無職転生の二次創作   作:オオユキ

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砂漠の旅

 

 

 

 バシェラント公国を出発して、4ヶ月。

 ベガリット大陸北部の港町にある宿の一室。

 俺は魔術で部屋の温度を下げる。

 中央大陸北部でやってたことの応用だ。

 火魔術で空気を暖めることができるなら、その逆。

 水魔術で周りの空気を冷やすこともできる。

 これを使えば、旅の道中も少しは楽になるだろうか。

 あの日差しの中、涼しさを保つには相当温度を下げないといけないな

 

 昨日、船をおりた時には既に日が暮れかかっており、俺が砂漠の本領を知ったのは今朝のことだ。

 汗をびっしょりかいて目を覚まし、蒸し焼きになりそうな室内の温度を慌てて下げた。

 あと少し起きるのが遅ければ、熱中症になっていたかもしれない。

 こんなことなら、空調の効いた高級宿を選ぶべきだった。

 

 

 アスラの港町に着くまで、ぶっちゃけ楽な道のりだった。

 俺が、冒険者として旅に慣れてきたのもある。

 中央大陸が比較的安全な大陸なのもある。

 けれど一番はやはり、エリナリーゼの存在だろう。

 彼女のおかげで、道に迷わず、魔物とも大した戦闘にならずに済んだ。

 Sランク冒険者とは北部で何度も一緒に依頼を受けたが、その誰よりも頼りになった。

 もしかしたら、旅の同行者としてなら、ルイジェルドに匹敵するほどかもしれない。

 エリナリーゼはあと一歩、筋肉の差で彼に及ばないがね。

 

 それに、ここ1ヶ月は船の上で揺られ。

 冒険者も大勢乗っていたから、俺が戦闘に駆り出されることもなく。

 簡単な旅が続いて、少々気が抜けていたのかもしれない。

 砂漠の気温差を甘く見ていた。

 気を引き締めよう。

 エリナリーゼに頼りきりになるのは良くない。

 

「失礼しますわ⋯⋯あら涼しい」

「外はとてつもない暑さでしたからね」

 

 魔術でコップと水を作り、エリナリーゼに渡す。

 ちなみに彼女は、着いて早々、昨晩も別の宿でしっぽりやってきたらしい。

 相変わらず精が出ることで。

 いやエリナリーゼは出させる側だな。

 肌にツヤを感じるのは、行為の成果か、はたまた暑さで汗が滲んでいるのか。

 どちらでも反応に困るので特に掘り下げないが。

 

「この後について、簡単に確認します」

「わかりましたわ」

 

 水を飲み干したエリナリーゼも、俺の隣に腰掛ける。

 相変わらず距離が近い。

 くっ、煩悩退散!

 

「ま、まず物価が安いこっちの市場で物資を補充。

 そのままの足で案内人と護衛を雇いに。

 交渉役をエリナリーゼさん、通訳が僕。

 明日の朝イチでラクダ車を買って出発、という流れであってますか?」

「ええ、問題ありませんわ。ルーデウス、いつもこういうところはマメですわよね」

「そうですかね」

「ええ、とてもパウロの息子とは思えませんわ」

 

 たしかにあいつは、いろいろ適当に生きてきただろうな。

 どうしようもないやつだ。

 だからこそ、さっさと駆けつけて安心させてやらないとな。

 

「さあ、それじゃあ確認も済んだことですし、早速行動開始です!」

「そうやって急にやる気を出すところは、パウロにそっくりですわね⋯⋯ちっ、嫌なこと思い出させないでくださいまし」

 

 エリナリーゼは一人で呟き、一人で嫌な顔をしていた。

 よほどパウロの事が嫌いらしい。

 男なら誰でもいいと豪語する彼女にここまで言わせるとは⋯⋯。

 何をやったんだか。

 そういえば、パウロとエリナリーゼが別れたのは何年前だったっけか。

 俺が今15歳だから、15年以上前だよな。

 

