先ずはバッター吾郎、ピッチャー健太です。
「お前の本気が見たい。」
「はあ?」
健太は初めて茂野とマトモに話す。
「お前、昨日のグラウンドで藤井を対決していただろ?」
「ああ、
お前、見てたのか?」
「偶然見ていただけだ。
それでだ。 お前のピッチング、
軽く投げて100kmほどのスピードだが、コントロールよく投げていた。
まるで、気持ちよく打ってくれと言わんばかりに。
尤も、藤井はそれに応えられなかったみたいだな。」
「ちょっとあんた、なんでそんな事わかるの?」
健太が話していたことに疑問を感じた中村は口を挟む。
「そりゃ、
野球をしたことがあると言えばわかるはずだ。
ちょっと齧ったとかじゃなく、ガッツリやってたとすればな。」
「お、お前、本当なのか!?
こども会とかそういうのじゃなくて!!」
「ああ、まあ、理由あって高校野球を目指さなかったがな。
それが嘘だと思うなら、今日俺に付き合え。
隣町のグラウンドに来てくれ。
あと、ユニフォームかジャージでも良いから持ってきておけよ。
中村もマネージャーなら、付いてきて損は無いぞ。」
そう言って、健太は2人と別れて下校した。
「どうするの? あいつ本当に野球を・・・?」
「さあな。
けど、昨日のあいつと違って、ハッタリでは無いだろうな。
あのピッチングを見て、完全にお見通しだったみたいだからな。」
健太の言っていた言葉を、茂野は信用した。
夕方、
例のグラウンドでは、
「そうか、事情はわかった。」
「すみません、無理言ってしまって。」
「気にするな。お前のクラスメイトなんだろ。それで野球やってるなら、俺も少し興味があるな。」
監督に健太は茂野が来ることを説明した。そして、彼を試そうとすることも。
「しかし、思い切ったことをするものだな。
1から野球部立ち上げるとはな。」
「それが若さってことなんでしょうね。」
健太は茂野が来るまでにストレッチと準備運動を済ませて、投球練習をしていた。
「ここのグラウンドで合ってるのよね?」
「多分な。
ここって草野球でもしてるのか?
オッサンばかりで、大したことは、
!?」
ズバーーン!
健太の一投を観た瞬間、茂野の目の色が変わった。
(おいおいマジかよ、
聖秀にとんでもねえ当たりがいたとはな)
「おーーーい!!
俺も混ぜてくれ!!」
グラウンドへと駆け出す茂野。
「茂野!!」
「彼が噂の。」
「はい、最近転校してきた茂野吾郎です。」
「成る程、
君が茂野吾郎くんだね。」
「う、うっす! あんた、監督?」
「そうだ。私がこの草野球チームの監督だ。
話は聞いているよ。
制服で来たみたいだが、それで良いのか?」
「い、いや、一応ジャージは持ってたんすけど・・・」
「だったら、向こうにあるプレハブ小屋で着替えて来なさい。
ウチのロッカールームみたいなものだからな。」
「うっす!」
「えっと、君は?」
「あ、あたし、野球部のマネージャーです!」
「そうか、だったらベンチで見学して構わない。」
茂野がジャージに着替えている間、練習用のケージを片付ける草野球チーム。中村もベンチから見守ることに。
着替え終わり、グローブを持ってグラウンドへ入る茂野。
「茂野、待っていたぞ。」
「ああ、お前との勝負、少しは楽しませてくれるんだろうな?」
「ああ、それはお前の真の実力次第さ。」
茂野と健太、2人を対決に監督は、
「よし、2人の対決だが、ルールはどうする?」
「昨日やっていた10球勝負、ボール球はノーカウントでどうだ茂野?」
「ああ、かまわんぜ。先攻はどうする?」
「俺が先に投げる。」
「上等だぜ!!」
健太が提案した10球勝負に乗った茂野。
先ずは健太が投げて、吾郎が打つことに。
「その前に茂野、アップはしているのか?」
「ああ、ここに来るまでに軽く走り込んできたんで、問題ないっすよ。」
「まあ、それで大丈夫ならいいんだが。
よし、実戦形式の方がある程度実力がはっきりするだろう。
レギュラーが定位置についてくれ。
それから、フェアにやるようにな。」
「了解!」
「もちろんですよ!」
監督の指示で守備につくレギュラー組。
(いよいよ、茂野の実力がはっきりわかるな)
キャッチボールをして準備する健太。
(所詮草野球だろって思ってたが、こんな逸材がいたとはな。
勧誘抜きでゾクゾクするぜ!!)
