俺、サトシになってました(笑)   作:黒ソニア

98 / 108


アルトマーレの騒動は今回で終わりとなります。
…結末を、その目に。




#96:『ありがとう、出会えて良かった』

 

 

 

『第15話:偽サトシ VS 最終防衛システム』

 

 

 

「さぁ、潰してあげるわ!」

 

 

リオンがアルトマーレ最終防衛システムを起動させ、巨人と化した兵器による巨腕が偽サトシを襲う。

 

偽サトシのポケモンはフシギダネとトゲチック以外は既にボロボロで、スイクンは化石兵の自爆によって重症。

タケシとカスミのポケモンもボロボロでセレナのポケモン達では逆に怪我を負う状況。

…その中でラティアスとラティオスの力を吸収して『こころのしずく』を暴走させた脅威が偽サトシへと迫る。

 

 

「サトシ!?」

 

 

セレナが悲痛の叫びを上げる。

だがその偽サトシはというと───

 

 

「フンッ!!」

 

 

『波導』を纏った拳で抵抗し、偽サトシのパンチが防衛システムの巨腕を吹き飛ばした。

 

 

「う、嘘でしょ…?」

 

「な、何かの冗談でしょ…?」

 

 

偽サトシの異常なパワーにドン引きする怪盗姉妹。

 

 

「…そうよ。サトシなら大丈夫。

何だって、『波導』という不思議な力に常識外れな身体能力があるもの!」

 

「ああ、サトシならあんな装置だって!」

 

「…そうよね。サトシ、気をつけて…!」

 

 

仲間の3人は偽サトシの凄さを熟知している為に信じる。

しかし、知らないハンサムは信じられない顔をしていた。

 

 

「ふ、ふざけるのも大概にしなさいよ!」

 

 

リオンがそう叫んでもう一度偽サトシへと巨腕を伸ばすが、偽サトシは巨腕を床に叩きつけ、リオンのいる所へと巨腕を足場に駆けて行く。

 

 

「この、化け物!!」

 

 

リオンが『こころのしずく』を通して無理矢理ラティアス達からエネルギーを奪い取り、偽サトシに目掛けてレーザーを放つ。

 

 

「ちっ…!!」

 

 

レーザーを回避しながら攻め上げて行き、偽サトシは『波導』を纏った拳を放ち、古代装置は壊れなくても反動で体勢を崩す。

 

 

「な、何なの…!? この装置が力負け!?」

 

 

リオンは体勢を立て直そうと操作するも、再び偽サトシの拳が炸裂して反動で倒れる。

 

 

「さっさとこんなモンぶっ壊して、ラティアスとラティオスを助ける!!」

 

 

偽サトシは飛び上がってオレ式喧嘩殺法『蒼』をぶつけようと『波導』のエネルギーを蓄積して…放った。

『蒼』によって古代装置全体に衝撃が走り、鈍い金属音が悲鳴の様に鳴っていた。

 

 

「こいつで……トドメだぁああ!!」

 

 

再び『蒼』を展開して解き放とうとする───が。

 

 

「調子こくんじゃないわよクソ餓鬼!!」

 

 

リオンは『こころのしずく』を操作して圧縮粒子砲を偽サトシへ放った。

 

 

「ぐっ……がぁっ…!!」

 

 

『波導』の力でゲッコウガの波導技による鎧の様な防御膜で防ぎ、何とか直撃は防いだものの反動が偽サトシを襲っていた。

 

何とか立ち上がった偽サトシだった…が。

 

 

「あんたは出鱈目だけど…お友達はどうかしらねぇ!!?」

 

 

圧縮粒子砲がセレナ達の方へと向けられて放たれた。

 

それを偽サトシは咄嗟に庇う様に再度『波導』を展開して防ぎきる。

…しかし、疲労と激痛が走り息を切らし始めたタイミングで巨腕が偽サトシをガッチリと握り抑える。

 

 

「ぐっ…!」

 

「捕まえたわ。

両腕でやれば脱出出来ないでしょ!