「つかぬことをお聞きしますが、エリナリーゼさんって何歳なんですか?」

「あらあら、女性に歳を聞くもんじゃありませんわよ」

「ちなみに僕はもうすぐ50歳です」

「嘘おっしゃい」

 

 なんて話をしながら、俺たちは宿を後にした。

 

 

 

---

 

 

 

 護衛との交渉は難航した。

 理由はもちろん、エリナリーゼの呪いである。

 しかし、俺の想像していたものとは少し違った。

 

 ベガリット大陸には、サキュバスという魔物が生息している。

 サキュバスの詳しい生態は聞き流していたが、その名にたがわず男の天敵なんだとか。

 そしてこの砂漠では、サキュバス対策に、どの護衛隊にも一定数の女戦士がいる。

 サキュバスが現れたら戦い、戦いの後にはフェロモンにあてられた男に抱かれる女戦士だ。

 もちろん、そんな事をしていれば、すぐに妊娠してしまう。

 けれども、女戦士はそれを誉れとして、身重のまま故郷に帰るらしい。

 出産したら故郷の者に任せ、また戦士として大陸を練り歩くのだ。

 

 女戦士は、護衛という職業柄、異民族の相手をすることもある。

 異民族との混血が生まれても、差別はない。

 しかし反対に、男戦士と異民族の女が交わるのは受け入れられないらしい。

 

 まあ理屈はわからなくもない。

 男戦士の相手をするのは、女戦士にとっての矜恃ってやつなのだろう。

 戦士は皆、譲れないものを持っているのだ。

 あの頼りになるハゲ頭の戦士もそうだった。

 

「戦闘は僕らだけでもできますし、雇うのは案内人だけでもいいのでは?」

「旅の間、ずっと一人の相手をするわけには行きませんわ。本気になられたら困りますもの」

 

 エリナリーゼは呪いのせいで、特定の男を作らない。

 北部の冒険者とも、一定の距離感を保っていた。

 体の方はベッタリくっつけにいってたが⋯⋯

 しかし、数ヶ月単位で同じ相手とすれば、多少は情も芽生えるだろう。

 少なくとも、俺が相手なら確実にそうなる。

 まあ俺は一生、そんな機会はやってこないけどな。

 

「案内人を二人以上雇うのは?」

「それも少し考えましたけど⋯⋯最後の手段ですわね」

 

 この大陸の案内人は常に人手不足で、料金も相応に高い。

 商人の中には、案内人を雇わずに移動する者も多いんだとか。

 そうした商人を狙う盗賊団というのもあるらしい。

 案内人を必要以上に雇うのは難しいということだ。

 

「では気を取り直して次の組にいきましょう」

 

 結局、護衛との交渉には二日かかった。

 最終的に、呪いに理解のあるベテラン3人組と契約するまでに、十数組の護衛隊に断られた。

 この3人組は、つい先日まで5人組だったらしい。

 メンバーの内2人が魔物に殺され、残りは年齢も相まって引退しようかと悩んでいたところに、俺たちが現れたというわけだ。

 人数的に、俺とエリナリーゼも魔物の相手をすることになりそうだ。

 

 ちなみに案内人は、一発で契約に成功した。

 エリナリーゼとヤレると聞いて、値段もそこそこまけてくれた。

 もうどっちがサキュバスかわからんな。

 

 

---

 

 

 メンバーは俺、エリナリーゼ、男2人と女1人の護衛、エリナリーゼに魅了されてしまった案内人の計6人。

 2頭のラクダもメンバーに加えてやろうかと思ったが、砂漠では食料に困った時にラクダを食うらしいので、やめておく。

 初めてのラクダ肉は、罪悪感なしでおいしく食べたいからな。

 

 屋根付きの荷台に俺とエリナリーゼが乗り込み、案内人がラクダを操縦する。

 護衛は荷台の前側に2人、後ろに1人。三角形で囲うフォーメーションだ。

 ちなみに、俺たちもいざとなったら戦闘に参加すると伝えてある。

 リーダーには、指示通りにしてくれるなら問題ない、むしろ助かると返された。

 まあ俺の役割は後衛から魔術での援護になるだろうから、そこまでの労力じゃない。

 

