待ちぼうけの騎士〜天童アリスの護衛従者〜   作:弥次郎兵衛

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旧友

⬜︎

 

私たちはアリスの中に潜み、世界の滅亡を企む『key』からアリスを助け出すために来た

 

その…はずなのだが

 

『何をするのですか!』

【それはこっちのセリフだ馬鹿野郎!なんて事言わせてんだこのポンコツAI!】

 

アリスがこのまま消えた方がいいと発言した後

騎士がkeyの頭に拳骨を落とした

 

…え?なんで?

みんな唖然としている

 

おかしい、ふざけている様に聞こえるかもしれないがkeyは所謂ラスボス的な立ち位置のはずなのに…

 

『う…、頭部に正体不明の異常発生…』

【それが「痛み」だこの野郎。いつもいつもデータの中にいるせいで殴れなかったが、ククッざまーみろ】

『…覚えておきなさい』

【記憶力は良いんだ、ちゃーんと覚えておくぜ。明日ぐらいまでな】

『………』ゲシッ

【痛ってぇ!お前蹴りやがったな!おい待てコラァー!】

 

すんごいフレンドリーだ

 

 …ジーー

 

ハッ、モモイ達がこっちを見ている

 

え?あれに入って行けと?いや…あの会話に入るのはちょっと…

で、でも先生としての威厳があるし…

 

……よーし

 

“あ、あの…騎士?”

【ゼーゼー…悪いユミちゃん、今コイツを〆るから後にしてくれ】

“アッ、ハイ”

 

待って、そんな「先生…」みたいな目で見ないで…っ!

 

【大体、オレはお前を否定しないがあれはやり過ぎだ。王女に消えたいとか言わせるんじゃねぇよ】

『あれはどちらかと言うと、調月リオが起こしたことが発端ではないですか?』

【お前が暴れなければ良かっただけだろうが、と言うかテメェよくもオレを撃ったな】

『貴方のしつこさは誰よりも知っているので、最初に排除すべきと判断しました』

 

…ん?何か話に違和感を感じる

 

【しつこいって…ゴキブリじゃねーんだぞ】

『私と三日三晩戦ったくせによく言いますね』

 

あれ?もしかしてkeyと騎士って

 

「二人は…知り合いなのですか?」

 

アリスが口を開いた

 

そのとおり

この二人の話はすごくフレンドリーで、まるで旧友の様だった

 

【んー、まぁもう隠さなくてもいっか】

 

『…では改めて、私は王女の侍女である『鍵』、そして』

 

 

 

 

【名も無き神々の王女、その護衛である『門番』だ。よろしく、王女】

 

 

 

 

…え

 

 

 

 

”「「「えええぇぇーーーーーーーー!?!?!?」」」“

 

ーーー

ーーー

ーーー

 

「え?騎士ってアリスの本当の従者だったの!?設定じゃなくて?」

【おう】

「じゃ、じゃあ騎士って名乗っているのは?」

【そっちの方が好きだから】

「そこは単純なんだ…」

 

さっきの緊張感は何処へやら

各々が騎士に語りかけている

 

それにしても騎士がkeyと同じ様な存在だったとは驚きだ

通りでアリスのことを気に入っている訳だ

 

「騎士は…騎士もアリスに世界を滅ぼしてほしいのですか?」

 

アリスは少し暗い顔をしながらそう言った

 

アリスにとって今まで一緒にいた大好きな人物が、世界を滅ぼすというkeyの仲間となると思うところがあるのだろう

 

【…世界を滅ぼすのならオレは従う】

【なぜならオレは王女の護衛であり従者だから】

 

みんなの体が強張る

やっぱり騎士もkeyと同じだったのだろうか

 

「それなら【ただし!】

 

アリスの言葉を遮る

 

【それを王女が望むなら、です】

【もし、王女が世界を滅ぼさずゲームをしたり】

【クエストをこなしたり】

【みんなと一緒にいたい、のであれば!】

 

 

 

【オレは、貴方を尊重します】

「騎士…」

 

アリスの顔に光が戻り始める

 

【王女の望みはなんですか?】

 

意を決した様にアリスは口を開く

 

「アリスも勇者になってモモイ、ミドリ、ユズ、先生に騎士と冒険を続けたいです…!」

「魔王である…アリスが、そうしても、許されるのなら…!」

 

それを聞いた騎士は嬉しそうに肩を振るわせ

 

【お望みのままに!】

「わっ高いです!」

 

アリスを抱き上げそのまま肩車をした

 

さっきの暗い顔はどこへ行ったやら

アリスはいつもの明るい笑顔を浮かべている

そしてアリスは私達が大好きな笑顔で言う

 

「ふふ、みんな!帰ったらまたゲームをしましょう!」

”「「「もちろん!」」」“

 

◼️

 

ーーー

ーーー

ーーー

 

【ああ悪い、蚊帳の外にしちまったな】

『……いえ』

 

王女の件も一段落し、ユミちゃんたちがどうやって帰ろうか色々話し合っている間にオレは

ポツンと立っていたキィに話しかけた

 

いやーそれにしても、ようやく王女に王女呼びすることができたぜ

 

【どうだ、やっぱり王女は心優しい少女だったぞ。だからお前も】

『騎士』

 

お前もこれから王女のお側で世話を、と言おうとしたところをキィに遮られた

…ここのところ誰かの話を遮ったりすることが多いな

 

『私にとって王女は大切な存在です』

 

知ってる

 

『本来なら言うつもりはありませんでしたが、貴方のことも大切に思ってます』

 

知って…いや知らん

え、キィってオレのこと大切にしてくれてたの?うわ、照れる

 

『私は「鍵」です。その役目は世界を滅ぼすこと』

『それは変えられない事実であり、歴史なんです』

 

いつかに聞いたことがある言葉を聞く

 

『そんな私が王女の側に、貴方の側に居れば調月リオの様な存在が』

『再び大切な者達を傷つけるかもしれない』

 

まるでさっきの王女の様に弱々しい声で続ける

 

『…先ほどの王女の様にと思ったでしょう』

『ええ、その通りです』

 

おいおい人の心を読むなよ

プライバシーの侵害だぞ

 

『誰が否定しようと、己自身が嫌がっても変えられないのです』

 

キィは目を瞑る

 

『魔王は私です』

『大切な存在を守れるのなら私は…』

 

…待て、嫌な予感がする

 

【おい、何を】

 

キィ(相棒)はゆっくり目を開け、そして

 

 

 

 

 

 

初めて、笑みを見せてくれた

 

 

 

 

 

 

『自己破壊プログラム、起動』




キィは騎士と出会ったことにより、心が豊かなAIです
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