ついでに…これも喰らいなさい!!」

 

 

偽サトシを握り抑えてる両方の巨腕から電撃を流す。

 

 

「ぐっあああああああああ!!!!!」

 

 

偽サトシの弱点…それは電撃だった。

凄まじい激痛と痺れが偽サトシを襲い、思わず絶叫を上げてしまう。

 

 

「サトシィィイイイイ!!」

 

 

セレナが悲鳴を上げ、助けに行こうとするがカスミが止める。

 

 

「何をするのカスミ!!」

 

「気持ちは分かるけどセレナまであの攻撃を受けちゃったら…!!」

 

 

カスミとしても何とかして助けに向かいたいが、言っても巻き添いを喰らうだけだと分かっており、悔しい顔をしていた。

 

 

「電撃なら『じめんタイプ』を持つポケモンで!」

 

 

タケシがサイドンとゴローニャを繰り出すが…。

 

 

「外野は大人しくしてなさい!」

 

 

と、2匹に向けて圧縮粒子砲を放って戦闘不能にしてしまった。

 

 

「サイドン!? ゴローニャ!?」

 

 

タケシは慌ててボールに戻す。

 

 

「あんた達はこの坊やの後で相手してあげるから。

覚悟しておくのね。」

 

「くっ…!」

 

 

タケシが悔しい顔を浮かべる中、フシギダネが《ハードプラント》で巨碗の動きを止め、同時に《パワーウィップ》を使用して偽サトシを助けようと無茶をし…その際電流がフシギダネにも流れる。

 

フシギダネに電撃は効果いまひとつだが、ラティアスとラティオスのエネルギーでは通常の電撃とは異なり、フシギダネにも大ダメージが走る。

それでもフシギダネは踏ん張って巨腕から偽サトシを救出する。

 

 

『ダ…ダニャァ…。』

 

 

《ハードプラント》の強力な技故の反動と同時に酷使した《パワーウィップ》の反動…そして、偽サトシを救出する際に受けた電撃でフシギダネは戦闘不能状態になっていた。

 

 

「はぁ…………はぁ………た、助かった。

ありがと、な…フシギダネ。

後はゆっくり休んでくれ…。」

 

 

そう言って偽サトシはダメージを負ったフシギダネをボールに戻した。

その際、トゲチックが少しでも偽サトシを回復させる為に《いのちのしずく》で傷を癒す。

 

 

「…ありがとな、トゲさん。

危ないかなら下がっててくれ。」

 

『チョキ…。』

 

「サトシ!!」

 

「…セレナ、悪いけどトゲさんと共に下がっててくれ…。」

 

「でも! サトシがこれ以上傷つく所なんて…!!」

 

 

…ああ、そうだな。

俺1人で戦ってる訳じゃねぇんだ。

 

偽サトシは自身を心配する仲間達を見る。

セレナ、カスミ、タケシ…と。

 

 

「…もう大丈夫。

俺は負けねぇし…一刻も早く、ラティアス達を…!」

 

 

この間にリオンは拘束しているラティアス達からエネルギーを奪い取っていた。

既にラティアス達から膨大なエネルギーを奪い取っており、2匹は体が薄くなりつつあった。

 

 

「充電完了っと。

さぁ坊や、そろそろおねんねする時間よ。

今度は黒焦げにしてあげるわ!」

 

「…俺は極力、レディには手をあげねぇ様に心がけて来たが…。

テメェだけは、絶対に…許さねぇええ!!」

 

 

偽サトシな怒りを爆発させ、必ずラティアス達を助ける決意に『波導』を更に強く開放する。

全身から凄まじい『波導』…オーラを吹き出すと、青黒いスパークを発していた。

 

 

「どう見た目を見繕ったって、人がコレに勝てる訳ないのよ!!」

 

 

リオンはそう叫んで圧縮粒子砲を偽サトシへと放つ。

その際、偽サトシが電撃に弱い事を気づいて電撃を浴びさせていた。

 

先程よりも強大で危険な攻撃が偽サトシを襲うが…。

 

 

「こんなもんに……俺がぁあっ!!

