俺、サトシになってました(笑)   作:黒ソニア

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nakimi様
高評価ありがとうございます。
お陰様で更にこの作品に対しての意欲が高まりました。
それから誤字報告して下さった方々、ありがとうございます。




第87節:『サイドストーリー(2)』

 

 

 

『第37話:恋はいつでもハリケーン』

 

 

 

「セレナぁあああ!!!」

 

 

彼はカロス地方出身で、赤い帽子に黒いサングラスを乗せた美少年はとある女の子の名を叫びながらホテルのロビーを走り、外へ出ようとしていた。

側から見れば何か非常事態になっているのだろう。

人が声をかけて事情を聞こうとする度に…。

 

 

「ごめんなさい! 何でもないんです!」

 

 

と申し訳無さそうにして謝る女の子…彼の旅仲間の1人:サナ。

彼女は顔を真っ赤にしており、何度も美少年に事情を説明しようとするが、暴走している彼を止められずにいるのだ。

そこへ…。

 

 

「オーライ! サナから事情は聞いただろう!?

だから落ち着いて! 一旦止まるんだ!」

 

 

暴走する美少年の行先をバニプッチのプリントが入った黒いTシャツを着た大柄の男の子:ティエルノが身を挺して止める。

 

しかし、美少年は事情を知らない様に語る。

そこへカメラを大事そうに持つ中性的な雰囲気の男子:トロバがティエルノが止めている美少年に事情を説明する。

 

 

「…そ、そうだったのか。」

 

「ふぅ…やっと聞いてくれました。」

 

「はぁ…これに関しては私が悪いって思ってるけど、暴走しすぎて周りに迷惑かけすぎ!」

 

「はは、まぁ…サナはセレナの事を尊重したんだろう?」

 

「なら間違いは無いと思いますよ。

僕達も事情を聞いて思う所がありますが、セレナの親友のサナがそう判断したのなら正しいと思いますよ。」

 

「…ありがとう、2人共。」

 

 

サナはティエルノとトロバに謝る。

美少年にも謝るが…この後に控えている大きなイベントに全く集中できていない様子だった。

 

 

「…チャンピオンリーグ棄権して、今すぐにでもカントーに行こうかな。」

 

「いやいや! それは流石に不味いんじゃない!?」

 

「そうですよ! 一度申し込んで断ったら…その…。」

 

 

3人は知っている。

美少年の母親はプライドが高いと言うか、少々キツイ性格をしている。

カロス地方の誇る大手企業会社の社長の娘という事もあって厳格な女性なのだ。

…その女性の子供として生を得た彼は母親には頭が上がらないのである。

美少年はいわゆる坊ちゃんなのである。

 

本来はポケモントレーナーになる事は許されたが、旅には一流のボディーガードと共に巡らせる予定だったのだ。

しかし、美少年は「流石に恥ずかしいです、母様!」と否定し「仲間達と共に冒険に行きたいです!」と少し揉め、討論の末にカロスリーグを絶対に優勝する事を約束し…見事、今回のカロスリーグにて優勝を果たしたのである。

 

約束は守ったものの、今回のチャンピオンリーグにはこの美少年の宣伝の為に2勝しろという側から見ればトレーナーになったのにも関わらず更なる無理難題を押し付けられ、それを守らなければないのである。

もし破ってしまえば…。

 

 

「そんなのよりセレナなんだ!

彼女がいなければ全力を発揮出来ない!」

 

 

………どんな目に遭うのか分からない、というのに美少年はそんなのよりセレナを取った。

美少年…彼にとってセレナは───

 

 

「僕の人生…一生のお願い…全てを懸けて…!

将来花嫁になって欲しいんだ!!」

 

 

ここまで断言する程にセレナにゾッコンレベルで惚れているのだ。

 

最初は…カロス地方のスクールに通っている時である。

無論その頃から容姿が整っており、トレーナーとしての素質も高く、スクールに通っていた際に使用していたポケモン…ガルーラことガルを幼少期からメガシンカを使いこなした天才。

───メガシンカに愛された『カロスの貴公子』、と。

 

性格も言わずもがな。

誰にでも優しく、男女共に人気者であった。

それに僻む者も当然いたが、前向きに接して仲良くなる。

───まさに人垂らし。

 

そんな誰しもが憧れる存在が彼だった…が。

彼は運命の出会いをする。

 

いつも通り授業で移動する中、クラスの友人だったサナと…話している可憐な女の子に一目惚れしてしまうのだ。

それが、セレナ。

彼女に出会い、話し…彼は運命の人はこの人だと思った。

 

とはいえ、突然告白しても困惑して距離を置かれるかもしれないと接し続け…10歳になった。

カロス地方もカントー同様に10歳からポケモンを持って旅に出る事を許可され、彼は友人のサナ、特に馬が合ったティエルノとトロバ、そして…セレナと共にカロス中を旅した。

