俺、サトシになってました(笑)   作:黒ソニア

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今回で劇場編『結晶塔の帝王ENTEI』の完結となります。
誤字報告して下さった方々、ありがとうございます。




#116:『奇跡は起こるもの』

 

 

 

『第52話:決着、サトシゲッコウガ vs 業炎の怪物〝ENTEI〟』

 

 

 

偽サトシ達がエンテイと戦ってるその頃…セレナは目を覚ましたミーに言葉をかける。

 

 

「あなたはミーちゃん…で、良いのよね?」

 

「…おねーちゃんは誰?」

 

 

ミーはハナコの腕にくっつきながら警戒する。

 

 

「私はセレナ。あそこで…エンテイと戦ってるサトシの仲間よ。

あなたと話がしたいの。

…だから、警戒はしちゃうかもしれないけど、お話だけでもさせてくれないかな?」

 

「…」

 

「えっと…ミーちゃんは、その人がサトシのお母さんって事を知ってるかな?

自分の本当のお母さんじゃないって…知ってて言ってるのかな?」

 

「…知ってるもん。

でも、これからはミーのママになるの。」

 

「そっか………ミーちゃんはどうしてサトシのママを選んだの?

ミーちゃんのお父さんの事は聞いたけど、お母さんはどうしたのかな?

おねーちゃんは、事情を知らないから知りたいかな。」

 

 

警戒しているミーはセレナ相手なら大丈夫だと思ったのか、少しずつ語り出し、セレナはミーの言葉と博士とハナコが言っていた事を踏まえ…事情を整理する。

 

先ず、偽サトシの母の事は前々から話を聞いていたらしく、偽サトシがカントーを旅してる頃に会っていたらしい。

父親が研究で忙しく、家で使用人達といる間にハナコがお菓子を作ってくれたりとし、彼女に心を開いたと。

 

そして…ミーの母は父のアンノーン研究の手伝いをしていた時にトラブルに巻き込まれて昏睡状態になってしまい、病院で寝たきりでいつ目を覚ますのか分からない状況になったらしく、父はミーの為にもいち早くアンノーンの謎を解明すべく…この前発見されたアンノーンの遺跡に向かい、行方不明になってしまった。

 

母だけでなく、父までもいなくなってしまったミーはもう何も失いたくない気持ちと、父と母を求める気持ちで…今回の騒動に繋がったのだと。

 

 

「…そっか。ミーちゃんは寂しいのね。」

 

「うん。もうパパとママもいなくなるの嫌なの。

だから……だから……パパが大好きなエンテイになって教えてくれたの。」

 

「……そうなのね。でもね、ミーちゃん。

あなたがハナコさんを横取りしたせいで、あなたの様に傷ついてる人がいるの。」

 

 

セレナは偽サトシの方を見た。

 

 

「ミーちゃんはお父さんとお母さんから聞いた事があるかな?

人の大切なものを取ってはいけません、って。」

 

 

知っているのか、ミーは黙り込んでしまう。

 

 

「それにね…ほら、サトシ…おにーさんを心配している子がいるでしょう?

あの子はね…少し前に大切なお兄ちゃん、家族を失ったの。」

 

「…え?」

 

 

セレナはティアに「こっちおいで」と手招きし、ティアは駆け寄る。

 

 

「この子はティア。実は…ポケモンなの。

私達人間と一緒で心がある。家族がいるの。

だから、大切なものを奪われる気持ちが凄く分かるの。

この子は大切なお兄ちゃんを奪った人達を前にしても…グッと堪えてた。

傷つける事は、一切しなかった。

悲しい気持ちがあっても、今こうして元気に過ごしてる。

ミーちゃんも、寂しくても…辛くても、人の大切なものを奪ってはいけないの。」

 

 

セレナは出来る限りの説得をする。

…しかし、まだ5歳の子供は物事を理解するのには、余りにも幼すぎた。

 

 

「…それでも、ミーは1人。

みんな…みんな…いなくなっちゃう。」

 

「ミーちゃん…。」

 

「───そんな事は無いわ。」

 

「…え?」

 

 

セレナが声のする方に振り向くと…ハナコは正気に戻っていた。

 

 

