運営とミオちゃんから配信禁止令を出されてからおよそ半年が経ち、今は春休み。
俺たちは高校2年生に進級したお祝いを兼ねて、遊びに出かけていた···といってもカラオケで2時間歌うだけである。
ダンジョン素材を換金しまくってるからお金はあるけど、俺たちは2人共出不精だから、旅行に行ったりはしない。
ダンジョン以外だとお互いの家でゴロゴロするか、近場でちょっと遊ぶくらいだ。
「もすかう、えんぶんてはえるんすか、つめをそぉっとぽい、かえりなさい」デッデッデッデッ
「相変わらず選曲の癖が凄いね···」
この世界にもこの歌って存在したんだな。
嬉しくなって熱唱しちゃったよ。
···ちなみに、いつもミオちゃんが歌う歌は半分くらいが激重ラブソングである。
失恋した相手に「幸せにならないで」って言うのはヤバすぎるって。
誰だよ作詞したのは。
「────────♪」
うーん、透き通るような美声を特等席で聴けるのは最高なんだけど、歌詞だけどうにかならん?
そんな贅沢な事を考えていると、早くも10分前コールが届いた。
「最後の曲どうする?」とミオちゃんに聞かれたので、少し悩んだ末にタッチパネルを指さした。
俺が選んだのはデュエット曲。
別離を予見しながらも再会を願う、切なくて、どこか退廃的な雰囲気の曲だ。
···2年後には俺がマソリアに帰らないといけないから、奇しくも俺たちと重なる部分がある。
◆◆
店から出て、駅ビルの周りをうろつく。
「この後どうする?」
「んー、ダンジョン、行かない?」
「そればっかじゃん。今日はのんびりしよ」
他愛のない会話を楽しんでいた、その瞬間。
ウウウウウウウウウウウウウ───!!!!
首都のど真ん中に、緊急事態を報せるサイレンが鳴り響いた。
それと同時に街頭ビジョンの映像が緊急ニュースへ切り替わり、人々は立ち止まってそれを見る。
『ジューヤ地区の深淵保有ダンジョンが崩壊しました!!付近の住民の皆様は直ちに避難し、命を守る行動を取って下さい!付近の探索者の皆様は救援をお願いします!繰り返します──』
「ジューヤ地区って···」
「ミオちゃん、急ごう」
首都のほぼ中央に位置するジューヤ地区。
駅周辺を中心に大型商業施設が立ち並ぶ商業エリアとして有名で、国内屈指の昼間人口を誇る。
ここからジューヤ地区までは電車で10分くらいだろうか···だけどこのパニックで平常通りに運行されるとは思えない。
それに敷かれたレールでしか走れない電車よりも、たぶん俺が走った方が速い。
「しっかり、掴まってね」
「え──きゃっ!?」
まずはナイフで手の甲を切ってステータス“力”を増幅させ、ミオちゃんをお姫様抱っこ。
そのまま地を蹴って飛び出した。
···結構大胆な事(お姫様抱っこ)をしているとは思うけど、たぶんこれが一番速い。
とにかく速く、現場に行かないと。
何人死ぬか分からない。
──────────────────────
※アカリは普段からナイフを持ち歩いていますが、この世界でもガッツリ銃刀法違反です。
ダンジョン外で武器を携帯するな。