 

 

「でもほんとっ、凄いわよね。

ティエルノもトロバもあのカルネさんから優勝の見込みはあるって言われてたのに。」

 

「…そうだね。けど、結果として負けたんだ。」

 

「悔しいですが、僕等はまだまだな様です。」

 

 

5人の中でも彼は突出しており、長い付き合いのガルーラを筆頭に多くのメガシンカを使いこなした。

ティエルノとトロバもトレーナーになりたてにしてはレベルが高かったが、彼に比べてしまうのが可哀想なレベルで差があった。

 

現にティエルノとトロバは共に本戦まで上がったが、1回戦で敗退している。

それも、トロバに至っては美少年と戦い、圧倒的な差をつけられての敗北だ。

 

 

「でも、こんなのじゃ僕達は挫けないよ。

次のリーグでは僕が勝つからね!」

 

「いえいえ、今度こそ僕が倒して優勝するんです!」

 

「ふぅ、良かった。

正直仲違いしちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしてたのよ。」

 

「またまた〜、サナは心配性だなぁ〜。」

 

「僕等の友情は何があろうと絶対です。」

 

「うん、そうだね。」

 

 

それを聞いて一安心するサナ。

 

その後、サナ達3人の説得もあって彼はチャンピオンリーグに出場した。

結果は…見事ノルマの2勝は果たした。

とはいえ、流石に3戦目では負けてしまった。

 

しかし、トレーナーになった初めてのポケモンリーグを制し、チャンピオンリーグを2連勝はハッキリ言って異質の天才だ。

誰もが将来を期待された天才だと呼び称え、『カロスの貴公子』の名は世界中に知れ渡った。

 

…だが、彼は表面上は嬉しい気持ちもあって喜んだ。

しかし、1番は恋する人に認められたかった気持ちが強く───

 

 

「よしっ、チャンピオンリーグを終えてメディア絡みも片付けた。

母さんには()()()()()()にお願いしてるからもう一安心。

だから僕等も今すぐカントーに行くぞっ!!」

 

 

3人を引き連れてカントーへ向かい…サトシという少年の出身地にしてかの有名なオーキド研究所へ辿り着き、セレナについて聞くと…。

 

 

「おー、セレナくんなら今サトシ達と一緒にオレンジ諸島へいるぞ。」

 

「ありがとうございます。

よしっ、僕等も今すぐオレンジ諸島へ行こう。」

 

 

と、休む間も無くクチバシティに向かい、オレンジ諸島へ向かった。

オレンジ諸島に辿り着いて、セレナを探しながら観光していた。

その際、ロケット団絡みの時間だったり悪天候だったりと…様々なアクシデントに遭ったが…漸く、セレナの居場所を特定した。

それが…。

 

 

「ああ、セレナちゃんならもうサトシくん達と一緒にカントーに帰ったわよ。

私が送ってあげたの。」

 

「今度はカントーに戻ってしまったのか!」

 

 

…と、船場で『みっちゃん』と呼ばれた女性がサトシという少年の話を熱く語り、サナ達は興奮気味に聞いていたが…美少年はそれどころじゃ無かったのだ。

 

 

「もう! セレナに会いたい気持ちも分かるけど!

そう切羽詰まって動かないの!」

 

「けど…けど…! 僕は、僕はセレナに…!」

 

「分かってる分かってる。

…けど、そんなアンタを見てもセレナは困るだけよ。

セレナを不安にさせたくないでしょ?」

 

「それは当然だ!」

 

「…じゃあ少しはゆっくりさせて!

アンタ1人で行動させるのはおば様からも止められてるし、私達も折角のカントーやオレンジ諸島を観光したいの!」

 

「………そうだね。ごめん、サナ。」

 

「分かれば良いのよ。

それじゃ、ビーチに行きましょ!」

 

「オーライ! それじゃホテルを探さないとね!」

 

「こことかいいんじゃないでしょうか!」

 

「良いわね良いわね!

アンタはどうなの───カルム。」

 

 

サナに呼ばれた美少年…カルムは───

 

 

「ああ、良いんじゃないかな。

僕はみんなと一緒なら何処でも良いよ。」

 

「そっ。じゃあここに決ま───」

 

「それにしても、ここのビーチはオレンジ諸島の中で一番有名なビーチみたいだね。

もしこのビーチで…美しいで水着姿のセレナと…。

セレナ………セレナセレナセレナッ!!!」

 

「…お願い。誰かバーサーカーになってるカルムを止めて。」

 

 

カルムは冷静になったかと思いきや、再び暴走気味になってサナ達を困らせた。

 

そして………時間が経ってマサラタウンに再び訪れると、サトシ達がジョウト地方に向かったと知り───

 

 

「僕等もジョウトに向かおう!

