俺、サトシになってました(笑)   作:黒ソニア

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長くなりましたが、これにてミュウツー編閉幕!


白鷺零様
高評価ありがとうございます。
お陰様で更にこの作品に対しての意欲が高まりました。
それから誤字報告して下さった方々、ありがとうございます。




第63節:『本当は───』

 

 

 

『第129話:逆転せよ! キズナゲッコウガ!』

 

 

 

───何だ、この気持ちは…。

 

最強の存在である私に向けて説教する様に言ってくる人間が目の前にいる。

 

───生意気だ…!

 

………だが、奴の言葉が私の中で強く響く。

何故だ? 分からない。

 

戸惑いながらも、奴のゲッコウガというポケモンに攻撃をしていく。

強さではどう見たって私の方が遥かに上だ。

 

…しかし、奴は奴のトレーナーの指示で少しずつ勢いを増していく。

 

───…認めん。あのトレーナー(人間)の言葉で強くなる事などあり得ないのだ。

 

勢いを増す奴等にこちらは更に上を行く攻撃で追い詰める。

 

たが途中、奴等は何やら奇妙な事をし始める。

この目でハッキリと分かるのが、ゲッコウガと奴のトレーナーが共鳴し始めたのだ。

 

何だ…と考えていると、さっき以上の力で私を追い詰める。

加えて、負ったダメージを回復する手段も阻止してくる。

 

───不味い…! この私が…!!

 

初めての焦りというものを肌で感じ始める。

 

私は奴に有効的な攻撃を放ち、膝をつく奴等を見下す。

 

───これで私の勝ちだ…!!

 

トドメに《シャドーボール》を展開すると、奴等は更に力を発揮し始める。

その現象をこの目でハッキリと見た時…私は───

 

奴等を見て、忘れてしまった何かが見たような気がした。

 

 

 

 

 

「ゲッコウガ! もう一度《つばめがえし》!」

 

『フンッ!!』

 

 

キズナゲッコウガが《あくのはどう》を纏った《つばめがえし》に対し、ミュウツーは《ドレインパンチ》で弱点と回復も狙いで対抗する。

 

両者の力は…互角。

互いに攻撃を放っては躱され、受け流されては受け止められを繰り返し、徐々にスピードを上げても、決め手にならなかった。

 

しかし───

 

───今だ! そこへ思いっきり殴れ!

 

キズナゲッコウガは偽サトシとシンクロしている分、力が増しているだけでなく、偽サトシの喧嘩技術も反映され且つ、相手の動きなどを読み切る…一つの体に二つの目線で戦っている事から、完全にキズナゲッコウガの方が分があった。

 

ミュウツーに攻撃が直撃する。

今までとは比べ物にならない凄まじい痛みがミュウツーを襲う。

 

 

『グッ…ゥ…!?』

 

 

攻撃を受けてよろめくも、キズナゲッコウガの攻撃は止まらない。

直ぐに次の攻撃を放っており、ミュウツーは咄嗟に後退して距離を取る。

 

しかし、その動きも読まれており、ミュウツーが後退しても《でんこうせっか》で距離を詰められて攻撃を放たれる。

 

さっきは咄嗟に躱せられたものの、今度の攻撃は避けられずにまたもや攻撃を受けてしまう。

 

ミュウツーは攻撃を受けて殴り飛ばさられるも、体勢を立て直して空へと飛び去る。

 

これで少しはマシになるだろう。

…そう思ったミュウツーだったが、キズナゲッコウガはセキエイ大会でのファイヤーとの死闘で《でんこうせっか》を活かした回転の応用で空中にまで追い込んでくる。

 

 

『チッ…! ならばこれはどうだっ!!』

 

 

《サイコキネシス》でキズナゲッコウガへ…否、その周りの空気を歪ませる形で動きを止める。

それにより、キズナゲッコウガが拘束されて動けなくなる。

 

直様《シャドーボール》を構えて放とうとするが…。

 

───こんな拘束、吹き飛ばしてやる!

 

キズナゲッコウガは気合いで《サイコキネシス》による拘束を振り解き、《でんこうせっか》《つばめがえし》《あくのはどう》の3つの技を掛け合わせた瞬足の速さで放つ拳をミュウツーにへと炸裂させる。

 

 

『グォォォ……グッ!

こ、こんな…もので……この私を!

