のんびり閉鎖空間 〜ランダムで出現するキャラ達と日常は過ごせるのか?〜 作:賭博馬鹿2号
「何者か知ってんのかイーフェ!
教せーてよ! 教せーてくれよぉ!」
「良いぞ」
イーフェは簡単に知っている範囲で、原作の情報を説明した。
アニメ範囲外の事はあまり分からないが、ひとまず天界から日本に来ている天使の1人である事。
そして天界では優秀な成績を残したお嬢様で、根は良い子だが、少し腹黒な面もあると伝えた。
「なるほど、やっぱり天使なのね」
ゆりねは横から聴きながら、そう小さく呟いた。
「ところでさっきの瞬間移動はなんなの?」
ゆりねはイーフェの方を向きつつ、そう言う。
「神足通。
天使の瞬間移動技、だと思う。
作中に詳しい説明が無いから断言は出来ないけど」
「なるほどね」
「ただ気になる事もあるんだよ。
神足通をラフィエルが使う場面は無かったはずなんだ。
今いる屋敷の中で練習をした可能性もあるし、気にしなくて良いっちゃいいかもだが……」
「確かにちと気になるがよ」
スピードワゴンはそう言って、話に割って入る。
「ともかく、ラフィエルは瞬間移動をした。
と来れば、その目的は当然ッ」
言うまでもないが、といった風な様子で言葉を続ける。
「俺達に不正解を取らせ、聖杯を取る為だろうよ。
つまりッ、ラフィエルは俺達のゲームの事を知っているッ!」
「しかし疑問もあるよ」
ロキはそう言って、話に入ってきた。
「僕達全員に5万未満のポイントを書かせる。
あるいは全員に5万以上のポイントを同時に書かせる。
これが聖杯の条件なのに、すぐ逃げたらどちらにも誘導出来ないじゃないか。
さっきの衛宮士郎の時と同じ事さ。
僕達の意見が分かれるに決まってる」
「なるほど、確かにロキさんはさっきもそれ言ってたな。
……ん?
待て、今気づいたがその観点で言うと1人目の清姫って、もしかして、俺達はしてやられた可能性あるか?
どうなんだトウナ?」
「私は言えん。
そろそろ制限時間だ、早くしてもらおう」
◇
「さて、では回答を見せてもらおうか!」
イーフェ 10万ポイント
スピードワゴン 100万ポイント
リッカ 4万ポイント
ロキ 200万ポイント
ゆりね 66666ポイント
「これは見事にばらけたな。
なるほど、リッカだけ負け予想か。
理由を聞いて良いか?」
「はい! すぐに居なくなるって事は負けて悔しかったんじゃないかなって。
でもそれだけ優秀な天使さんなら、大きく負けてはいないと思うんです。
だから4万ポイントにしました!」
「存外によく考えているな。
で他のものは大方、逆張りでもしたか?」
「え?」
リッカが不思議そうに他のメンバーを見渡す。
イーフェが代表するかのように頷いた。
「あぁ、俺はそうだ。
ラフィエルは負けたのが悔しかった……と思わせる為にあえて神足通で逃げたんじゃないかな。
ラフィエルならするだろう」
「私には表情もしっかり見えてたけど、凄く悔しそうな顔をしながら技を使ってたわよ。
ただ……本気で悔しがってるかと言われると、ちょっと怪しかったわね」
ゆりねがそう付け加える。
すると、イーフェは安心した様子で軽く笑みを浮かべつつ、こう言った。
「そうか、花園さんのそれで確信したよ。
俺の思ってた事が正しいとね。
確かに神足通で逃げれば、俺達の意見が割れ、聖杯を目指す事は難しくなる。
だが、聖杯の事を貰えたら良いな程度の物に考えてたとしたら、話は変わってくる。
ラフィエルが望みそうな物といったら、多分彼女にとっての面白い暮らしだ。
その為になりそうな道具程度なら元のポイントの2倍、つまり10万ポイント程度で十分に揃う。
だから……俺は10万ポイントだ!」
「10万ねぇ。私はさすがに倍はないと考えたわ。
というか、スピードワゴンさんとロキさんはなんでそんな異様なポイントにしたの?」
2人は100万ポイントと200万ポイント。
つまり、20倍と30倍という事になるが……。
「簡単さ。
彼女は瞬間移動すら使えるんだろう?
天使の力で不正をして、賭博を当てる事が出来る可能性は高いじゃないか。
さっきイーフェが言っていた彼女の性格上、不正に躊躇いが起きるとも考えづらい。
それ以外の考えはイーフェとおおよそ同意見だね」
「俺もロキのおっさんとほぼ同じ考えだせ!
だがなぁ、俺はさすがに屋敷にある程度の不正対策はされていると読むぜ。
だが、それでも! 天使の力はある程度有効なはずッ!
