趣味が『魔法少女集め』のTS魔女さん   作:廃棄工場長

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第三話 初めてのお人形さん

 

 

 ――魔法少女や魔女には、それぞれ固有の魔法が存在する。分かりやすいものであれば、何もない空間から火や水を発生させたり、どれほどの重傷を負った怪我人でも癒してみたり。壊れた建物を瞬く間に元通りにしてみたり。

 そのどれもが、彼女達が現れる以前の常識を塗り替えてしまう代物だった。

 

 

 そして、めでたく(?)魔女になった僕にも魔法が発現した。魔法についての効果や、その使用方法を始めとして。魔法少女、妖精、魔女、悪魔に関連した知識が魔女になってから、いつの間にか脳に刻み込まれていた。

 その現象は、まるで転生したことを自覚した時のようだった。まあ、関係ないだろうが。

 

 

 しかし、魔女の傍には契約した悪魔がいるらしいのだが、あの黒猫悪魔の姿も一度も見ていない。いてもいなくても問題ないので、僕は魔女ライフをエンジョイするとしよう。

 

 

 ――話は逸れたが、僕の魔法について語る。魔法名は、『お人形遊び』。その効果は、『同意を得るか、屈服させた魔法少女や魔女を術者()の使い魔にする』魔法。

 

 

 強いかどうかは横に置いておくとして、我ながら煩悩に爛れた魔法である。まともに魔女として活動していたら、魔法少女からだけではなく、同じ魔女からも敵視されかねない。

 

 

 だが、それはせっかくあの黒猫悪魔に後押ししてもらった僕の崇高なる願いを諦める理由にはならない。

 僕はたくさんの可愛い魔法少女を使い魔(お人形さん)にしていくぞ! 魔女は怖そうな子が多いので、基本的には避けるつもりである。

 

 

 けれど、この魔法には大きな欠点が一つ存在する。術者()に魔法以外の攻撃手段がないせいで、一人目の使い魔(お人形さん)を確保するハードルがめっちゃ高いのだ。

 

 

 早速、欲望マシマシの魔女ライフに終止符が打たれるかと思ったが、駄目元で僕はある賭けに出ることにした。ギリギリに嘘にならない範囲で、『お人形遊び』の発動条件である『対象の同意を得る』という部分を達成できれば良いのだが――。

 

 

 ――そうして僕はある種の覚悟を決めて、当初の目標に定めた魔法少女のマジカルライトが立ち寄った『管理委員会』の近くの路地裏に潜伏。

 時間帯が夜になってしまったが、マジカルライトの帰宅ルートと思わしき場所に先回りし、今世の容姿を存分に活用して泣きながら探し物(・・・)をする幼女の演技。

 

 

「大丈夫? 何かあったの? お姉さんで良ければ、相談に乗るよ?」

「うう……困っていることがあるんです。『お人形さん』がなくなったの。助けてくれますか(・・・・・・・・)?」

うん(・・)いいよ(・・・)お姉さんに任せてよ(・・・・・・・・・)。私、これでも魔法少女なんだから」

 

 

 かなり無理やりな解釈どころか、こじつけに近い難癖だが、マジカルライトから僕の『お人形さん』(使い魔)になってもいいと承諾をもらった。

 という風に、僕の魔法は解釈した。同時に、この成功はマジカルライトが思った以上に消耗していたことが関係しているようだ。

 今後も同じような手段を取るとしたら、やはり対象がかなり弱っている必要があると感覚で分かる。有り体に言えば、初回サービスみたいなものだろうか。

 

 

(――それなら、相手を僕の手で弄んでからお人形にする方がお得だよね。うん。今後はそうしよう。……まあ、今は目の前の相手に集中しないと。――『お人形遊び』)

 

 

 一応、お礼を告げておくのも忘れない。

 

 

「――お姉さん。僕のお人形さんになってくれて(・・・・・・・・・・・・・・)ありがとう(・・・・・)!」

「――え?」

 

 

 マジカルライトが意識を失ったようで、地面に倒れ込む。

 

 

 『お人形遊び』が正常に(?)発動して、僕の魔力がマジカルライトの体に絡みつき、浸透していく。彼女の体を最適なものに、僕の『お人形さん』(使い魔)に作り変えていく。

 

 

「ふう……何とか最初の難関はクリアしたよ。僕の魔法の効果の確認もできたしね。よし、この子をお持ち帰りしたら、早速お楽しみタイム!」

 

 

 マジカルライトが今まさに新生しようとしている瞬間に。僕が達成感に浸っている時に。割って入ってくる無粋な奴がいた。

 

 

「――どうしたの、マジカルライト!? 君っ!? 私の契約者にいったい何をしたのっ!?」

 

 

 声の方に視線を向けてみれば、そこには掌サイズで羽の生えた少女がいた。

 

 

「ああ、妖精か。僕の契約した悪魔はすぐにどっかに行っちゃったから、完全に失念してたよ」

「……悪魔と契約? それに、この魔法……君。魔女か!?」

「うん。そうだよ。と言っても、もう手遅れだけど」

「それは、いったいどういう意味で……!? マジカルライトっ!? 意識を取り戻したの!?」

「……」

 

 

 妖精の呼びかけに対して、立ち上がったマジカルライトは何も答えない。空虚な瞳は、僕のことはもちろんのこと相棒であるはずの妖精も映していなかった。

 

 

「どうしたの、マジカルライト!? 昼間の、『刃』の魔女との戦闘で疲弊しているかもしれないけど、早く変身して! ねえ、聞いてるの!?」

「……」

 

