藤原妹紅殺人事件   作:よんて

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序章 人の命弄びし少女

「犯人はお前だ……アリス!」

 

鬱蒼と生い茂る木々の間から鋭い声が響く。

魔法の森にあるアリスの家の前で、ビシィッ!という音が聞こえそうなポーズをとりながら長い白髪を靡かせて指を突き付けるその姿はさながら名探偵のようだった。

物語のクライマックスに不的な部分があるとすれば、容疑者として指を差されている側の少女が状況を全く理解しておらず呆けた顔をしていることだろう。

 

「え、妹紅? 犯人って……?」

 

何のことやら、といった表情で辺りを見回すアリスだったが、気付けば家の周りには人だかりができていた。

妹紅だけでなく周りからも厳しい目線を向けられていることに気付き顔が強張る。

 

「誤魔化しても無駄だぞ。今朝、慧音の部屋で目が覚めたら私は桐箪笥に圧し潰されていたんだ……頭に黒コゲになった木彫りの熊が乗った状態でな! これは明らかに第三者による撲殺現場! そしてその傍に転がっていたのは見知らん人形! 犯人はお前だぁぁぁぁぁ!」

 

叫びながらアリスへと詰め寄っていく妹紅。後頭部からはちょっと炎が漏れている。

どうやら頭部にダメージを負っているのは本当らしい。

 

「待ってちょうだい! 本当に覚えがないわ!」

 

なんとか自分の無実を証明しようと反駁を試みるも、皆聞く耳を持たず口々にアリスを責め立てる。

 

「あなたを退治しなきゃいけないなんて残念だわ。新技の練習台になってもらおうかしら」

「ついに完全自立型人形の開発に成功したのね、素晴らしいわ。術式は何かしら」

「いつかやると思ってたぜ。私だって何回も人形をけしかけられてるしな」

「観念してくださいアリスさん! 悪人を成敗して信者数アップです!」

「潔く罪を認め懺悔することですよ。殺生に十罪アリス……ぶふっ」

 

誰も自分を信じてくれないことに少しの寂寥感を感じ……いやちょっと待てそこの金髪。人形をけしかけられてるのは私の家から勝手に魔導書を持ち出してるからだろ! というか全体的に私利私欲に塗れてるなこいつら! さては面白がって着いてきただけだな!?

 

「くっ……どうやら弁解も無理みたいね。仕方ない、ここは一旦退却するしかないか……魔光『デヴィリーライトレイ』!」

 

周囲に浮かせている人形たちから目が眩むほどの閃光が溢れ、辺り一面が白に染まる。

妹紅たちが漸く視界を取り戻した時には、既にアリスの姿は無かった。

 

「犯人が逃げたぞ! 魔法の森に規制線を張るんだ! 追え~!」

 

これは知らぬ間に殺人犯として指名手配されてしまった一人の魔女の話である。

 




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