[うはいうはい、はーへん、うはい]
「……『うまいうまい、ラーメンうまい』、かしら?」
「お褒めに預かり光栄だぜ、兄貴」
苦節5分、オレはようやくラーメンを啜る事に成功した
アルからお手本を見せてもらったり、コツなどをセリカや柴ちゃんから教えられ、何とか食べられている
柴ちゃんともお喋りできて結構有意義な時間も過ごせたと思う
「セリカちゃ〜ん、来ちゃいました☆」
「うへ〜、おじさんお腹ペコペコだよぉ〜」
「あっ先輩、いっらしゃい」
そう言いながら新たに来た二人の客はオレの隣にいるアル、その奥の席に座った
二人は慣れた様子でメニューも見ずに柴崎ラーメンを注文をする
その様子からここには以前から来ていることがあると言うことが察せられる
と言うか、ノノミと
「シロコちゃんとアヤネちゃんは後から来るからね〜」
「二人とも書類のチェックをしていて遅れちゃって……あら?便利屋さんの……」
「あっ……えっとぉ……ひ、久しぶりね」
残り二人は後から来るそうだが……なるほど、セリカがここで働いているのであれば自然とここに足は運ばれるわけだな。多分だが働いているセリカを茶化しに来たのが発端とかだろう
それにしても、アルはアルで何でこの二人にも気まずそうなんだよ
まさか、セリカ個人じゃなくてアビドスと小競り合いでもしたのか?(正解)
[いやいや、まさかそんな命知らずな……]
「どうしたの?ヨジロウさん」
「便利屋さんは今日はお連れさんがいるんですか〜?」
「そっそうなのよ!今日はヨジロウさんに美味しいご飯屋さんに連れて行くって依頼を……あっ!依頼の内容言っちゃった!」
……何だろう、コイツ思ったよりポンコ……天然ってヤツなんだろうか?
今日の任務で疲れているのかもしれない、たらふく食って元気になれアル
オレはそう思ったので即実行
麺の量も少なっているアルに『替え玉はいるか?』と聞けば
少し恥ずかしげにしながら『……欲しい』とのこと
[ヘイ柴ちゃん!アルに替え玉ぁ!]
「あいよぉ!」
「うへ〜、お兄さん優しいねぇ?」
「そうですね〜♤」
なんとなく元気よく注文すればあちらも良い声で返事してくれる
柴ちゃんのノリがいいところ、嫌いじゃないぜ
ーーー
ーーー
それにしても、案の定ノノミと鉄砲玉もオレの事に気づいていない様である
だが、個人的に気になるのは先ほどから交わされているアビドス組の会話だ
と、言うのも鉄砲玉の口調がどうもおかしい
「うへ〜」
[……『うへぇ』?]
「えっと、あのホシノって人の口癖じゃないかしら?」
オレの独り言に反応してくれたアルが答えてくれる
『うへぇ』ってなんだ?口癖?流行り言葉か?
「あれ〜?お兄さん、もしかしておじさんの事気になってる?ダメだよ〜、こんな体に興奮したら〜、人としてダメだよ〜」
[………………『おじさん』?]
コイツは、何を言っているんだ?
本当に鉄砲玉か?双子の姉妹とかって説は?才羽姉妹とかみたいに
「おじさんはホシノ先輩の口癖みたいなもので、私達はもう慣れましたけどまだちゃんと女子高校生ですよ〜♠︎」
[口癖……]
慣れたって言うことは、そこそこ前からその一人称は使われてたってことか
いつからだ?最後にアビドスと合ったのは数ヶ月前、少なくとも数ヶ月では口癖は口癖と言わないのではないだろうか?
それにオレの知っている鉄砲玉に比べたら恐ろしいほど物腰が柔らかい
こんにゃくかと思うくらいグニャグニャした物腰だ(猫背だし)
「ご馳走様!美味しかったわ!」
[はえーなアル]
隣を見ればアルの器はスープだけになっていた
いや早くね?さっき替え玉もらったばっかりですよね?
まあオレも食べ終わったし、そろそろ帰るかな
そう思った矢先───
「すみません、遅くなっちゃいました」
「ん、お待たせ」
見れば
これでアビドスの生徒が全員が揃った事になる
ユメは確かこの前卒業した筈だからカウントはしない
アヤネはホシノの隣の席についたがアヌビ……シロコはオレをじっと見ている
他のメンバーは一向に座らないシロコにハテナを浮かべている様だ
シロコは少し考えるそぶりを見せると口を開いた
「……騎士?久しぶり、ちょっとイメチェンした?」
[おうよ、ちょいと生物になってみたぜ]
「「「「……ん?」」」」
他のやつは気づかなかったのによく気づいたな
これもシロコが死の神であるからなのか、それともただの野生の勘なのか
……何となく野生の方が強い気がするな
そんなことを考えながらオレはいつも通り、もはや一種のお約束の様になった質問をする
[どうだシロコ、元気してるか?]
