のんびり閉鎖空間 〜ランダムで出現するキャラ達と日常は過ごせるのか?〜 作:賭博馬鹿2号
ルーレット。
それは、19世紀初頭に今の形が成り立ったカジノの女王である。
「スピニングアップ」
機械の無機質な声がそう告げる。
それは、賭ける時間が終了した合図。
ルーレットはくるくると回り出し……1つの数字がはじき出される。
“13”
数字が確定したと同時、再び無機質な機械音声が流れる。
「セカンドダズン 的中おめでとうございます。
15枚の払い戻しです」
その声を聞いて、ふーと溜息を吐くものがいた。
「トントンってとこだなぁ」
スピードワゴンである。
19世紀末であるスピードワゴンの時代にもルーレットは当然存在し、彼はプレイの経験こそないものの、その豊富な知識でやり方は知っていた。
これは1〜36の数字の内、何が出るかを当てるシンプルなゲームだ。
偶数が出るか、奇数が出るかを当てて2倍(イーブン、オッド)
赤の数字が出るか、黒の数字が出るか当てて2倍(カラー)
など、多彩な賭け方が出来る。
スピードワゴンが先程当てたのは、13〜24の数字が出れば当たりとなるセカンドダズン。これは3倍である。
「機械がディーラーとなると、どうも強気に行けねぇぜ……。
そういやリッカ、ルーレットのルールは分かったか?」
「何となくですけど。私もやりますね」
「おう!」
「行きます!」
リッカは、ルーレットの前にチップを持って座った。
「プレイスユアベット」
これは、チップを賭けたい場所に置いて下さいという指示である。
「えっと……とりあえず適当ですけど18番に2枚!
以上で!」
「おい待てリッ」
スピードワゴンが止めようとするが……。
「スピニングアップ」
以上とリッカが言ってしまったので、賭ける時間は既に終わってしまった。
18番の箇所が自動で開き、置いたチップが回収される。
「スピードワゴンさん、どうしましたか?」
「そりゃ強気すぎんぞ!」
「え、2枚ですよ?」
「ルーレットってのは、基本的にもっと広く賭けるもんなんだ!
数字1つなんてそう当たるもんじゃねぇ!
ルーレットで1番難しいんだそれは!
当たったら、36倍だぜ!」
「さ、36倍! さっきの競輪の3倍以上!?
それはさすがに無理かも……」
リッカはそう思ったものの、無情にルーレットは回り続ける。
1つの数字が弾き出された。
“18”
「え?」
「ストレートアップ 的中おめでとうございます。
72枚の払い戻しです」
機械音声が淡々とそう告げた次の瞬間、72枚相当のチップがドドッと排出された!
「なにぃ!?
や、やりやがった! ありえねぇ!
カジノ素人、いやそれどころか賭博すら碌にした事がないリッカがルーレットで1番難しいストレートアップを1撃で!
ビギナーズラックにしてもすげぇ!
ちまちまやってた自分が小っぽけに見えてしまう!
あの思い切った賭け方! 俺は敬意を表するぜ!」
「えっと、他の賭け方がよく分からなかっただけなんだけど……」
リッカは困惑しながら、チップを取る。
「色の違うチップが9枚?」
「10ポイントチップと1ポイントチップだろうな。
カジノじゃ金額によってチップの種類が変わると聞くぜ」
「そうなんですね……。
あっ、ほんとだ緑色のに10って書いてある!
やったぁ! 当たったぁ!」
「すげぇよリッカ!
さぁて、そろそろ30分は経っただろ。
イーフェの途中経過でも見てやるか!」
「ですね!」
スピードワゴン達をチップを持って、モニターの方に向かっていった。
「よぉ、イーフェ! そっちはど」
「ぬわあああああ!」
瞬間ッ! イーフェの悲痛な叫び声が室内に響き渡る!
「分かった聞くまでもねぇ。リッカ戻るぞ」
「え、えぇ!? 良いんですか?」
「俺はあんな奴を何人も見てきた。
ありゃ今は何を言っても無駄だぜ」
「そ、そうなんですね? 分かりました?」
「後、30分。
イーフェが負ける分、俺達で増やすぜぇ!」
「イーフェさんが負ける事は前提なんですか!?」
◇
「ふぅふぅ……」
ついに、今日最後の川崎12Rの発走だ。
ここに全ポイント突っ込んだんだ!
