。おかしいな、授業の合間合間にある休憩時間では、天音さんの周りには大勢の人がいたはずなのに。
結局、私は天音さんと二人っきりで屋上にいた。お弁当のおかずを交換したり、趣味や好きなことといった当たり障りのない話題で会話を繋いでいた。
どうしても、先ほどの視線のことが脳裏を過ってしまい、会話に集中できなかった。
そして昼休みが終わりそうな時間帯を見計らって、私は天音さんに不自然にならないように「そろそろ教室に戻らないか」と提案する。
それに対して天音さんは賛成の意を示しつつも、真剣な表情で私を見つめてくる。その視線は自己紹介の時と同じく、私の内面を見透かそうとしているように感じられた。
気がつけば、天音さんの整った顔が目と鼻の先にあった。
「……すいません、本城さん。突然ですけど、私の秘密を話す代わりに貴女に正直に答えてもらいたいことがあります」
天音さんの異様な雰囲気に気圧されながらも、私は何とか答える。
「べ、別によっぽどデリケートなことじゃない限り、答えるわよ……」
「いえ、それでは意味がありませんので。本城さんの
一旦私から距離を取った天音さんは、短く「変身」と一言。首にかけられた青い宝玉のペンダントが光り、私はその眩しさに思わず目を瞑ってしまう。
そうして光が収まった後、私は慌てて天音さんの方を見た。彼女の安否を確認する為に。
しかし、その心配は無用だった。けれど、天音さんの装いは一変していた。
腰まで届くストレートの、夜空や月の煌めきのように深い青色の髪。
月光をイメージさせる白と青の配色のドレス姿で、腰には星形のベルトを巻いており、袖やスカートの裾には銀色の星模様が散りばめられている。
――魔法少女ブルームーンこと『歌姫』。それが天音さんの言うところの
直接ではないにしても、一方的ではあるが画面越しに何度か彼女のことを見たことがあるからだ。
しかも、天音さんが自分がブルームーンであることを秘密にしていたことも理解できた。利恵のように自分が魔法少女であることを周りの人間に周知している者もいれば、天音さんのようにそれを隠す者もいる。
そうするのには様々な理由があるだろうが、アイドル系魔法少女のトップに位置するブルームーンの場合はすぐに思い浮かぶ。
ファンからの突撃などを警戒しているのだろう。
しかし、それをわざわざ私に伝える理由とは? 特にメリットがあるようには思えない。
魔女という分かりやすい危機が差し迫っている訳でもないのに、いったい――。
そう考えていると、ブルームーンに変身した天音さんは申し訳そうにしつつ、こう言った。
「――ごめんなさい。本城さん。ほんのちょっとだけなので、私の質問に
天音さんの綺麗な声が脳に浸透していく。意識が曖昧になっていく。
目の前の天音さんが、私なんかにお願いごとをしてくれるのだ。
「まず、最初の質問です。貴女は魔法少女フローラ、神崎利恵と友人関係にあった。それに間違いはありませんか?」
「うん。利恵は私の大事な親友だよ」
「……そうですか」
何を当たり前のことを尋ねてくるのだろうか。もっと別のことを聞いてくると思っていたのに。
「なら、次の質問です。魔法少女フローラと魔法少女マジカルライトの失踪に、貴女は関与していますか?」
「いいえ、知らないよ。というか、利恵の居場所だったら私の方が知りたいぐらい!」
「……なるほど。では、最後の質問です。貴女は、『刃』の魔女のことをどう思っていますか?」
「そんなの決まってるじゃない! 私の妹や利恵を襲った魔女なんだし、許せる訳ないよ! ……確かに、彼女の両親が別の魔女に殺されたのは同情するけど、それとこれは話が別。だから、私は『刃』の魔女にはあまり良い感情は持ってない」
「協力、ありがとうございます。では、元に戻って――」
天音さんがそう言いかけた瞬間に、心をリラックスさせるような
それまで靄がかかっていた意識がはっきりとした。目の前にいるのは、いつの間にか夏用の制服姿に戻った天音さんだった。
「あ、あれ……? 天音さん。私、今までどうして――」
「――本城さん。そろそろ午後の授業が始まってしまいそうですので、急いで戻りましょうか」
「え、ええ。そうね。急がないと……!」
