のんびり閉鎖空間 〜ランダムで出現するキャラ達と日常は過ごせるのか?〜   作:賭博馬鹿2号

32 / 32
番外編6 結末とドロップキック

神保町。

神も天使も悪魔も吸血鬼もキョンシーも居るこの町で、その全てから一目置かれる者がいた。

花園ゆりね。

神保町駅近くのキメラ大学(※リアルでの明治大学)に通い、放課後は秋葉原の喫茶店「姫武者」でバイトをしている19歳の普通の女子大生である。

その残虐性と戦闘力さえ除けば、だが。

 

「なーんで、みんなして私の家に集まるんですの!」

 

そんな彼女とアパートで共同生活をする下半身が蛇の邪神。通称邪神ちゃんは今怒っていた。

神保町に住む人外の多くが、押し寄せて来ているからだ。

理由は言うまでもない。

人外達にとっては、この町の顔とも言える花園ゆりねが突然、数日前から姿を消していたからだ。

 

「もう駄目ですわ……。

花園さんがいなくなったら、わたくしはリエール様に殺される……」

 

ゆりねと同じ程の背丈をした桃色ツインドリルの髪の少女……天使ぴのは嘆いていた。

 

「なら今、逆に殺ってやりますわ!

死ねぇ、リエール様ああああ!」

 

そう言って、目の前の130cmほどの金髪の小さな子供に対して、殴りかかった!

 

「落ち着け、ぴの!」

 

小さな子供、もとい、女神リエールはそう言いながら、邪神ちゃんの手を引っ張り……。

 

「おい!

リエールさん私を盾にするなぶわあああ!!!」

 

ぴのの攻撃で邪神ちゃんは1度くたばった。

 

「1度状況を整理しましょうか」

 

そう言ったのは、ゆりねよりも背が高い黒髪赤目の美女。ヴァンパイア族真祖の姫エキュートの側近 アトレである。

力自慢のミノタウルス族の悪魔、邪神ちゃんの幼馴染であるミノスと互角の実力者だ。

 

「そうだな。

このまま、花園ゆりねに居なくなられては困る。

いずれわらわ達、ヴァンパイア族の仲間になってもらうのだからな」

 

そう続けるのは、アトレの主。

背丈は140cm足らずの幼い少女、ヴァンパイア族の姫エキュート。

邪神ちゃんに物理的ダメージを与える事が出来ない程度の弱さで、間違えなく神保町の人外中最弱の少女だが、真祖ゆえに一般的な吸血鬼の弱点がほぼ効かないという特性を持ち、呪いを扱う事も出来る。

 

「つーか、待てお前ら!

こんなに急に新キャラ出て来たら、原作読んでない読者に優しくないだろ!

せめて半分くらい帰れよ!」

「読者の事を考えるような作者なら、こんな番外編書いてないと思うよ」

 

呆れ顔でそういう銀髪の小柄な少女。

彼女は邪神ちゃんの恩師ペルセポネと冥王ハデスの娘、通称ペルセポネ2世だ。

……ちなみにこれだけ紹介しても、この場にはまだまだたくさんの人物が足並みを揃えて大勢いる。

 

「本当に帰れお前ら!

漫画じゃないから、いちいち説明するの面倒なんだよ!

とりあえずマミーと先生はいないけど、まず天使どもとその親玉のリエールさんは帰れ!

それから……。

って、ん? なんだこれ?」

 

その時、突如邪神ちゃんの頭上に1枚の手紙が降ってきた。

 

「どれどれ……」

 

その手紙の内容は……。

 

 

「私の叶える願い事は……邪神ちゃんに手紙を送って、その手紙を読んでる邪神ちゃんの様子を見る事」

「ん? それだけか?」

 

トウナは思わず口を開いた。

 

「さっき1分間元の世界に戻ったんだろう?

