高校卒業を間近に控える俺達は、それでも相変わらずダンジョンに潜り続けていた。
ダンジョン素材の換金で生活には一生困らないくらいには稼いでるし、2人揃って就職も進学もしないからお気楽である。
同級生が受験勉強に励んでいるのを尻目に、放課後も休日も遊びまくった。
そんなわけで今日も近場のダンジョンに潜っていると───
「助けて!!」という女性の悲鳴が聞こえた。
···ここは深層第2層。
今の俺達にとってはある程度安全に潜れる階層だけど、警戒を怠れば重傷を負う。
だから周囲の索敵を怠らず、慎重に声が聞こえた方向へ向かった。
角を曲がると、そこに人の姿は無く。
機構が剥き出しになった無骨な人型ロボットが直立していた。
胸部と思しき部分には、スピーカーとカメラが取り付けられている。
そして···脊髄部分の金属部品に刻まれた、
「ブラックボックス···!?」
ミオちゃんが口にした組織の悪名は全世界に轟いている。
ある時は大国の象徴であるビルを爆破し、またある時は非人道的な生物実験を繰り返すテロ集団。
そんな組織の証がなぜこのロボットに···
「ッ!!?」
後ろからの風切り音を捉え、咄嗟にミオちゃんを抱えて飛び退く。
何者かによる不意討ち。
単なる野生のモンスターではない···もしそうなら、もっと早く気配を察知できた。
「この拳を···避けるか」
地の底から響くような声。
俺達2人の背丈を合わせても届かぬ程の巨躯。
牛の頭蓋によく似た悪魔的な頭部。
シルエットこそ人間に似ているけど、体中の皮膚が全て剥がれ、骨と筋肉が剥き出しになった見るのも悍ましい血塗れの躯。
そして身に纏う、未曾有の強者のオーラ。
深淵にこのレベルのモンスターはいなかった。
あの獄炎龍でさえ、これほどの威圧感は持っていなかった。
人語を操る知能も含めると、おそらくコイツは奈落級───人類未討伐クラスか。
「あの実験体がここまで強くなるとは想定外だったが、今の俺には遠く及ぶまい。全世界の前で惨たらしく殺してやる」
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《血の巨人》
ブラックボックスの最終兵器にして暴虐の化身。
かつて散った仲間の怨念を取り込んだ姿。
万人への憎悪を糧とし、無限とも思える莫大な再生力を手に入れた。
絶大なる力を持ちながら、それを振るおうとしなかった者を許せなかった。
個体名『