貞操観念が真逆の世界で、風俗の受付(兼キャスト) 作:パッチワーカー
更新が遅くなりました。ごめんなさい。
少しずつ投稿頻度は戻っていくはずなので許してください。あと、普通に短いのも許してください。
「待たせちゃってた?」
「ううん、さっき来たとこやね──ほんとにいつも同じような服だよねー」
「まあね、いろんな服見たいし早く行こ」
「うん!まずはあそこの古着屋さんやね〜」
土曜日。酔っ払いたちに絡まれた厄介な仕事が終わり、約束していた瑠衣さんと服屋に来ている。
──昨日はるるさんと話していたことが頭によぎるが、ここはお店じゃない。···それに瑠衣さんといるんだ、切り替えないと。
「···澪くん、今日元気ないね。どしたん?···は、話聞こか〜?」
「そのフレーズ言うの恥ずかしがるくらいなら言わない方が良いと思うよ?···まあちょっと昨日バイトで、色々あってさ」
「いや、恥ずかしがってるわけやないけど、なんかな〜って思って。そっか、お酒扱ってるとこのバイトやし、客層とか悪いん?」
「客層で言うと、常連さんとかは良い人が多いけど初めての人だと悪い人もいるよ。昨日は典型的な酔っ払いに絡まれちゃって」
そう言うと、瑠衣さんはバツが悪そうな顔をした。──あ、瑠衣さんも酔っ払って絡んできたね。
「あーね、私みたいなのがいたんや」
「仲良い瑠衣さんに絡まれるのと、見ず知らずの酔っ払いに絡まれるのじゃ訳が違うし安心してね」
「──仲良い···」
「服屋にいっしょに来てるんだし、仲良いでしょ?」
「そ、そうやね!いやなんかさ〜」
「なんか瑠衣さんって自信があるようでないよね」
一見明るそうだが実はそんなことがなく、自信があるように見せているだけで実はそんなことない。
頑張ってそう見せてる人だ。
「普段はどうでもいいんやけど、澪くん関係ではさ──自信あるように見せないと付け入る隙を与えちゃうと言うか、なんというか···」
「僕が不特定多数の人と関わらなくてもいいようにしてくれてるんだよね。それは分かってるし、お酒のときもそういう気遣いだったよね、ありがと」
そういう優しい気遣いができる人に出会えてよかった、そう思いながら自然に笑みが溢れた。
「そーいうとこあるから、アタシは自信持たないといけないんよね···」
「ん?──着いたけど、何から見る?」
「──あーもうっ!なんか恥ずかしくなったし、アタシ上の服見てくるから澪くんはズボンとか見といて!!」
「···いっしょに見るんじゃないの?」
顔を赤くしながら瑠衣さんは店内に入って行った。···中からは「いらっしゃませー!」とどこかで聞いたことがあるような元気な声が聞こえた。
「···昨日のお客さんもああいう声してたなぁ」
ポツリと声をこぼしながら、僕もドアに手にかけ中に入る。すると、
「いらっしゃいませー!」
見覚えのある金髪が迎え入れてくれた。
────────
「男性のお客様は珍しいですね、何かお探しの服はありますか?」
「···あーズボン見たいんですけど、どこらへんにありますか?」
「メンズのズボンでしたら、あの辺りにございますので、ご覧くださいませ」
──お酒が入っていないのとお仕事中だとこうも人は変わるのか。普通のお姉さんになってて驚いたし、普通にこの人気づいてない。
礼を言ってズボンを見に行く。
ぱっと見で良さそうなズボンに手に取るが、思考があまりまとまらない。···周りを見渡してしまう。
(あの3人仕事終わりに来てたみたいだし、多分いるよね)
あかりさん、ゆみさん、そして···
「──何かお探しの
後ろから声をかけられた。
──そう、あのお姉さんもこんな声だった。振り返ると、黒髪ショートでメガネはかけていないが、少し低い声で少し目力があるお姉さんがいた。
「···メガネかけてないんですね」
「眼鏡があると怖がられてしまうことがよくありますので。────君は怖いくらいに変わりませんね、ああいうところで働くことに対して、別になんとも思ってないのですか?」
少し呆れたように言われた。──まあ、確かに僕は何も変えてないね。
「まあ、僕は受付ですし最悪いいかなって思ってます」
「···普通の受付の方でしたら、私も特に何も申しませんが、こんなに魅力的な方でしたら、用心しておくに越したことはありませんよ」
昨日と同じように、情熱的な声でそう言われた。熱を帯びた視線が真っ直ぐこちらに注がれる。···本当に、このお姉さんの目は、見ているとどこか引き込まれそうになる。光の奥にある何かに触れたくなるような、危うい魅力がある。
けど、今はそういう場所じゃない。それに、ここに来た目的も違う。胸の奥で跳ねる鼓動を抑えるように、すーっと息を吸い込む。肺の中に満ちる空気とともに、熱も、迷いも、ゆっくりと沈めていく。少し落ち着いてから静かに口を開く。
「···僕こういう服しか持ってないので、少しイメージが変わる服をお願いしてもいいですか?」
「色々試してみましょう。──あと安心して。幸い、今日はゆみが休みだし、あかりは君のこと覚えてなかったから気にせず見て行ってね」
「···うん。ありがと」
──不覚にも息を吸うより、詩乃さんの言葉を聞いた方が落ち着いたと感じてしまった。
その瞬間、自分の胸の内で何かが静かに波打つのを感じた。けど、それはきっと話の内容が心を落ち着かせたからだ。そうでないと困る。彼女の声が、あんなにもやわらかく、心の隙間に染み込んでくるようだからなんて──そんな理由で心を揺らすわけがない。
そう言い聞かせながらも、耳の奥にはまだ、詩乃さんの声が残っていた。
その声を振り払えないまま、詩乃さんの服選びを見ているときだった。
「──澪くん〜、何着かジャンルの違う服持ってきたけど良さそうなのある?」
「···瑠衣さん!」
「服屋さんのなかやし静かにね。てか、澪くんがデカい声出すの珍しない?どしたん?」
あ、···色々とヤバい。ちょっと忘れかけてたのもヤバいし、大学と
「──失礼ですが、こちらの男性はお連れ様でいらっしゃいますか?」
「は、はい。大学の友達です···」
「大学の友達ですよ。···さっきまでこの店員さんにズボンとかの相談してたんだよね。──店員さんありがとうございました。また、気になることがあったら伺いに行きますね」
「分かりました。では、るい様、
大学を守るために、仕事の危うさを増やしてしまった。本名がバレるのがどれだけの痛手になるのかは分からないけど、面倒くさいことになるのは確かだ。
ちゃんとここで大学と仕事が分けられるようにしよう。
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