のんびり閉鎖空間 〜ランダムで出現するキャラ達と日常は過ごせるのか?〜 作:賭博馬鹿2号
馬術。
それは、パリオリンピックの初老ジャパンで話題になった事もあるスポーツの1種だ。
初老ジャパンが銅メダルを取ったのは、馬場馬術・クロスカントリー・障害馬術の3種を馬術を行う総合馬術。
そして今、俺の目の前にあるのは、その中でも花型的存在である障害馬術のコースである。
障害馬術とは、砂のコースの中に置かれた様々な障害物を、馬に乗って飛び越えていく競技だ。
基本的に1頭ずつ走り、走破タイムで競う。
要は、陸上の幅跳びなんかと同じ競い方だ。
競馬とは、また違った楽しみ方が出来る奥深いスポーツである。
俺は世田谷の馬事公苑で見た事があるが、中々に面白かった。
「マジかよイーフェ!
こんな室内のこんな広い空間が、全部馬のスポーツの為だけにあるってのか!」
「そうだぜ、すげぇよな。
ま、普通は屋内馬術と言ったら馬場馬術なんだけどな。
だが、このコースはどう見ても障害馬術用だ。
室内の障害馬術なんて聞いた事はないが……この屋敷だしなんでもありか」
「そんな事より、馬術のコースだけがあって馬がいない事の方が僕は気になるけどね」
ロキの言う通りだ。
肝心の馬はどこにも見当たらない。
まぁ居たら居たで世話が大変だから、ある意味、居ない方が助かるっちゃ助かるんだが。
なにせ、馬を育てる厩務員は重労働と聞くしな。
「イーフェさん、この馬もどき出現ボタンってなんでしょう?」
「え、なにそのボタン」
リッカにそう言われて、振り向いてる。
見ると、部屋の隅の壁の方に確かに馬もどき出現ボタンの文字があった。
「…………押したい人いる?」
「はい!」
リッカは手を挙げた。
しまった忘れてた。
リッカは、怪しいワープゲートの先にも何があるか気になって、突っ込んでいく様な性格だった。
「じゃ、じゃあ押してみて?」
俺は警戒しながら、距離を取る。
「イーフェマジか!? 止めた方が良いんじゃ」
「押します!」
うわぁ、押される!
やべぇ。自分で押してみてって言っときながら、怖くなってきた。
なんだよ、馬もどきって!
普通に得体が知れなくて怖えよ! モンスターでも出るのか!?
「顔が青いぜイーフェッ!
おい、本当は止めたかったんじゃねぇか!?
リッカッ! 待っ」
「イーフェさん、馬もどきってアレですかね?」
もう押したのかよ!
仕方ない。俺は、恐る恐るリッカの指差す方向を見る。
すると、そこには……。
「馬ロボじゃねぇーか!」
JRAがイベントの時に展示する馬ロボの白馬バージョン、まんまのやつが馬場の中にあった。
どの位まんまかというと、鞍の所にJRAのロゴが何の捻りもなく入っている程だ。
なんだ、そういう事か。
驚かせやがって……。
「ごほん! 騒いでごめんリッカさん。
あれは、馬に似た仕草をするカラクリでね。
頭や目が本物そっくりに動く、高度な人形みたいなものなんだ。
ただ、歩いたり走ったりはしない。
だから、馬もどきって事だと思うよ」
「え、でも歩いてますよ」
え? ……え?
「マジじゃん」
どう見ても馬ロボのその白馬は普通に歩いていた。
えっ、どういう事? あれ本物の馬なの?
「ふむ、これは」
「ろ、ロキさん! なにか分かったんですか!」
「簡単に言えば、アレは君の言うとおりのロボットさ。
ただその性能は限りなく本物の馬に近い。
身体能力、頭脳、全て本物と同等になっていると見て良い。
僕のホムンクルスには遠く及ばないが、中々にやるね」
なるほど。
まぁ、こんな空間を作る屋敷の主なら出来ない話じゃないか。
すると、様子を見ていたスピードワゴンはこう言った。
「俺も馬は乗るから、本物の馬との違いは分かる。
やはり機械ッ!
アレからは生き物の匂いがしねぇ!
だがッ、あの動きッ!