何だか釈然としない気持ちのまま、私は天音さんと一緒に教室に戻った。
■
――私、天音月子こと魔法少女ブルームーンは、『管理委員会』から新しい指示を出された。最近、とある街で二人の魔法少女が行方不明になっているという。
それだけではなく、その魔法少女は同じ学校に通っていて。彼女達の失踪に関与しているとされている魔女も、同級生として在籍していたという。
それを踏まえた指示とは、減ってしまった魔法少女としての増援や、関係者達が通っていた中学校へと転校し、事件を調査せよという内容であった。
そう上から命令されたのであれば、人気者とはいえ一介の魔法少女に過ぎない私には逆らえない。
(ははは……この命令に加えて、通常のアイドル活動もやらないといけないとは、流石にブラック過ぎませんか)
思わず乾いた笑みが浮かぶ。そんな私を心配するように、声がかけられる。
「――月子。無理をしない程度に、休憩しながら頑張らないと。貴女の歌声を待っている人もいるんだし」
「……そうですね、ルナリス」
私に声をかけてきたのは、淡いシルバーブルーに輝く羽を持つ小さな私の契約妖精――ルナリスだった。彼女との付き合いも長いもので、もうかれこれ数年間に渡り。アイドル系魔法少女として活動していることもあり、ルナリスは私の専属マネージャーのような役割もこなしてくれている。
私には、なくてはならない存在だ。
「……さて、明日は新しい学校ですね。制服などの準備もできてますので、今日は寝るとしましょう。近日中に、コンサートも一つ控えていますし。ルナリス、おやすみなさい」
「うん、おやすみ。月子」
そして、翌日。私は正体を隠して、失踪した魔法少女の一人であるフローラと同じクラスに転校し。彼女と友人という少女――本城優衣に接触した。
本城さんに接触した理由は、彼女がフローラの友人関係という訳だけではなく、『刃』の魔女に襲われながらも生還した少女の姉だからだ。
事件の解決を命じられたとはいえ、手がかりはほぼないに等しい。ほんの僅かな取っ掛かりを求めて、その日のお昼休憩に本城さんと二人っきりになることに成功。
万が一のことを考慮して、魔法少女の姿に変身をし『私の質問に正直に答えてくれるようになる』魔法を本城さんにかける。
魔法自体は無事に発動して、予め考えていた質問をした。その答えも予想内のものであり、本城さんも友人が突然いなくなった被害者の一人であると結論づけて。私が魔法の発動を止めようとするよりも直前に、強制的に解除される。
警戒度を一気に引き上げて、意識を戦闘用に切り替える。しかし、当の本城さんは呆けた様子で、特に何もしてこない。
魔法の効果は効いていて、さっきまで私の魔法の術中にハマっていた自覚もないようだ。一旦、警戒を緩める。
そのまま午後の授業を受けながらも、私はルナリスと念話で先ほどの不可解な現象について話し合っていた。
(……ねえ、ルナリス。さっきの本城さんみたいに、魔法少女や魔女じゃない人間が魔法の効果に抵抗することはできるんでしょうか?)
(そういった事例はなくはないから、あんまり気にし過ぎない方が良いと思うよ。だって、あの子からは悪魔と契約している様子も確認できなかったし。それよりも、次は誰に聞き込みをするの?)
(えーと、本城さんに都合を尋ねて、妹さんに話を改めてみましょう。事件当時は、彼女の年齢や精神的状態も考慮して、あまり詳しくは話を聞き出せていないようなので……)
そうやって、私達は今後の方針についての相談を進めていった。
■
――二人の少女のやり取りを、『傀儡』を通じて把握していた小さな魔女は頭を両手で抱えて慌てていた。
「――あ、ヤバ。あのまま不干渉だったら、警戒されなかったはずなのに……。つい
しかし徐々に冷静な思考ができるようになると、小さな魔女は怒りを滲ませながら言う。
「……いや、それよりも僕の大事な『お人形さん』候補――じゃなくて姉さんに
――そうだ。この泥棒猫はちょうど欲しかった魔法を持っているみたいだし、次の『お人形さん』は決まりだね。他人の大切な
平穏に暮らしたい殺人鬼+厄介ファンなピンク髪の悪魔+ゲーム大好きな不死身のおじさん+千年間生きてお笑い好きの脳みそ≒操ちゃん?