 

 妖精の言葉はマジカルライトには届かない。開かれた目は虚ろで、どこからどう見ても正気には見えなかった。そんなマジカルライトに向けて、僕は命令を飛ばす。

 

 

「ねえ、僕の(・・)マジカルライト。そこの邪魔な妖精を始末してくれる?」

 

 

 ――魔法少女をお人形として飾るのだったら、パートナーの妖精も必要だという意見はあるかもしれない。しかし僕が契約の際に得た知識では、詳細こそ分からなかったものの「妖精はきな臭い。腹の底で何を考えているか分からない種族」という認識に落ちついている。

 そんな(腹の中が)可愛いくない妖精は、魔法少女に不要なり! というのが僕のスタンスだ。

 だから、必要のない妖精はお片づけしましょうねー。

 

 

 無事に僕の『お人形さん』(使い魔)と化したマジカルライトは、私服から魔法少女としての衣装――ピンク色のフリル付きのドレス姿になった。

 虚ろな目をしながら、衣装と同じ色のステッキを構え、その矛先を自らの相棒であるはずの妖精へと向ける。

 

 

(あはあ! このシチュエーション最高っ! マジカルライトがどうして魔法少女になったのかは知らないけど、大切な相棒を自らの手にかけるなんて、とっても悲劇的(素敵)なことだよ!)

 

 

 ただ一つ残念なことがあるとすれば、未だに『お人形遊び』は試運転の段階で『お人形さん』(使い魔)に自我は与えていないことだ。

 万が一の事態、僕への反逆を防止する為に。

 

 

(……まあ時間の余裕ができたら意識を戻した後で、じっくりとこれから起こること(・・・・・・・・・)を教えて上げればいいか。……あ、そうだ。映像に残しておくのもいいかも。えっと、携帯の撮影機能で……)

 

 

 そんなことをしていると、僕の『お人形さん』(使い魔)と化したマジカルライトに対して、妖精が命乞いのようなことをしていた。

 既に魔法をいくつか放った後なのか、妖精の羽は片方がもげており、それ以外の負傷も目立っていた。

 

 

(やばい、早く撮らないと……。

 おお、いいよいいよ。そこの妖精ちゃん。もっと無様に、愉快に喚いてくださいな。

 後でこの映像を見せた時に、マジカルライトはどんな顔をしてくれるかな? ぐへへへ)

 

 

「止めてよ!? マジカルライト!? 私だよ!? 君の契約妖精のメルルだよ!?」

「……」

「忘れたの、マジカルライト!? 君は魔女になってしまったお友達を助ける為に、魔法少女になったんじゃないの!?」

「……!」

 

 

(あ、やばい。まだ魔法による制御が完璧じゃないせいか、あの妖精の言葉にマジカルライトが反応している。あのまま放っておくと、意識を取り戻しかねないな。

 もうちょっと、撮っておきたかったけど安全には代えられない。さっさと片付けよう。……だけど、マジカルライトが魔法少女になった動機は、魔女になった友達の為か。これは後で使えそうだね)

 

 

 妖精が溢した言葉から得た情報を元に、マジカルライトでどのように遊ぶ(・・)のかを考えながら追加の指示を彼女に出す。

 

 

「――マジカルライト。遊んでいないで、そろそろその妖精に止めを刺してくれる?」

「……」

 

 

 相変わらず虚ろな瞳のまま僕の方を軽く見たマジカルライトは、すぐに妖精に向き直りステッキを構え直して、魔法の発動準備に入る。

 

 

「……マジカルライト。お願いだよ、元の君に戻って――」

「――『マジカルフラッシュ』」

 

 

 感情を感じさせない声色で、淡々と処刑宣告を行うマジカルライト。彼女が持つステッキから、ピンク色の極光が放たれて、妖精は今際の言葉を最後まで紡ぐことなくこの世から消滅した。

 と言っても、悪魔と同じだとしたら妖精も死んだとしても、彼らが元いた世界で復活するかもしれないので意味はあるかは疑問だけど。

 

 

 辺りが一瞬だけ、昼間と錯覚する程の明るさに包まれたが、それもすぐに収まり夜の暗闇と静寂が戻ってくる。

 

 

(えーと、よしバッチリ撮れてるね。後もうちょっとだけ、初めての『お人形さん』をゲットした余韻に浸っていたいけど、異変を感じ取った住民から通報を受けた魔法少女が来るだろうし、帰りますか。……とその前に)

 

 

 思考を一旦打ち切り、小走りにマジカルライトに近づき軽くジャンプをして彼女の肩に触れる。そうすると、マジカルライトの体は一瞬にして小さくなり、その見た目は完全に精巧なミニチュアサイズのフィギュアにしか見えない。

 この現象も、『お人形遊び』の副次効果である。『お人形さん』がずっと等身大サイズだと、保管場所に困っちゃうからね。

 

 

 小さくなったマジカルライトの質感を頬ずりで少し堪能した後、彼女をスカートのポケットに仕舞う。

 これで証拠はほぼ隠滅に成功したので、すぐに撤収する。そして、僕がその場から立ち去って数分も経たない内に、夜の街が少しだけ騒がしくなる。

 

 

(ぐふふ。初めての『お人形さん』だから、いっぱいいっぱい、大切にして可愛がって上げるよ。マジカルライト。だから、早くに壊れたりしないでよね)

 

 

 ルンルン気分でステップを踏み、僕は自分の家へと帰っていた。新しい玩具(・・)を時折ポケットの中で弄びながら――。

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