貞操観念が真逆の世界で、風俗の受付(兼キャスト) 作:パッチワーカー
色んな経験を詰め込みました。
「──あの、先ほどの料金で大丈夫ですし、そのお金は受け取る訳にはいきません」
「···れい君はやっぱり真面目さんだね」
事が一通り終わった後、たまに前払いの料金以外のお金を貢ごうとされる。別にお金のためだけにしてるわけではないし、もらうと面倒くさいことにもなる。
「···僕そこまでカッコよくもなければ、可愛くもないですし···」
「全然そんなことないよ!!責めてるときはカッコいいし、私に責められてるときはめっちゃ可愛いから自信持って!!」
「そう···?まあ、しほさんがそう言ってくれて嬉しい。──あ、あと10分くらいだし、いっしょにシャワー行こ?身体いっぱい汚しちゃったし、色々洗わなきゃだしね」
持っていたお金を戻させ、シャワーへと誘導する。もしも、お付き合いされてる方がいるのなら匂いや汚れ、跡などに気をつけなければいけない。
「そういえば聞いてなかったけど、しほさんってお付き合いされてる方とかいるの?」
「···いないよ。25年間彼氏なんていたこともないし、良い感じになった男の人も結局遊びだった···ってことしかないよ」
「そうなんだ」
よかった。無香料のボディーソープ使ったり、執拗に汚れを落としたりする必要はなかった。その分、まだ楽しんでもらえる。
「やっぱりそういうこと、この職してたら気になるの?···ってれ、れい君?!もう終わりじゃないの??!」
「ふふ、しほさんの反応が可愛いからつい。まだ時間あるし匂いを一生懸命落とす必要もないしね。···時間いっぱい楽しませます···!」
洗うのには絶対必要のない動作をしたところ、期待通りに反応してくれた。どうやら、しほさんは直接的なところじゃなくその周りの方が気持ちよくなるらしい。
手で優しく、焦らすように触れていく。
「ん···んっ···れいくん···?」
「──あー、ダメですね。遊びすぎちゃってたみたいです」
「でも、まだ私のなんだし、ちゃんと···ね?」
「···そんなに敬語使われるの嫌なの?」
「結構距離感じるから嫌。他人行儀すぎて寂しい···」
5分前を知らせるストップウォッチが鳴り、一瞬仕事モードに戻りかけてしまった。この人は2回目だが、どちらも「敬語無し」という項目をチェックされていた。こういう理由があったんだなぁ。
5分前ということもあり、遊びはやめ、しっかりと洗い流し、タオルを渡す。
「今日は拭かれたい?」
「んー、今回もいいかな。れい君意地悪だから拭く以外のことしそうだし」
微笑みながらそう言って、渡されたタオルでテキパキと自身の体を拭いていった。
その間に僕もすることをしないといけない。
「──れい君、自分の体の洗い方雑じゃない?」
「しほさん弄るの楽しみすぎて時間がないんだよね」
普通10分前に終わって良い感じくらいに設定されているのにも関わらず、5分前まで粘ってしまった。···まあ最悪僕はしほさん送った後に洗い直せばいいし大丈夫···かな?
