のんびり閉鎖空間 〜ランダムで出現するキャラ達と日常は過ごせるのか?〜 作:賭博馬鹿2号
「なるほどね、状況は大体分かったわ。
これはまた厄介な事になりそうね」
廊下で屋敷に召喚されたばかりのゆりねと会った俺達。
まずはいつもの食事スペースに行き、お互いの自己紹介をすませると、俺の方から今置かれている状況や俺がゆりねの事を知っている理由などを説明した。
すると、ゆりねが軽く頭を抑え、やれやれといった様に先の台詞を言ったのである。
だが……うん。これは聞いた方が良いだろう。
「花園さん、あなたの力なら屋敷の扉を壊せるのでは?」
そう、花園ゆりねは滅茶苦茶に強い。
リッカが壊さない扉だろうと壊してくれる可能性は高いのだ。
「イーフェ、だったわね。
さっきの話だと、あなたの世界では私や邪神ちゃんの日常生活を舞台にした漫画やアニメ化があって、そこにはちゃんと私の過去エピソードはない。
そこは間違えないわね?」
「はい、そうですね」
さっき話した時、プライベートをどれくらい知っているのか、殺気剥き出しで聞かれて怖かったからな……。
こればっかりは正直に答えたぞ。
まぁ本編で過去エピソードが全く出ない訳じゃないが、精々中学時代のちょっとした話とかなので、ゆりねの過去はほぼ知らないに等しい。
「という事は、邪神ちゃんメインの漫画で私の事をあまり知らない可能性があるし、言っておくわ。
私ね、基本的に物を壊すのは良くないと思っているの」
「ええええええ!?」
邪神ちゃんは破壊しつくすのに!?
「た、確かに!」
「待って! リッカさんも納得しないで!」
リッカまでそっち側に行かれたら、もう誰がドア壊すんだよ!
「ゆりねっていったか。あんたよぉ!
そんなあまっちょろい事言ってる余裕、今はねぇんだぜ!
なにせここは閉鎖空間ッ!
ドア程度破ってでも俺達は出なきゃあなんねぇんだ!」
「僕もスピードワゴンと同意見さ。
ゆりねくん、君、ちょっと考えが甘すぎないかい?」
スピードワゴンとロキはまともだ。
そうじゃなきゃ困る。
「勘違いしないで下さいロキさん。出るのを諦めた訳じゃないです。
この屋敷の主は私達に敵意がない。
イーフェの話だとそうだったわね?」
「あ、あぁ、俺の主観だが」
「でも私もそう思いましたよ!」
リッカもそう言ってくれる。
そう敵意はないはずなのだ。だからこそ未だに目的が見えず、不気味でならない。
「そして屋敷の使用人の奏音と話した時には、出す気がないとは見れなかったんでしょう?」
「まぁ、はい」
それも言動からするにというだけで根拠は薄いが、恐らくそうだ。
「なら、出る方法がきちんと用意されているはずよ。
扉なんか壊さなくても良い様な方法がね。
まずは正攻法で行きましょう。
ダメになってどうしてもって時に壊せば良いのよ」
なるほど。こういう時に正攻法で、というのはゆりねらしいといえばゆりねらしい。
「と、いうわけで、さっき話してもらったミッションとやらの内容を見るのが先決だと思うわ」
結局そうなるのか。
元々、ミッションの内容を見ようと思って、パソコン部屋まで行ったんだ。
少し順番は変わってしまったが、やる事は変わらないわけだな。
「なるほどな、なら賛成だぜぇ」
スピードワゴンも同意してくれた。
さてこれは行く流れかな。
「にしてもよイーフェ?」
「ん?」
「ゆりねにドアを破壊してもらおうって話だったが、土台そんな事不可能なんじゃあねぇか?
