不死、宇宙、原始と機関。4人と歩む英雄道中   作:灰色の男

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弐 接触……邂逅の方が近い……かな?

 

朝。俺は起き上がり、軽く延びをする

さて、学校行くか!と気合いをいれたところで気づく

 

 

「……しまった、今日休みじゃん」

 

 

今日は日曜日であった。

我ながら間抜けだなと頭をかきながら一階に降りていく。

洗面所に入り身だしなみを整える。

顔を洗い、少し癖のある黒い髪に櫛を通して髪型を整え、そのまま着替えを済ませて寝巻きを洗濯機に放り込む。

一緒に突っ込むタイプのカプセル洗剤は技術が進んだこの世界でも健在で、やはり大発明だったんだなと軽い感傷に浸る。

 

冷蔵庫に昨日の内に突っ込んでおいていたらしいおにぎりを一つ食べつつ、何かしようかなと考える

元々朝が強い方でもなかったが、土日は昼まで寝ているタイプだった。

それがなんの因果か知らないが朝にしっかり目覚めたのならいつもしないことをしても罰は当たらないだろう

 

ボーダー柄の服の上からお気に入りの赤いパーカーを羽織り、フードを被って外に出る。

まあ、だからといって何がしたいという願望もないのでふらふらと街中を彷徨ってみる。

日曜日だからか、街中は中高生や親子連れで賑わっていた。

時折巡回中らしきヒーローも見かける。

 

お疲れ様です。

 

 

そのまましばらくあっちへふらふら、こっちへふらふらと街中をぶらぶらと歩いていると……

 

 

「ちょっといいか」

 

 

ふと、背後から肩を叩かれて声をかけられる

声質的に女性だろうか?

やや荒っぽい印象を受ける話し方だな……と振り替えると同時に、俺は固まった。

 

 

青白い肌に走る紫色のヒビ、濃紺の髪に入る金メッシュ、凛々しい顔立ちにどこか機械らしさを感じる腕。

ああ、思い返してみれば何度も画面の向こうで聞いた声だ。

なぜ聞いたあとすぐに思い出せなかったんだろう。

 

普段の装いとは違い一般的なコートに身を包んでいるとはいえ、その姿はまさしく

 

「で、デッド……ゾーン……?」

 

俺の愛したカードの1枚、【S級不死(ゾンビ)デッドゾーン】がスマホゲームで擬人化した姿であった。

 

 

「あ?オレのこと知ってるのか?」

 

不思議そうな表情で首を傾ける彼女に、俺は放心して立ち尽くすことしかできなかった。

シンプルに疑問でキャパが埋まり切ってしまったのだ。

そうして目の前のデッドゾーンが呆れた顔で溜め息を着いたと思うと、俺の首筋に鋭い痛みが走り、俺の視界はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に意識が浮上したのはどこかの建物の中だった。

目の前にはカードゲームのアニメで見るようなリングが展開されている。

 

 

「こ、ここは……」

 

「ブハハハハ!おいアダムスキー!目が覚めたようだぞ!」

 

「!!」

 

 

キョロキョロしていると背後から豪快な聞きなれた笑い声。振り返ると、そこには原始人をモチーフにしたであろう服装の大男がいた。

何も知らなければ新手のヒーローとでも思ったかもしれないが、俺はその姿をデッドゾーン同様知っている。

 

 

「え、S級原始(トライブ)サンマッド……」

 

「ほほぉ、やはり俺を知っているか」

 

オビアス(当たり前)

 彼らから聞く限り、そこの彼は私達を創作物の中で愛していたと聞く。

 愛していた云々は置いておいても、理解しているのは確実」

 

 

サンマッドが顎を撫で感嘆している背後から、タブレット端末を持った宇宙服をモチーフとしているであろう服装の少女も登場する

 

 

「S級宇宙(スペース)アダムスキーまで……」

 

 

先に外で遭遇したデッドゾーンを含めたこの三人は【S級侵略者】と言い、時の主人公サイドの対立種族【侵略者】を統括する言わば幹部格のクリーチャー達だった。

 

 

「そ、それがなんだってこんなところに……」

 

「クエッション。貴方がこのカードの持ち主の示略廻?」

 

 

俺の疑問を無視したアダムスキーがそう言って端末を操作すると、その場に3つのマグネットローダーが現れた

 

 

