これにて『水の都の護神ラティアスとラティオス』は完結です。
次回からまた『別世界では相棒だったピカニート』の短編もやり、本編はジョウトの冒険に戻ります。
それから、このアルトマーレの一件で警察側の信用性はほぼどん底まで落ちましたが…一応考えはあります。
ただ、それは……ホウエン以降になってしまう………とだけ。
「……………んっ。」
長く眠った事で、全身が軽い筋肉痛みたいなのに襲われている感覚を覚える。
まだ眠気があるのだが、窓から照らされている光により目を覚ます。
「…おっ。サトシ、目を覚ましたんだな!」
「………タケ、シ…?」
「ちょっと待ってろ、2人を呼んで来る。」
そう言ってタケシは部屋を後にし、俺はゆっくりと体を起こす。
そして…自分が何故倒れていたのか、最後に覚えている記憶を呼び起こそうとする。
「………そうだ、ここはアルトマーレ。
ラティアスと出会って、園庭で色々と遊んで…。」
思い出しながら口にしていると、全てを思い出す。
夜中に逃亡した怪盗姉妹が『こころのしずく』を悪用し博物館の古代装置を起動させ、助けに向かって…倒したものの、ラティオスが───
ハッとデジタル時計を見ると、あの事件から翌日になってしまってる。
「サトシ!」
セレナが扉を勢いよく開けて偽サトシに駆け寄る。
普段の淑女の彼女ならばそのような荒てな事はしないのだが、彼女は偽サトシが無事に目を覚ました事で、薄ら涙目になってた。
「よかったぁぁ…無事に目を覚ましたのね。」
「……セレナ?」
「ほんっとう、心配したんだからね。」
「そう言うな。サトシは特に疲労が激しかったんだ。」
カスミも駆けつけてタケシがまぁまぁと宥める。
「……カスミ、タケシ…。
………セレナ、ラティアスは?
ラティオス、は…。」
偽サトシが震えながらそう尋ねると、セレナ達は暗い顔になって全てを語る。
ラティオスは新たな『こころのしずく』となってしまい、偽サトシはあの後直ぐに意識を失ってしまった。
ハンサムな怪盗姉妹を国際警察本部へと連行し、タケシ達は昨日復興作業を手伝っていたそうだ。
全てを思い出し、その後の事を知った偽サトシ。
「………俺は、ラティオスを助けられなかったんだな。」
…俺は結局、結末を知っていたと言うのに変えられなかった。
力を持っていながら、運命を変えられなかったんだ。
救えなかったのだ…。
「…ボンゴレさん。」
「ん? おお、サトシくん!
目が覚めたんじゃな!」
俺達は博物館へと足を運んだ。
俺は…ラティアス達を苦しめていた古代装置のあった所へ目を移す。
そこでは古代装置を復元してる最中だった。
「………すみません。
非常事態とはいえ、アレを壊してしまって。
…賠償は支払います。
直ぐには無理でも、ちゃんと返しますので…。」
悪い気持ちは本当だ。
けど、同時にこんな物を直さないで欲しい。
経緯などは知らないが、ラティオスとラティアスの命を吸い上げるというシステムのこんな物がこの世に存在して良いはずが無い。
偽サトシがそう考えて表情が強面となっていた。
そんな偽サトシにボンゴレがポンッと肩を持つ。
「そんな必要は無い。
それと、キミが思っている様な事はしないよ。」
「…へ?」
「あくまでもアレは見た目だけを再現した物。
アレにもうエネルギーを奪うシステムは一切無い。
キミのお陰でな。」
要は珍しい物だからアルトマーレのシンボルの一つとしてただ見た目だけを再現させただけらしい。
「…あんな物、存在して良い物では無かったんじゃ。
ラティアス達の命を吸い取る仕組みなど…。
何を思ってあれを作ったのか…。
そのせいで………ラティオスは…。」