「ハナコさん…!」

 

「ごめんなさいね、セレナちゃん。

ティアちゃんも心配かけさせちゃったわね。」

 

「うー!」

 

「…マ、マ?」

 

 

動揺するミーにハナコは優しく抱きしめ、宥める。

 

 

「ミーちゃん。ミーちゃんは良い子だから、もうこんな事は止めましょうね。」

 

「……でも…でも、また……1人になっちゃう。」

 

「大丈夫。オーキド博士達がシュリー博士を必ず見つけてくれる。

それに、博士が見つかるまでミーちゃんはウチで過ごせばいいわ。」

 

「…?」

 

「ウチにはさっき戦ってたガオちゃんやアシちゃん。

それからウチにいるバリちゃん、ホーちゃん、ナナミちゃん。

研究所の庭にはあの子の頼もしいポケモン達がいるから、寂しい思いはしなくて済むわよ。」

 

「…ハナコさん、もしかして…。」

 

「ええ。意識が朦朧とした中で、ガオちゃん達が戦ってる姿を見てたら少しずつね。

そして…あの子とケロちゃんが戦って、ミーちゃんの寂しい事を言ってる時に戻ったの。」

 

「そうなんですね。

───っ! サトシ!?」

 

 

キズナゲッコウガが業炎の怪物の《ソーラービーム》を受けた所を目の当たりにする。

 

偽サトシを思う気持ちで駆け寄ろうとした───その時、偽サトシとゲッコウガは立ち上がり、更に強くなりヴェールから剥がれた真の姿が露わになったゲッコウガの姿。

 

 

「うー!」

 

「まぁ…ケロちゃんがサトシになっちゃったみたい!」

 

「…ゲッコウガがサトシになった姿。

これが、プラターヌ博士が言っていた『キズナ現象』の真の力…?」

 

 

初めて目の当たりにする『サトシゲッコウガ』。

そして…エンテイとの決着の時が───

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

『…姿を変えたか。

いや…姿を露わにした、か。

だがそれでも、お前達の敗北は揺るがない…!』

 

 

業炎の怪物が《かえんほうしゃ》を放ち、凄まじい業炎がサトシゲッコウガへ襲う。

対してサトシゲッコウガは《アクアブレイク》の剣を一振りで炎を一刀両断に掻き斬った。

 

 

『何っ…!?』

 

 

不思議だ。

さっきまでの炎が大した事の無い様に感じる。

ゲッコウガも同じ気持ちだった。

 

これなら…倒せる!

 

勢いよく床を蹴り、水の剣を怪物へと振り下ろす。

攻撃を受けた怪物は悲痛の声を漏らし、後退する。

 

 

『ぬぅ……調子に乗るな!』

 

 

怪物は《ソーラービーム》を放ち、サトシゲッコウガはそれを躱しながら偽サトシが『波導』で感知した急所を狙い、《つばめがえし》で素早く放つ風を纏った《アクアブレイク》を炸裂させる。

その後も他の急所を狙って怪物の体力を徐々に奪っていく。

 

いける。このまま圧して───

 

勝てると思い始めた瞬間、目に痺れが走る。

それを機に目に凄まじい疲れが生じる。

 

…成程。キズナゲッコウガを超えた力…サトシゲッコウガとなった事で、身体能力が急激に上がり且つ、技の威力が上がった分…反動もバカ高いのか。

 

オマケに『波導』で急所を見に抜く荒技も、結構神経を使うから余計に疲労が重なるか。

ミュウツーの時にもサトシゲッコウガになったが、あの時は直ぐに決着がついたからな。

…油断していたぜ。

 

 

「…ゲッコウガ、悪い…お前に合わせてやりたいが、こっちが限界にまで来ちまった…!

───この一撃で決めるぞ…!!」

『コウッガァッ!!』

 

 

この一撃で必ず倒す。

その強い2人の思い…否、覚悟に背中の手裏剣が強く呼応する。

手裏剣を空に掲げ、力を込める。

 

巨大な橙色の『みずしゅりけん』…そこに、風と波導を組み合わせた───『仙法・螺旋波導みずしゅりけん』を形成する。

 

 

『…っ!!?』

 

「喰らいやがれ! これが俺たちのぉ!!