負けるかぁぁああああ!!!!」

 

 

拳を強く握り締め…青黒いスパークが拳から発し、それを『蒼』を放つ様に蓄積して解き放つ───!

 

 

「喰らいやがれ!! オレ式喧嘩殺法…!

───『オネスティ・インパクト』!!」

 

 

生前に読んでいたとある海兵の技…拳骨破壊砲。

幼い頃、『波導』の力をモノにする中で偽サトシが編み出していた奥義。

 

拳骨破壊砲と圧縮粒子砲が激突する。

リオンが力強く叫ぶが…偽サトシの強い覚悟が乗った拳骨破壊砲が圧縮粒子砲を消し飛ばし、リオンと古代装置を巻き込んで爆発した。

 

 

「リ……リオ、ン…?」

 

 

古代装置と共に爆発に巻き込まれたリオンを思い、ザンナーは膝を崩して座り込んでしまう。

 

セレナが偽サトシの元へと駆け寄ろうとするも、偽サトシがそれを止めて煙の元へと歩み…『波導』で感知したリオンが倒れてる所へと辿り着く。

そして…粉々に破壊された古代装置の残骸から脱し、倒れて煙でむせているリオンの胸ぐらを掴み、最大の殺気を込めて睨みつける。

 

偽サトシの殺気にリオンは恐怖に完全に支配され…泡を吹いて気絶する。

そのリオンを偽サトシは座り込んでいるザンナーの元へと投げ飛ばした。

 

 

「…ハンサムさん! その2人を捕らえてくれ!」

 

「…あっ、ああ!」

 

「………カビゴン! 頼む、力を貸してくれ!」

 

 

偽サトシはカビゴンを出す。

カビゴンは時間もあって眠そうにしていたが。

 

 

「頼む…! ラティアス達を解放してくれ!

頼むっ!! カビゴンッ!」

 

 

必死の偽サトシにカビゴンは起き上がって《メガトンパンチ》でラティアスとラティオスの拘束から解放する。

 

 

「…サンキューな、カビゴン。」

 

『…カンビ。』

 

 

カビゴンに礼を言ってボールに戻すと、急いでラティアス達の元まで駆け寄る偽サトシ。

駆け寄ると同時に疲労とダメージで倒れ込むも、気にせずにトゲさんに《いのちのしずく》を指示して二人を回復させる。

 

《いのちのしずく》で体の怪我はある程度回復したが…二人が薄くなるのは戻らなかった。

 

 

「はぁ……はぁ……そうだ、『波導』は生命エネルギーみてぇなもんだ。

これを与えれば…!」

 

 

直様偽サトシはラティアスとラティアスに『波導』を流す。

偽サトシの考えは間違っておらず、偽サトシの『波導』を受けた二人は体は元に戻る。

 

 

「………くっ…。」

 

 

流石の偽サトシも死闘で限界が来ており、倒れ込む。

それをラティアスが抱きしめて受け止める。

 

 

『ウー!』

 

『…』

 

 

偽サトシとラティアスを見ているラティオス。

ラティオスは偽サトシを見て…少し前までの事を思い出す。

 

 

 

 

 

『第16話:ラティオスの決意』

 

 

 

───妹よ、どうしてお前はあの人間をあそこまで好む。

 

 

夜…怪盗姉妹の襲撃を受ける少し前、眠る前に兄妹でテレパシーによる話をしていた。

話の内容は偽サトシの事である。

 

ラティオスはずっと1日ラティアスの相手をしていた偽サトシを見ていた。

 

結論から言うと、ラティオスから見ても偽サトシは良い人間だ。

 

