レギオ様
高評価ありがとうございます。
お陰様で更にこの作品に対しての意欲が高まりました。
それから誤字報告して下さった方々、ありがとうございます。
「ねぇ、カスミ…少し話があるんだけど…。」
夜、宿泊しているホテルにて、カスミの部屋にノックするセレナ。
側にはケンジもいる。
「セレナにケンジ? どうしたの?」
「こんな時間にごめんよ。
ただ、このタイミングくらいしか聞かないと思ってね。」
「…サトシの事ね。」
カスミの言葉にセレナとケンジは頷いた。
先程のロケット団幹部との死闘で、偽サトシの人間離れの身体能力にゲッコウガとの『キズナ現象』に、その時発していた偽サトシから溢れていた『波導』…。
2人はそれを知らない。
けど、大切な仲間でムードメーカーの偽サトシの事を知りたい2人は、あの時の偽サトシを知ってそうな反応をしていたカスミに声をかけたのだ。
カスミは…ボールから勝手に出て来たコダックを今回は優しく撫でながら話し始める。
偽サトシは紛れもなくなく人間だ。
しかし…普通の人間とは違い、『波導』と呼ばれる気のエネルギーを扱える特殊な力を有している。
この様な不思議な力を有している人間は少なくあれど、多少はいる。
サイコパワーを扱えるナツメを筆頭の一族に、それに類似する末裔など。
ただし…偽サトシはそこに生まれ持った人間離れの身体能力も合わさってポケモン相手に戦えるのだ。
「…改めて聞くと凄いなぁ。」
「私は少し知ってる。
サトシと初めて会ったあのサマーキャンプ…。
足を怪我した私を抱えながらイワークと戦っていたもの。
あの時は凄いなぁって程度だったけど、冷静に考えても凄すぎる事よね。」
「…それで特に気にして無い感じだったのね…。」
カスミはそんな幼い頃から常識外れだったのかと、苦笑いをする。
それからカントーを巡っていた頃の偽サトシ。
カスミから見た偽サトシは…一言で言うなら、ポケモン好きの正義感のある少年だった。
偽サトシの
フシギダネは同じ人間やトレーナーに捨てられたポケモン達を束ねて面倒を見ており、ゼニガメは同じゼニガメ達を率いて人間に腹いせをしていた。
ヒトカゲはクロスというトレーナーが怪我を負っているのにも関わらず大雨の中で捨て、且つブレス技が使えない後遺症を負った。
エレブーは進化してしまった事で可愛く無いと捨てられ、ゲンガーは不幸になったとレッテルを貼られて廃墟屋敷に押し付けられたりと…。
ラプラスも、嵐で群れと逸れてチンピラ達に酷い仕打ちを受けたりしていた。
更にはケロマツは自分に合わないトレーナー達ばかりで、実は無茶振りなどを受けていた事があり、ニャビーは親代わりだったムーランドを見送り、アシマリは自分だけが色違いで迫害されたなど…。
皆がそれぞれの悩みなどを抱えていた。
しかし、皆が偽サトシと出会って今の様に強く逞しいポケモン達へと成長を成した。
「…凄いな、サトシは。
そんなポケモン達に愛情を注いで、強く育てている。
誰もが模範にすべきトレーナーだよ。」
「流石サトシね!」
「……そうね。私も、正直それだけならあいつを純粋に敬うんだけどね。」
しかし、カスミとタケシ達は知っている。
偽サトシはただのポケモン好きで正義感のある少年じゃない。
誰にでも優しいという訳でない。
好き嫌いがあって、態度や偉そうな人物には冷たくする一面もある。
けどそれは、偽サトシとて聖人じゃない、いわゆる普通だ。
大事なのは…責任感が強すぎる所だ。
例えば今回の一件。
偽サトシは強い精神を持っているが、屈強では無い。
催眠電波によって誰よりもそれを察知してしまい、具合を悪くしていた。
そのせいでロケット団のポケモンの攻撃を受けてしまい、仲間達を危険な目に遭わせてしまった。
それだけでは無い、セキエイ大会のジョーイとのバトルで上手く指示できなかった事。
思い悩む事を誰にも共感せずに1人で抱え込んでしまうのが、偽サトシの悪い所だ。
カントー地方を共にしたカスミやタケシ、ずっと偽サトシを見ていたハナコに共に面倒を見てくれたナナミ、ライバルのリーフやシゲルはその事を知っている。
「…少しは私達にも背負わせなさいよって、話よ。」
と、カスミは文句を口にした。
これを聞いて、セレナとケンジも頷いた。
「(サトシ……私、絶対にサトシに並ぶ人になる!