全力…!! だあぁぁぁあああ!!!」

『コウガァァァアアア!!!』

 

『私は負けんっ! 負けられないのだっ!!

私は、私はあの子の…!』

 

 

その瞬間、エンテイは何かを思い出しそうになるが、『仙法・螺旋波導みずしゅりけん』が迫っており、頭を振り《フレアドライブ》で対抗する。

 

2つの強大な力が衝突する。

衝突した衝撃が塔を揺るがし、周りの結晶を粉砕し、凄まじい爆風がそれらを吹き飛ばし…遂には偽サトシ達のいる広間の壁と天井が吹き飛んだ。

 

 

「…っ、す、凄い衝撃と風が…!」

 

 

セレナ達は衝撃と爆風に襲われた為、本来なら吹き飛んでしまう所…。

 

 

「…怪我はねぇか?」

 

 

偽サトシがセレナ達の前に立ち、『波導』の力で盾となって守ったのだ。

 

 

「サトシ!? サトシの方こそ大丈夫なの!?」

 

「…へっ、問題ねぇよ。俺を誰だと思ってんだ?」

 

 

偽サトシはニヒルな笑みを浮かべた。

 

 

「…全く、無茶ばっかりする子ね。」

 

「おふくろ…正気に戻ってたんだな。」

 

「ええ、あなたやガオちゃん達みんなの頑張ってる姿を見ててね。」

 

「…あっ、そうだ! ゲッコウガは!?」

 

「パパは…?」

 

「…心配ねぇよ、ほら。」

 

 

煙から晴れると、サトシゲッコウガは立っており。

エンテイは怪物の姿から解け、膝をついていた。

 

見れば分かる通り、勝敗は決した。

勝ったのは…偽サトシとゲッコウガ、サトシゲッコウガだった。

 

 

「パパ!」

 

 

ミーはエンテイの側に駆け寄る。

 

 

「パパ…。」

 

「………心配かけてしまったな、ミー。

お前こそ、大丈夫か? 怪我はしていないか?」

 

「パパ…?」

 

「ああ…私だ。お前のパパだ。」

 

「…!! パパ!!」

 

 

涙を浮かべるミーを優しく寄り添う。

その姿は正に、本(・)当(・)の(・)家(・)族(・)の在り方だった。

 

 

「…シュリー先生?」

 

「ハナコくん…キミには、迷惑をかけたな。」

 

「……あんたは…本当に、その子の父親…シュリー博士だったのか。」

 

「…キミは、ハナコくんの子…サトシくんだね。

大きく、なったな。

…覚えているかい?

キミが赤ん坊の頃、オーキド先生の研究所でキミを抱き上げた時があったんだよ。」

 

 

え? そうなの?

…いや、流石にもう覚えてねぇが…多分、本当の事なんだろう。

 

 

「…シュリー博士、その姿といい…一体何があったんだ?」

 

「…っ、話そう…一体、私に何があったのかを。」

 

 

シェリー博士は語る。

 

妻にしてミーちゃんの母の意識を取り戻す為、血眼になってアンノーンの研究をし…遂に手がかりの遺跡を見つけ、調査した時に遺跡に落ちていたアンノーンのパズルを拾い、近くの箱を見つけて開くと大量のパズルを見つけたと。

 

そして…そのパズルはアンノーンへと変貌し、謎の空間…アンノーンの世界に転移され、気がつけば意識を奪われてしまったとの事らしい。

その後、ミーの声に導かれ…気がつけば、自分はエンテイだと認識しアンノーンの力の影響でミーの望みを何でも叶える存在に成り果てたのだと。

 

 

「…そうだったのか。」

 

 

ゲームのアンノーンは特に言う事は無いが、やっぱりアニポケ界のアンノーンは末恐ろしい存在だな。

 

そう思った瞬間…塔が大きく揺れる。

自分達が立っている結晶、そして全ての結晶が暴走しているように拡大し始めた。

 

 

「…こいつはまさか!?」

 

『…ザザ……サトシ! 聞こえておるか!?

そっちではどってるかは分からんが、突如結晶が勢いよく動き始めた!