ボンゴレは昨日の出来事を思い出して涙を浮かべる。
だが、直ぐに堪えて偽サトシに真剣な眼差しを送る。
「いや、それよりもキミに頼みたい事があるんじゃ。」
噴水に眠る『こころのしずく』を見ているカノン、そしてブランコで寂しそうに座っているカノンの姿をとっているラティアス。
二人共、暗い雰囲気でいる中に───
「ラティアス。」
偽サトシがやって来てラティアスに声をかける。
後ろの方にはボンゴレやセレナ達が控えていた。
カノンは偽サトシを見て「サトシくん! 目が覚めたのね!」と喜ぶと、カノンの姿から元の姿になったラティアスが偽サトシへと力強く抱きついた。
同時に、涙を流しながら。
「…心配かけたな、ラティアス。」
偽サトシはそんなラティアスを優しく抱きしめ返して頭を撫でる。
彼女が落ち着くまでの間…先程のボンゴレとの会話を思い出す。
『サトシくん、ラティアスを連れてってくれないか。』
それを聞いた偽サトシは目を見開くと、後に申し訳無さそうな顔をする。
『…すみません、ボンゴレさん。
俺には………あの子をここから連れて出す事は出来ません。』
口には出来ないが、ラティオスが死んでしまう事は分かっていた。
だからこそ、怪盗姉妹を事前に捕らえる事でその結末が変えられたと思った。
…しかし、それは自惚れだった。
結果として、俺はラティオスの死の運命を変えられなかったのだ。
『ラティオスを救えなかった俺には、大事な兄との思い出の地からラティアスを連れて…引き離す資格はありません。』
『…そう言わんでくれ。
ラティオスを救えられなかったのはキミのせいじゃない。
キミは誰よりも最善を尽くしてくれた。
会ったばかりのラティオスとラティアスを我が事のように体を張って助けてくれた。』
『…んなの、当たり前の事なんですよ。』
『その当たり前の事が出来る人間はそうおらんよ。』
『…』
『それに、これはラティオスの…あの子の最後の願いなんじゃ。
あの子の気持ちを尊重してくれぬか。』
…ボンゴレさんはそう言うが、やはり…俺には連れて行けない。
ラティアスだって、兄の眠るこの地から離れたく無いはずだ。
偽サトシは少し落ち着いたラティアスに…午後にはアルトマーレから出る事を、別れを告げようと…そう思った所に───
『シュワァァアンッ!!』
空から複数の気配と共に声の主が偽サトシ達の元へと降り立つ。
その正体は…ラティオスとラティアスの群れ。
前に立つのはエメラルドグリーンのリーダーである色違いの個体だった。
「こ、これって…!?」
「ラティアスとラティオスの群れだ…!」
「でもどうして…!?」
「………ここアルトマーレは元々ラティアスとラティオス達の安らぎの場の一つなんじゃ。
ワシ等がここを守っていたのも、珍しさから人間に狙われる他のラティアスとラティオス達を守る為でもあったんじゃ。」
ボンゴレはセレナ達にそう説明すると、ラティオス達の元へと駆け寄る。
「ラティオス、ラティアス達よ。
事情はもう知っているだろう。
あの子が犠牲になってしまったのはワシ等の失態。
彼等には何の罪は無い。
怒りを抱いているだろうが、その怒りを彼では無く不甲斐ないこのワシに…!」
ボンゴレが頭を下げて言うも、後方にいたラティオスとラティアスは威嚇する。
しかし、リーダーの色違いのラティオスがそれを止める。
『止めよ。この者達を傷つける事を、この地を護った同胞は望まぬ。』
何と色違いラティオスはテレパシーが使えた。
色々と驚く偽サトシ達だったが、色違いラティオスは偽サトシに近づく。
『…汝が、
「…運命? それに、『金虹』の使者って…。」
誰の事なのか一瞬分からなかったが…一人心当たりがあった。