ポケモン達から愛され、偽サトシもポケモン達にそれに応えていた。

唯一、他のポケモン達の中で孤立していたカビゴンでさえ、偽サトシの事を『悪い奴じゃ無い』『変わった奴』と評価して自分のトレーナーだと認めていた。

 

遊び疲れたラティアスに偽サトシがこれまでの旅の事を話してた時も、良い事だけで無く大変だった事、人間の醜い所も話してラティアスに注意したりと色んな話をしていた。

 

それでもラティアスは偽サトシの冒険譚に惹かれていた。

元々偽サトシに好意的に見ていたが、今では───

 

 

───外の世界、行きたい!

 

 

話を終え、偽サトシ達が宿に戻った時にラティアスはラティオスに偽サトシ達に着いて行きたいと言い始めたのだ。

 

 

───…彼が悪い人間では無い。

けど、どうして……どうしてそこまであの人間に…サトシに惹かれる?

 

 

ラティオスはラティアスの頼みを断らずにそう問いかける。

それに対してラティアスは───

 

 

───サトシ、暖かい人!

お兄ちゃんと同じで私の事を思ってくれるし、綺麗な心が好き!

 

 

そう答えた。

 

確かに…自分から見てもサトシは何処か憎めず、それどころかお日様の光の様な居心地の良さと暖かさを持ち、鮮やかなオーラを持っていた。

 

そうラティオスは思った。

 

…出来る事なら妹の望みは何でも叶えたい。

しかし、自分達はこのアルトマーレを護らないといけない。

この地に生まれ、使命を持った以上は普段アルトマーレ内だけだが自由に過ごさせている妹であろうとその望みを叶えてはやれない。

 

…しかし、外の世界を知った妹はこのアルトマーレでは幸せになれない。

妹はサトシと同じ冒険が好きな者同士なのだ。

 

 

───……どうしたものか。

 

 

いつの間にか眠りについていた妹を撫でながら、自身もウトウトと眠気に誘われていた。

 

一先ずは眠ろう。

───そう思った矢先に、襲撃を受けた。

 

2人の人間によって闘い慣れていないラティアスとラティオスは呆気なく負けてしまう。

駆けつけた信頼できる人間のボンゴレとカノンも呆気なく2人の人間によってやられてしまう。

 

しまいにはアルトマーレを護る為の『こころのしずく』をも奪われ、ラティアスとラティオスは古代装置に拘束されてしまい、二人は人間によってエネルギーを奪われていた。

 

苦しむラティアスとラティオス。

妹を思いながら苦痛に耐えるラティオスに対し、ラティアスは…。

 

 

───助けて! 助けて!

 

 

…と、助けを求めていた。

何とかして妹だけでも助けたかったが、自分ではそれが叶わない。

 

 

───サトシ…サト、シ……助けて…!

 

 

そして妹は涙を流しながらサトシに助けを求め出した。

 

だが助けには来られない。

当然だ、如何にサトシがボンゴレ達同様に信頼できるとしても、ここまで辿り着くのは至難だろう。

 

…そう思った時だ───

 

 

「ラティアス、ラティオス! 助けに来たぞ!」

 

 

サトシは駆け付けて来たのだ。

…凄まじい殺気を抱いて怒っていたが、それが何なのかをラティオスは知っていた。

それは、優しさを持つ者の怒りだ。

 

その後も仲間達と共に身を削りながら戦ってくれた。

自分の身を削り、自分達のせいで傷つきながらも…苦しむ我々を思い続けてくれた。

 

そして、サトシが勝利してボロボロで直ぐに倒れそうな状態なのにも関わらず、自分達を最優先にして自分の力を分けてくれたのだ。

 

完全とはいかなくても、動けるまで治してくれたサトシを抱きしめて泣いているラティアスを見て…ラティオスは思う。

 

彼なら自分の大切な妹を守ってくれる、任せられると。

 

そう思っていた所に───

 

 