頼むっ! 来てくれ!
「3連単 5-1-3!
5-1-3!」
今の俺はこの1点しか買ってない。
これに全投資した。
「良いぞ、良いぞ5!
1も千切れてない! 3も絶好!
予想通り! 行け行け行け!
…………よっしゃああ!」
当たったあああああ!
「おいマジか。
イーフェその様子だと当たったってのか?」
「まぁなぁ? スピードワゴンはどうなんだ?
カジノで増えたのか?」
「残念だが20ポイント程度しか増えてねえ。
だがリッカは50ポイント増えたみたいだ」
「えっ、すご」
今のリッカの手持ち120って事?
「うーん、あのまま勝ち続けてればもっと行けてたんですけど」
「さすがにそうは行かねぇよ。
だがあの勝ちを守り、攻めすぎない判断力は見事なもんだ」
「えへへ、ありがとうございます」
2人で70ポイント増えたのか。
目標には遠いとはいえ、凄い。
「イーフェはさっきの様子だと、相当増えたんじゃねぇかぁ?」
「いや減ってるぞ」
「え?」
「えっ?」
「減ってるぞ」
聞き間違えかのような反応をされたので、一応もう1回言ってみる。
「いや待てや! 当たったんだよなぁ!
あれか? 何通りか買ったのか?」
「いや1点で当てたぞ」
「じゃあなんでだよ!」
「そんなの1個前のレースで65ポイント負けたからに決まってるだろ」
「はああああああ!?」
「ろ、ろくじゅうごぽいんと……」
スピードワゴンは驚愕し、リッカは呆気に取られたようにしている。
「言いたい事は分かるぞ。
だが、絶対に2-9のワイドは行けるはずだったんだ。
65を3倍に出来ると思ったんだ!」
「出来てねえじゃねぇか!」
「ま、まぁな」
それがギャンブルというものである。
「だが今のレースで5ポイントを36.5ポイントに出来た。
失ったのは約半分だ。まだやれる」
「やれねぇよ! もうやめとけ!」
確かに今日はやめとくか。
1日でやろうとするのは無理だ。
それに、明日はこの桜花賞の決勝戦があるはずだ。
「分かった。今日はやめよう。
それとこれは提案だけど」
「なんだ?」
「明日も当然ブローチのために来るだろ?
ロキに今日の事を話して、ここに来てもらおう」
「あのおっさんにぃ?
来そうにねぇが、なんでだ?」
「意外とギャンブル強いかもしれん」
本当はロキがギャンブルとかハマったら、面白いかもと思ってるだけだが。
「誘う口実はそうだな……。
ポイントで手に入る景品は、変わる可能性があると初めに解説があった。
ロキが今後欲しいものが出てきた時、ギャンブルの修練をしておいて損はないはず、とか言ってみる」
「それでも来そうにねぇけどなぁ」
まぁ、そうだよなぁ。
何か良い方法は無いものか。
「うーん。
確かにロキさんが居た方が良いかもしれないですね」
リッカもそう言ってくれる。
そういえばロキ、リッカと初めて会った時、後何年かしたら物にしたいみたいに言ってなかったっけ?
……待てよ。
聖騎士に変身すれば、体型から何からある程度変えられるよな? これは……。
「これは交渉材料になりそうだ」
「良くねぇ事考えてんなイーフェ」
「いや、今後の為には必要な事だ。
何はともあれ、今日の所はこの辺にしとこうか。
最後にポイントだけ見てみるか」
モニターを操作すると、現在のポイントは275.7と表示が出てきた。
2.7倍にまでなったか。
「アレ? そう言えば俺全く増やしてなくね?」
「今気づいたのかよ」
やべぇ。
今のままじゃ、ただのギャンブル好きの足手纏いだ。
料理でも足手纏い状態なんだから、明日は挽回しねぇと。
だが、まずは後で明日ロキに来てもらえるか交渉してみるかな。
もしかしたら、本当にギャンブル強いかもしれないし。
まぁなんにせよ、明日のギャンブル……本気でやる気になってきたぜ!