サトシが1人で抱え込まない様に…!)」
偽サトシは夜の海の静かな生音を聞きながら…目の前でダクマに稽古しているオコリザルを見ていた。
そうしていると…カスミの話を終えたケンジがやって来た。
「や、隣いいかい?」
「ああ。」
「………聞いたよ、サトシの事をね。」
「…そうか。」
仲間だからいずれは話さないといけないと思っていたが…。
カスミが2人に説明してくれたみたいだ。
…後で礼を言っておくか。
「改めてキミは凄いって思ったよ。
僕はトレーナーというより、ウォッチャーとしてだけど。
ポケモンを大事にする者として、キミを見習うよ。」
「…こそばゆいな、ケンジの方が立派だと思うけど。」
「そんな事はないさ。
僕なんてまだまだ。
流石はオーキド博士が目にかけているトレーナーだね!」
「…」
別にあのジジイは関係無いんだけどな。
「にしても、ケンジは何でそんなにジジ…オーキド博士を慕っているんだ?
確かに、ポケモンの研究者としては偉大なんだろうけどさ。」
「何も研究成果が出ているからじゃないよ。
オーキド博士は、ポケモンに対する熱意が素晴らしい人だからね。
ポケモンの性格性別で好む環境や食べ物、それから個々による違いでポケモンの生命に違いがあるのを発見したのは、ポケモンへの愛情故だからね。」
ふーん…具体的な研究成果は知らんかったけど、そう聞くと凄いな。
そう思うと一つ気になる事があるな。
「あの爺さん、そんだけの成果を出してるって事は昔は結構強いトレーナーだったんかねぇ。」
「そりゃ凄かったそうだよ。
オーキド・ユキナリ。
かつてはカントー地方のトレーナーと言えばこの男とまで言わせた程だからね。
カントーのポケモンリーグだって優勝している実力者だったんだよ。」
へ、へー…優勝した事あったんか、あの人。
ケンジは一枚の写真を見せる。
そこにはパッと見ただけでも分かるイケイケな若かりし爺さんと、手持ちだろう…フシギバナ、ピジョット、イワーク、カイリキー、ニョロボン、ガルーラ。
ほー、これが爺さんがバリバリのトレーナーの頃のポケモン達か。
「これは良くも悪くも一番破天荒だった頃で、目の前にトレーナーがいたらしょっちゅう喧嘩振っていたらしいよ。」
「迷惑はかけてねーだろうな?」
「後、他の地方にも行っては初めて見るポケモンに触れ合っていたそうだよ。」
「大方、デリケートな部分とかやたらと触れ合ってきて制裁を喰らったりして迷惑をかけていたビジョンが浮かぶわ。」
ふむ…にしても、そんなアニポケのサトシくんみたいな爺さんが、何で研究者の道を歩んだんだ?
「…そんなある時、長い付き合いだったピジョットが亡くなってから、ポケモンの命に関して考えるようになったて本に書いてあるんだ。」
ケンジはさっきの写真を出した本をペラペラと見せる。
そこに書かれてあったのは、活気だったピジョットが急激に空を飛べなくなる程体力が落ちてしまい、その後に生を全うしたと書かれていた。
何でも、同じポケモンでも個々によっては体温がやや低かったり、爪の成長が遅かったりなど…細かな部分違いで寿命が違う事を発見したそうだ。
更にはポケモンの平均寿命が人間と同じ位だが、中には数十年単位だったり、200年も生きる場合もあるなどと詳細も書かれてあった。
「…おいおい、本当にあのジジイと同一人物なのか?