「ああ! 『こころのしずく』が!?」

 

 

カノンが悲痛の声を上げる。

皆がカノンの方を見ると…装置に取り付けられていた『こころのしずく』から邪気の様なのが漏れており、それがこの博物館内を…アルトマーレ全体へと広まる。

 

やがてその邪気が晴れる。

謎の地震で避難していた住民達や観光客達は疑問を浮かべていたが…やがてそれは次の光景を目の当たりにして絶望に染まる。

 

アルトマーレ周辺の海がまるで意思を持った様に吹き荒れ始めると、水面が下がっていき…離れた所で巨大な津波へと変わっていくのだった。

 

 

 

 

 

『第17話:ラティオス最後の輝き』

 

 

 

怪盗姉妹が起こした古代装置の影響からずっと揺れていたアルトマーレの地震がより激しくなる。

それと同時に───パリンッと『こころのしずく』が粉々に砕けて霧散する。

 

 

「こ、『こころのしずく』が…!?」

 

「一体、何が起こるの…?」

 

「この感じ……とんでもない事が起きちゃうんじゃ…。」

 

「…俺の、せい…か…。」

 

 

偽サトシが古代装置を粉々に破壊した事で『こころのしずく』も壊れたのだと思い、顔を青くする。

するとラティオスが首を横に張る。

 

 

「サトシくんのせいでは無い。

…『こころのしずく』は、プラスのエネルギーでこのアルトマーレを循環して守っておったが…。

それをあの2人が悪用したせいでマイナスのエネルギーへと変異してしまい、このアルトマーレを逆に脅威に陥れてしまったんじゃ!」

 

 

主に悪いのは悪い笑みを浮かべていた『こころのしずく』を使い続けていたリオン()のせいである。

 

 

「しかしどうする!

長年の経験で分かる…これは、非常に不味い事態…!

それも───災害レベルだ…!!」

 

 

ハンサムが力強く叫ぶと同時に地震が更に強くなる。

というよりも、巨大な何かが迫って来る様な。

 

 

「…外の方か。行こう!」

 

 

皆は博物館から外へと走り行く。

 

 

「…ちょっ、ちょっと!?

逃げるんだったら私達も忘れないで欲しいんだけど!?」

 

 

絶対に逃げられない様に拘束されている姉のザンナーがそう叫ぶも、誰の耳にも届かなかった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

外へ出て港の方へと辿り着く偽サトシ達。

そこで目にしたのは───

 

 

「ありゃ……津波!!」

 

「しかも2つ…!!?」

 

「それもだけど問題なのは大きさよ!!

このアルトマーレをペシャンコにしちゃうくらい高いわよ!?」

 

「あれ程の水圧だと、建物も潰される…!」

 

 

巨大な津波が左右から迫っており、間も無くアルトマーレを飲み込もうとしていた。

 

 

「………待ってろ、みんな……俺の、『オネスティ・インパクト』でっ…!!」

 

「さっきのやつなんてもうやれる様な状態じゃ無いでしょ!?」

 

「そうだ無茶だぞ!!」

 

「無茶でもやるしかねぇんだよ!!」

 

 

俺が『波導』を振り絞って飛び立とうとする…が、それをラティオスが阻止する。

 

 

「…ラティオス?」

 

 

ラティオスはジッと偽サトシを見ながら阻止した手からラティオスが伝達する。

 

 

『あれは僕がなんとかする。』

 

 

ラティオスと思わしき声が聞こえて驚愕する偽サトシ達。

 

 

「ラティオス!? あなた喋れたの!?」

 

『…さっき、サトシがくれた力…少しだけ、話せるになった。』

 

 

滑舌が少し悪いが、テレパシーが使える様になった様だ。

 

え? だとしたらラティアスも?

そう疑問に思うが、ラティアスに変化は無さそうだった。

いやそれより…。

 

 

「何とかするって…お前。」

 

『これ、僕等の責任。』

 

「…んな訳ないだろ。

お前達は何も悪くない!