セレナ……セレナセレナ───セレナぁぁあああ!!!」

 

 

カルム達もまた、偽サトシ達がいるジョウトに向かった。

2人が出会う時…果たして、どうなるのだろうか。

 

 

 

 

 

『第38話:南国の地方にいる彼女は』

 

 

 

アローラ地方:メレメレ島。

 

雪のように白い肌と長く淡い金髪の美少女:リーリエは大きな屋敷で目覚める。

着替えた後、朝食の為にリビングへ足を運び…長いテーブルに1人座る。

この屋敷にいるのはリーリエと執事の2人だけ。

彼女の他の家族は…兄はトレーナーとして腕を磨く為に家を出て、母はエーテル財団の代表として仕事が忙しい為に別居しており、父は…とある事件で行方不明になった。

それ故…家族はバラバラになってしまった。

 

 

「お嬢様、おはようございます。

お食事をご用意致しました。」

 

「ありがとうございます、ジェイムズ。」

 

 

いつもの様に食事を用意して貰い、それを食していく。

食事を終え、本来なら通っているポケモンスクールに行くのだが…今日は休日だ。

 

 

「今日は何を致しましょう。」

 

 

特にやる事は無い。

ならば知識を付けるべく勉学に励むか───

 

 

「お嬢様、失礼致します。お客様です。」

 

「お客様? 珍しいですね。通してください。」

 

「アローラ、リーリエ!」

 

 

お客様は褐色肌に筋肉質で半裸で白衣のククイ博士だった。

 

 

「アローラ、ククイ博士!

今日はどうなされたのですか?」

 

「聞いて驚けよ…何と、今カントーでポケモンリーグが開催されているんだ!」

 

「まぁ、ポケモンリーグですか。

確かに今は丁度半年に一度開かれる時期ですが…。

カントーのポケモンリーグで凄いことが行われているのですか?」

 

「ふっふっふ…何とな。

今開かれてるカントーリーグでサトシが出場してるんだ!」

 

 

サトシが出場している。

その言葉にリーリエは久しぶりに心の底から元気が出た。

 

 

「そうだったのですか!?」

 

「ああ。昨日の夜にハナコさんから連絡があってな。

何でも、今日これから始まる準決勝でサトシが戦うんだ!」

 

「準決勝に…!? 凄いです、サトシ!」

 

 

自分が10歳なのだから、ポケモンを持てるから当然ポケモンリーグに出場出来ることは理解できる。

ただ、トレーナーになって直ぐのリーグに出場し、準決勝にまで進んでいるのは凄い事だ。

 

 

「だろ? なら折角ならでっかいテレビでアイツの活躍を目にしたいって思ってここに顔を出したんだ。」

 

「そう言う事でしたら…! ジェイムズ!」

 

「かしこまりました。

飲み物と簡単なものを用意いたします。」

 

 

久しぶりに活気のあるリーリエを見たジェームズは颯爽とテレビを付けてカントーのチャンネルを開いて紅茶とお菓子を用意する。

 

 

『さぁ、いよいよ今カントーリーグも大詰めに入ったぁ!

決勝トーナメントAブロック3回戦:準決勝第7試合!

サトシ選手 VS ジョーイ!

サトシ選手の相手は数多の経験を積んでいるエリート中のエリート!

そんな相手に、サトシ選手はどの様なバトルを見せれくれるのだろうかぁ!?』

 

 

と、熱い実況が語り…サトシが遂にフィールドに顔を出した。

 

 

「おっ! 中々に成長したじゃないかサトシ!」

 

「頑張って下さいサトシ!

私達はここから全力で応援いたします!」

 

「ああ! Zワザ級にな!」

 

 

と、偽サトシの試合が始まる。

オコリザル、リザードン、アシレーヌ、フクスロー、ガオガエンが戦い…遂に、5体目のポケモンに…伝説の炎鳥ポケモン:ファイヤーが出て来た。

 

 

「ふぁ、ファイヤーだと!?

