騎士が王女を肩車している
王女が笑い、騎士がいる
そんな光景を見た私は
何故か、あの夜のことを思い出した
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本当に、この男は
【…なあ、そろそろ終わりにしないか?】
『貴方を再起不能にしたら終わりにしましょう』
当たり一面に転がるリソースの残骸
壁中が傷だらけになり、周りの天井も吹き飛んでいる
【お前だってもうロボのリソース無いだろ】
『貴方こそもう三日間休まず戦闘をしているのです、相当疲労は溜まっているはずですよ』
きっと渋い顔をしているのだろう、雰囲気で分かる
それにしてもこの自称騎士には驚かされる
まさか、ここまで粘るとは
【王女のためになるかは目覚めた時に聞けばいいじゃねぇか】
『いいえ、王女は世界を滅ぼすためにいるのです。そのための私です』
前々からこの『門番』は自分を尊重しろとまるで口癖の様に言う
【何度も言ってるが別にお前にアレやめろ、コレはだめだとか無責任なことを言うつもりはねぇ】
【オレが言っているのは自分と王女を尊重しろって事だ】
『だから言っているでしょう、自分を尊重した結果が王女と世界を滅ぼす事なのです』
まるで私の思考がわかるかの様に話を進める
長年いるから分かる、そう言いたいのだろうか
『そして、いくら貴方でも機械である私に長期戦は無理なのですよ』
【なっ】
隠していたリソースで騎士を攻撃する
不意打ちのつもりが防御された
【一体全体何体いるんだ】
愚痴をこぼしながら彼は攻撃を捌いていく
しかし
【ガッ】
疲労の限界が来たのか少しふらつき、その隙を攻撃する
そのまま騎士は壁を破り、倒れた
そしてそのまま騎士にトドメをさす
筈だった
使用している監視カメラに
天井が崩れ、満点の夜空が広がる中
月明かりがまるでスポットライトの様に王女を照らしていた
その光景にAIである筈の私は思考を止めてしまう
月に照らされた未だ眠る王女はあまりにも神秘的で、幻想的だった
しばらく見惚れていた間に騎士が動き、それに連れられ意識を戻せた
(しくじりました。戦闘に気を取られ、まさか王女のいる部屋に入ってしまうとは)
そう考える間にも騎士は立ち上がり
騎士は私の視線をが気になったのか
後ろを向き、王女を見た
【…あ】
そういうと騎士はゆっくり、ゆっくりと姿勢をかがめ
王女に跪いた
何故かはわからない、自分はAIの筈だ。なのに
何かが、締め付けられる
きっと、この光景は
私が消えるまでメモリに残されるだろう
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長年一緒にいるから分かる?
それなら逆もあるでしょう
私も貴方のことならよく分かりますよ
貴方が何故そんなにも私を止めようとするのか
貴方のことです、きっと王女と一緒に仲良くしてほしい
そんな単純なことでしょう
ええ、分かりますよ
私も同じですから
王女と共に騎士が笑みを浮かべながら過ごす毎日が
貴方の言うキィの望みなんです
だから私はいない方がいい
だから自ら消えようとしているのに
『何をしているのですか!』
【うるせぇ!こっちは必死なんだよ!】
◼️
『自己破壊プログラム、起動』
その言葉を聞いた後の行動は、自分でも驚くほどにスムーズだった
まずキィに近づいて起動したプログラムの詳細を把握
さすがと言うべきかプログラムが途中で停止できないことを確認
今自分にできる最適解を生み出し、実行する
『な、何を!』
【そのプログラムごとオレに移植させる】
この精神世界ならそれが出来る
「どうしたの?」
“騎士、何やってるの?”
ユミちゃん達がこちらの異変に気付いた様だ
あがががががががががががっ
や、やばい
移植し始めた途端、何かがオレの中で削り取られていく
痛みはない、それが尚更怖い
けど分かる、確実にオレの何かを削り取っていくのが
『今すぐやめなさい!貴方まで消えますよ!!』
【だからってみすみすお前が消えるのを見てろってのか?!いいや無理だね!】
『私がいれば貴方や王女にまでも危害が及ぶかもしれないのですよ!?故に私は消えようとしているのに!』
【それは、困るな】
『なら!』
ああ、とても困る
【この世から唯一無二の相棒が消えるなんて困る】
『…ッ!』
ぐっやばい、意識が
この感覚も久しぶりだ
あの夜の喧嘩した時を思い出す
あの時もこんな風に意識が朦朧としてて…
あ、これ走馬灯だ
アカン考えるな考えるな
そのまま召される
“騎士!消えるってどう言うこと!?“
【安心しろユミちゃん、確率は五分五分だが追従者越しにオレの意識を飛ばせる様にしたから死ぬことはない…はず……多分………きっと】
王女が心配そうな顔をしている
…申し訳ねぇな
『何でっ、貴方は王女の護衛でしょう!』
【確かに…オレは、騎士は王女の護衛だが、それと同時に】
『…ッ…ヨジロウ!!』
…久々にお前から呼ばれたな
その名前であまり呼ぶなって言っただろ
そんなことを思いながら、オレの意識は消えていった
二人はあの夜見た光景を忘れない
騎士は月明かりに照らされた王女を
Keyは月明かりに照らされた