悪いのは…お前達の力を利用した連中に、お前達の生命エネルギーを使って起動する装置を作った連中だろ!」

 

『ありがとう。』

 

「…へ?」

 

『僕等の為、怒ってありがとう。

サトシ、お前は良い人間。

人の為、怒り、悲しむ、喜ぶ。

それが出来るの、とても良い人間。

───出会えて、良かった。』

 

 

ラティオスはそう言うと、妹のラティアスを優しく抱きしめる。

 

 

『妹、眠る前の答える。

サトシと一緒に、外の世界、沢山見る。

これから、本当の自由に生きる。

それが、兄の…最後の、願い。』

 

 

そう言うと、ラティオスは偽サトシに最愛の妹を託すように押し付ける。

 

 

『サトシ…僕、の…最後の、願い。

妹、に…世界…を、一杯、見せて…欲しい。』

 

「…ラティオス、待て…待ってくれ!!」

 

 

偽サトシがラティオスに手を差し伸べるが…。

 

 

『サトシ…ありが、とう…。

出会え……て、良かった…。

妹、を……よろしく。』

 

 

偽サトシに笑顔を送り、空高くへと飛び去ろうとする。

 

 

「待ってぇ…!!」

 

 

ラティオスを引き止めようとするも…スイクンが偽サトシの服を引っ張り、阻止する。

その表情は悲しみに満ちていたが、ラティオスの覚悟を無駄にすると強く訴える様に。

 

 

「ラティオスゥゥゥゥ!!!!」

 

 

偽サトシの声が空高くのラティオスに届き、ラティオスは涙を流すも全てを託した事に満足し…。

 

自分の全てを使って、アルトマーレを守る様に大きな結界で包み…津波から護るのだった。

津波からアルトマーレと大切な人達を守ったラティオスは透明になり、泡の様に肉体が消失していく。

 

消えゆく意識、自我。

その最後に目にしたのは…ラティアスを抱きしめながら、自分の為に涙を流す偽サトシ。

 

ラティオスは安堵の笑みを浮かべ………肉体が消失する。

そして、消失した際に霧散したラティオスの残滓と結界が一つとなり…新たな『こころのしずく』が生まれるのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「ラティオス…。」

 

 

偽サトシは涙を流しながら消えたラティオスを求める様に手を伸ばしている。

帰ってこないと、分かってしまっても…僅かな可能性を信じて。

 

…しかし、ラティオスは帰ってくる事は無かった。

 

 

『ウゥ………ウゥ……。』

 

 

ラティアスは偽サトシの胸の中で泣き続ける。

偽サトシはラティアスを思い、優しく…強く抱きしめる。

セレナ、カスミ、タケシも泣く偽サトシとラティアスに寄り添う。

 

ボンゴレとカノンも静かにラティオスの死に涙を流し、離れた所でハンサムは面目無さそうに目を閉じているのだった。

 

スイクンは一つの命を輝きを見届けた後に、偽サトシをチラリと見てこの場から立ち去った。

 

 

「………ぁ……あれ、は…。」

 

 

カノンとボンゴレの元に緩やかに『こころのしずく』が舞い降りていく。

新たな『こころのしずく』…ラティオスを抱きしめるカノンに慰めるボンゴレ。

 

脅威が消え、静かな海が波の音を奏でる。

朝日が昇ると共に。

 

 

 






・次回、劇場編ラスト。
先にここで記述しておくと、『ぎんいろのはね』は宿の偽サトシの鞄に入ったままだからルギアに届かなかった。
仮に駆けつけたとしても、残念ながら偽サトシ達は守れても街や人々は防ぎきれない…。


『ラティオス』
偽サトシに最愛の妹:ラティアスを託し、ボンゴレとカノンには新たな『こころのしずく』を託して眠りについた。
未練は残るも後悔の無い人生だと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。