 案内人の見立てでは、ラパンまでは4ヶ月。

 当初の予定よりだいぶ早い。

 パウロよりも早く着くんじゃなかろうか。

 

 

 未だに焦燥感がある。

 エリナリーゼにゼニスの居場所を聞いたあたりからずっと、ロキシーに会いたいという強い思いが。

 この先で、ようやく会える。

 ロキシーに触れて、ロキシーと話せる。

 ちょっとばかり幸先の悪いスタートになったが、俺だって旅に関して全くの素人というわけじゃない。

 護衛もついてる。

 装備も食料も揃ってる。

 準備は万全だ。

 

「それじゃあ、出発しましょう」

 

 こうして、砂漠の旅が始まった。

 

 

 

---

 

 

 

 一日目。

 ひたすら変わり映えのしない景色を進む。

 魔物との戦闘も数回、俺の出撃に至っては一度もなかった。

 危険な大陸と聞いていたので、少し拍子抜けだな。

 

「もっとうじゃうじゃ魔物がいると思ってました」

「南の方に行きゃ、それこそ魔大陸にも引けを取らないくらいのデカさと数になってくぜ」

 

 案内人はなぜか自慢げだ。

 さすがに魔大陸と同じってのは言い過ぎだと思うが⋯⋯

 

「ベガリットは北と東がわりかし安全だから、世界で2番目に危険な大陸なんて言われ方をするんだ。それ以外のところはA級B級の魔物がゴロゴロいやがるってのに」

 

 なるほど、平均をとった結果、2番目になるだけということか。

 しばらく旅を続けたら、俺とエリナリーゼも戦闘に駆り出されることになるだろう。

 早いうちに、ベガリットの魔物について聞いておかなければ。

 

「それにこの大陸は、どこへ行っても暑さからは逃げられねぇ。油断してたらすぐ干からびちまう」

 

 そこに関しては、旅が始まってからひしひしと実感している。

 今だって、何もせず荷台に座っているだけなのに、体力がどんどん削られていく。

 この暑さでは、常に体調に気を配っておかなければならない。

 

 俺の場合、魔術を使えば暑さによる危険からは脱却できるだろう。

 できるのだが、つい先ほど魔術で周りの温度を下げていたら、護衛から「体が鈍るのでやめてほしい」と言われ、渋々解除した経緯がある。

 護衛なら雇い主に楽させてくれよと思ったが、口には出さない。

 いざとなった時、護衛には100%のパフォーマンスを発揮してもらいたいからな。

 あ、もしかすると俺のことは雇い主だと認識してない可能性もあるのか。

 エリナリーゼの通訳として動いていたし、立場的には自分たちと同じ雇われの身だと思われてるのかもしれない。

 余計な軋轢を生むくらいなら、俺が見下されるくらいどうってことないが。

 や、別に見下されてる空気は感じないけども。

 ともあれ、早いとここの暑さに慣れていかなくては。

 

 

 

---

 

 

 

 二日目も、一日目と特に変わらない。

 一日中、ただ移動するだけ。

 強いて言うなら、案内人や護衛とのコミュニケーションを増やした。

 最初は気さくな案内人と話していたのだが、こいつはすぐ自慢話に逸れていくので、護衛の一人にターゲットを変えた。

 この案内人は元冒険者で、隙あらばその時代の武勇伝を聞かせてくる。

 自慢話するのは構わないんだがな⋯⋯

 こいつの最終ランクはB。

 やたら誇張しているが大したエピソードではなく、すぐに飽きがくる。

 

 護衛の方はというと、寡黙な男で、俺の質問に答えるのみで会話が弾まない。

 とはいえ、俺は砂漠について知らないことも多い。

 それに男は、クールだが無愛想ではない。

 

 結果、この日の後半は、ほとんど護衛との質疑応答に励んでいた。

 明日はもう少し、案内人にも構ってやろう。

 

 

 

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 旅を始めて三日目の夜。

 膝を抱えてうずくまる俺の背後。

 ラクダ車の荷台から、理性を失くした男たちの荒々しい息づかいと、女たちの艶めかしいよがり声が響いてくる。

 