「うん、最近は色々あったけど楽しい」
[なら良し]
これまたいつも通りシロコを撫でる
コイツが絶望とかしたら世界が終わるからな、定期的に聞く様にしている
そもそもアビドスは5人しかいないのに、その内2人が厄ネタなのだ、ホント狂ってるぜ
シロコはアヌビスだし、鉄砲玉は鉄砲玉でヤバいのである
唯一の救いは少人数であるが故に管理しやすいことだな
[それじゃあオレ達は帰るわ、お前らも風邪引くなよ?]
「騎士、ダメ、まだここにいる」
[無茶言うな、飯は食い終わったんだ。今度ユミちゃ……先生を連れてくるから許せ、どうせ絆されてるんだろ?飴ちゃんあげるから]
「ん、分かった、ばいばい」
はー、ちょれ〜
オレは依頼通り(アルに奢るため)柴ちゃんに代金を払う
二人でこの値段か、経営大丈夫?助かるけども
……と言うか一人分じゃねぇか!そりゃ安いわけだわ!
え? オレは奢り?
……ああ、あの時の約束か、律儀だな柴ちゃんは
「ご馳走様でした」
[美味かったぜ柴ちゃん、今度は王女も連れて来たいと思うほどにな]
「兄貴ならいつでも大歓迎だぜ」
それともう一人、視線を向ければ他のアビドスのメンバーと一緒にオロオロしているやつがいる
何か驚くことでもあったのだろうか
[そうだ鉄砲玉、今度オレと『お話し』な?]
「う……へ………?」
そう言い残して、オレとアルは帰路に着いたのであった
ーーー
ーーー
ーーー
『鉄砲玉』
それは私がある人物から言われる
昔にその由来を聞いたことがあったけど『何も考えず、他者を顧みず、ただただ力だけ持ち、猪よりも真っ直ぐに動く銃弾みたいだから』と辛辣すぎる返答をもらった
怒られている途中に聞いたから口が悪かったのかもしれないけど、あまりにも辛辣すぎる
後日聞いたら『なんとなく』と言われたので、実際には深い理由はないようだった
「ちょっとシロコ先輩?!さっきの人が騎士ってどう言うこと!?」
「……?、騎士だったから」
「わ〜!騎士さんの中身ってあんな姿だったんですね〜!」
「あれ?騎士さんってロボットだったはずじゃ……?」
騎士は私とユメ先輩の恩人だ
ユメ先輩を助けてくれたし、私たちの関係も元に戻してくれた
恩人、そう、恩人なのだ
どうしよう、胸がものすごく高鳴ってる
さっきのお兄さんが騎士さんだったなんて今でも信じられない
でもシロコちゃんと交わした会話は何度も聞いた『お約束』のそれだった
「シ、シロコちゃん、ほっ本当に騎士だったの……?」
「うん、多分だけど騎士であってると思う、いつもの質問もしたし」
私はそれを聞くと顔をみんなに見せない様に俯く
視界にスカートを握る私の手が見える、無意識に力を入れてしまっていたようだ
多分だけど今私がしてる顔はきっと見せられないものになっているに違いない
ああ、しまったなぁ、こんなことならもっとちゃんとしていれば良かった
そう思いながらもノノミちゃんが心配してくれてしくれて下から私を覗き見る
私は体が震えるだけでそっぽを向くこともできない
ノノミちゃんは目を大きくして、口を開く
「ホ、ホシノ先輩?大丈夫ですか?お顔が───
その言葉を皮切りに店長さんも含めて皆んなが心配してくれる
ごめんだけど、今の私はそれどころじゃない
汗が背中を伝っているのを感じる
騎士は恩人、そう恩人、恩人なのだが
私は騎士と会ったばかりの頃、1度だけものすごく怒られたことがある
それがトラウマになってしまっているのだ
確かに戦えば私の方が強いと思うけど、そういう問題じゃない、怖いものは怖いのだ
いい人だと分かってるし、現にシロコちゃんはものすごく懐いている
だけど怖いんだもん!しょうがないじゃん!
なので私は騎士の前だけでは昔と変わらず敬語で話している
だけど今回の出来事で色々聞かれた、『うへ』も!『おじさん』も!だらしない態度も!!
ノノミちゃんは口癖って言っちゃったし!騎士には『自分に対して区別してるのか』って思われたよ絶対!
だから、つまり、要は、詰まるところ……っ!
「……終わったぁ、うへぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ホシノ→めちゃくちゃ怖い親戚のおじいさん
シロコ→めちゃくちゃ優しい親戚のおじいちゃん