「俺が審判をする。
プレイ!!」
監督の審判の元、対決がスタートした。
(茂野のバッティングの実力がわからない。
先ずはストレートで勝負するか)
1球目
ビュッ!
ズバーーン!!
吾郎のバットは空を切り、キャッチャーミットに吸い込まれた。
「初球は、俺の勝ちだな。」
「なーに、あと9球をホームランにすればいいって話だろ。」
(あの力強いスイング、やはり只者じゃないな・・・)
(遠くから見ても速かったが、
打席だと更に速く感じるぜ・・・)
一球だけで、相手が高い実力を持ってると感じる2人。
続く2球目
(甘いコースは危険だな。
コーナー厳しくついていく!)
ビュッ
「!?」
カキーン!
「!?」
スポッ
「!? なんて鋭い打球だ・・・」
捕ったショートがそう溢すほどの痛烈なショートライナーだった。
(打球スピードがかなりある。
打球が上がっていたらホームランだった)
(ちっ、ついてないぜ。
だが、お前のストレート、完全に攻略したも同然だな!)
3球目、
ビュッ
カキーーン!!
「・・・!
(アウトローいっぱいを、ライト方向に・・・!)」
逆方向への放物線を描いたホームランだった。
続く4球目を長打、5球目をホームランをする茂野。
「どうした? この程度じゃ俺を抑えられないぜ。」
(・・・
こうなったら、
変化球を混ぜていくしかない!)
健太の投じる6球目、
ビュッ
「よし、
!?」
ククッ!
ズバーン!
「!?
スライダーか・・・」
茂野のバットは空を切った。
(流石に変化球を持っていたか、
140km以上はありそうなストレートに、大きく曲がるスライダー。
ふっ、燃えてくるぜ!!)
(!?
空振りをしたのに、笑っている・・・!
なんというか、
勝負を楽しんでいるな茂野!)
続く7球目、
ビュッ
「!?
カーブか!!」
カキーン!
「何っ!?」
体勢を崩されながら、カーブを打ち返し、1.2塁間を破るヒットを放った。
(完全に野生の勘っていうのか、
不意をついたカーブをヒットにしていた)
(あぶねぇ・・・
まさかカーブまで持ってたとはな)
「すごい、ダーリンもだけど江川も野球上手かったんだ・・・」
2人の熱戦に中村も釘付けになっていた。
8球目、
ビュッ
カーン!
打球はバックネットに直撃した。
(スライダーを当ててきたか。
ならば、もう一球!)
9球目、
ビュッ
「うおおお!!!」
カキーーン!!
外一杯に投じたスライダーを完璧に捉えた茂野。特大のホームランを叩き込んだ。
「・・・完璧にやられたな。
だが、ラスト1球、お前にはこれ以上打たせない!!」
「お前も燃えてるな、
そうでなきゃ面白くねぇぜ!!」
その様子を見ていた監督は、
(健太・・・
ウチのチームに入ってから、こんなに熱くなり、楽しくプレーしてる姿を見たこと会っただろうか?
彼なら、健太を本当の意味で、過去から解き放てるかもしれないな)
そして、ラスト1球、
(この球で、ラストを締める!!)
ビュッ
ククッ、
「!?」
ズバーン!
最後は、スライダーでも、カーブでも、ストレートでもなかった。
「え!? 何今の変化!?」
中村は驚き声を上げる。
茂野は、1球で今の球種の正体を見抜いた。
「今のは、
シンカーか!?」
「ああ、まだ練習仕立てで実戦で行ける自信は無かったが、今回はうまく投げられたな。 ラッキーだった。」
「ラッキーも何も、お前の渾身の一投に俺が完敗したってだけだ。」
「ふっ、お前いままで俺の自信のあるスライダーを完璧に打ってそれはないだろ。」
2人が話している所に監督が間に入る。
「2人とも、良い対決だったぞ。
茂野くん、結果はホームラン3本、ヒット2本だ。」
「よし! 後はピッチングで全球抑え込んでやるぜ!」
「その言葉、そっくり返してやる! 全球打ち返してやるぞ!」
(次はダーリンのピッチング、アイツに投げたのと違って、今度は本気のボールを見られるってことよね。)
次は茂野のピッチング。
健太と中村はまだ知らない。
彼が、MAX155kmの超本格派サウスポーである事を。
次回は、吾郎のジャイロボールを、健太が体験する事になります。
果たして、打つことはできるのでしょうか?
因みに、健太の投手としてはこんなイメージです。
右投げ
球速 MAX143km
持ち球 ストレート(球威とコントロールに自信有り)、スライダー(1番自信のある変化球)、カーブ(見せ球、緩急を活かす際に活用する)、シンカー(まだ覚えたてでコントロールに不安がある)
といった感じです。