貞操観念が真逆の世界で、風俗の受付(兼キャスト)   作:パッチワーカー

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 気づいたら5000文字以上書いてて、2分割にしました。
 なので、ちょっと短めになってます。次話は近いうちに出ます。



厄介なおしごと

 

 

 

 

 木曜日の学校が終わり、午後からは家でゆっくり休んだ。休むときは1人で寝ていたい。

 ···隣に誰かあったかい人がいて欲しいと思わなくはないけど、そんな人はいない。──いたとしてもそれはお客さんとキャストの関係なだけで、その関係を取っ払うとただの他人だ。

 

 ──ああ、ほんとに面倒くさいことを考えてしまった。

 思考を止め眠りについた。

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 

 

「···また外回りのお仕事の途中で来られたんですか?」

 

「うん。まあ今日は一件取れたし、帰りの時間は指定されてないからいいかなぁって」

 

「···こちらとしては嬉しいですけど、お金払えなくなるようなことがないようにお願いしますね」

 

 金曜日、お昼から受付のお仕事をしている。

 金曜日という曜日はお仕事終わりのお姉様方が多く来る日だ。目の前にいる例外的な人を除けば、夕方から夜にかけてのお客さんが多い。

 感覚的には居酒屋さんみたいなものだろう。お仕事終わりに疲れを取りに来たり、癒しを求めて来たりすることが多い。

 

「──今日も同じ人だし、待ってればいいのかな?」

「そうですね、あと3分ほど待合室でお待ちください」

 

 昼間の受付はすごく簡単だ。利用されている回数の多い方や予約されてる方、リピーターの方がほとんどで、受付としてはほぼやることがない。

 しかし、今この時間はないが、後のためにしなればならないことはまあまあある。

 

「──今日のキャストで残りそうなのは、この辺りかな···」

 

 夜の忙しい時間に悩んでいるお姉さんにスッと提案ができるよう、今いるキャストと夜に予約が入っていないキャストの特徴と名前を頭に入れる。

 大体は覚えているけど、齟齬があってはいけないしちゃんと覚えないとならない。

 

「···最悪甲斐さんに回してなんとかしよ」

 

 金曜日の夜というゴールデンタイムに備えて、予約の電話や対面での受付に勤しむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界は元の世界と比べても、

 「キャスト第一」の精神が根付いている。

 

「だぁーかーらぁー!私ら3人でこう回転?みたいなのってできないのか聞いてんの!可愛い顔してるくせして分かんない??」

 

 だからこそ、こんなお客さんは久しぶりだ。お酒に酔ってるにしても酷い。

 

「はあ、当店ではそのようなサービスは行ってませんし、お1人につき1人と定めてますので」

 

「ほ、ほら店員さんもそう言ってるし、確かにめちゃめちゃ可愛いけど!あかりちゃん落ち着いて!ね!」

「2人とも落ち着いてくれ。···実物を見たいんですけど、それはどうにもなりませんか?」

 

 ──1人はわがままを突き通そうと騒ぐし、1人は落ち着かせようとして余計に騒ぐし、1人はマイペースに当店にはない要望を出してくる。

 

 ···これだから金曜日の夜は嫌だ。騒いでいる2人からどことなくお酒の匂いと赤らんだ頬が居酒屋さん帰りであることを物語っていて居酒屋さんに八つ当たりしそうになる。

 

「カタログであればお見せできますが···」

「写真より実物がいいな。なんとかなりませんか?」

 

「──まあ、では一度お三方に同じ部屋に入っていただいて、その後に1人ずつ、計3人のキャストに入らせるのでそこで決めてもらう。このような形ならご用意できますが、いかがでしょうか?」

 

「まーそれでもいい!」

「だから声大きいって!」

「ゆみもうるさいって。···時間は私らが入ってからですか?それとも、相手が決まってからですか?それと指名料はかかりますか?」

 