オオオオォォォォ!!!』

 

 

ミュウツーが雄叫びを上げて全ての力を解放する。

そして、ゲッコウガに目掛けて《ばくれつパンチ》《サイコキネシス》の合わさった高速攻撃をゲッコウガへとぶつける。

 

 

「ぐっ!! ぐぅぅうう!!」

『コ、コウゥゥウ!!』

 

 

キズナゲッコウガはミュウツーの攻撃を《あくのはどう》のオーラを纏い、手をクロスさせて防御して受けるが、フルパワーの攻撃を完全に受けきれずに殴り飛ばされて、フィールドに倒れ込む。

 

 

「ウッ!」

『コウッ!』

 

 

2人はゆっくりと立ち上がるも、ダメージが大きく膝をつく。

 

 

「ね、ねぇ…さっきからサトシ…くんがゲッコウガと同じ反応をしているんだけど…。

これって一体?」

 

「…自分達も、全てを把握しきれていないのですが。

あの不思議な力になったゲッコウガとサトシは繋がっているようなんです。」

 

「へ?」

 

「それも、繋がっているからなのか、ゲッコウガの受けたダメージがサトシも伝わってしまうの!」

 

「そ、それは一体、どういう…。」

 

「…信じられませんが、事実なんです。」

 

「ただし、その分というかその影響か…。

本来のゲッコウガとはかけ離れた力を発揮する。

その力で、セキエイ大会では土壇場でファイヤーを倒した。」

 

「………信じられない。

人とポケモンが繋がって、力が増したり、ダメージを共有するなんて…。」

 

 

キズナゲッコウガの力を初めて見た者達は偽サトシ達の力に理解が追いつかない様子だった。

 

しかしその間にも───

 

 

『消え失せろ!』

 

 

ミュウツーが複数の《シャドーボール》を展開させ、それを《サイコキネシス》で一つに結合させ、それをキズナゲッコウガにへと放った。

 

その攻撃はこれまでの中でも桁外れの攻撃。

『キズナ現象』を起こしている状態であろうと、このままでは…負ける。

 

 

───負けて…───

 

 

「たまるかぁぁぁああああああ!!!!!」

『コウガァァァアアアアア!!!!!』

 

 

偽サトシとゲッコウガの強い思いが重なり合う。

その瞬間───キズナゲッコウガに更なる変化が起きる。

 

水のヴェールが膨張し、凄まじい水のエネルギーが溢れ出す。

 

そして、水のエネルギーがキズナゲッコウガの体へと吸収していく。

 

水のヴェールで覆われていたフォルムが露わになり、全身に更なる力が漲り、背中から巨大な手裏剣が発現する。

 

 

『!?』

 

 

キズナゲッコウガの更なる変化にタケシ達は驚愕する。

 

 

「ゲッコウガ! 《みずしゅりけん》!!」

『コウガッ!』

 

 

キズナゲッコウガは背中の手裏剣を手に取り、空にかがけて力を送る。

アニポケで、アランのメガリザードンX戦で放った最後の《みずしゅりけん》のイメージを送り、同じ更に巨大で橙色の《みずしゅりけん》を形成する。

 

それを思いっきりミュウツー…巨大な《シャドーボール》へとぶつける。

ぶつかった瞬間に大爆発し、《シャドーボール》は《みずしゅりけん》によって発したエネルギーに包まれて無力化された。

 

 

『何だとっ…!?』

 

「ゲッコウガ! 今度はこっちの番だ!」

 

 

俺は瞳を閉じ、ゲッコウガとシンクロしている力を高める感じでイメージを送る。

片方に《みずのはどう》、もう片方には《あくのはどう》を展開する。

そしてそれを一つに集約する…10倍かめはめ波を模した技へと昇華させる。

 

 

「これが俺達の全力だぁぁあああ!!!」

『コウガァァアアア!!!』

 

 

俺とゲッコウガの全力の波導砲を放った。

 

 

『この私が……お前達に人間に…!

