[あれ?アルじゃん、久しいな]
「……あら?コーチ……じゃ、じゃなくてヨジロウさん?」
別にどっちでもええで
あまりヨジロウって呼ばれたくはないが、実際に勉強を教えたヒフミはともかく、オレもコーチって性格でもないし……やっぱりどっちでもええで
それはある日のこと
お腹が減ったのでシャーレに帰る途中、教え子の一人のアルにエンカウントした
ちなみにユミちゃんは生徒を助けるため後回しにしていた仕事の処理でこの場にいない
すごかった、ユミちゃんの前に置かれたのは書類の『山』と言うか書類の『壁』だった
姿が見えず、向こう側から声が聞こえたのでこの表現は決して間違っていない
リンはもはや雰囲気が活火山だった
書類の山の隣に活火山ってか?ハハッ……いや笑えねぇよ
オレはその書類を運んできたアユムとモモカと一緒にその様子を見ていた
こう言っては何だが、見せ物としてはとても面白かった
だって山が壁になっていく様子を見るユミちゃんの顔ときたら!ハハッ!……こっちは笑えた
そんなこんなで、モモカの明太子ポテチを強奪しながら3人で鑑賞していたのだが
リンの一睨みで即時解散と言う名の逃走する事になった
真面目なやつが怒ると非常に怖いのだ、ソースはキィ
そして天気も良いので外で読書などをした帰り道、現在に至る
[……と言うか、どうした?そんなボロボロになって]
「仕事で少し……ね」
あちらこちらに土がついてるし、髪もボサボサ
足取りも重く、ため息は大きい
ボソボソと何やら今日の愚痴を言っている
[ザ・疲労困憊ってカンジだな、髪が少し乱れてるぜ]
「あら、本当?」
オレはそう言って頭に付いていた
いつもなら笑いながら指摘するが、なんか今日のコイツかなり疲れてるっぽいし、何よりアルは何だかんだ真面目なので、この事で恥ずかしい思いをさせるのも何だか申し訳ない
……と言うか頭に葉っぱが付くって、一体何があったんだアルよ
[ちょいちょいっと、よし、別嬪さんだな]
「ふふっ、ありがとう」
アルは感謝を述べるが、明らかに元気がない
アイドルならいつでもスマイルと教えたはずなんだがなぁ
………ふむ
[時に、そろそろ昼時だが、もうメシは食べたか?それとも誰かと一緒に食べるのか?]
「いいえまだよ、ムツキ……他の社員と今日は別行動で、まだあの子達は別の仕事中……コンビニで何か買うつもり」
ここ数時間先のことを考えたのか、アルはだんだんと表情と雰囲気を暗くしていった
その社員達と食べられないと思ったんだろうか?随分と仲の良いことで
独りぼっちはどうしても何処かで限界が来るからな
[ならよ、仕事帰りで悪いが……ちょっとばかしオレの依頼を受けてくれない?]
「……えっ」
ハッハッハッ、そんな目で見るでない
別に今からユミちゃんの仕事を手伝ってくれとか、そんな地獄への片道切符を渡そうなんて思ってないぞ?
いや、生徒に大人気なユミちゃんなら、案外喜ばれる……か?
ダメだ、あの仕事の量なら多分明日までかかるし、和気藹々とする時間も空気も無い
結局ただの地獄だな
「ごめんなさいヨジロウさん、その……依頼ならまた後日に」
まぁまぁ、話だけ聞いてくださいよ奥さん
お前にとっても悪い話じゃ無いからさ
[聞いた話じゃ、仕事であっちこっち行ってるんだろ?そこで見つけたアルが美味しい飯屋に一緒に食べに行って欲しい、報酬はお前が食べた分のご飯代だ]
「ご飯代……ヨジロウさん、それって私に奢[
[是非とも便利屋の社長さんが、食べたくなるような飯屋に連れて行ってくれ]
アルの事だ、奢るとか言ったら遠慮しそうだしもう少し言っておくか
[それともなんだ?オレはアルが食べたい料理分の金も持っていないと、そう言いたいのか??どーんと好きなものを食べてくれ]
「……ふふっ……ええ!任してちょうだい!依頼人が満足する、とってもおいしいご飯屋さんに、便利屋68の社長である私が連れて行ってあげるわ!」
わーい
ーーー
ーーー
「それで、3人目のハルカって子が引っ込み思案なのよ……あっ、でも2人と同じようにとっても優しい子なのよ?」
[ほー、そんでムツ……キ?とカヨ…「コ」コ、そしてハルカの3人で会社なんてやってるのか、すごいなお前]
目的の飯屋に行く途中、お喋りしているアルは随分と身軽な格好をしている
というのも、オレが荷物を持っているからって言えばそれだけの話なんだが
オレはアルのスナイパーライフルにコート、ついでにヒールを持っている
靴については俺が予備として持っていたスニーカーを転送し、交換させて履かせている
アルには『すっごく優しい!?!』とか驚かれた……いや待て、なぜ驚いた?
ヒールはなぁ、ユスティナですら『任務終わりの唯一の敵』とか言うほどだったからなぁ
任務とか仕事とかでこんだけ疲れちゃあ、歩く時ぐらいラクしたいよなぁ
ちなみにユスティナの皆んなに『脱げば?』と言ったら『騎士は可愛いを分かってない』と言われた、実に解せぬ
[銃もそうだが……随分と身なりに気をかけてるのもそれが原因か?]
「ええ!アウトローであり社長たるもの、社員にはカッコつけたいじゃない!」
[オレは結構お前のそういうとこ気に入ってるぜ]
ユスティナではヒールも制服として規定されていた、当然履き慣れていない新入生にはキツイものがある。何より、銃弾を受けても平気な生徒も靴づれすると痛がるのだ。まったくもって、意味が分からない
初任務の帰りとかよく靴づれした新入生をおんぶとかさせられたなぁ……多い日は6人くらい
両手に二人、両肩にそれぞれ二人乗せて、肩車一人におんぶで一人である
『鎧』はでかいからか肩車は人気で、目の前でよくじゃんけんが白熱していた
そういや、一度だけバルバラをおんぶしたこともあったっけな
任務が終わるとぺたりと座り込んでこっちに腕を広げてねだってきた
本当に靴づれしたのか怪しかったが……色々言いつつ素直におぶったな
靴づれは舐めてはいけないのだ……いや、脚を舐めるなって意味じゃないぞ?そんなの人として当たり前の事だからな?
「それにもう一人のハルカって子はね、私のことすっ……好きすぎるというか、私のこと『様』付けで呼んじゃうのよ?それに私の悪口なんて聞いたらすぐ怒っちゃうし……」
[そうか?オレもサク……恩人には『様』付けで呼ばれてるぜ?それに、オレも王女の悪口なんて聞いたら即座に切り捨てると思う]
「……普通なのかしら?」
[普通だよ普通、きっと、多分、おそらく]
それにしても少し元気になったらしくてよかった
そこそこ歩いたが、目的の場所は何処だろうか?
「あっ!あそこよ!あそこのラーメンがとってもおいしいの!」
そう言ってアルはニコニコとしながら指差す
よほど腹が減っているのか、今にも走り出しそうだ
……にしても笑顔が眩しいな、サングラス持って来ればよかった
店との距離は大体50メートルくらい先にある
指差す方向を目でなぞれば、そこにあったのは移動式の屋台
飯時にしては少し遅いからか、お客は一人しかいない
その店名は───
[……柴崎ラーメン、ねぇ?]
Q.なんかアルに甘くない?
A.何ででしょうね?あれじゃないですか?作者がブルアカ始めた理由だからとかじゃないですか?