「素晴らしい力だが···想定内だ。俺がコレに耐える準備をせずに勝負を仕掛ける訳が無いだろう」
アカリちゃんから橙色の柔らかな灯りが溢れ、巨人の体を覆い尽くし───
飛び散った肉片たちはぐじゅくじゅと蠢く。
軽い吐き気を覚えながらも私が動き出そうとした瞬間、強力な磁石が引かれ合うような速度で1つにまとまり···
「ははは···はははは···」
···再生した。
「ははははは!!」
耳障りな笑い声。
アカリちゃんが自傷してでも稼いだダメージは、一切残っていないようだった。
「重力魔法を使いこなせないお前1人で俺は倒せない。俺の勝ちだ。···宣言通り、アカリを殺す」
アカリちゃんと出会ってから3年。
元々自信のあった腕力に磨きがかかり、素早さを格段に向上させる術を手に入れた。
苦手だった重力魔法も、ある程度の精度で発動できるようになった。
深淵に挑めるほど強くなった。
何のために私は強くなった?
決まっている、愛する人を護るためだ。
『何かきっかけがあれば、その力をもっと使いこなせると思うわ───』
アカリちゃんに死が迫っている。
巨人の拳が彼女の頭蓋を捉える前に殺す。
魔力を練り上げる。
こんな状況下で、しかし脳は冴え渡っている。
「アカリちゃんは、死なせない」
巨人のみを対象に
連続発動───岩窟の壁が円形に凹み、超重力が巨人を磔にした。
流石に胴体は頑強で簡単には潰せそうにないが、気にせず発動し続ける。
ありったけの殺意を込めて。
◆◆
私は公安の精鋭部隊十数名を率いてダンジョンを駆けていた。
配信が開始されてから──すなわちアカリちゃんたちが奴に接敵してからすぐに向かったが、入口から深層までの距離はどうしようもない。
我々も訓練こそ積んだが、そもそも超級のイレギュラーを前に生還できるか怪しい。
しかしここで奴を殺せなければ、地上の被害は計り知れない。
2人との戦闘で多少なりとも疲弊しているならば、針の穴ほどの活路はあると踏んでいる。
そして心情的にも、まだ若く有望な彼女たちを死なせたくはなかった。
やっとの思いで到着した現場は、凄惨な死闘の後が未だくっきりと残されていた。
地面に刻まれた、無数の奇麗なクレーター。
壁面に刻まれた、血痕らしきものがべったりと付着している巨大なクレーター。
血塗れで気絶しているアカリちゃん。
流血こそ無いが同じく気絶しているミオちゃん。
しかし、奴の姿は確認できなかった。
「アカリがやった···わけじゃねえか」
「ああ、これはその女の子···ミオだっけ?」
「このクレーターが重力魔法によるものなら、おそらく魔力切れで倒れたのだろう。···ビリー、ノックス。経口魔力補給剤を飲ませてやってくれ」