あれは、馬特有の癖まで完全再現してやがるッ!
馬にはそれぞれ癖がある!
その個々の癖まで再現してやがるんだ!
お手本のような動きをしてねぇんだあの機械は!
動きだけ見りゃ、ハッキリ言って区別がつかねぇ!」
馬それぞれに癖が、か。
それは偶然にもジョジョ7部の方でdioが言ってた事だな。
一巡後の別人とはいえ、因縁ある相手と同じ発言をするとは……。これまた奇妙な因果、か。
「ん? どうかしたかイーフェ」
「いや、何でもない。
それより、機械なら世話の必要はないわけか。
その点は良いな」
コンセントなしのデスクトップPCが部屋にあったくらいだし、あの馬ロボも充電不要の可能性が高い。
であれば手間なしだ。
「要はこの部屋は馬ロボを使って、障害馬術を遊べる部屋って訳か」
悪くないな、馬術は興味あったし。
「遊べるって……君馬乗れるの?」
「え? 乗ったことないですけど」
「イーフェ、馬は一朝一夕で乗れるもんじゃねぇぜ?
しかも、こんな障害を飛び越えるなんて相当な修練が必要だ。
あの機械は動きだけなら、本物とまるで同じッ!
素人が障害物を飛ぶのはまず不可能だぜ!」
まぁそりゃそうか。
でも、本物と差のない動きの馬ロボに乗れるってだけでも、普通に楽しめそうだな。
「なら障害物を撤去して、普通に乗ってみるか。
素人でも、馬に乗って歩くくらいなら出来るだろ」
やった事ないけど、体験乗馬とかだと歩くのが定番と聞くし、歩く位なら出来る……はずだ。
だが、歩くのには馬場の障害物が邪魔だな。
「障害物撤去ボタンとかあるかな」
「んなのある訳……」
「ありますよ、イーフェさん!」
「マジかよリッカぁ!」
やっぱな。
この屋敷の主なら用意しててくれると思ったぜ。
リッカの方を見ると、先程とは異なる壁に「撤去」「設置」「馬場整備」の3つのボタンがあるようだ。
いやこれ、便利すぎんだろ……。
馬場整備なんてスプリンクラーで水を撒いた上、車を何台も使って、数十分でやる作業だぞ。
それをボタン1つで?
馬術関係者が全力で欲しがりそうな施設だ。
ひとまず撤去を押してみよう。
「おぉすげぇ」
みるみる内に障害物が地中へとしまわれて行く。
そうして、シンプルな砂だけの馬場になった。
競馬で言う所のダートというやつだ。
そこに残されたのは、馬ロボだけである。
「よし!
みんな、とりあえず乗ってみないか!?」
「おいおい!
乗るのは良いけどよぉ、これ脱出に繋がるのかよ?
隠し扉探した方がよくねぇか?」
ちっ、バレたか。
俺はまだそんなに脱出する気はないってのに。
「今は繋がるか分からない。
だが、スピードワゴン。
思い出してくれ、賭博部屋でのミッションを。
無関係に見えたダーツの成績でポイントが手に入っただろ。
ここの行動ももしかしたら、良い方向に繋がる可能性があるかもしれない」
「まぁそりゃあそうだがよぉ。
ここは隠し扉の方が先決な気がするぜ」
ま、それもそうか。
スピードワゴンが気になるなら、探すのもありだろう。
「分かった。悪かったなスピードワゴン。
じゃあ、まずは……昼飯だ!」
「おいそっちかよ!
確かにそろそろ作り始めた方が良い時間だけどよぉ!」
「そして、担当は勿論スピードワゴンだぁ!」
「お前もやれよ!」
「私、手伝います!」
「おぅ、助かるぜリッカ!」
「俺はお湯を沸かすぜ!」
「いらねぇよ!
お湯だけ沸かして何の意味があるんだよ!
もっと役に立つ事やれよ!」
一応意味はあるだろ意味は!
インスタントのスープならそれでほぼ完成だぞ!?
内心そんな事を思いつつ……。
「これが俺の限界だあああ!」
「開きなおるんじゃあねぇ!」
なんて会話をしながら、俺達は一旦キッチンに向かい、昼食を取る事にするのであった。