金にがめちい所や、シャークトレードふっかけたりする奴と同じ人とは思えねぇぞ。」
「あはは…。確かそれに関してはやんちゃしすぎた事もあって、ポケモン博士が各地方に最低でも1人は配属される仕組みが出来たみたいで…。
それ故にカントーはカントーの博士…。
オーキド博士はカントーのトレーナーのポケモンを管理や世話などをする事になって、他地方のポケモンに関してはあまり研究出来なくなったそうだよ。」
あー…そういう事だったのね。
自分がやんちゃしすぎたせいで、他地方に迷惑をかけてしまい、他地方のポケモンの研究がし辛くなったと。
…で、今時のトレーナーは殆どが自分で管理する事が多かったり、他地方のポケモンを捕まえるトレーナーが少なかったり、育て屋とかその他云々が重なって、オーキド研究所に集うポケモンはカントーのポケモンばかりなんだ。
「ま、自業自得だな。」
「あ、あはは。
サトシは割とオーキド博士には辛口なんだね。」
「今までの事があるからな。」
「ははは。ねぇ、博士について聞かせてよ!
今までどんな事があったとか、今はどんな事をしてるとかさ!」
「良い事じゃ無い事が多いけど良いのか?」
「勿論だよ!」
「…やれやれ、しゃーねーなぁ。」
俺はオコリザルとダクマを見ながら、ケンジにこれまでの事を語り聞かせるのであった。
…その様子を少し離れた所にいるセレナとカスミは「入る枠無さそう」と話していた。
その後、カスミは砂浜にいるみずポケモンを見つけた事で捕まえに向かい、セレナも付いて行くのだった。
時は少し遡り…。
偽サトシはコジロウを見つけた。
時間も切羽詰まっていたので、コジロウを脅す形で今回の事を聞き出した。
その後、調子を取り戻した偽サトシは聞き出したラムダ達が潜伏している場所へ向かおうとすると…。
コジロウが「後生の頼みがある…!」と命乞いに近い感じだったので、やむ無く着いていく。
するとその先には…コジロウと同じく作業服であるムサシとニャース、それからパチモンの2人もいた。
パチモンの男性は「誰がパチモン…いや、いいや…」と反論する気力も無さそうだった。
何があったのかを聞くと、どうやらこれまで散々俺に返り討ちにされた事とトキワジムでの一件が、等々サカキを怒らせてしまい、もう出世不可能の状況にされて、今は下っ端以下の雑用にまで降格。
加えて自分達のポケモンまで没収され、手持ちも何も無い状態だった。
コジロウは「俺達…これからどうしたら良いんだ!?」と、聞いて来たので───
「ロケット団なんて辞めちまえよ。
ハッキリ言って、お前等悪党に向いてねぇよ。」
アニポケを見てたから分かるけど、こいつ等の根は良い奴だ。
パチモンの2人は知らん間にロケット団を辞めていたから尚更辞めた方が良いと勧めといた。
その際、ムサシとニャースは「そんな訳には…!」とほざいていたが、「このままだと一生笑い物の人生だぞ?」と伝えると、何も言い返せなかった。
これまで世話になってきたとかほざいていたが。
「じゃあ、何で今の状況になっても助けてくれないんだ?