負ける筈が…ないのだぁぁぁあああ!!!』

 

 

ミュウツーも《シャドーボール》と《サイケこうせん》辺りの技で同じくビームを放った。

 

二つの技が激突し、3人の怒号が鳴り響く。

 

そして次第に………凄まじい光がフィールドを、偽サトシ達を包み込んだ。

 

 

 

 

 

『第130話:生まれた意味』

 

 

 

「はっ! ここは…?」

 

 

凄まじいな光に呑まれ、意識がハッキリすると…。

そこは真っ白な果ての無い空間だった。

 

何処なのか、どうなっているのかは分からない。

ただ…ここでは全く戦意は湧かないという不思議な空間だった。

 

そんな中…キョロキョロとしていると───

 

 

『私は何の為に生まれたのだ。』

 

 

そこにはミュウツーがいた。

思わず驚いてしまい、警戒してしまうが…直ぐに気が抜けてしまう感じになる。

恐らくミュウツーもそうなのだろうと思った。

 

 

「…何の為に、か。」

 

『私は……気がつけば、最強のポケモンだった。

ミュウと呼ばれるポケモンのオリジナルコピーだと。

私を作り出した人間達は私が目が覚めると、喜んでいた。

私も最初は悪く無い気分だった…。

だが…私を作り出した者達に何の為に生まれたのかを問いだすと───』

 

『お前は最強のポケモンとして、我々の命に従っていればいい。』

 

『お前は私の娘をこの世に甦らせる為に必要な───』

 

『お前はポケモン、人間の為に生きる。

お前は人間に従っていればいい。』

 

 

ミュウツーは自我が芽生えてからの話をしてくれた。

正直劇場版の話を細かく覚えている訳では無いので何だが…。

多分、劇場版以上の過酷な人生を送っていた。

 

 

『私は…分からなかった。分からなくなった。

最強のポケモンだが、そう望んだ訳じゃない。

ただ…何かを…欲していたのか、あるいは…脳裏に浮かぶ、誰かが飛び立って行った空を思い出したかったのか…。』

 

 

ミュウツーはそう告げると言葉が出なくなった。

 

 

「…そうだなぁ。

俺は…自分で言うのも何だけど…頭の出来が良い訳じゃないからお前の答えに添えないだろうが…。

これだけは…言える。

お前は───幸せになる為にこの世に生まれたんじゃ無いかと思うよ。」

 

 

俺がそう答えると、ミュウツーは酷く驚愕していた。

 

 

「だってさ…ううん、実を言うと…。

俺も………何で、俺として…マサラタウンのサトシとしてこの世界にいるのか、疑問に思っていたんだ。」

 

『…どういう事だ。』

 

 

…これは馬鹿正直に言える事じゃないので色々と端折るが…。

 

 

「夢を見た…自分と似た姿、声をした…同じ場所、同じ親を持つ、同じ名前の少年…マサラタウンのサトシを…。

そのサトシは、俺と違って色々と問題な所が山程あって、正直どうかと思う所が沢山ある少年だった。」

 

 

初代無印の頃は割と酷いとは思う。

…けど───

 

 

「俺と違い、明るくて、ひたすらに真っ直ぐで…眩しいくらい輝いていた。

俺と違い、10歳になって初めて貰う…人嫌いなピカチュウと仲良くなって、沢山の苦難を乗り越え、誰もが応援したくなる様な少年なんだ。」

 

 

AG、DP、BW、XY…と、話が進む度に魅力の詰まった青年へと成長していく物語。

 

 

「俺はそんな彼を見て思った。

今の自分は…偽物なんじゃないかって。

何かの事故で、彼の人生を奪ってしまったんじゃないかって。」

 

 

そう…だから、俺は『偽サトシ』。

 

 

「そんな考えもあったのか、周りとは馴染めず、煙たがれていた。

けど…それも仕方ないんだろうなって、思ってた。

俺はずっと…1人なんだと、勝手に思い込んでいた。

………けど。」

 

 

俺は横を見る。

そこには俺の初めてのポケモン、どんな時でも俺の側に居続けてくれるゲッコウガ(相棒)

 

 

「そんな俺を慕ってくれるケロマツと出会った。

俺はコイツと出会って…世界が変わったんだ。

お陰で色んな事が起きて、色んな人達とポケモン達に出会えた。」

 

 

おふくろ、ガオガエン、フクスロー、アシレーヌ…ずっと一緒にいてくれた家族。

 

セレナ、シゲル、リーフ、ナナミさん、オーキド博士…サマーキャンプから関わった皆んな。

 

リラ、ククイ博士、リーリエ、グラジオ、ルザミーネさん、カプ・コケコ…10歳になるまでに出会った皆んな。

 

カスミ、タケシ、ヒロシくん、ブルーさん…旅で仲良くなった皆んな。

 

フシギダネ、カメール、リザードン、エレブー、オコリザル、ベトベトン、ケンタロス、ストライク、トゲさん、ゲンガー達との出会い。

 

