[はいユミちゃんの番]
“ちょっと待って忘れてる…次どうするんだっけ?”
えぇ〜、これ出来るって聞いたら
『小さい頃やった事があるからバッチリ!』って言ったのそっちじゃーん
はぁ、しょうがねぇ
[そこのを取って、下から掬う様に…]
“ああ〜!思い出した思い出した!懐かしい〜!”
最後まで聞きなさい
途中でわかっても人の話を遮っちゃいけませんよ
分かりましたか?仮にも教師なんでしょう?…おい、おいって!
トントン
扉からノックが聞こえる…誰だ?ってヒフミか
[よおヒフミ、お前も眠れな“あっ絡まった”って出来てねぇじゃねぇか!さっき何を思い出したんだよ!]
“だって〜最後にやったの子供の頃だしぃ〜”
言い訳無用!
あ〜こんなに絡まって…ホラ手ぇ出せ、解いてやる
そんな様子を見ていたヒフミが奇怪なものを見るような目で、ようやく口を開く
「…あの、二人とも何してるんですか?」
え?いや、見ての通り
“[あやとり]だよ”
紐の輪っかを両手の指で弄ってんだ、分かるだろ…よし、解けたぞ
痛めてないか?…なら良かった
「いえ、あやとりは分かりますが何故…今?深夜ですよ?」
“ヨジロウがやろうって言い出したから”
[暇だったから]
ハナコとアズサをストーキングしてから目が覚めて暇だった
そこで丁度ユミちゃんの部屋から灯りが漏れてたので突撃した訳だ
まあ、目的なんてなかったから転送で紐を取り出してあやとりを始めたのが現在
…ハナコ?知らんよ、そこら辺水着で徘徊してんじゃね?
“テレビゲームと出せないの?”
[転送の登録にかかる時間は対象の体積に比例するからな、デカいとかなり時間が掛かるんだよ]
ちなみにオレが着ている鎧は一年と半年かかった
「…転送って何で[ヒフミは!何しに来たんだ!?]あっそうでした」
あっぶねぇ〜、マジックって言ってたの忘れてた
今更説明すんの面倒くさいからしたくない
おう
ヒフミが来た理由は明日の試験に緊張して寝れず
オレと同じ様に暇でユミちゃんに会いに来たらしい
「暇だからって訳じゃ無いのですが…」
苦笑いで否定するヒフミ…………の後ろでいつの間にか立ってるハナコ
「私も来ちゃいました♡」
「きゃあ!!」
あらハナコさんいらっしゃい、お宅も背後取りですか?
なら甘いな、死角にいたのは高得点だが油断している相手じゃぁまだまだ
警戒している相手の後ろを取るのが一流ってやつよ
[先は長いぞ]
“何の話?”
オレが極めたかくれんぼの話
ーーー
ーーー
⬜︎⬜︎
私がヒフミちゃんを驚かしてから、ほんの少しでコハルちゃんも先生の部屋にやって来ました
アズサちゃんはいませんが…話をするには丁度いいです
[なあなあ見て見て、ほうき]
“あ〜それ昔出来たのにぃ、やり方忘れてるー!”
視界に頭を抱えてる先生とあの人が映ります
呑気に先生にあやとりを教えてますね
…本当にこの人は
先ほどのアズサちゃんの事など忘れている様で
まさか、本当に気にも留めていないのでしょうか?
様子を見てもポーカーフェイスという訳でもありませんし
「…はぁ」
「? どうしたのよハナコ、ため息なんかしちゃって」
これ以上考えても無駄ですね
この人の事は『虚言癖を持つどこかおかしい人』と思った方が良さそうです
それよりも早く例のことを伝えましょう
「実は先ほど、シスターフッドの方々に少し会って来たんです。色々調べたい事があって…。」
そこから聞いた話を皆んなに伝えました
試験会場に多くの正義実現委員が派遣されている事
そしてティーパーティーの戒厳令によって会場の建物全体が隔離されてしまっている事
試験を受けたいのなら彼女達を敵に回さなければならない事
持ち得る情報を全て伝えました
「ふぅ…」
ですが…その間
ーーー
ーーー
[見て見て、ちょうちょ]
“ヨジロウ、ちょっと空気読もうか”
ーーー
ーーー
[見て見て、七段梯子]
“はいはい、少し静かにしようね”
ーーー
ーーー
[見て見て、アノマロカリス]
“ちょっと黙っ…え?何これどうなってんの??”