 あの、貴女絶対シラフですよね?冷静な疑問を投げかける前に友人たちを全力で鎮めてもらいたいんですけど。

 

「──そうですね。当店にはないサービスですし、お客様が入ってから···いえ、1人目のキャストが入ったらスタートになってしまいますね。また、指名料は指名したときだけかかります。今回は最後のお1人以外かかりますね。

 時間がかからないように要望表を書いてもらいたいのですが、よろしいですか?」

 

「──仕方ないですね。こちらが無理を言ってるのは重々承知してますし、それでお願いします。2人とも黙って要望表書くよ」

「おーけー!」

「し、静かに!」

 

 

 ──なんだこのアンバランスなトリオは。

 クソ騒いでいる金髪のギャル風のお姉さんに、あわあわしながら鎮めてる風に騒いでいる少し茶髪のお姉さん。

 そして、

 

「私詩乃っていうのですが、君の名前は?」

「れいといいます」

 

「──れい君、君を指名することはできないんですか?」

 

 どこか人を見透かすような独特な目でこちらを見てくる黒髪ショートでメガネのお姉さん。女性にしては少し低い声も相まって、かなり理知的で冷静さを纏っていて()()には似つかわしくない。

 ···なんでこの3人で来店したんだと本気で不思議に思った。

 

「──私はキャストではなく受付なので···私以上に魅力があるキャストが控えてますので心配しないでくださいね」

 

「···かなり残念です。ですけど、今日のこの感じだと受付である君がいなくなると回りそうにないですし仕方ないですね。また暇そうなときに来ます」

「あのそうではなく、単純に私はキャストではないですし、私も毎日いるわけではないですし···」

 

 申し訳ありません、と顔を下げて断る。···て、あの···?

 

「···え···?」

「──君のことが欲しい、君を求めたいって思ってるけど、ダメかな?」

 

 頬に温かい手で触られ、下げていた顔を上げられた。少し低い声が落ち着きを与え、魅力的な目がざわつきを与え、目を···離せない。

 

「···お姉様、思っていた以上に温かいですね」

「情熱的って話かな?──確かにそうかもしれませんね。あの2人の酒気に当てられて熱に浮かされてるのかも」

「私···いや、僕結構冷たいんですけど大丈夫かな」

「もちろん。私の熱で君の冷たさを溶かすから任せて」

「ふふっ、本当にイメージと違いますね」

「カッコつけてるだけですよ。ーー君みたいな可愛い子の前でくらい、情熱的にカッコつけないと女性としてダメでしょ?」

 

 見つめていると変な気分になる目を見ていたからか、それともお姉さん方の酒気や熱気に当てられたか、何でかは分からないけど受け入れたくなった。

 

「──また、お越しになるのをお待ちしています。今度は1人で来てくださいね。そうでしたら考えときます」

 

「はい、···次は君のことを手に入れるから覚悟してて」

 

 最後に手で唇に少しだけ触れられ、じゃあ、と友人が待つ待合室に帰っていった。

 ──怪盗か何かのセリフみたいにカッコよくて、一瞬ドキッとした。···あのお姉さんの目が、こちらを全て見通すような目が頭から離れない。見ていると心がざわつき、ドキドキする。けれど、少し低く優しい声が安心感を与える。

 心が、情緒がおかしくなりそうになるが、今は受付の仕事中だ。切り替えないと。

 

 

「はぁー、あつ」

 

 その()さが妙に心地良くて、気持ち悪かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




 お客様メモ

 あかり 金髪ギャル風。責められるより責めるのが好き。甘えたいし優しくされたい。年上が好き。
 ゆみ 少し茶髪真面目風。甘えられたい。責めたり責められたりどっちも好き。同年代や年下の可愛い系が好き。
 詩乃 黒髪ショートメガネで少し低い声。妙な目力がある。男性の好みは特になく、フィーリング。

 誤字報告など待ってます。
 モチベーションにめっちゃ関わるので、評価とお気に入り、感想よろしくお願いします!
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