[完結]自傷スキル持ちは配信するな!   作:訥々

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移住

デカくてクソ強い龍を倒すために自分へナイフぶっ刺して、寝て(気絶して)起きたらスーツのお姉さんにお姫様だっこされてた。

 

 

「気が付いたか!」

 

 

瓦礫の山もなんのその、風を切って駆け抜ける。

···足めっちゃ速いなこの人。

ちんまいけど人間を抱えてるのに。

 

 

「ぁ···もう、だいじょぅぶです」

「何を言う、今すぐ最寄りの総合病院へ緊急搬送だ。どう見ても重傷だし、君の側にいた子も心配していたぞ」

「······」

 

 

久しぶりに[犠牲的行為]使っちゃったからな。

ミオちゃんに後で何をされるのか、不安だ···。

 

 

「事情はよく分からないが、自分を傷付けるのは控えて欲しい。周りの人が悲しむ。···君に助けられた私が言える事ではないが」

「······はい」

 

 

まあこんな事はそうそう起こらないだろうし、これからは使わなくても大丈夫だろ。

でも[犠牲的行為]なら深淵ボスも倒せるって知っちゃったからなー。

こっそりダンジョン内でまた使おうかなー。

『ダメだよ?』(※イマジナリーミオちゃん)

はい、すいません。

 

 

···というか今更だけど、この人何者だ?

明らかに一般人の戦闘力じゃなかったよな。

 

 

「そういえばまだ名乗っていなかったか。···私は国家公安迷宮対策委員会の委員長*1、遠瓦京子だ。よろしく頼む」

「!?」

 

 

◆◆

 

 

ダンジョンブレイクが終わった後のミオちゃんは凄かった。

病室なのに泣きながら俺に抱きついて豊満な“たわわ”を押し付けてきて、思わず心のビッグマグナムが···いや、やっぱ辛えわ。

不安にさせて、泣かせてしまって申し訳ないという気持ちの方が強い。

やっぱり[犠牲的行為]は封印しておこう。

 

 

···2泊3日の検査入院を終えた俺は、ミオちゃんに髪をワシャワシャされた後、お姉さんからとあるビルの社長室っぽい部屋に招かれた。

2人きりで話したいらしい。

 

 

「失礼します」

「うん、楽にしててくれ」

 

 

このソファ凄え、めっちゃ座り心地いい。

人を駄目にするクッションとか、こんな感じなのかな。

 

 

「さて。早速だが君に伝えたいことは2つ···いや3つある。まず1つ目、君にニホーン国の永住権が付与される事になった。後日書類を郵送するから読み込んでくれ」

「えっ」

「そんなに驚く話でも無いだろう。君がいなければ、強化された獄炎龍がこの国を蹂躙していた事は想像に難くない。万一その隙を突かれて他国にも攻め込まれていれば、世界地図からこの国が消えてもおかしくなかった。···君はこの国を救ったのだよ」

「えっ」

 

 

なんか話が大げさになってきたぞ。

ミオちゃんとずっと一緒にいられるのは嬉しいけど、俺はスキルを使っただけなんだよな。

 

 

「2つ目。君の身辺を軽く調べたところ、マソリアに保護者が2人いる事が分かった。かなりの実力者だと聞いたので、ニホーンへの移住と公安への編入を提案したところ、快諾して下さった。勿論渡航や生活に掛かる費用は全てこちらが払わせていただく。数週間後にはニホーンへやって来るそうだ」

「えっ、えっ」

「なぜ快諾したのか聞いてみたら、君が危なっかしいからだと言われたのだが···普段からあんなことを?」

「えっ、いや、あんまり」

「·········そうか」

 

 

「3つ目。ネットニュースを見る習慣はあるか?」

「···無いです」

「そうか。別に君が悪いわけではないのだが···実は少し困ったことになってね」

「?」

「君が獄炎龍を倒した映像が公共放送に流れ、それを見た魔力に慣れていない国民が卒倒したり、精神に異常をきたしてしまったのだ」

「!?」

「魔力に慣れていない人間が莫大な魔力を感知し、体調を悪くするというパターンは国内でもいくつか確認されているのだが。今回の事案は少し毛色が違う。死者は無く、被害は軽微だったが···なにせ規模が国内全域だからな。政府は現在詳細な情報を秘匿しているが、都市伝説で済む段階でもない。早急に情報を開示し国民の不安を解消せねばならない。···そこで、提案なのだが」

 

 

「公安の公式ヨウツーベチャンネルで、釈明配信をしてくれないだろうか?」

「正気ですか?」

 

 

BANされない?大丈夫?

 

 

──────────────────────

 

・遠瓦京子

治安維持機構の実質トップなのに有事の際は自ら出撃するヤベー奴。

部下が有能だからフットワークが軽い。

ビジネススーツ姿で戦場を駆ける姿が時たまネットに流れる。

その姿に惚れ込んだ人間も多くファンクラブも存在する。

ちなみに40代独身でスルメが好き(クッソどうでもいい情報)

そしてアカリの自傷を目の当たりにし、脳を破壊されてしまった被害者でもある。

 

 

 

*1
※ダンジョン専門の警視総監みたいなボジション。

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