 旅が始まってからの雑談の中で、ベガリットの魔物についても質問していたが、サキュバスの生態については聞き流していた。

 理由は単純。

 サキュバスの洗脳は、不能の男には効かないからである。

 まさか本当に男の脳みそは股間についていたとは。

 

 別にそのことについて、今さらいちいち虚しくなったりなんかしない。

 サキュバスという単語に心が踊らなかったといえば嘘になるが、砂漠での危険が減ると思えば、むしろラッキーだと思った。

 

 その認識は改める必要がある。

 EDに悩む俺だからこそ、サキュバスには危機感を持ってなきゃならなかったんだ。

 

 大体なんなんだよ。

 護衛の男たちも、昼間はあんなに口数の少ない奴らだったのに、ちょっとサキュバスの匂いを嗅いだだけで鼻息荒くしやがって。

 案内人だってそうだ。

 冒険者時代の自慢話をよくしてたくせに、あんな低級の魔物一匹にやられやがって。

 

 ⋯⋯いや、わかってる。

 サキュバスがそういう魔物だってことは。

 これがただのやっかみだってことは。

 今はただ、ちょっとシチュエーションが悪いだけだ。

 俺以外の全員がすぐ傍で盛っているのに俺だけ仲間はずれで、

 それに加えて、砂漠の夜風で体が凍えているから、少し気分が沈んでるんだ。

 

 ああ、でも。

 これから先、俺は耐えられるのだろうか。

 この孤独感に。

 シたくてもできない無力感に。

 

「くっ⋯⋯ぅぅ⋯⋯」

 

 ポケットから御神体を取り出し、顔をうずめて嗚咽する。

 今はもう、何も考えたくない。

 

 

 

---

 

 

 

 旅を始めて一週間。

 最初の町に到着した。

 

 さて、今日は一日暇だがどうするか。

 これだけ暑い中動き回るのは億劫だが、荷台でじっとしていてもいいことはないだろう。

 この精神状態なら、町の喧騒の中にいた方が、気が紛れるというものだ。

 港町ではあまり出店を見て回る時間をとれなかったから丁度いい。

 砂漠の町をレッツ観光だ。

 

「はぁ⋯⋯」

 

 と意気込んでみたものの。

 俺の心情は、砂漠の空と真反対の曇り空。

 重い足取りで、所狭しと出店が並ぶ道を進む。

 中にはこの大陸特有の目新しい商品もあるが、そんなものでは気分は晴れそうもない。

 

 病が治らないという事実が、こんなにも受け入れ難いものだとは思わなかった。

 昨夜も見せつけられた、欲望のままに交じりあう男女。

 ヒトガミの助言に従っていれば、俺もあんな風に。

 そう思い知らされているような気分になる

 

 ラパンまで、まだあと数ヶ月。

 乗り越えられる気はしないが、いまさら引き返すこともできない。

 ⋯⋯先は長いな。

 

 

 

---

 

 

 

 最初の町を出てから数日。

 

 魔物の数が激増した。

 俺とエリナリーゼも、予定通り戦闘に参加した。

 ベガリットで戦い慣れたベテラン3人に、無詠唱魔術と予見眼を持つ俺、S級冒険者のエリナリーゼが加わって、苦戦することはそうない。

 魔物の強さも魔大陸のそれと比べれば一段劣る。

 しかし、遭遇する頻度だけなら、魔大陸とも大差ない。

 どうやら案内人の話も、全部が全部大げさというわけじゃないらしい。

 

 もっとも、ずっと座っていても、ネガティブな考えばかり浮かんでくる。

 魔物の相手をしている間は、目の前のことに集中していればいい。

 魔物もそこまで脅威じゃないし、俺としてはこっちの方がずっと気が楽だ。

 

「ふぅ、これで終わりですね」

「ええ。道中、顔色が優れないようでしたけど、問題なく動けていますわね」

「ようやくこっちの気候に慣れてきたみたいです」

「ルーデウス、意外と体力がありませんのね?」

「しばらく雪国で活動していたのでね。やはり暑さがどうにも」

 

