研究員らしき人たちの発言から、この世界における俺の出自をある程度察することが出来た。
まず俺は人工的に造られた生命···俗に言う“試験管ベイビー”という奴らしい。
といっても技術は粗悪な代物らしく、まともな人の形をしていないのが8割、残りの2割も半年と経たずに···。
そんな状況で生まれた“俺”は実験用生物として有能らしく、簡単には“終わらせて”くれないようだった。
実験を繰り返した結果、俺には複数の能力が発現した。
“痛覚耐性” “超回復” “潜在魔力の増幅と解放”···どれも効力は半日未満だけど強力だ。
どうやら生物兵器としての運用が検討されているらしい。
量産できれば国家転覆も夢ではないと、白衣のおっさんが高笑いしていた。
それ本人の前で言っちゃダメだろ。
しかし量産は失敗。
研究員は単騎特化に方針を転換し、俺の戦力の底上げに賭けたらしい。
その日から俺の扱いが多少マシになった。
具体的には水と食料の量が増えた。
···でも実験の回数と強度は増えたから、差し引きマイナスだな。
もう早く終わらせて欲しい。
今日も実験か、やだな···そんな事をダラダラと考えていたある日。
施設全体に甲高い警報が鳴り響いた。
『───施設内においてガスの漏出が確認されました。研究員は速やかに避難を───』
「こっちに来て!!」
「···おねえさん」
手を引かれ、状況を把握しきる間もなく建物の外へ連れ出された。
今は昼間で、天気は快晴だった。
久しぶりに太陽を見た感動と戸惑いで呆然としている俺に、お姉さんがひと粒の錠剤を手渡した。
「私が指差してる方向へ歩いて、絶対に止まっちゃダメ。しばらく歩いて追っ手もいなかったら、コレを飲んでね」
「···ありがとう」
優しく包まれた両手から、お姉さんの温かさが···優しさが伝わった気がした。
“ここから逃げろ”
彼女の意図を察した俺はおぼつかない足取りで、お姉さんが示した方向へ走り出した。
ここまで来れば平気だろう。
俺はお姉さんから渡された薬を飲み込んだ。
···あれ···急に眠気が······──────
◆◆
俺は病院のベッドで( ˘ω˘)スヤァ···してたはずなんだが、いつの間にか夜の荒原のカチカチ地面の上で大の字になっていた。
ちんまい女の子の体になってるし、空中にステータスプレート的なアレがふよふよ浮かんでる。
──────────────────────
《逃亡》
希少な人工生命体ではあるが実験結果は芳しくなく、行き詰まっていた。
維持費用や研究費用も馬鹿にならない···適当に処分しようと考えていたタイミングで、あの実験体が自分から逃げ出した。
今頃は野垂れ死んでいるだろう。
《お姉さん》
幾度も造られ、消えていく命を見た。
せめてあの子だけは辛い過去を
東へ迎えば、きっと······