恐らく、スイクンの事だろう。
ラティオス達とはどういった関係なのか知らんが、何かあるんだろう。
『運命を背負いし者よ、汝の名は?』
「…サトシ。」
『そうか…では、サトシよ。
先ず、同胞達を代表して礼を言う。
ありがとう、この地を護ってくれた事を。』
色違いのラティオスは偽サトシに頭を下げる。
その行為に仲間達は止めるようするが…。
『皆よ、話は『金虹』の使者から聞いているだろう。
…確かに、邪な人間によって我等の数少ない安息の地であるここは脅かされ、同胞は命を代償にこの地を護る雫となった。
しかし、その同胞を思い身を削って阻止しようと戦い、涙を流したのは心正しい人間この者達だ。
それも忘れてはならない。』
リーダーの色違いラティオスは全てを知っている。
偽サトシ達と共に戦った『金虹』の使者…スイクンから全てを事細かに語られ、多くの仲間達は人間によって命を落とした同胞を思い、人間に怒りを抱いたが、色違いラティオスは全ての人間が悪い訳ではない事を理解していた。
『先程の汝を見ていた。
サトシよ、どうか…同胞の最後の願いを聞き入れてはもらえないか。』
「………ごめんなさい。それは出来ません。
俺に…俺に、そんな資格は無い。
力を持っておきながらラティオスを救えなかった、俺には…。」
『…だがそれでは、同胞が浮かばれぬ。』
この色違いのラティオスはここのラティオスの気持ちを尊重しているのか。
…けど、けど…!
「…どうして…どうしてお前は、俺を…!
………俺を、信じてくれるんだよ…!
俺は………俺は、愚か者だ。」
『出会ったばかりの者の為に命を張って戦える者に愚か者はおらん。
人の為に怒り、悲しみ、喜べる者は愚か者では無い。
それは…勇気を持つ者だ。』
「…でも、でも…ラティアスの気持ちはどうなる?
ラティアスは…ここにいたいはずだ。」
俺はそう言うと、色違いラティオスはラティアスに問いかける。
『同胞よ、其方はどうしたい。
其方の素直な気持ちが聞きたい。』
色違いラティオスの問いにラティアスは答え辛そうにしていた。
兄を想い、ここへ残りたいという罪悪感とは違いいたい気持ちがある。
…しかし、偽サトシに惹かれて世界を見たい気持ちもあるのだ。
『正直になって良いのだ。
其方の兄も、それを何よりも望んでいる。』
ラティアスは兄のラティオスが眠る噴水に目を移す。
どうすれば良いのか…そう思っていると、兄のラティオスの姿が見えた。
ラティオスは頷く。
それは、自分のやりたいように生きてほしい…そう言う意味を込めて。
『………ウー…。』
ラティアスは悩んだ末に…偽サトシの服の裾を握りしめた。
それを見た色違いラティオスとボンゴレは安堵する。
色違いラティオスの後方にいる同胞達は反対したそうにしていたが、リーダーが首を横に振り大人しくさせていた。
セレナ、カスミ、タケシは偽サトシを見て受け入れてあげて欲しいと表情で告げていた。
…俺は、罪悪感もあって悩みに悩んだ末───
「分かった………分かったよ、ラティオス。
お前の大切な妹はこれからは俺が護る。
だから……安心して休んでくれ。」
俺は空のモンスターボールを取り出して、ラティアスに優しく当てた。
ラティアスが仲間になった。
偽サトシがラティアスを新たに仲間にした事で笑顔になる。
───すると、園庭全体に心地の良い風が走った。
それはまるで…兄のラティオスが祝福している様に。
午後、ボンゴレ達と共にアルトマーレでの食事を終えて船が出る時刻となった。
「元気でね、ラティアス。
あまりサトシくん達を困らせちゃダメよ?」
「サトシくん達の言う事をしっかり聞いていくのじゃぞ。」