このままじゃと最悪───博士! 急いでこっちに!』

 

 

と、リンさんのポケギアの連絡が途切れてしまった。

 

 

「アンノーンの暴走か…!!

っ!! タケシとカスミは…!?」

 

「───サトシ!!」

 

 

下の方からタケシとカスミを乗せたスイクンが駆けつけた。

 

 

「サトシ! アンノーンが異常な暴走を始めたみたいなんだ!」

 

「みたいだな。

こっちは解決したから、今すぐアンノーンの所へ!」

 

「…っ、なら、私が案内しよう。

まだエンテイの姿だからなのか、アンノーン達の場所が分かるんだ。」

 

 

俺達はシュリー博士の後を追う。

 

 

 

 

 

『第53話:必ず帰る』

 

 

 

「あれが…暴走したアンノーン、か…!」

 

 

俺達は暴走したアンノーンのいる部屋に着くと、その部屋は既にアンノーンの世界と同化しつつあった。

分かる事は…このままだと【グリーンフィールド】一帯…いや、ジョウトとカントーと世界を巻き込みかねない、という事だ。

 

俺は速やかに『蒼』の引力を利用して散らばるアンノーンを一つに纏めて広がりつつあるアンノーンの世界へと送り返そうとする。

…しかし、アンノーンの力は凄まじく、纏まった所で『蒼』を打ち消した。

 

 

「ちぃっ…!! 元いた世界に戻してやろうとしてんのに…!

…まさか、この世界を乗っ取る事を望んでいるのか!?」

 

 

続いてサトシゲッコウガが『波導みずしゅりけん』、スイクンが《ハイドロポンプ》を放つも、アンノーンの力による障壁で無力化されてしまう。

 

そして…攻撃されて怒ったのか、アンノーン達が解放して謎の光を放とうとする。

 

 

「不味い!!」

 

 

俺が咄嗟にみんなの前に出て『波導』の障壁を作る。

 

 

「みんなに手出しはぁ…! させねぇえ…!!」

 

 

俺の行動に後ろからセレナとおふくろを中心に悲鳴の声を上げた───その瞬間、右手から謎の紋様が浮かび上がる。

 

 

『きりゅりりゅりしぃぃ!』

 

 

同時に聞き覚えのある咆哮を上げて結晶を砕き、萌葱色の炎の様な風に黒い輝きを放つ《ガリョウテンセイ》で、アンノーンの攻撃を偽サトシ達を守りながら、アンノーン達にぶつけてアンノーンの世界へと押し返した。

 

 

「レックウザ…!!」

 

 

そう、偽サトシ達を助けに来たのは…偽サトシと縁がある、『黒きレックウザ』だった。

 

ミュウツーの件を忘れているタケシとカスミ、そして初めて目の当たりにするセレナ、おふくろ、ミーちゃん、シュリー博士(エンテイの姿)のみんなは驚愕していた。

ただ一つ…スイクンは除いて。

 

 

「どうして、ここに…?」

 

 

疑問に思う俺だが、直ぐに答えが出た。

この右腕に浮かぶ紋様…これが『黒きレックウザ』と関係していると。

それに気づいた瞬間に、覚えのないビジョンが脳裏に刻まれる。

 

ニューアイランドでミュウツーを止め、ファイヤーを宥めた後、ミュウツーが俺達の記憶を消し(俺は無事だったが…)、意識を失った時…黒きレックウザは俺の右腕に萌葱色の球状の光を授けていた。

 

 

「…俺の意識が無い時に、レックウザは俺に。」

 

 

黒きレックウザは俺に視線を向け、何かを待っている。

もしかして…指示を待っているのか?

指示するために必要なのが、この紋様なのか。

 

 

「…四の五の考えてる場合じゃねぇ!

行くぞ! レックウザ、《りゅうのはどう》!