「!そのカードは……!返せ!「おっと、あんま暴れるなよ?」ッ!!」

 

 

そのローダーに入っていたのは、今もなお自宅で飾られているはずの3枚のカード。

俺にとっては命とすら同価値であるもの。

割れを忘れて飛びかかろうとしたところで、背後からサンマッドに拘束された

 

 

「……説明を先にするべきだったかもしれない」

 

「間違いないな」

 

 

やや気まずそうな顔をするアダムスキーと、背後でため息をつくサンマッド。この体格差では暴れて抗うことすら難しい。

どうにか隙をついて逃走をしなければ「聞け、この状態はそのカード達が望んだことだ」

 

サンマッドの言葉に俺の脳は再びフリーズを起こした。

俺のカードが……なんだって?

 

「順を追って説明する」

 

 

そう言うアダムスキーから昨晩あったことを聞かされた

 

 

「……つまり、なんだ。カード達が俺から受けた恩に報いたいって言ってて、本人?紙?達が提案したのが、《カード達が吸収される代わりに君たち4人が俺の"個性"になる》ことだったと?」

 

「イグザクトリー。その認識で構わない」

 

 

「……ば、馬鹿げてる!そもそもカードに意思なんて「あるよ」……!」

 

「あるよ。それを貴方が否定しちゃ、だめ」

 

 

アダムスキーが出てきた通路から、灰色の髪をした、一種拘束具のようにも見える服装の少女が大きな機械の乗った台車を押してきた

 

 

「ヴ、ヴィヴィ……」

 

 

その子もまた、アプリにてあるクリーチャーが……"禁断機関VV-8"が人の形を取った姿。

革命編においてヒロインを務め、S級侵略者達と共にデュエマシティを旅立った少女だった。

 

 

「やっぱり私たちのこと知ってるんだね……っととと」

 

「さすがにその量をいっぺんに持つのは無茶だ。俺がいく、おとなしくしててくれな」

 

 

台車から大きな機材を複数持ち上げたヴィヴィに反応して、俺を拘束していたサンマッドが拘束をといてそちらに向かう

 

 

「……まだ、信じられないと思う。だから、ウェイト。もう少しだけ待ってて」

 

「……信じるにせよ信じないにせよ、カードはあんたの手の中だ。おとなしくしてるしかねーだろ」

 

 

……そのまま虚空を眺めて数分が過ぎる。

ふと、アダムスキーが口を開く

 

 

「クエッション。なぜ貴方はそんなにこのカードが重要?

 言い方は悪いけど、向こうの世界ではありふれたカードだったと。しかもそのうち2枚は安価な制限カードと聞く」

 

 

数秒の間をおいて答える

 

 

「まあ間違いじゃねーわな。買おうと思えば割と安価で買えるカードだ」

 

 

強いて言うならアダムスキーくらいか?割と高値がつくのは。

なんて苦笑しながら続ける

 

 

「けど、大事なのはそこじゃねぇ。あの4枚はな、俺の最初の切り札なんだよ」

 

「最初の?」

 

「ああ、俺の兄貴がな、カードゲームが好きだったんだよ。

俺がデュエマを始めるきっかけになったのも兄貴でね。

ある誕生日の日に俺にカードのコレクションを見せてくれたんだ」

 

『誕生日のプレゼント、気の効いたもんを用意しようと思ったけど無理だった。

だから、この中から好きなカードを……そうだな、学年の数まで持ってっていいぞ』

 

「なんて言われてな。当時は小学4年生でデュエマのルールなんて知らないから、デザインだけで選んだんだ」

 

 

「それがあの4枚?」

 

「そ。そこからパックも買って、要らないカードを兄貴のお下がりでもらって……ってな感じで完成したのが最初のデッキだ。死ぬまでずーっと、そのデッキの改造を続けて続けて使い続けた。

10年以上一緒に戦ってきた不動の切り札なんだよ」

 

 

「……理解」

 

 

「してくれたか?だから返して「彼らの提言の理由も、また理解」……なんだって?」

 

「改めて言う。彼らは貴方に恩を感じてる。それだけの歳月の間、環境も、カードプールも、制限も移り変わってきた。なのにも関わらず、貴方は彼らを抜かずに戦い抜いた」

 

 

アダムスキーは俺の目を覗き込んで言う

 

 