「前回はそういう意地悪な部分見せてくれなかったのに、今日はたくさん見せてくれてくれたね。···嬉しいけど、どっちが素なの?」
「さぁ?って言いたいところだけど、ちょっと意地悪してる方が素だね。──敬語無しで接してる分、普段の感じになってるのかも。前回はしほさんとするの初めてだったし、結構緊張してたんだよ?」
しほさんと話してると普段の自分が出てきそうになる。多分その方がこの人は喜びそうだけど、さすがに恥ずかしい。
「···そっか。──また、れい君の指名してもいい?」
着替えを済ませ、出ていく体制が整ったしほさんが僕の目を見ながらそう言った。僕はまだバスタオル姿なのに、準備が早い。
「何回も言うけど、僕は本来受付なんだよ?──もっとカッコよかったり、可愛かったり、声が良かったりする人はいるよ?」
受付なのに、僕には少なくないリピーターがいる。
風俗を利用するときは一種のギャンブルのように、どんな人が来るのかを楽しみにするのが一般的だ。たまに、良い人がいればその人を指名して···ということもあるが指名料がある分その選択は取りづらい。
「私はれい君がいいの。れい君以外は嫌だから、また会いに来るね」
──だからそういうことを言われると本当に嬉しい。
「そっか、ふふっ···ありがと。ほんとに嬉しい···!」
話しながら着替えを済ませ、しほさんに飛び込んだ。多分時間はもう1分もない。けど、最後まで離れたくはなかった。
腰に手を回し、密着部分をできる限り増やして30秒ほど軽いキスをした。
「···ん···しほさんの唇、柔らかくて素敵だね。ずっ···ずるいほど素敵」
「そ、そう···?」
「うん、手も綺麗だし、すぐ顔赤くなるのも可愛いし、彼氏がいないのが不思議だよ」
「···れい君がいっぱい褒めてくれてるだけだよ···!···ねぇ、れい君は」「あーしほさんちょっと待ってね。──はい、もう出られますので。はい、はい」
なんか面倒くさそうなことを言われそうになったし、完璧なタイミングでの電話だった。
「よし、時間いっぱいだし出よっか。忘れ物ない?貴重品持った?」
「う、うん」
「オッケー。気をつけて帰ってね!──最後にしほさん目瞑って舌出して?」
「え、し、舌?──こう?」
居心地の良いお客さんにはサービスをするのが礼儀だしね。
少し顔が赤くなり、困惑と期待が入り混じったしほさんに僕は意地悪するように甘噛みした。
「れ、れい君!?」
「顔赤いのバレないように出ないと怪しまれるよ?」
ドアを開け、顔が赤いままのしほさんと手を繋ぎながら出入り口まで歩く。
「もう···私の舌はれい君のおもちゃじゃないんだよ?」
「ふふ···おもちゃなんて思ってないけど、僕のだとは思ってるかも?」
「こいつのは聞き流してください」
軽口を叩いていると、僕の代わりに受付をしてもらってた甲斐さんが渋い顔をして注意した。──確かに、行きすぎた発言だったね。
「甲斐さんありがとうございます。後は頼みました。──しほさんじゃあまた」
「お嬢様、お帰りはあちらです。またのご利用をお待ちしています」
僕の代わりに受付をやってる甲斐さんにバトンタッチし、僕は逃げるようにさっきまでいた部屋に戻った。
──────
ガチャ、バタン。
「···ふぅー···危なかった」
ずっとしてたいって言いそうになったし、本当に嬉しい表情を見せてしまった。今度から嬉しそうな表情作るのは逆効果になりそうだし、色々考えないと。
「──ああいうお姉さんでも彼氏いないのって、男性少なすぎない?」
女性が風俗を利用する世界、女性が男性を襲う世界、女性が男性を探し求める世界。
僕の元いた世界とでは反対のことが起こっている。貞操観念が反対だし、男性と女性の比が1:4ないし1:5くらいだ。
そんな世界だからか、こういう水商売の男性職というのは儲かる。キャストじゃなくても普通のバイトをするよりもかなり割高なバイトになる。
だから、僕は風俗の受付をしてる。──そうなのに···
「なんで僕こんなことになったんだ?」
身体を綺麗に洗い流しながらそう呟いた。受付をしてる時間の方がまだ長いが、フリーで来られたお客様にその場で指名されてそのままプレイすることが多い。···ここは飛田新地みたいな感じじゃないんだけど···
しかも良いのか悪いのかは置いといて、本指名*1されることも多く何故か人気がある。
──勘弁してもらいたい。僕はただの受付なのにどうして···?
そう嘆きながらも自分の身体、そして部屋の中を綺麗にして本来の仕事場へと戻っていった。
──────
「甲斐さんありがとうございました」
「ああ、別にこういう仕事も嫌いじゃないしいいが、お前もうちょっとお客様との付き合い方考えろ」
「?」
「30分後にお前の指名入ってるしな。俺も20分後に入ってるから、他のやつに受付頼めよ」
「え、また?!」
「じゃあ、色々準備してくるわ」
···普通に受付の仕事がしたいです。
気が遠くなりながらも、受付の仕事を変わってもらうために頼み込みに行った。
あーもうなんで僕はこんなことになったんだよ···
そう嘆かずにはいられなかった。
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