貞操観念が真逆の世界で、風俗の受付(兼キャスト) 作:パッチワーカー
数分後、流石に落ち着きを少し取り戻し要望表を書いてくれた。
他のお客さんがいたら一発で出禁にしてたけど、運が良いのか悪いのかは分からないけどいなかった。
要望表に目を通すと、特段変わった好みや趣向もなく、この要望ならなんとかなりそうだと思った。けれど、
「···お姉様、30分だとそういったプレイが満足にできないと思いますが大丈夫ですか?ご友人の方は60分ですし、そちらに合わせてはいかがてすか?」
「いえ、大丈夫ですよ。どのように進んでいくのかが知れれば良いので」
「えっ!?しのちゃん短くない??」
「そんな時間で何するんー!」
「今日はそういう気分じゃないだけ。けど、どういう人がいるのかは見たい。2人も私がいれば3人見られるからいいじゃん」
──どこまでも理性的というか、なんというか···
「···では、30分と、60分でご案内いたしますね。──料金は新規割込みで10000円と19000円ですね」
お金を払ってもらい、部屋まで案内する。
「できる限り要望表に書かれたキャストをご用意いたしますので、少しお待ちください。時間は1人目が入ってきてから数えるようにしますので」
では、と頭を下げて受付室へと戻る。···他のお客さんが来てなくてよかった。騒音で気分を害されるところだった。
「──甲斐さんとか当てるの嫌だなぁ···というか甲斐さんは指名入ってるし、普通に考えよ」
まず、1番騒いでいたあかりさんを見る。
要望表
1. お名前(ニックネーム可)
あかり
2. 年齢(または年代)
23歳
3. 本日ご希望の内容(複数選択可)
- 話を聞いてほしい
- 癒されたい
- 甘えられるより甘えたい
- 責められるより責めたい
- 気持ちよくなっている姿が見たい
4. NG行為・苦手なこと•苦手なタイプ
- 乱暴な行為
- 乱暴な口調で話されること
5. スキンシップの希望レベル(目安)
★☆☆☆☆=ほぼなし
★★☆☆☆=軽く触れる程度
★★★☆☆=友達以上恋人未満くらい
★★★★☆=恋人っぽい
★★★★★=恋人以上に甘々に
希望★★★☆☆
6. 好きなタイプ
同年代、顔が良い系
7. 呼ばれたい呼び方(ニックネーム・敬称など)
呼び捨て
8. 相手にどう接してほしいか(自由記述)
-責められても嫌がらないで欲しい。
9. その他、決めておきたい•伝えておきたいこと
敬語なし
話多めでしたい。
──────
──んー、責められるのが好きな23歳くらいの人か。そういう人なら難しくないし大丈夫。
次、あわあわしていたゆみさんを見る。
要望表
1. お名前(ニックネーム可)
ゆみ
2. 年齢(または年代)
24歳
3. 本日ご希望の内容(複数選択可)
- 話を聞いてほしい
- 優しくハグやキスをしてほしい
- 癒されたい
- 甘えるより甘えられたい
- 責めるより責められたい
4. NG行為・苦手なこと•苦手なタイプ
- 乱暴な行為
- 乱暴な口調で話されること
- 派手な髪やタトゥーが入ってる人
5. スキンシップの希望レベル(目安)
希望★★★★☆
6. 好きなタイプ
同年代、年下、弟系、可愛い系、甘えてきてくれる系
7. 呼ばれたい呼び方(ニックネーム・敬称など)
呼び捨て、ちゃん付け
8. 相手にどう接してほしいか(自由記述)
甘々な感じで来て欲しい。
ペットの犬みたいな感じで来て欲しい。
9. その他、決めておきたい•伝えておきたいこと
敬語なし
甘えられたいです!