とうとう伝説のポケモンを使用するトレーナーが現れたのか!?」

 

「…! サトシ…!」

 

 

リーリエはガオガエン、フクスロー、アシレーヌが次々とやられ、苦渋の顔を浮かべる偽サトシ、そしてラスト1匹のゲッコウガを見て…祈る。

 

 

「サトシ…! 頑張ってください!」

 

 

彼女の祈りが届いたのか…偽サトシとゲッコウガは不思議な力を発揮し、ファイヤーを倒すのだった。

 

 

 

 

 

『第39話:嵐前の静かさは少しずつ』

 

 

 

「…報告致します、サカキ様。」

 

「マトリか、どうした。」

 

 

ロケット団アジトでサカキは秘書であるマトリが部屋に入り、対応する。

 

 

「はっ、先ず………ラムダですが、脱獄して先程部下達を連れて帰還しました。」

 

「…そうか。で、何があった。」

 

「それが…。」

 

 

マトリはラムダから聞いた情報を細かく伝える。

 

 

「………あの改造ケンタロスを打ち破ったゲッコウガのトレーナーか。」

 

「その者の情報も…この前のカントーリーグで準優勝したマサラタウンのサトシという選手です。」

 

「………トレーナーになったばかりの小僧に負けたと言うのか。」

 

「しかし、その少年はあの伝説のポケモン:ファイヤーを倒した実績があります。」

 

「…ファイヤーをだと?」

 

 

ファイヤーを倒したと言う情報に信じられないと思ったが、公式リーグの情報の為信じざるを得なかった。

 

 

「ラムダは運が無かった、という訳か。」

 

「そう言う事になるかと。」

 

「…マサラタウンのサトシ、我がロケット団の要注意人物として覚えておこう。

それで…ミュウツーの方はどうだ。

奴がいればこの小僧も含め、全てが片がつく。」

 

「…申し訳ございません。未だ情報は…。」

 

「そうか………で、まだあるのか?」

 

「はい。サカキ様はあの者達…ムサシ、コジロウ、ニャース、ヤマト、コサブロウの事を。」

 

「はて………ああ、あの出来損ない共か。

ラムダの件に同伴していたな。

捕まって罪を軽くする為に情報を売ったのか?」

 

「いえ、どうもラムダ曰く…あの5人は消息を絶ったそうで。」

 

「…それで? 今更使えん奴等の事などどうでも良い。」

 

「…それが昨日、倉庫で自分達のポケモンと食料などを強奪して行方を眩ませました。」

 

「………何だと?」

 

 

こんな時に余計な事を…と頭を痛めるが。

 

 

「放っておけ、盗まれたものが大したものでなければどうでもいい。」

 

「了解致しました。」

 

 

マトイは盗まれた物のリストを見て大した物では無いと分かるとサカキ同様にどうでも良いと記憶から消すことにした。

その時───ジョウトのアジトから連絡が入る。

 

 

「…アポロか。」

 

『ご無沙汰しております、サカキ様。』

 

 

アポロ…ロケット団最高幹部にしてロケット団のNo.2。

 

 

「用件は何だ。」

 

『はっ、今から話す事はサカキ様が喜びになるかと。』

 

「…! ミュウツーを見つけたのか!」

 

『はっ、ただ居場所までは特定出来てませんが、私のいるジョウトに飛び去った情報を手にしました。』

 

「ジョウトか…。よしっ、マトリ。

カントーで捜索してる部隊をジョウトに派遣させ、直ぐにミュウツーを見つけ出すのだ。」

 

「はっ! 了解致しました。」

 

「他には何か無いのか?」

 

『後2つ。一つは例の研究が順調に進み、例のブツももう少しで判明するかと。

それを早める為に…ラムダを使いたいのですが。』

 

「そうか。ラムダに関しては構わんぞ。

名誉挽回の為に全力を注ぐだろう。」

 

『ありがとうございます。

………それから最後の二つ目なのですが。

───()()()が監視下から逃走しました。』

 

 

『息子』というワードにピクリと反応するサカキ。

 

 

「………このタイミングで、か。」

 

『申し訳ございません。』

 

「…まぁいい。

ミュウツーを捜索すると同時に探せ。」

 

『はっ! 承知致しました。

では、失礼いたします。』

 

 

通信は終える。

 

 

「………ジョウトか。そんな所に逃げていたとはな。

だが、範囲は絞れたぞ。

後は捕縛し、例のブツを…!

………それにしても、あのバカ息子め…何処に眩ませた。」

 

 

とうとうミュウツーがジョウトにいる事がロケット団にバレてしまった。

 

少しずつ、歯車は奇妙な音を鳴らす。

偽サトシ、サカキ、ミュウツー。

そしてサカキの息子。

 

ジョウト地方で遂に偽サトシとサカキが衝突するのか…!

 

嵐前の静けさは少しずつ消えていく。

運命は一体彼等に何をもたらすのか…。

 

 

 






・カルムの話が想像以上に長くなってしまった。
色々と端折ったのに…半分以上もかかってしまった。
因みに僕の中のカルムくんはスマイルワールドや切り札がアクションマジック:回避で有名なキラートマトくんをいつも連想してしまいます(笑)。

・リーリエパートはまだ出番が当分先なので少し顔出し感覚で出しました。

・ロケット団サイド。
ムコニャは無事に自分達のポケモン達を奪取し、食糧と道具を強奪して逃走した。

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