「そんな戦友が、辛い思いをしている。今まではどうすることもできなかったが、今回は私達がいる。一生に一度の、恩返しのチャンスを逃したくなかった」

 

[昰だ。これを逃せば、我等はただ苦悩する主を見続けることになる。それは辛いのだ]

 

 

その言葉の先を、リングの方から響いてきた男の声が引き継いだ。

サンマッドの声ではない。

もっと機械的な、それでいて理知的な声。

 

 

「これを持ってリングに向かって」

 

「これは……」

 

 

渡されたのはカードの束。

見れば、4枚を除いた前世のデッキであった

 

 

「俺の……!」

 

「リングで話してきて」

 

 

アダムスキーの言葉のまま、俺はリングに上がる。

そこには、機械から投影されたホログラムで写し出されたアダムスキーがいた

 

 

[主……]

 

「アダムスキー……君なのか?」

 

[昰だ……まずは、こうして言葉を交わすことができる、この奇跡に感謝を]

 

[そして、主。我等をずっと、最期まで共に戦うことを許してくれたことに、感謝を。]

 

 

このアダムスキーが、本当に俺の使っていたアダムスキーである証拠なんてない。

だが、心が肯定する。

彼は、俺と共に歩んでくれた切り札であると。

 

 

「それは、俺の……ッ」

 

言葉が出ない。それは俺の台詞だと。

 

伝えたい言葉、投げ掛けたい疑問、次から次へと湧いてくるのに……どれも、言葉にならない

 

 

[本来ならばサンマッドやデッドゾーン、VV-8も話したがってはいたのだが……この機械はあくまで"アダムスキーの交信"のために作られたモノのようでな]

 

 

「そ、そっか……」

 

少し話せると期待したんだけどな……

 

 

[時に主。我々の提案は拒絶するほどに愚案だったのだろうか……?]

 

「……ッ!気持ちは嬉しいよ。もし彼らが俺の"個性"になってくれるんだとしたら、俺が抱いてたヒーローになる夢に近付く……でも……君達を失うのは……」

 

[主]

 

[だとすれば、主には我等の提案を受けて欲しい]

 

 

「でも![我等は!]ッ」

 

 

[我等は、主に笑っていて欲しい、喜んでいて欲しいのだ]

 

[これは、我ら4枚の総意だ]

 

[これ以上、理不尽に沈む主を、我等は見ていたくない]

 

[それに主、我等は彼らの一部と……即ち主の一部となり生き続けるのだ。……ありきたりな文句ではあるが]

 

 

どうか、受け取っていただけまいかと。

そう真剣な声色で俺に問いかける。

 

 

「……それ、は。皆……納得してる……のか?」

 

 

俺は、声が震えるのを止められない。

納得も、決断もできた。

でもやはり、失うことは怖いのだ

 

 

[昰。皆、主に感謝している。

 故の、己の体を張った、最初で最後の恩返しなのだから]

 

「……わかった」

 

「俺は、その提案を受け入れる」

 

彼等が、体を張って俺に夢を掴む機会を与えてくれた。

なら、ここで俺を示さなきゃ……決断してくれた、彼等に申し訳が立たない!

 

そう、己を奮起させていると、リングの反対側から声が響いてきた

 

「きまったみてーだな?」

 

「!デッドゾーン……!」

 

「よぉ、覚悟は決まったみてーだな?」

 

 

刺すような威圧感、これが、S級の……!

 

 

「確かにオレ達はお前のカードからの要請を受諾した

 ……が。オレは雑魚に従う趣味はねぇ」

 

 

そう言うとゆっくりと俺の持つデッキを指差して

 

 

「だからよ、戦え」

 

 

「オレがあの世界で一時的にでもあのプレイヤーと共闘したのは、あいつが相応の強者であることをオレ達に示したからだ」

 

 

ここの設備なら真のデュエルに近しいことができると

 

 

「流石に死にやしねぇがな。

 どうだ、受け「受ける」……へぇ?」

 

「貴女達にも誇りがある。弱者の下に着きたくないのは当たり前だ。……俺が、力を示せばいいんだろ?」

 

 

「よくわかってんじゃねぇか!

 正直あんま期待してなかったがいいな!ここまでは合格だ!

 後は実践あるのみだ。死ぬ気でかかってこい」

 

 

 

 

 

 

 




次回、デュエル。
本日昼頃、投稿予定
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