ゲッコウガ! 『風遁・波導みずしゅりけん』!」

 

 

俺の指示に二人はそれぞれの技をアンノーンの世界にぶつける。

 

それによって、徐々にアンノーンの世界(ゲート)は縮こまっていく…が、アンノーンが大量に飛び出しゲートを再び広げながらサトシゲッコウガと黒きレックウザを妨害していく。

 

 

「このっ! 二人から離れやがれ!」

 

 

偽サトシが『波導弾』をぶつけて引き離そうとし、スイクンやタケシ、カスミ、セレナがポケモン達を出して援護する。

 

その中、ハナコの腕に捕まって怯えてるミーを見るシュリー博士。

彼は覚悟を決め…前に出る。

 

 

「…ハナコくん、ミーを頼む。」

 

「先生…?」

 

「私は…心は私だが、この肉体はアンノーンの力で具現化されたものだ。

なら、私がアンノーン達を世界へと閉じ込める義務がある。」

 

「…パパ、またいなくなっちゃうの…?」

 

 

またいなくなってしまう…その喪失感に涙を流すミーにシュリー博士は父親として約束する。

 

 

「ミー、私は必ず帰って来る。

だから…少しだけ、ほんの少しだけ、ハナコくんやみんなと一緒に待っててくれ。」

 

「…」

 

「今度こそ、絶対の約束だ。

もうお前を1人にはさせない。」

 

「………うん。」

 

 

ミーと『必ず帰ってくる』…そう約束し、シュリー博士は…ミーの大好きなポケモン『気高きエンテイ』は残る力全てを使い、《フレアドライブ》で突撃しようとする。

 

 

『みんな! 今だ!

アンノーン達をゲートに押し返せ!』

 

 

エンテイの言葉に偽サトシ達は頷いてアンノーン達を再びゲートへと押し返す。

その後も抗おうとするアンノーン達だが、《フレアドライブ》で阻むようにしていく。

 

 

『ぐっ…! ぐぅぅぅっ…!!

…負けん、私は…ミーの父親!

必ず帰ると約束したのだ!』

 

 

アンノーンによって作り出された姿と力。

それでも、父親として約束を果たす為に底力を見せる。

 

 

『我が肉体、ミーの大好きな『気高きエンテイ』よ!

例え偽りであろうと、エンテイならば!

その力を今! ここに示せぇぇええ!!』

 

 

気高きエンテイはそう叫ぶと、その思いが届いたのか…炎が黄金の様に輝く、聖なる炎へと変えていく。

 

《せいなるほのお》…『三聖獣』に命を与えた『ホウオウ』の力。

3匹の中で唯一、ホウオウと同じ『ほのおタイプ』を持つエンテイのみが扱う事が出来る。

 

ミーの父、シュリー博士の思いが奇跡を起こし、アンノーン達を世界へと押し返し…黄金の聖なる炎がゲートを燃やして閉ざした。

同時に、アンノーンの力で生み出された結晶も消えていき…【グリーンフィールド】は元の美しい緑の土地へ戻ったのだ。

 

 

「…終わったな。」

 

 

偽サトシがそう呟くと、みんなは安堵の顔を浮かべる。

…ただし、1人…ミーちゃんは寂しそうな顔をしていた。

 

 

「大丈夫だよ、ミーちゃん。

キミのパパ、シュリー博士は言っていただろう?

『必ず帰ってくる』ってさ。」

 

「………うん。」

 

「それまで俺達もいるから、な?」

 

 

偽サトシが優しく声をかけると、ミーも頷いた。

 

その様子を見ていた黒きレックウザとスイクンは頷くとレックウザは空へ、スイクンは何処かへと飛び去ろうとする。

 

 

「レックウザ、スイクン!

…ありがとな。」

 

 

偽サトシの言葉を聞き、小さく頷き…今度こそ二人はこの場から去るのだった。

 

 

 

 

 

『第54話:強い思いが成した奇跡』

 

 

 

───必ず、お前の元へ行くからな!

 

 

娘を思い、アンノーン世界で意識を取り戻したシュリー博士は重力の不安定な中、先が見えなくても走り行く。

 

そんな中、アンノーン達は攻撃はせずともシュリー博士の妨害をしていく。

 

 

───ミー…! もう直ぐだからな…!

 

 

嵐のように妨害してくるアンノーン達を掻き分けながら突き進む。

そんな中で…一つの小さな光が目の前に現れる。

それが何なのか…手をかざすと、それが昏睡状態の妻だと感じ取った。

 

 

───ここにいたんだな…!