外見だけ見れば、普通の女にしかみえねぇぞ?」
なるほど、匂いで異常さは分かっても戦闘力は分からないか。
「その通りよ。私は普通の女子大生だわ」
そして、ゆりねもそう主張するつもりだ。
いやこれに関しては、本気で言ってるのかもしれない。
「いや、普通の女子大生な訳がないでしょう。
えぇと、花園さん。
俺の知ってる限りの知識は話していいんですか?」
「別にいいわよ。
私と邪神ちゃんの日常生活に関して知ってるってだけでしょ?
好きに話していいわ」
「なるほど、なら遠慮なく」
ゆりねに関しての詳細を俺はざっとみんなに説明した。
すると……。
「か、神を一撃でだとぉ!?」
「あれは事故で当たっちゃっただけで悪いと思ってるわ、スピードワゴン」
まず、リエールの一件を聞いたスピードワゴンは驚きを隠しきれなかった。
「お、お仕置き……一体どんなことを」
そして、リッカはというと。
俺が邪神ちゃんにお仕置きをしていると伝えた時から、恐れたような表情を浮かべていた。
「それはその……リッカみたいな子には言いにくいわね
ただ、貴女みたいな子にはなにかしないから安心して」
「わ、分かりました」
「あと、敬語じゃなくていいわ。
話しやすい感じで良いし、好きに呼んで」
ゆりねはにこやかにそういった。
子供相手なら、相手が実年齢何歳の人外だろうと優しいのが花園ゆりねという人だ。
人間で、しかも恐らくゆりねより数歳は年下であろうリッカに優しいのは当然と言っていい。
「そ、そうなの!?
うわぁ、良かった。
私この屋敷に来てからずっと敬語でしか話せてなかったから。
歳の近い女の子が来てくれて嬉しいよ!」
「私も貴女みたいな子がこの空間に居てくれて良かったわ」
うおぉ、いい空間が出来上がっている。
百合好きが喜びそうないい空間が!
後、この場にリッカの世界のクレレが居たら、嫉妬しそうな空間が!
「おいどうしたイーフェ、その表情は?」
「い、いや、なんでもない。
それより、ロキさん。無言ですけどどうしたんですか?」
「なに、世界は広いと思ってね。
ミッドガルドの様な世界に複数種の悪魔に天使、さらには神までも暮らしているとは。
まるで、アースガルドとミッドガルドが融合しているかのような世界だ。
かつての僕なら、本気で行きたいと思ったかもしれない、と今感慨に耽っていたんだよ」
かつての、か。
やはり、もう行きたいという気は消滅してしまったんだな。
「さて、じゃあそのパソコンの置いてある部屋に向かいましょうか。
リッカ、案内して」
「うん、分かったよ。ゆりねちゃん」
一瞬で距離が縮まってる!?
馬鹿な、コミュ障の俺と違いすぎるだろ……!?
「なぁに急に絶望した表情浮かべてんだお前は」
「なんでもない、己の無力さを痛感していただけだ」
「今更かい?」
「おい、ロキさん!?」
「あぁ、そうだな」
「スピードワゴンまで言うなよ!」
「なに、俺のは半分冗談よ。
だがよイーフェ。よく考えてみろよ?」
「は? なんだ?」
「そもそも、俺とお前の初めの交渉内容。
それは、お前が自分の居た時代の知識を教えるってもんだったよな?
だが、ゆりねが出てきた今、別にお前から教わる必要がなくなっちまった訳で……」
「あ」
マジじゃん!?
いや、ロキが居た時点で大分怪しかったけど、それでもまだロキは2009年までの地球の知識しかないから俺の立つ瀬はあった!
だが、完全現代人のゆりねに来られたら、俺の優位性完全になくなるじゃねぇか!
「ああああんまああありだあああああ!」
「別に見捨てるつもりはねぇがよぉ。
だが、さすがに出来る事増やしてもらわねぇと、俺も困るぜ?」
くっ、それはそうだ。このままだと完全ニート状態になってしまう!
何とかして今回のミッションで活躍しなければ、俺の屋敷内の地位を保つためにも!