──────
あぶな、人が少ないときだったら僕が行く羽目になってた。けど、今日はキャストも多いしなんとかなる。
ここだけは確定でこの人だ。
キャストの待機室に電話をかけ、目当ての人を呼ぶ。
「はーい」
「はるるさん左手の1番奥の部屋に行ってください。今回は少し例外で、お客様が3人待たれてるので指名されるのを待つか、自分から選んでいただいてもいいですよ」
「おっけー、選ばれた後の部屋は〜?」
「扉を開けてある部屋が2つあるので、そのどちらかにですね。出てすぐのところと、入り口近くのところが空いてます」
「じゃあ出てすぐのところもらうね〜」
「少しお酒を飲まれてるので、声が大きくなってるかもなので気をつけてくださいね」
はるるさん。金色の髪の毛や表情がふわふわしていて可愛い系のキャスト。···24歳だがそうは見えず、本人も「19でもいけるかな〜」と言っているほどの童顔だ。
「僕を選びそうなのはどんなお客さん〜?」
「ゆみさんという方ですね、甘えられるのが好きで可愛い系が好きらしいです」
「僕甘えるのはあんまり好きじゃないんだけど、仕方ないな〜」
「はるるさんより可愛い人はいないですし仕方ないですね」
「じゃあ甘えんぼの良い子ちゃん演じて頑張ってくるよ〜指名もぎ取ってくる〜」
そう言って軽やかに歩いていった。
はるるさんは見た目ほどほわほわと軽くなく、仕事中は演じているタイプだ。
相手が何を求めているかを的確に考え、それを実行している。そのため評判は良いが、本人は少し疲れ気味になっている。
「はるるさんには申し訳ないけど、可愛い系はあんまりいないんだよね···」
心の中で謝りながら、しのさんの要望表を見る。
要望表
1. お名前(ニックネーム可)
詩乃
2. 年齢(または年代)
24歳
3. 本日ご希望の内容(複数選択可)
- 話を聞いてほしい
- 優しくハグしてほしい
4. NG行為・苦手なこと•苦手なタイプ
- キス
- 乱暴な行為
- 乱暴な口調で話されること
- 派手な髪やタトゥーが入ってる人
5. スキンシップの希望レベル(目安)
希望★★☆☆☆
6. 好きなタイプ
年下、弟系、可愛い系、
7. 呼ばれたい呼び方(ニックネーム・敬称など)
さん付け
8. 相手にどう接してほしいか(自由記述)
話がメインで、軽いスキンシップもしたい。
9. その他、決めておきたい•伝えておきたいこと
今日は誰でもいいです
──────
···ここ風俗なんですけど···
まあなんとかなく分かっていたけど、今日は本当にそういうことをする気がないらしい。キスまでNGなのは珍しい。
頭が痛くなりそうになりながら、あかりさんが好きそうな人を適当に1人見繕い、連絡が来たら部屋に行ってもらう旨を伝えた。
ふぅーと息を吐き、はるるさんからの電話を待つ。
少ししてプルルプルルと掛かってきた。
「はい」
「はるるです〜、ゆみさんに指名されちゃいました〜」
「分かりました。後はよろしくお願いしますね」
「はい〜」
はるるさんは上手くやったらしいし、後2人適当に相手をつけよう。
さっき伝えたキャスト部屋に向かうよう連絡し、あと1人を適当に見繕う。
──詩乃さんは本当に誰でも良さそうだけど、話が上手い人の方が良さそうかな?