その時に手紙くらい書かなかったのか?」

「いえ。また屋敷に戻る気はしたから、しばらく居なくなるって書き置きはしておいたわよ。

気づいてるか怪しいけど。

でもね。

私が送りたいのは、ただの手紙じゃないの。

トウナ、イーフェ、スピードワゴン、ロキ。

みんな協力してくれないかしら?」

 

ゆりねは、微かに微笑んでそういうのであった。

 

 

「くっふー! ゆりねめええええ!」

「ど、どうしたの邪神ちゃん!?」

 

そう言って駆け寄るのは、紫色の髪をした邪神ちゃんの幼馴染メデューサ。

 

「おう、ATM。私はもう終わりだぁ」

「邪神ちゃん!?」

「どうしたんだよ、そんな大袈裟な」

 

邪神ちゃんのもう1人の幼馴染ミノスが近寄り、手紙の中身を見る。

その内容は……。

 

“邪神ちゃんへ

突然いなくなってごめんなさい。

実は夢の異世界召喚生活をする事になったの。

今はゆりねキングダムを築き上げている最中だわ。

この世界を私のものにしたら、次は邪神ちゃんの元に行くから覚悟しててね。

 

PS.私が大切に貯めてた貯金箱のお金、また使ったわね?

2度目も勿論許さないわよ、分かってるわね?”

 

その手紙には写真も同封されていた。

そこには、豪華な屋敷の中でゆりねに対し土下座をする3人の男と1人の少女が写っており、ゆりねが権力を手にした事の象徴のように見えた。

 

「こ、殺される!

異世界から来るゆりねキングダムの力で確実にぶっ殺されちまう!

うわあああああ!!!」

 

邪神ちゃんは絶望した。

 

 

「ブハハハハハハ! やっぱり邪神ちゃんは最高ね!」

 

ゆりねは涙を出しながら、邪神ちゃんが絶望する様子を見て大笑いしていた。

 

「や、やべえなゆりね」

 

大笑いの様子にさすがのスピードワゴンもドン引きである。

 

「まぁ、土下座写真に協力した僕達も僕達だけどね」

「あの威圧感は半端じゃなかったからな……。

本当に作れるんじゃねぇか、ゆりねキングダム」

 

イーフェは少しビビりながら、そう呟く。

そして……。

 

「花園ゆりね……想像以上だな。

この程度の聖杯の使い方だったのは良かったと見るべきか」

 

トウナも大笑いするゆりねを見ながら、引いた様子でそんな事を言っていた。

 

「戻りました!」

 

そんな時、リッカが屋敷に帰ってきた。

 

「あれ!? こっちは全然時間が進んでない?

というかゆりねさん!? どうしたんですか?」

「ふふ、ちょっと傑作すぎたのよ。

はー面白かった。

面白かったから、帰ったら貯金箱の件は腕の1、2本程度ですませてあげましょう」

「ゆりねさん!?」

 

さすがにヤバい事を感じとったリッカは困惑する。

しかし、ゆりねにとってはこれが平常運転である。

 

「こほん。それよりリッカ。

向こうの屋敷に行って来たんでしょう?

どんな感じだった?」

「3日間居たんですけど、その……ラフィエルさんの聖杯での願いでちょっと大変な事もありまして。

でも向こうの屋敷の皆さんとは、仲良く出来て楽しかったです!」

「そういえば、結局なにを望んだんだラフィエルって」

「そ、それは……本人の為に言わないでおきますね」

 

マジでなんだったんだと、イーフェは考えていると。

 

「そういえば、イーフェさんの事を知っている人がいましたよ」

 

リッカはイーフェに対し、そう言った。

 

「なに? また俺のオリキャラか?」

「いえ、そうではなくてトーシュエンという人で」

「マジか」

 

それは、元の世界でのイーフェの友人の名であった。

 

「あのロケットランチャー? でトーシュエンさんを殺したって本当ですか?」

「いや何それ怖ッ!