これまでを振り返りながら、ケロマツからゲコガシラへ、そしてゲッコウガへと進化した事を思い出しながら頭を撫でていた。

 

 

「これまでを通して…俺は今の自分が、幸せになっても良いんじゃ無いかと、思える様になった。

俺は、本物の…サトシ、今を生きている存在だって。」

 

『…』

 

「お前にも、きっとあったんだよな。

けど………それを何かあって、忘れてしまったんだよな。」

 

 

ミュウツーは偽サトシの言葉に脳裏に浮かぶ少女の顔を…。

フシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲと5人で空を飛んだ…記憶を。

 

 

「…前置きが長くなっちゃったけど、さ。

改めて言わせてもらう。

お前は…幸せになる為に、この世界に生まれたんだ。

経緯は…悲しい事だけど、この世界に生まれた限り本来誰にでも幸せになる権利はあるんだよ。」

 

『私、が…幸せだと?』

 

「自分以外のコピーを作ったのも、求めたのも…。

本当は仲間が欲しかったからなんだよな。

憎しみがあったのも間違い無いだろうけど…。

…1人は寂しいし、怖い。

だから、自分以外の自分と同じ存在を、コピーポケモンを求めた。」

 

 

それを聞いたミュウツーはこれまでを振り返った。

 

 

『…そう、だな。きっと…私は…。』

 

 

その事を自覚、認識した瞬間───

 

 

『あれって人間の言葉なの!』

 

『アナタも私も、同じみたいなもの!』

 

『私達は皆コピー、だから───』

 

 

幼い頃と同じ様に彼女を思い出して涙を流すミュウツー。

 

 

『……そうか……私は、孤独が耐えられなかったのだな。』

 

 

ミュウツーはアイの事を思い出した。

 

 

『………アイ。』

 

 

彼女の名、彼女達との記憶が蘇ると瞳からすーっと、一粒の涙が溢れる。

 

ミュウツーは不思議と満ち溢れれる様な感覚に、心を締め付けていた何かが解ける様な感覚も覚えた。

 

そうして…真っ白い空間が消え始めた。

 

 

 

 

 

『第131話:私は…』

 

 

 

「うわっ!」

 

 

眩い光から吹き飛ばされた偽サトシとゲッコウガ。

ゲッコウガとのシンクロは解かれ、全てを出し尽くしたのか意識を失っていた。

 

『キズナ現象』が切れた事で、全身に物凄い脱力感が襲う。

前に一度、熱や鼻血が出る程の反動を受けた事で耐性が付いたようだが…。

今は根性で気を張ってるが、少しでも油断すると気絶しかねない。

だが今は耐え無いといけない。

 

 

「「「「サトシ(サトシくん)!!!!」」」」

 

 

タケシ、カスミ、シゲル、リーフ…それからリザードンが吹き飛ばされた偽サトシの元へと駆け寄った。

 

 

『偽物…本物…この世界に生きている存在。

私は……アイ…。』

 

 

ミュウツーもまたゲッコウガ程じゃないにせよ、ボロボロで既に戦意喪失していた。

 

俺は立ち上がり…ゲッコウガをタケシ達に任せ、ミュウツーに駆け寄った。

 

 

「……さっきも言ったけど、お前は生を受けた皆と同じ幸せになる為に生まれた存在だ。

……それは自信もって良い。」

 

『…』

 

「俺達が戦う意味はもう無い…。

…だからお願いだ、皆んなのポケモンを…返して欲しい。

じゃないと……1人になってしまう。」

 

『…』

 

「それから…お前と同じ境遇の彼等を責任もって面倒見ないといけない。

それが…命を作るという事だ。

アイツ等は……お前と、同じ…コピーポケモンで、今を生きてるんだから。」

 

 

3匹のコピーポケモン達が互いに支え合って、ミュウツーを見ている。

 

 

「守れない、なんて言うなよ?

