のんびり閉鎖空間 〜ランダムで出現するキャラ達と日常は過ごせるのか?〜 作:賭博馬鹿2号
「来たぞ、賭博部屋だ!」
片付けを終えた俺達は、賭博部屋に来ていた。
「やれやれ浮かれてるねぇ」
「にしても、リッカよぅ。
さっきゴミ処理機は本当に凄かったなぁ!」
「そうですね!」
片付けの際、俺達は生ゴミを処理する為、件のゴミ処理機を使った。
ロキが言ったような手順でボタンを押したのち、蓋を開けてみると、本当に中のゴミが跡形もなく消えていて、あれには本当に驚いた。
機械のサイズはかなり大きいので、大抵のゴミは1回で処理出来そうだし、今後不便する事はないだろう。
確かにアレは凄かった……凄かったのだが、今はそれよりもだ。
「さぁ、ギャンブルだ!
ロキさんもやりますか?」
「僕はまず様子を見るだけにするよ」
「おい、おっさん。せっかく来たならやれよな?」
「良いじゃないか、自由だろう?
それに、目的は1000ポイントに到達することなんだ。
無闇にやればいいものでもないよ」
む、それは一理あるな。
まぁ、構わずやるけど。
「しゃねぇ。ならロキのおっさん以外で分けるか。
俺とリッカが100ポイントずつ。
イーフェは50ポイントな」
「おい待て、スピードワゴン!
なんで、俺だけ半分なんだよ!」
「お前、昨日最後36.5ポイントだったろうが!
これでもおまけしてんだから、ありがたく思えよ!」
くっ、昨日の俺の最終ポイントを覚えてたか。
絶対ポイントは平等に分けられるとアテにしてたのにぃ!
くそおおおおおおお!
ま、いっか♪
俺だけポイント50で配った事、後悔させてやる。
爆勝ちしてから、なろう系みたいにもう遅いと言わんばかりの状態にしてやるぜ。
楽しみだ。スピードワゴンが俺に泣きつく姿を見るのは!
「うーん、イーフェがニヤけてるけど。
僕はもう展開が分かった気がするな」
「どういう意味ですか、ロキさん。
俺が勝つという予知ですか? ありがとうございます」
「その前向きさだけは見習いたいよ」
さて、決勝までは時間があるが、競輪の今のレースはっと。
「何? もう決勝の投票時間?
昨日より時間の差が大きくないか?
もしかしてこれって、時間が滅茶苦茶だったりしないか?」
俺はモニターの競輪メニューから、改めて操作説明を見てみた。
「……マジか」
それで分かった事は、この賭博ルームのモニターは賭けたいレースへの切り替えが可能という事である。
いやそれだけなら、ごく普通だ。
問題なのは”別時刻のレース”に賭けられる所である。
つまり、今俺がやろうとしている桜花賞決勝にも賭けられるし、その1ヶ月後のレースに賭ける事も出来る。
現実ではあり得ない時間の滅茶苦茶さだ。
ただし、賭けられるレースは選択肢に入っているものだけ。
そして、1度賭けたらレース終了までレース切り替えは出来ないようだ。
まさかこんな機能があったなんて。
操作説明にあるから、別に隠し機能でもないんだが、初見だと気づかんなこれは。
「このレース選択、出走選手が被るレースは出てこないだろうな。
なにせ選手の過去情報を見れば、レース結果が分かって当てられる事になる。
だが、それでもヒントは多くなるか?
これは面白くなってきたなぁ」
多分、他のギャンブル。
競馬、競艇、オートでもこのシステムは有効だろう。
いやでも、競馬はどうなんだ?
日を改めた2つのレースで、出走する騎手が全く被らないとか珍しいよな?
まぁ、その辺は後で見るとして……。
「ひとまずは桜花賞決勝だ」
新たなシステムを知った俺は、ひとまず目当てのレースの買い目を考える事にした。
◇
「スピードワゴンさん」
「どうしたぁリッカ?」
「今、イーフェさんは一体何をやっているんですか?」
リッカは不思議そうに、モニター前のイーフェを見つめてそう言った。
彼女が不思議がるのも無理はない。
「本線はあえて外して、3から行くか?
これなら配当が良いぞ〜。
つーかこれ、レース選択以外にも隠し機能とかないかな〜。操作説明、操作説明っと。
何!? レース映像は普通は映らないような視点に切り替える事も出来るのか!