知らないんだけど!? やっぱ俺の知ってるやつじゃなさそうだわ!」

「いやイーフェ。

それは合っているが間違っている。

あの屋敷にいるのは、お前の知るトーシュエンの並行世界の存在。

まあもっと言うと、”蝮の奇妙な日常”という作品に登場するトーシュエンだな。

実はこの作品は、同じハーメルンの作品同士でのクロスオーバーの番外編だったわけだ」

「後半、トウナが何言ってんのかよく分からんが……。

まぁとにかく、ここにいる俺はあいつを殺ってはないぞ」

「そ、そうですよね。

イーフェさんがそんな事をする訳ないと思ってました」

 

リッカは安心するように息を吐いた。

 

「さて、そろそろお前達は元の屋敷に戻る。

それと、ゲームに付き合ったお礼だ。

元の屋敷に脱出の手がかりをおいておいた。

これで早く出れるだろう。

ではな!」

 

そうして、トウナは姿を消した。

 

「あっ、待てトウ」

 

イーフェが言いかけたその時。

 

「あれ?」

 

ふと、意識が途切れるのであった。

 

 

「で、結局また元の屋敷に来たわけね」

「みたいだな」

 

意識が戻ると、再び全員元の屋敷に戻っていた。

扉も戻っている。

 

「手がかりを置いといたつってたよな?

それを探して、脱出しようぜ!」

「そうね。

邪神ちゃんにあんな手紙送ったし、早く戻らないと」

 

スピードワゴンとゆりねはやる気を出す。

 

「やれやれ、やる気だね。

僕は出ても行く場所がないんだけど」

「なら向こうの屋敷に行きましょうよ!

3日居ましたけど、私は馴染めましたよ!」

「うーん。

なぜか嫌な予感がするんだけど気のせいかな」

「なんにせよ、まず出る手段を探さないと始まらないな。

だが、それはトウナが用意してくれたはずだ」

 

イーフェはそう言って、拳に手を当てる。

 

「後は進むだけだな。

よし、やろう! 手早く脱出するぜ!」

 

……その後、イーフェ達は屋敷を脱出して元の世界に帰り、ロキはもう1つの屋敷に行く事になったんだとか。

ちなみに邪神ちゃんは。

 

 

「ただいま邪神ちゃん」

「ひー! ゆりねが帰ってきたぁ!

もうおしまいですの! ゆりねキングダム100万の兵の力で私はジエンドですの!」

「なに馬鹿なこと言ってるの?

それより疲れたから、ご飯作って」

「ふ、ふふふ!

油断させる気だな、そうはいきませんの!

喰らえゆりね! 

ロイヤルコペンハーゲンかーらーのー!

タングルティーザー!」

 

叫びながら、正拳突きからのアッパーをゆりねに繰り出す邪神ちゃん。

しかし……。

 

「遅いのよ」

 

ゆりねは簡単にそれをかわした。

だが、邪神ちゃんは諦めない!

 

「馬鹿め! 本命はこっちだ!

ドロップキック零式!」

 

ゼロ距離からのドロップキックがゆりねに放たれる!

……しかし。

 

「その技じゃ殺せないって、原作20巻でもうやったでしょ」

 

ゆりねはそれもあっさりと回避した。

 

「ば、馬鹿な!

前は少なくとも当たったはずなのに!?」

「あのねぇ、油断してなきゃあんたの攻撃なんか当たる筈ないでしょ?

さて……。

ご飯作ってって頼んだのに、殺そうとしたわね?

しかもまた貯金箱からお金盗んだし、もう殺すしかない」

「ま、待ってくれえええ!

手と足が勝手に滑ったんですの!

私は悪くねぇですの!」

「良い加減、言い訳が見苦しいわよ。

もういいわ。夕食は私が作る。

蛇肉料理をね」

「ひぃ!?」

 

 

「うーん!

スピードワゴンの料理も良かったけれど、私の料理も中々良いわね」

 

ゆりねは瀕死の邪神ちゃんを見ながら、満面の笑みで蛇肉入りすき焼きを食べていた。

 

「こ、殺せ……」

「あら?

簡単に死んではダメよ、ふふふふふ!」

 

…………こうして、神保町にいつも通り平和な日常が戻ったのであった。

 

「どこがだああ!

誰かこの女をどうにかしてくれえええええ!」

 

番外編 END

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告