言ってしまえば…それこそ…お前を利用しようとした連中と同じ…悪になってしまう。」

 

 

俺はミュウツーに視線を合わせる様にして懇願する。

 

ミュウツーは俺を見て、助けを求めているコピーポケモン3匹を見て…奪ったポケモンを解放しようとする…が───

 

 

「…!! 危ねぇ!!」

 

 

俺は咄嗟にミュウツーを抱えて緊急回避をする。

 

俺達がいた所を見れば、酷く焼き焦げていた。

その理由は───ファイヤーがこちらへ攻撃を仕掛けたのだ。

 

そう、ミュウツーは何とか改心してくれたが、ファイヤーの人間への怒りは収まっていないのだ。

 

 

『…逃げろ、アイツは本気でお前達を───』

 

「悪いが……お前を放って逃げる程腐ってねぇよ。

…何とかして、怒りを鎮めるしかねぇな…。

頼む…リザードン!」

 

『バァウ!』

 

 

リザードンが俺とミュウツーを守る形で前に出る。

すると、ファイヤーはリザードンに目掛けて《かえんほうしゃ》を仕掛けた。

 

リザードンは俺達を守る為にその攻撃を受け堪える。

『ほのお・ひこう』タイプを持っている為、《かえんほうしゃ》では大したダメージにはならないが、伝説の《かえんほうしゃ》で少しダメージが入ったようだ。

 

そしてファイヤーはリザードンが動かない事から、そのまま《げんしのちから》を放った。

 

不味い…! リザードンにその技は…!

 

俺はミュウツーに肩を貸す形で立ち上がった。

 

 

「リザードン! 俺達は大丈夫だ!

だから頼む! 頑張って倒してくれ!」

 

 

俺の言葉にリザードンは咆哮を上げて、《ドラゴンダイブ》で全身を竜のオーラを纏いながら岩々を力ずくで粉砕しながらファイヤーに迫る。

粉砕しながらの為、多少のダメージが蓄積されるが、リザードンはそこに更に《かみなりパンチ》を構えた。

 

リザードンが《げんしのちから》を粉砕し、ファイヤーへと体当たりをかます。

そこへ追い打ちに《かみなりパンチ》を放ってファイヤーは殴り飛ばされた。

 

…しかし、ファイヤーはそれでも直ぐに立ち上がった。

 

 

「っく! 時間があったとはいえ…。

《はねやすめ》でここまで戦える状態にまで回復するのか!?」

 

『………あのファイヤーは私以上に怒りを抱いている。

その怒りは…二度も倒したお前達を倒さない限り治らないのだろうな。』

 

「勘弁してくれよ…。」

 

『………何故、だ?』

 

「?」

 

『何故…私を………お前達を脅迫し、陥れようとした…この私を…。

何故…助けるのだ?』

 

「ん? あぁ…それは簡単さ。

───俺がそうしたいだけ。」

 

 

ミュウツーは偽サトシの淡々とした言葉に呆気を取られた様な顔をした。

 

 

「…俺は自分が正しいと思った事をしているだけ。

俺が勝手にやってる事だから、気にしなくて良い。」

 

 

俺はそれだけ伝えた。

 

…そうしている間にも、リザードンとファイヤーの戦いは続いている。

リザードンの《ドラゴンダイブ》と《かみなりパンチ》を受けても尚、ファイヤーは《エアスラッシュ》の猛攻でリザードンへ攻撃する。

 

しかし、リザードンはその猛攻を回避したものの、避け切った所に《つばめがえし》を受けてこちらへと飛ばされた。

 

 

「大丈夫か…リザードン!?」

 

『…グォウ。』

 

 

今のリザードンはまだ戦えはするが、体力は半分を切っている感じだ。

対してファイヤーは…見極めている所へ《もえつきる》を使用し始めた。

 

ヤバいぞ…あの炎を受ければ、スタミナもかなり上がっているリザードンでは大ダメージになりかねない!

 

どうする…───と、思った瞬間───

 

 

『きりゅりりゅりしぃぃ!』

 

 

聞き覚えのある声が、この会場に鳴り響く。

皆が「何だ、今のは…?」という反応を示す中、俺は知っていた。

 

俺達を助けてくれた…黒いレックウザ。

 

かつて…マサラタウンから旅立って直ぐの事。

カスミが怒らせてしまったオニスズメが仲間達やオニドリル達を呼んで、俺達を追い詰め、絶体絶命という中で起きた奇跡。

 

闇の暗雲から光の柱が生まれ、そこから黒いポケモンが凄まじい勢いで、俺達の前に立って、ファイヤーの《もえつきる》を受けた。

 

黒いレックウザは《もえつきる》を真正面から受け、そして…。

燃え広がる炎を《たつまき》で無力化してしまった。

 

 

「あ、アレって…!」

 

「ジョーイさん、あのポケモンって…まさか!?」

 

「ええ、アレは伝説のポケモン、レックウザ!」

 

「レックウザ!?

