のんびり閉鎖空間 〜ランダムで出現するキャラ達と日常は過ごせるのか?〜   作:賭博馬鹿2号

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第5.5話 幕間 変わる僕

「へー、これはこうするだけでパンが作れるんですね!」

「あぁそうさ」

 

僕はロキ。

アースガルドの為なら全てを捧げる研究者、だった。

目標であるアースガルドに辿り着いたは良いものの、本来の力を取り戻したアースガルドの住人、片翼の化け物 不死なるファフナーに存在ごと消されてしまった。

奴の力は下界の時とはまるで別物で、悔しいが全く歯が立たなかった。

そうして僕は消えた……はずだったのだが、なぜか今こうして見知らぬ屋敷で生きている。

見知らぬ者と出逢いながら。

 

「ここのスイッチを押せば開始かな?」

 

目の前の彼女は、リッカというらしい。

異世界から来た存在だ。

外見はさほど似ていないが、その綺麗な黒髪はベレッタを思い出す。

いつか、髪を下ろした姿でも見てみたいものだ。

ベレッタ・オーディンは本当に魅力的な女性だった。

アースガルド一筋の僕の気持ちを揺るがせ、我が物にしたいと思わせるくらいには。

そして、リッカもベレッタほどではないにせよ、僕を惹きつける何かがある。

もう少し成長したら、我が物にしたい程だ。

 

「ありがとうございますロキさん!」

「……あぁ、構わないさ」

 

そんな気持ちがある一方で。

僕の中にはほんの少しだけ、これまでにない気持ちが湧いていた。

これはきっと、ファフナーに1度消された事の影響に違いない。

そうでなければおかしな話だ。

 

この僕がほんの少しだけ、人の為……すなわち、リッカの為に動きたいと思ってしまうなんて。

 

なぜ、僕はこんな意味のない時間を選んだ?

調理器具を教える時間なんて。なぜ?

いや、未来の上玉を得る為だ。きっとそのはずだ。

……だがリッカという少女。

外見は王族の様な上玉だが、所作は村娘のそれ。

青く、ベレッタの様な高潔さにも欠ける。

素質はあるが、僕の好みに今は遠い。

未来の上玉? そんなの気の長い話だ。

なのになぜだ? なぜこんな事を?

……正直、僕は自分でも自分の事が分からなくなっている。

 

「まぁ良いさ。自分を知る為の時間はたくさんある」

「ロキさん?」

「何でもないよ。

じゃあ道具の事は教えたし、料理はお願いしようかな?」

「分かりました! 任せてくださいね!」

 

リッカは明るい顔でそういう。

そう言えば、僕の周りにこんな純粋に笑ってくれる女性はいなかったな。

研究で金は掃いて捨てるほどあったから、女遊びはしてたが、それでもこんな子はいなかった。

他に知り合いの女性といえば、ガルーダにベレッタ、後は僕が作ったヘルくらい。

僕が知る限りでは全員、こんな純粋に笑う柄じゃない。

……笑ってくれるのって嬉しいものなんだな。

 

「はっ! 僕は何を考えてるんだ?」

「ロキさん?」

 

全く……多分あのファフナーのせいだ。

この僕ともあろうものが。これじゃあいけないな。

調子を取り戻さなくては。

 

「何でもないよリッカ。

僕は先に食卓に行ってるけど、手伝って欲しいことがあったら来てくれよ?」

「ありがとうございます! 優しいんですね!」

 

僕が優しい、か。

優しい父親のフリならフェンリル達相手にした事もあったが……。

 

「どういたしまして」

 

今の僕はなんなんだろう。何が起きているんだろう。

そう思いつつ、その場を後にした。

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