ーーー
ーーー
話の終わった今でも
[見て見て、ガンマラカントゥスキトデルモガンマルス・ロリカトバイカレンシス]
“…それ生き物?”
なんかヨコエビ科の甲殻類をあやとりで作ってますし…っ
もう!この人は本当に!もうっ!!
何なんですか!私も普段は掴みどころが無いとは言われますが!
この人ほどマイペースじゃありません!!
「…私のせいだ」
「あっ、アズサちゃんどこ行ってたんですか?」
ヒフミちゃんの声で我に戻る
いつの間にかアズサちゃんが戻って来たみたいですね
少し暗い顔をして部屋のドア付近に立っています
「みんな聞いて、話したい事がある」
連れられて部屋の空気も神妙な物になっていきます
「ナギサが探している『トリニティの裏切り者』は私だ」
「…はい?」
「…え?急に何の話…?」
「……」
ここで告白したという事は[な、何だってーーー!!??]…嘘でしょう??
[つまりアズサはスパイだったって事か!]
「ああ、そうなる」
え?え?……え?
気づかなかったのですか?
あんなに目の前で殺害計画を話していたのを見たのに?
…もう嫌です、この人
「私はもともとアリウス分校出身で、書類上身分を偽ってトリニティに潜入していたんだ」
[…は?]
ーーー
ーーー
ーーー
そこからアズサちゃんの告白を聞き、私達は話をしました
ナギサさんのヘイローを破壊しようとしている事
誰かの命令では無く、自分自身の考えでそれを阻止したい事
今までの生活が楽しくて、守りたい事
…そんな真っ直ぐな目に当てられ、私も少しばかり
なら私もそれ相応の事をしましょう
「何せここには正義実現委員会のメンバーと、ゲリラ戦の達人と、ティーパーティーの偏愛を受ける自称平凡な生徒と、トリニティのほぼすべてに精通した私が居ます。その上、ちょっとしたマスターキーの先生にあやとり上手のヨジロウさんまでいらっしゃるのですから、この全員で力を合わせればきっと、トリニティを半日で転覆出来ます♡」
「て、転覆!?」
[………]
うふふ、皆さん驚いてますね♡
「ヨジロウさ…ヨジロウさん?」
少しばかりの皮肉を混ぜたのに反応が無いので、怒ってしまったのかと思いましたが
そんな様子は無く、目を見開いてアズサちゃんを見ています
私を見ていないという事は転覆発言では無いですね
あんなに喋っていたのに先ほどから黙ってて気でも触れ…何かあったのかと思っていましたが…
見たところ、何かに驚いて頭の中で処理しきれていない様です
口には出しませんがコハルちゃんも理解しているのに何か分からないことでもあったでしょうか?
[改めて聞きたいんだが…アズサはアリウス出身なのか?]
「ああ」
[それでトリニティとの関係を良くする為に来たと]
「それで合っている」
その言葉を聞くとヨジロウさんは嬉しそうに笑い
[そうかそうか!
「わっ」
(…?)
今のセリフ…一つ、いえ二つ気になることを言いましたね
それに気付いたのか、頭をクシャクシャされているアズサちゃんは聞きます
「待っ、待って、ヨジロウはアリウス分校を…アリウスを知っているのか?」
[え?そりゃ勿論]
あっけらんと答えるヨジロウさん
自分で言うのは何ですが他の人が知っているとは思いませんでした
私はこの疑問を解消する為に、それとほんの少しの好奇心で質問をします
ですが
「お聞きしますが…一体、どこで?」
その後に放たれた言葉で
私は、考えを改める事にしました
[ああ、そういえば言ってなかったな]
『この人が持っているのは虚言癖じゃ無い、重度の
だって、あんなにも楽しそうに懐かしむ顔で『あり得ない事』を言うのですから
[オレは昔]
だって、あり得ませんから
普通に考えても、あり得ませんから
どう考えても、どう思考しても、あり得ませんから
[
そんなこと
聖女がいるなら騎士がいても不思議じゃ無い