外見より話が上手い人を電話で呼び、NG事項にキスが入ってることや30分なこと、そういうことをする気がないことを伝える。
「ホストみたいな感じですね」
「まあそんな感じです」
風俗というよりホストとかそういうカテゴリの仕事だ。
伝え終わると電話がかかってき、「あかりさんに指名された」とのことだ。
「残っているのは先ほど話した方なので、よろしくお願いしますね」
「はい。ちょっと話してきます」
──これでようやく厄介な仕事が終わった。
──────
その後の仕事はいつもと変わりなく進んだ。初めてのお客さんがいたわけでもなく、フリーで入ってくるお姉さん方には好みに合うような人を紹介できた。
それに、先に終わり出てきた詩乃さんに絡まれることもなく、あかりさんが騒ぐこともなく退出していった。
普段ならアンケートを取るところだが、あの人たちに話に行くのは面倒くさい。けれど、1人は書くことが確定している。さっき電話があったし、そろそろ出てくる。アンケート用紙とペンを手に取った。
「今日はありがと〜いっぱい甘えさせてくれて嬉しかったよ〜」
「こちらこそありがとぉ!私もはるるくんに甘えてもらえて本当に癒されたよ!!」
「あの、お客様ここではお静かに」
「ご、ごめんなさい···!」
「ごめんね〜ゆみちゃん声大きくなるクセがあるんだよ〜悪気はないし許してあげて」
「大丈夫ですよ──アンケート書いてもらいますか?」
「うん〜ゆみちゃんちょっとだけ時間もらえる〜?」
「うん、大丈夫!」
手に持っていた2つをはるるさんに渡して、受付の場所へと戻る。···それからはるるさんが「ばいばい〜」と言うまではそっちを向かず、仕事に集中する。
ちゅ···んッ
「んっ···こ、ここは···?」
「──ここはね、ゆみさんが感じたことを書けばいいんだよ〜?」
耳をすますとリップ音らしきものと、明らかに声が上擦っているのが聞こえてくる。
ここがはるるさんのダメなところであり、人気の秘訣でもあるところだと思う。
「待合札5番でお待ちのお姉様」
「···はい。ああいうのも興奮しますよね」
「···お客様の興奮になってよかったです。──扉を開けられましたらキャストが立っていますので」
「私も少しおねだりしてみますね」
「···では、お楽しみくださいませ」
──早く終わらないかなぁ。
「じゃあまたね〜」
「また甘えさせてあげるね!」
そう思っているとやっと終わったらしい。ようやくあのメンバーが去って「ふぅー」と一息ついた。
「お疲れみたいだね〜」
「······ゆみさんはどうでしたか?」
「どうもこうもないよ。典型的なお客さんって感じ。こっちが頑張ってるのも気づかず、満たされてたよ」
「沼りそうなお客様だと思ったけど、やっぱりそうなりますか」
「うん。『はるるくんを甘えさせられるのは私しかいない』って本気で思うタイプだね。値段をあと2、3倍しても余裕で来てくれて貢いでくれそう」
いつものふわふわした話し方ではなく、普通の話し方になってるときは周りに人がいなくて疲れている証だ。
半年間話していると結構分かりやすくはあると思うけど、初見だとまあ無理かな。
このときは僕も敬語のレベルを落として素に近づける。
「オプションつけさせてみて、様子窺ったらどうです?」
「ありだね、今日でも指名料上乗せでもらったし、延長も友達と来てなかったらいけてたっぽいし」
「早いですね。またストレスで体調崩しても知らないですよ?」
「まーそのときはそのときかな。体調崩すのが増えたら彼女でも作って看病してもらうよ」
「そのときくらいは心から甘えてみては?」
「はっ、···僕が本心から甘えたいなんてことを考える気がしないよ。甘えるのは仕事だから、そのときはゆっくり休むよ」
プロ意識が高いというか、甘えることを求められすぎてて認識がおかしくなっているというか。
どちらにしても辛い人生であることには変わらない。
「れいくんにそんな顔する権利はないけどね。君も同じようなモノでしょ?本心から心を預けられる人が見つからない同士仲良くしよ。甲斐くんは器用だし見つかりそうなのが腹立つよね」
「甲斐さんはいつか見つけて辞めそうですよね。──僕も酷い方だとは思いますけど、はるるさんの方が数倍未来がないと思いますよ」
「確かにね。僕はもう割り切ってるけど、れいくんはまだ未来があるかもね。大学や職場とかに希望を持っているのかもしれないけど、君の甘い考えは打ち砕かれるよ?
──女性っていうのは君が思ってるより執着がある。それを逃げてるだけじゃなく真正面から捉えないと」
「僕は、逃げては···」
ない、と言葉が出ない。その通りだと納得してしまっている自分がいる。
気に入った人と話し、絡み、えっちなことをする。
それが何かの間違いや歪みで歯車が狂ったら、光がなくなる。
「早いところ彼女か何かを作らないとね〜れいくんお仕事だよ〜」
「──分かってます」
外からコツコツと聞こえる足音で、僕らは切り替え、はるるさんは奥へと引っ込んでいった。
少し扉の前で立ち止まられてから、ガチャッと扉が開き、淡い希望を抱きながらお客さんの顔を見る。
「やっほ、甲斐くん空いてる?」
「···少々お待ちください」
少し抱いていた淡い希望がなくなった。
──ん?······僕は、僕は今誰を願っていたんだろ?
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