カノンとボンゴレはカノンの姿をとっているラティアスにそう伝える。
ラティアスも『うー!』と元気よく返事返していた。
「そう言えば、一つ気になっていたんだが…ラティアスの事をこれからどう呼ぶ?」
タケシは思い出したかのようにそう口にする。
先ず、ラティアスは常時ボールから出て人の姿で行動を取る事になった。
その為、特別枠という事で一応オーキド博士とナナミさんに連絡を入れ、6匹以上手持ちに出来る様にはなった。
そこまでなら良いが…問題は、ラティアスを『ラティアス』と呼ぶのは不味いのでは無いかと言う事だ。
ラティアスというポケモンは伝説のポケモンだ。
…ロケット団やポケモンハンターの事もある為、呼び名が必要なのだ。
と言う事で───
「これからは『ティア』でいこう。」
安直だが、これでいいだろう。
これだけでラティアスというポケモンであると分かるものは最早妄想力の強い変態か俺と同じ転生者或いは憑依者くらいだろう。
後者の2つがあるかどうかは知らないが…。
「うー!!」
ラティアス改め…ティアは呼び名を貰って嬉しそうに踊っていた。
それを見てみんなは微笑ましそうにしていたが…大人の(多分)カノンがはしゃぐ姿はなんと言うか…。
「…ティア、少しいいか?」
俺は何となく出来ると思い、ある人物の姿をイメージしてそれを『波導』を通してティアの額に当てる。
無事、ティアにイメージが伝わったようで、ティアは───ポケスペの人の姿をとったラティアスの姿になった。
その姿にみんなが可愛いと褒め、ティアは完全にハイテンション(偽サトシへの好感度が跳ね上がった)。
………そして、いよいよアルトマーレを発つ時が来た。
改めて、長い間共にアルトマーレで過ごして来た事からボンゴレとカノンが寂しそうにするが、ティアに心配かけまいと直ぐに笑顔で見送る。
船で手を振り続けいるティアが見えなくなるまで見送ったボンゴレとカノン。
「…行っちゃったね、お爺ちゃん。」
「ああ。だが、これは永遠の別れじゃない。
いつでもここに来ると言っていたからな。」
ボンゴレはカノンの肩に手を置く。
…遠くへと旅立った同胞を透明な姿で見送るラティオスとラティアスの群れ。
その中でリーダーの色違いラティオスはこう呟いた。
『…滅びへと向かうこの世界にも希望の光が現れたのかもしれん。
『銀嵐』の祝福を受けていた。
『金虹』の使者よ…其方の言うように、かの者は世界を変えるのかもしれないな。』
リーダーの色違いラティオスが飛び立とうとすると…。
後方から黒いレックウザが通る。
黒いレックウザは一瞬、色違いラティオスを見た後…偽サトシ達が向かった方角へ飛び去り、雲の彼方へと消え去った。
『…そうか。〝
─── 〝
・ラティアスが仲間になった。
ジョウト編の初の仲間がラティアス。
時系列が可笑しいかもしれませんが、ずっと決めていました。
…ラティオスの事も残念ながら決めていました。
今後の偽サトシとラティアスの成長の為に…。
・色違いラティオスは『調停者』ではありません。
あくまでも『調停者』の事を知っているだけ。
あ、そうそう。
黒いレックウザがこれば何とかなったのでは?
…と思ってしまいますが、訳あって来られず急いで偽サトシの元へと駆けつけた…というオチです。
その理由はまぁ、触れるかもしれませんし触れないかもしれません。
先に触れておくと、一部禁止伝説と一部準伝説は世界に1匹だけです。
ディアルガ、パルキア、イベルタルとかが複数体おったらたまったもんじゃないですからね。
まぁ、アニポケでルギアJr.とかいたので一部例外はあるとだけ。
・ちょっとした裏話。
『怪盗姉妹』…取り敢えず無期懲役になった。