…それはつまり、もうお前等なんてどうでも良いとしか考えてないだろ。」
と、伝えると、更に黙り込んで落ち込んでいた。
正直このままほっといてセレナ達を助けに行きたい所だが…。
何かの拍子に復活して妨害されてもウザイだけなので、ここでこいつ等をロケット団から引き離す作戦に出る。
「正直に答えろ、お前等は人の大切なものを奪うのが本当に好きか?」
俺がそう問うと、5人は黙って考えてから顔を見合わすと…「別に…」と、パチモンの男性はそう答えた。
それに続いて、「別に望んでロケット団に入った訳じゃないわね」とパチモンの女性は答えた。
その答えに若干コジロウは目を逸らした。
お前はまぁ…家が、ね。
「だから何よ。今更庶民に戻れったって帰る場所も目的が無いもの。
アンタに指図を受けるのも癪だってーの。」
「だったら目的を与えてやろうか?
ムサシ…お前、一応だけどかなり美学というのを強く気にしてるよな。」
「一応も何も、私はいつだって大スターよ。」
よろしい、ならば───
「だったら、コーディネーターを目指してみるがいい。
目立ちたがりなお前にはピッタリだろうさ。」
「何よそれ?」
「んで、コジロウ。お前こそハッキリ言ってロケット団に向いていねぇ。
自分のポケモンに対する愛情は俺にも負けてねぇからな。
ブリーダーを目指すのが良いだろうさ。」
「ブ、ブリーダー…?」
「…ああ、後ニャース、お前もムサシ寄りな方だろ?
ムサシの方を手助けしながら、お前だけの強みであるポケモンと人間の中間点で金稼ぎでもすれば良い。」
「ニャ、別にニャーはお金よりも…可愛い子が欲しいニャ。」
「そこは頑張ればモテるだろうさ。
仮にフラれたって、何度もリベンジすれば良い。
お前しつこ…不屈な心を持ってるんだから、一度や二度と振られた程度で折れんなよ。」
と、ムコニャそれぞれに伝えると、パチモン2人も何かアドバイスを欲しているが…。
「悪いけど、お前等2人はよく知らんから何も無いぞ?」
「「え?」」
「………知らんけど、喫茶店でも開けば?」
「………そもそも、ロケット団の俺達が社会復帰とか出来るのか?
俺は嫌だぞ、捕まるの。
それに、あの下っ端達の様にコケにされる人生もな!」
「そんなの私もよ!」
「…オメェ等、変装とか演技とか無駄にハイスペックな所有るだろうが…。」
俺は咄嗟に頭を抱えるが…今は時間が惜しい。
懐の財布を取り出して…1人1万位程度だが、こいつ等なら何とかするだろう。
「これ以上は構っていられん。
1人ずつやる。後は好きにしろ。
…あ、次に悪党として立ち塞がったら…。
命の保証はしねぇからな?」
と、殺気を込めたドスの声でそう告げ、セレナ達を救出しに向かう。
俺は切羽詰まりながら、根城にいるロケット団達を容赦無く殴って蹴ってとボコボコにして中に突入するのだった。
・今回は少し暗い話になってしまいましたが、ご了承を。
偽サトシはハイスペックだが、万能では無い。
『偽サトシ』
今回は出てないが…トゲさん、アシレーヌによって少し心が回復した。
何気に偽サトシが弱気を見せる場面って準決勝のインターバル以来だから新鮮だった。
『セレナ』
改めて偽サトシの隣にいる決意を抱いた。
未来の目標はまだだけど、やりたい事として偽サトシに並ぶ存在になりたいと思った。
『カスミ』
自分では何とかしてあげられないと内心思ってしまってるのが悔しい。
「それはそうと、普段からカッコつけてないで、いざって時は頼りなさいよ。」
『ケンジ』
何処かでオーキド博士の事について触れておきたかったから色々と端折ったが触れた。
ケンジはオーキド博士の悪い部分も認知した上で尊敬している。
『ムコニャ+ヤマコサ』
偽サトシからのアドバイスと警告を受けて、ロケット団を脱退する事を決意。
その後については何処かでチラホラと出すか、サイドストーリーにて描写するつもり。
何気にヤマコサが正式に辞める経緯と、ムコニャ達がロケット団としてでは無く、ライバルとして立ちはだかる為の布石回だった。