待ちぼうけの騎士〜天童アリスの護衛従者〜   作:弥次郎兵衛

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皆さん知ってます?絞首台は別名『十三階段』とも言われ……え?知ってる?
………………………………そっか


十三階段で言えば六段目くらい

晴れ渡る青空

雲はところどころあれど、それがより空の青色を引き立たせる

そして───

 

“……ねぇヨジロウ”

 

同じくらい顔面蒼白になっている、オレ

 

[王女に嫌われたら死……王女に嫌われたら死……王女に嫌われたら死……王女に嫌われたら死……王女に嫌われたら死……王女に嫌われたら死……王女に嫌われたら……死!!]

 

“大丈夫?”

 

[だいじょばない]

 

“だいじょばないかぁ…”

 

トリニティを出発し、いざミレニアムへ向かっているのだが

これから王女に三つ編みの件を報告して、もしそれで王女に嫌われるかもしれないと思うと……恐ろしくてたまらない

 

いつもは王女に会えるだけで足がエアロゲル並みに軽いのに、今じゃオスミウム並みに重い

……あかん、想像しただけで足が震えて来た

 

“それにしては私の歩く速さと同じじゃん”

 

[そこはほら、凄く会いに行きたいと、行きたくないでプラスマイナスゼロ……みたいな?]

 

それよりもどうしよう

王女に三つ編みが壊れた事言ったら嫌われるかなぁ…

嫌だなぁ……嫌われたくないなぁ……くそぅ涙が……

 

“大丈夫だよ、ちゃんと説明したらアリスも分かってくれるから、そんな不安がらないの!”

 

[ありがとうなぁユミちゃん、わざわざ着いて来てくれて]

 

“いいってことよぉ!”

 

にっこり笑顔で細い腕に力こぶを作るユミちゃん、こりゃ生徒に人気なわけだ

ユミちゃんがウジウジしていたオレを引っ張ってくれなかったら、そこら辺の隅で2〜3日は踞ってたと思うし、『私からも経緯も説明してあげる』と言ってくれたのだ……聖人かな?

 

[例え王女に嫌われてもこの恩は絶対返すからな……ショックで自殺してなければ]

 

“じゃあ尚更アリスに嫌われないようにしなくちゃね!フフン、これでも話術は得意なんだよ?”

 

[……口八丁]

 

“何ですってぇ!?”

 

褒めてるんですよ聖人サマ

最近は口八丁が『口だけは達者』みたいな意味に伝わってるらしい

今の世代は語彙力が色々と無い、何でも『すごい』とか『ヤバい』で済まそうとする

まぁアビドスとかでシロコが適当に投げたペットボトルが壁に当たり、そのまま床に立ったとき

 

『まるで切り倒した木の中に犬のミイラを見つけた様な奇跡だな』

 

と言ったらその場にいた全員の頭に『?』が浮かんで微妙な空気が流れた

いやまぁ、確かに分かりづらかったかもしれんが

あんな『何言ってんだコイツ』みたいな目で見なくてもいいじゃん、傷つくわ

 

それ以降、オレも『すごい』とか使う様にしたのである

オレは世代の流れに浮かぶナイス騎士、時代にはいつだって適応するのさ

そう言えばキィがこの前モ、モイが間違った言葉を王女に教えていて叱ったとメール出来たな

 

[……あっ、そう言えば帰る連絡してねぇ]

 

エンジニア部からもらったスマホ(自爆機能付き)を取り出す

これは機械だった頃に分解しようとしていた事に対してのお詫びでくれたのだ

 

……いや、違うんだよ、醤油差し機能との二択だったんだよ

誰だって電話するたび醤油の匂いのする連絡機器とか使いたくねぇだろ?

そのかわりスマホを耳に当てる度に爆発しないかかなり緊張する

オレも3D機能を付けてもらおうかな

 

ちなみに聞いたら刺身食べてる時に作ろうと思ったんだって

……何故スマホに搭載しようと思ったんだ??

 

"ねぇねぇ、メールしないの?"

 

[ん?……ああするぞ]

 

オレとキィのやり取りが気になるのか、ユミちゃんがチラチラを視線をよこしてくる……あまり誉められたことではありませんよ?

まぁ別にヘンなこと書いてないので見られても支障はないのだが

気を取り直してオレはキィ宛にメールを打つとすぐにスマホから振動を感じる、相変わらず返信が早い

 

ーーーーー

 

騎士:今からミレニアムに帰ります

 

鍵:王女がミルクコーヒーとやらを飲んでみたいと言うので牛乳を買って来てください

 

騎士:他にも何か買うものありますか?

 

鍵:特にありません、気をつけて帰って来てください

 

騎士:はい

 

ーーーーー

 

[……よし、終わっ“いや夫婦か!!”うるさっ]

 

いつも通りにとんとん拍子なメールのやり取りを終えるとユミちゃんが何か言ってきた

夫婦?何故に?

 

“私だって偶にメールするからヨジロウがメールだと敬語口調なのは知ってたよ?でもさぁ今のは夫婦でしょ、だって牛乳だよ?帰りに頼む牛乳だよ?うわー夫婦だわー、熟年夫婦だわー”

 

お前は牛乳を買うことににどんなイメージを寄せているんだ

熟年夫婦……とは言わないが熟年相棒と言うならばあながち間違っていないか?

でもキィが目覚めたのはつい最近だし熟年とは言わないかもな

 

“それに!最後のこれでもかと優しさが滲み出す『気をつけて帰って来てください』だよ?いーなー、私なんていつもそっけない態度なのに……私もケイちゃんにデレられたい!!”

 

熟年というのであればオレの象徴でありアイデンティティ『鎧』と剣くらいか

こいつらはすげぇぞ?なんせオレの人生の殆どを共にしたからな!

熟年通り越して………何だ?『熟す』とかは果実とかで使うから熟した果実のその先───

 

[いやそれ腐ってね?]

 

“待って何の話?私の思想のこと?傷つくよ??”

 

あっそうだ、牛乳と一緒にフルーツケーキも買って帰ろう!




エアロゲル(バカみたいに軽い物質)
オスミウム(アホみたいに重い物質)
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