 

 

妻の魂を抱え、邪魔をするアンノーンを払いながら前に突き進む。

…だが、行手を阻むようにどんどんアンノーン達が現れる。

 

 

───娘が…ミーが、私と妻を待っているんだ!

 

 

こんな所で立ち止まってたまるか…!

 

強く思った瞬間───体から何かが溢れ出す。

 

それはサトシゲッコウガと戦った時に体に流れていた不思議な力。

 

『波導』の一種なのだが…それはやがてエンテイの姿となり、目の前のアンノーンを吹き飛ばし、自分を上へ…上へと連れ出して行く。

 

 

───そうか…こんな時でも、キミは私達を助けてくれるのだな。

 

 

シュリー博士は偽サトシのお陰だと感じ取りながら、眩い光へと突き進み…意識が途切れた。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

あの一件が終わって、数日が経った。

その間、俺は【グリーンフィールド】の山エリアで野生のヒメグマを捕まえ、そのヒメグマをミーちゃんにプレゼントした。

ヒメグマも1人だった事からミーとすぐに打ち解けて仲良くなった。

 

そして………遂にシュリー博士を発見した連絡が入った。

検査後に戻って来ると聞き、ミーちゃんは安堵して泣き叫んだ。

更に、昏睡状態だったミーちゃんの母親も意識を取り戻したと連絡が入った。

 

この連絡に誰もが奇跡だと驚きが隠せなかった。

けど、この奇跡はミーちゃんがシュリー博士が帰ってくると信じた強い思いで起きた奇跡なのだと、俺は思った。

 

ミーちゃんの両親も帰って来た事で、俺達は安心して旅を再開させる。

リンさんは俺達とは違う道を行くって事で、ここで別れることになる。

だが、同じジョウトリーグで再会する事を誓うのだった。

 

 

「気をつけてね、サトシ。」

 

「分かってるって。」

 

「……あら、こんな時ぐらい言ってくれても良いんじゃない?

───ママンって。」

 

「…え"っ!?」

 

 

えっ、嘘…あれ、聞こえてたの?

 

『ママン』というワードにみんなが反応する。

知ってたセレナは頬を掻いて困惑し、タケシとカスミは興味深そうに聞き耳を立てる(特にカスミ)。

 

 

「あの時は曖昧だったものぉ。

もう一回言ってくれる? マ・マ・ン♪」

 

「まー!」

 

 

ティア…? まさかだけど、それ覚えようとしてる?

 

偽サトシの顔は真っ赤になっていき…タケシやカスミから「詳しい事を聞かせてくれよ(なさいよ)」といじられ、耐えられなくなった偽サトシ。

 

 

「あーもう! 嫌なもんは嫌なんだい!!

行ってきまぁぁぁあああすっ!!!」

 

 

偽サトシは走り出してしまった。

 

 

「待って! サトシ!」

 

「おいおい! 置いてくなあ!」

 

「詳しく聞かせなさいよ!」

 

「うー♪」

 

 

セレナ、タケシ、カスミ、ティアも偽サトシの後を追って行く。

ハナコ、ガオガエン、アシレーヌ、オーキド博士、ウツギ博士、みんなは笑いながら見送るのだった。

 

 

 






・ジョウトでの劇場版のお話は今回で完結。
 だが、まだまだ偽サトシに待ち受ける試練は多く存在する。
…まだバッジ2つなのに、先が長い。

・しばらくの間『ママン』で弄られる偽サトシ。
 特にカスミからはしつこいくらい聞いてきて、セレナとタケシが止める流れが続く。

・真のキズナ現象…サトシゲッコウガ。
第1形態はヴェールに包まれた姿…『キズナゲッコウガ』。
第2形態はヴェールを吸収した姿…『サトシゲッコウガ』。

 第2形態では第1程の爆発強化はされませんが、更に力は増して背中の大きな手裏剣が生えて様々な扱いが出来る(予定)。
 先ず判明してる事は背中の手裏剣をそのまま使う事で瞬時に『波導みずしゅりけん』を扱える常時放てる状態。
 更に、《みずしゅりけん》以外にも《でんこうせっか》が強化されており、気のエネルギーを使った飛行手段が可能となっている。

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