 エリナリーゼは、俺の沈んだ表情を、暑さに参っていると解釈したようだ。

 実際、暑さは暑さで辛いけども。

 

 もしかしたら、聡い彼女は本当の理由にも思い至っているのかもしれない。

 しかし、彼女も彼女で、夜の行為をしなければならない理由がある。

 サキュバスに出くわした男たちにとっても、エリナリーゼにとっても、文字通り死活問題だ。

 だから俺の本音にわざわざ触れないようにしている、とかな。

 

「⋯⋯メンタルが限界そうだと判断したら、無理やり気絶させてでも寝かしつけますわよ」

「強引なのも嫌いじゃないですがね。そこまでの重症ならどのみち動けませんよ。そうなる前に自己申告しますし」

「⋯⋯そうですか」

 

 エリナリーゼに釘を刺された。

 もしあまりの暑さに耐えられなくなったら、どでかい氷の塊でも出してみるか。

 

 

 

---

 

 

 

 さらに二週間が経過した。

 

 ここ最近、また魔物の数が増えた。

 案内人の話だと、これからまだまだ増えていくらしい。

 地図上では、大陸中央部に差し掛かったところか。

 既に魔大陸と同じか、下手したらそれ以上の数になっている。

 これより増えると、いよいよ休む暇が無くなるな。

 まったく誰だよ、ベガリットは2番目に危険なんて言い出したのは。

 考えたくないが、そのうち辺り一帯を凍らせるような時がくるかもしれない。

 

 それとようやく、俺のメンタルも回復してきている。

 魔物の相手ばかりで、日中のネガティブシンキングが減ってきたからだろうか。

 さすがに全快とはいえないが、少なくとも男連中とは普通にコミュニケーションを取れるようになった。

 魔物セラピーか。

 何か新しい事業になりそうな⋯⋯さすがに無理だな、うん。

 

 

 

---

 

 

 

 サキュバスは、分類上はC級に相当する魔物だ。

 しかし、それはあくまで男を惑わす催淫効果を考慮してのもの。

 戦闘力はせいぜいE級程度である。

 かといって、じゃあ他のA級B級の魔物が食い尽くしているかというとそうでもない。

 あの匂いが獣避けの役割を果たすのか、

 あのフェロモンは魔物にも有効なのか。

 なんにせよ、サキュバスとの遭遇率は変わらない。

 

 今夜も、いつものように御神体を取り出して、顔をうずめ涙をこらえる。

 前世では、怪しい宗教にハマった人間のことをバカにしていた。

 あんなのを本気で信じるなんて、ありえないと。

 けれど今なら、少しだけ理解できる。

 本当に辛いとき、なにかに縋っていないと壊れそうになる人の気持ちが。

 自分を救ってくれた誰かを思い浮かべると、ほんの少し力をもらえることが。

 

 昼間に回復したメンタルも、とっくに地の底まで落ちてしまった。

 さすがにまだ、すぐ真後ろで行為をされるのは堪える。

 どうしても、フェロモンによって本能むき出しになった男たちを、妬ましく思ってしまう。

 せめてあと一人か二人、女が多ければ、俺もここまで孤独に震えずに済んだのに。

 その条件だと、こっちにエリナリーゼが送られてくるだけなので、言っても仕方のないことだが。

 

 旅の道のりは、まだ半分以上残っている。

 そして旅が終わった後もずっと、この孤独感は続いていく。

 

 ヒトガミは今頃、俺を嘲笑っているのだろうな。

 わざわざ助言に逆らって、その結果、あいつの言う通り後悔しているマヌケな俺を。

 

 

 その夜は、後悔と絶望感がずっと、頭の中で渦巻いていた。

 もうとっくに、心は悲鳴をあげていた。

 

 

 

---

 

 

 

 一ヶ月後。

 さらなる絶望と、未来のさらなる後悔の種と遭遇することを、このときの俺はまだ知らない。

 

 

 




次回は、対人戦闘
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