ダンジョンを駆け回りながら、左腕に固定したスマホの画面に目を遣る。
伸び続ける同接数、賑わうコメント欄、満たされる承認欲求。
これだよ、これこそが俺が追い求めてきた“俺TUEEE”だよ!
なお、コメ欄で言及されているのは9割がミオちゃんである模様。
···だってさ、仕方ないじゃんね。
画面越しに大勢の人に見られてると思うと、気恥ずかしいじゃん。
マソリアではずっとおっさん二人とばかり行動して、村の人とはたまに挨拶する程度の関係だったし、俺はゴリッゴリのコミュ症なのだ。
気の利いたセリフも吐けない。
だからカメラからは少し距離を置いている。
それにミオちゃんが褒められているのも嬉しい。
あの子そこそこ自己評価低めだからなあ、これを機に少しくらい調子に乗って欲しいところ。
···そんなことを考えながらモンスターを倒しまくり、中層第3層のボス部屋前に到着した。
コメント:はっや
コメント:攻略速度が配信者レベルじゃない
コメント:RTAかな?
何度も潜った場所だからな、このダンジョンの経路はなんとなく頭に入ってる。
モンスターにも顔を覚えられているのか、知能の高い奴等はむしろ俺達を避けてくるから、攻略もサクサクになるわけだ。
ボス部屋の超重い石の扉をミオちゃんが押し開ける。お邪魔しまーす。◯すぞ〜!
中にいたのは丸々と肥え太った、見た目だけなら可愛らしい3匹の獣。
つまりはでっかいアルマジロである。
体高は俺よりちょっぴり高い程度だから、およそ1m50cm。
コメント:こいつらがボスなの?
コメント:爪も牙も無いように見えるし、むしろ可愛い
コメント:弱そう(直球)
コメント:いや、これは···
「「「キュィィィィイイイイイ───」」」
コメント:何この音
コメント:威嚇?
コメント:おいなんかヤバそうじゃないか?
今回のボスはラピッドアルマジロか。
このモンスターが使って来る技はたった1つ。
体を球体にした後その場で回転しながらパワーを溜めて、高速突進で攻撃する。
スマ◯ラで例えるならプ◯ンの通常必殺ワザだ。
コメント:消えた!?
コメント:ダンジョンの壁が削れてる、というかあちこち砕けてる!?
コメント:なんで丸まったままこんな軌道で動けるんだよ!?
コメント:ミオちゃんが動きを追えてないように見えるんだけど、これヤバくないか?
巨大な球体が3つ、ボス部屋を所狭しと疾走する。
その動きは前後左右に留まらず、壁や天井を砕きつつあらゆる方向から獲物を追い詰める。
この“転がり突進”は攻略方法もまたシンプルで、前衛が突進を受け動きを止めて、そこを高火力持ちが仕留めるというのが一般的。
だけど慣れてくるともう少し楽に倒せる。
ミオちゃんが目を閉じてメイスを大きく振り上げ···“転がり突進”してきたアルマジロを
まるで野球の強打者のように金属音を響かせながら打ち上げ、哀れなアルマジロは天井に叩きつけられて絶命した。
コメント:え、、
コメント:ギィン!って音が聞こえた瞬間、小さく“べちゃっ”て音がしたんだが
コメント:天井にへばりついてるのグロすぎて草
コメント:草じゃないが
コメント:原型を留めてねえよ···
コメント:やはりゴリラだったか、正体見たりって感じだな!
ミオちゃんみたいなパワー系は、山勘で強攻撃をキメれば一撃で倒せる。
動きを止めるまでも無い。
···本人は山勘だって言ってたけど、外してる所見たこと無いんだよね。
野生の本能的なサムシングが作用していると思われる。やっぱり森の賢者なのでは?
俺みたいなガリガリボーイ(?)は真正面から攻撃しても甲殻に弾かれるから、体の継ぎ目を狙う必要がある。
だけど高速回転しているから狙いを定めるのが難しく、レベリングを終えた今の俺でも成功率は大体7割。
「···ふっっ!」
ミオちゃんから逃げ、俺へと襲いかかってきたアルマジロに渾身の刺突。
槍先は正しく継ぎ目へ突き刺さり、アルマジロは数秒だけ痙攣した後に動かなくなった。
···ちなみに今回は成功したけど、失敗すると四肢のどれかを持っていかれる。
コメント:この子も一撃で決めた!?
コメント:体の継ぎ目を狙って突き通したんだな···どんな動体視力してるんだ
コメント:↑有識者だ!
コメント:あれ、いつの間にか怪我してる?
コメント:ホントだ、左腕に切り傷が···
コメント:結構深くないか?どのモンスターにやられたんだろ
···さて、残りは一体。
とっとと倒して第4層に行こう。