100万ポイントッ! それくらいは行ってても不思議じゃあねぇ!」
ロキは平然と、スピードワゴンは自信ありげにそう言った。
「なるほどなるほど。
分かったぞ。さて、では次が最後だ!」
トウナは全員の考えに対して、次のヒントになるような大きな反応は示さず、進行を続ける。
そうして、最後の4人目は登場するのであった。
◇
「さて、最後だな」
トウナがそう言うと、早速最後の4人目がモニターの中に現れた。
長い日本刀を背負った青い長髪に和服の青年である。
「Fateの佐々木小次郎じゃん。
Fate率高いな」
「向こうにいるメンバーから、ランダムで決めたらそうなったんだよ」
「その向こうのメンバーとやらも気になるが……さて」
イーフェは画面に目をやる。
小次郎は満足げな表情で静かに歩いていた。
「あの満足そうな顔。
賭博に勝った……のか?」
「イーフェ、こいつの情報は?」
スピードワゴンに聞かれたイーフェは、知っている情報を簡単に全員に向けて伝えた。
「なるほど、性格に関しては大体思っていた通りだぜ。
……だがなぁ」
スピードワゴンは迷ったような表情を浮かべる。
「言いたい事は分かるよ。
スピードワゴン」
その様子を見て、声をかけたのはロキである。
「先の話を聞くにだけどね。
賭博に勝っていても負けていても、同じ様な反応をしそうな人物じゃないか。
元の世界では、聖杯に託す望みがない亡霊だったんだろう? しかも山門から動けず縛られていたと。
となるとポイントに興味はなく、やった事がない様々な賭博そのものを純粋に楽しむ可能性が高い。
だから、どんな残りポイントだろうとあの満足そうな顔で部屋から出てくる可能性が高いんだ。
すると、残りポイントは全く予想がつかない」
「一理あるわね。
そう言われると、今までで1番難しいかも。
でも……」
ゆりねはそう言うと、ポイントを書いた。
そして、隣のリッカにも話しかける。
「リッカはどう?」
「うーん、正直分かりませんけど……。
でも顔は勝った様に見えたんですよね」
「俺もリッカと同じく、勝った様に見えたんだよなぁ。
……よし、こうなったら決めたぜ!」
イーフェはポイントを書くのであった。
◇
「さぁこれがラストだ!
ポイントを見せてくれ」
イーフェ 70000ポイント
スピードワゴン 20000ポイント
ロキ 10000ポイント
リッカ 70000ポイント
ゆりね 55000ポイント
「ほぅ、なるほど」
トウナは全員の答えを見渡し、頷いた。
「勝ち予想がやや多いか。
イーフェとリッカが7万だな。根拠はあるか?」
「俺はない! 勝ってる気がしたからだ!」
「私もです!」
「そ、そうか……」
トウナは若干呆れた様子ながらも、次はゆりねの方に向き直った。
「花園ゆりねは5000ポイント勝ちと読んだ様だが、理由は?」
「景品ね。
さっきリストを見た時に高級酒とおつまみのセットが55000であるのを見たのよ」
ちなみに、ポイント交換は51000ポイント以上から。
つまり、始めに配られた5万から1000ポイントは勝たないと交換出来ない仕様になっている。
その為、この酒とつまみのセットは交換リストの中では安価な部類という事になる。
「そこそこ賭博も楽しめたし、後は屋敷でゆっくりお酒でも呑んで寛げば満足。
そんな風に見えたわ。
似た様なリアクションをする奴を見た事があるの」
「花園さん、そのリアクションってのはもしかして」
イーフェが聞くと、ゆりねは静かに頷き、こう返した。
「お察しの通り、邪神ちゃんの事よ。
あいつがギャンブルに勝つのは珍しいんだけど、たまにあるギャンブルに少し勝った時の邪神ちゃんと似た気配がしたのよ。
だから5000ポイント勝ちと読んだわ」
「やっぱりかぁ」
それを聞き、トウナは静かに頷いた。
「なるほど。
だがあの蛇悪魔の行動とあの農民の行動が合致するかは分からんが、良い考えだな。
さてでは、スピードワゴンとロキは?
「ヘッ、奴はおおよそ負けて尚満足って所だろうよ!」
スピードワゴンは、堂々とそう言うがその声はいつもの大声に比べるとやや小さく、少し自信がないようにも取れる。
「……いや、正直な話をするぜ。
この俺でもわかんねぇ。
奴の心は澄んでいて、一切乱れがねぇんだッ!
イーフェは農民の亡霊つってたが俺にはとても信じられねぇぜ!
奴はかつてジョースターさんが戦ったタルカスやブラフォードの様に1度死した英雄に違いねえ!」
「いや、マジで農民だって。
あの世界の山育ちがおかしいだけだから」
「さすがにそれは番外編だからでも許されねぇぜ! イーフェ!」
「ちゃんと本編の設定だわ!」
「やれやれしょうもない事で揉めてるね」
横からロキが呆れながらそう言った。
「だが、そういう僕の方もしょうもない適当なポイントの決め方をさせてもらったよ。
小次郎とやらの考えは分からなかった。
だから、今回は本当に適当さ。
この問題は捨てさせてもらうよ」
「ふむ。
分からぬ事に見切りを付けるのもまた良しだろう。
さてでは……」
トウナはもう1つの屋敷が映るモニターの電源を切った。
そうして。
「結果発表へと移ろうじゃないか」
いよいよ、この戦いの勝者が今明かされようとしていた。