その代わり、健太が真っ先に行こうとしていた場所と目的がわかります。
そして、吾郎と本格的に関わることになりますが・・・
なお、この回は吾郎は茂野表記です。次の回まではその形で通します。
午後の聖秀学院高校
何故か健太は学校に戻っていた。
「しまった、もう1つのバッグ置いて行ってた。」
無事教室に忘れてきたバッグを取り校舎を出る健太。
そんな彼が目にしたものとは、
「?
何やってるんだ?」
転校生の茂野吾郎と藤井、更に女子生徒の中村が何やらグラウンドにいる。
そして、茂野がバットを持ち、藤井がボールを持ち振りかぶる。
すると、
ワンバウンドや大きく外れるクソボールを次々と投げ続ける藤井。これでは茂野も振るはずもない。
すると、攻守交代ということで、茂野がピッチャー、藤井がバッターになった。
(野球をやってる実力、これではっきりとわかるか)
健太は遠くで見守っていた。
茂野が軽く投げたボール。
藤井はあっさりを見送った。
次のボール以降、藤井はスイングするも全く当たらない。
(まあ、予想はできてたが・・・)
健太は藤井の無様な空振りを見させられて呆れ顔だ。
しかし、
(だが、茂野ってやつ、
本気じゃないな。
完全に素人相手に打たせてやろうとしている投げ方、スピード、コース。
全く同じコースに投げ込んでいる。
本気に投げればどうなるかはわからないが、
伊達に野球をしに来たってわけではないのか)
勝負が終わり、藤井が泣き顔になりながら走り去っていくのを見た健太は、そのまま向かっていた場所へと行った。
ここは、野球のグラウンド
健太は何故ここに来ていたのか?
「おお、健太くん。」
「すみません、すぐ着替えてきます!」
そう言って、健太は併設されているプレハブ小屋に入った。
数分後、
野球のユニフォーム姿の健太が出てきた。
そのまま健太は準備運動やストレッチをする。
健太は何をしに来たのかと言うと、草野球チームの練習である。
健太は高校入学から草野球チームに所属、最年少だが主力として活躍している。
元々、健太の父親が経営する工場の社員で立ち上げたチームで、健太以外の全員が従業員で中には父と同い年のメンバーもいるが、健太はチームに馴染むことができている。
準備運動を済ませてキャッチボール、そして、
「お願いします!!」
「行くぞ!!」
カキーン!!
スポッ シュッ
監督からお見舞いされるノックの雨を健太は難なく捌く。
「よし! これで終わりだ!」
「ありがとう御座いました!!」
ノックが終わると、ブルペンへ向かう健太。 ピッチャーもできる。
ビュッ ズバーン!
「ナイスボール!」
ボールを受けるキャッチャーから称賛されながら、健太はノビノビとマウンドからボールを投げる。
「球速も一夏超えてさらに上がってきたんじゃないのか?」
「秋の市の大会も、頼むぞ健太!」
「はいっ!」
今ではチームには欠かせない存在になっている健太。その様子を見ていた監督とコーチは感慨深い思いで見ていた。
「健太の奴、本当に野球の面白さを取り戻せましたね。」
「ああ、去年ウチに来た時は、心が完全に折れかけていた。
けど、純粋に野球に向き合える環境に出来たから、あいつは今じゃ140kmオーバーの真っ直ぐを投げれるようになったし、バッティングでもウチのクリーンナップに定着した。
それも、あいつの努力の賜だ。俺達は居場所を与えただけに過ぎんさ。」
「そうですね。」
高校球児なら誰もが憧れる甲子園の舞台に立つことも挑戦することが出来なくとも、ここで野球ができるだけで充実な日々を過ごせる事に喜びを持つ健太にとって、監督を始め、チームメイトの人達には感謝の気持ちで一杯である。
(甲子園なんて立てなくとも、野球を続ける事も、プロへの夢を追いかけることも出来る。
本当に、このチームがあってよかった・・・)
翌日
健太は放課後、グラウンドの近くを歩いていた際、
「? 茂野か。」
茂野と中村、それにソフトボール部の清水が何やら話している。
吾郎に抱きつく中村に、かなり怒っている様子の清水。
必死に弁明する茂野に聞く耳を持たずに清水は立ち去っていった。
そんな様子でも、中村はまだ抱きついていた。
(何やってるんだあいつら?
まあいいか。茂野に用があるし)
健太はそんな2人の下へと歩み寄った。
「おい、転校生、何いちゃついてるんだ。」
「ちげぇーよ!! 勝手にあの女が!!
って、おお!! お前、初めて話するな!!」
「まあ、確かにな。
中村と何やってたのかはどうでもいいことだから何も聞かないが。
茂野、
後で俺に付き合え。」
「は?」
「まさか、あんたダーリンを狙って・・・!!」
「まあ、当たらずとも遠からずか。
お前には色々と話が聞きたい。
そして、
お前の本気をみたい。」
遂に、吾郎と健太が対面しました。
健太の事は、次回以降も色々と書いていきますが、聖秀に来たのも、草野球を楽しんでいるのも、色々と理由があるのであって・・・
次回は、吾郎との対決になります。