あれが、伝説のドラゴンポケモン!」

 

「どうしてこんな所へ……カントー他方に…?

それも……あのレックウザは、黒い…色違いの個体!?」

 

 

知識のあるジョーイはレックウザについて語り、シゲル達を驚かせていた。

 

 

「すげぇ…。」

 

 

思わずそんな言葉を漏らした。

…あの時も、同じ反応をした様な気がする。

 

 

ファイヤーは黒いレックウザを前にして一瞬怯むが、この程度ではまだ怯まずに《ブレイブバード》を仕掛けて来た。

 

それに対して、黒いレックウザは全身を眩い光を纏わせ、超高速で飛び回り、《ブレイブバード》で攻めるファイヤーへ《ガリョウテンセイ》で対抗する。

 

二つの力がぶつかり合う。

最初は拮抗していたが、徐々にファイヤーは力押され、返り討ちに吹き飛ばされた。

 

 

「これが…レックウザの、力。」

 

 

偽サトシはそう呟いた。

 

そして、黒いレックウザはファイヤーに向けて何やら訴えていた。

討論の末…ファイヤーは渋々矛を収めた。

 

 

『…お前は、あのポケモンの…なんなんだ?』

 

「へ? いや…一度だけ、助けられた事があるだけなんだけど…。」

 

『…にしては、いたくお前を高く評価している。

お前は………この世界の最後の希望だと、な。』

 

 

レックウザが………俺に?

しかも………この世界の最後の希望?

 

黒いレックウザが偽サトシに何を思っているのか、何を見抜いていたのかは誰にも分からない。

ただ、黒いレックウザは偽サトシを特別視しているのは間違い無いだろう。

 

そう思っていると、奪われていた皆のポケモン達が解放される。

 

 

「バナード! 皆!」

 

「お帰りなさい!」

 

「お前等ぁ!」

 

「良かった…!」

 

「ああ。」

 

 

解放されたポケモンはそれぞれのトレーナーの元へと駆け寄った。

 

その後、黒いレックウザはミュウツーにも何かを語りかけていた。

ミュウツーは話を聞き、俺から離れた。

 

 

『………迷惑をかけたな。

私達は、この場から消える。

そして………我々のこの出来事を、記憶から消す。』

 

 

ミュウツーの言葉に俺達は驚いた。

 

 

『…私の事を知っていれば、お前達は悪い人間達から何らかの仕打ちを受けるだろう。』

 

 

ミュウツーはジョーイを見てそう告げる。

それを聞いたジョーイは何も言えない反応を示した。

 

…どうやら、劇場版以上に何らかの大きな言葉に繋がっているのかも知らない様だ。

 

俺を中心に眩い光が襲いかかる。

 

そして…ミュウツーは最後に偽サトシに告げる。

 

 

『最後に、一つ…お前の名は?』

 

「…サトシ。」

 

 

ミュウツーはサトシの名前を覚え───小さく笑う。

 

 

『…サトシ、ありがとう。

お前のお陰で、私は…大事にしていたものを思い出した。

小さな出来事だが、私にとっては大きなもの。

アイが私にくれた…愛。

お前は…アイに似た───』

 

 

視界が光に覆われ、意識が遠のく瞬間。

 

 

『───心地の良い人間だ。』

 

 

その言葉を最後に、俺の意識は途切れた。

 

 

 






・キズナゲッコウガ VS ミュウツー決着!
勝ったのは偽サトシとゲッコウガ。
勝てたのは主人公補正とタイプ相性があったからです。
本当だったらレベル差もあってボコボコにされます。


・偽サトシの人間性を知り、アイを思い出す。
ミュウツーにとっては一時の夢だったとしても、アイとの出会いと触れ合いがミュウツーに良心を与えていた。
それを研究者達によって忘れ去られたが、偽サトシの影響でアイを思い出した。


・黒いレックウザ降臨!
ミュウツーを改心させたものの、ファイヤーは怒りが収まっていなかった。
偽サトシ達とミュウツーが戦っている間に《はねやすめ》をして回復し、再び闘い…黒いレックウザに説教されて怒りを鎮める。

黒いレックウザが偽サトシへ向ける期待の真意は───その答えはずっと先になる予定です。


そして、いよいよ次回が偽サトシのカントー編完結となります。
次回をお楽しみに。


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