どれどれ……選手視点映像、選手の後方が分かる映像なんてのもあるのか! 場内全体映像ってのも気になるな?
なるほどおもしろ!
でも、予想には関係ないよなぁ。
ん、この機能は?
ほう! こりゃいざって時に……」
イーフェはモニターを見ながら、このような独り言を喋っていたのだから。
しかもその顔はニヤけヅラであり、まさに不審者のお手本かのような振る舞いである。
「あんま触れてやるんじゃあねぇぜ、リッカ。
あいつはギャンブルが関わると、まともな行動を取れなくなる体質なんだ」
「体質!?
昨日から思っていましたけど、変わった人なんですね?」
「リッカにまで言われたら、イーフェもお終いだね。
さて、君達はどうするんだい?」
ロキは2人にそう問いかける。
それに対して、スピードワゴンが少し頭を捻ってからこう答えた。
「俺はバカラでもしてやっかぁ。
地域によってルールが違うと聞いた事はある。
だが、俺が知ってる物と大体同じだろうから問題はないと考えるぜ!
リッカはどうする?」
「私は、少しでもコインが確実に増える物が良いと思ってます!」
「少しでも確実に増えるぅ?
へへ、そんな賭博ねぇよ!
確実がないのが、ギャンブルだからな。
アテがねぇなら、ひとまず自分でピンと来た物をやるのが良いと思うぜ!」
「うーん……?」
リッカはカジノを見渡すが、どうもピンとくる物がないようだ。
そも彼女からすれば、やり方の分からない未知の物だらけなので、それも仕方ない事である。
「ま、ゆっくり選ぶんだなぁ。
そういうのも賭博の楽しみ方の1つだぜ!」
そう言って、スピードワゴンはバカラの方に向かって行った。
「どうしよう……」
「スピードワゴンも肝心な所は不親切だね。
どれ、まずは僕がこの部屋のカジノゲームの内容を軽く教えてあげるとしようか」
「本当ですか!? ありがとうございますロキさん!」
「でも、賭けるのは君だよ」
「勿論です! 私のブローチですから。
皆さん、私が聖騎士の力でドアを破る事を期待して頑張っているんですから! 私ももっと頑張らないと!」
「約1名、ただギャンブルやりたいだけの者が紛れてる気がするけど。まぁ、良いか」
それに、そもそも聖騎士の力とやらで、この屋敷中にある開かずの扉が開くとも思えない。
本気で期待しているのは、スピードワゴンくらいだろうなと内心思いつつ、ロキはカジノの説明を始める事にした。
「じゃあ、まずブラックジャックって書いてあるそこの台だけど……」
真剣な表情でそれを聞くリッカ。
区切りの良い所まで話を聞くと、彼女はこう言った。
「なるほど、さすがはロキさん。
分かりやすいです!」
「そうかい?」
そう言われて、ロキは内心こう思った。
昨日に続いて、自分は何をやっているんだろうと。
こんな益もないような説明役を親切に買って出るのは、柄でないはずなのにと。
「なら、あっちにあるのは?」
「あぁ、あれはスロットマシーンと言ってね……」
いや、これはブローチでリッカを好みの姿に変身させる為だ。
その為にポイントが必要だから、説明をしてるんだ。
自分にそう言い聞かせ、ロキは説明を続ける。
「なるほど絵を……。
これ、眼が良ければ確実に当たるんじゃないですか!?」
「残念ながらそうはいかないよ。
レバーを引いた時点で、揃う絵柄はある程度決まってるんだ。
だからハズレの時は、どのタイミングでボタンを押そうと確実に揃わない」
「えぇ!? じゃあなんで回るんですか!?」
「演出を楽しむ為だよ。
当たり外れがすぐに分かったら面白くないだろう?」
「た、確かに! すぐに分かったら面白くないです!」
ロキは思う。
本当に何も知らない女だ……と。
だがその一方、リッカが何も知らないという事に対し、別に不快な気持ちはしていない。
やはり今の自分はおかしい。そんな事を考えながら、ロキはリッカを見守る。
「これ少しだけやってみますね。
ありがとうございます、ロキさん!」
そう言って、リッカはロキに笑いかけた。
「……あぁ、どういたしまして」
……その純粋な笑顔に何かを感じた訳ではない。
動かされる事などある訳がない。
だが、この賭博。
いざとなったら、自分が出るのも良いかもしれないと。
ロキは、そう考えるのであった。