ここは、かぶき町にある摩戸診療所。そこの医者である着流し姿で肩に白衣を羽織った男、
「上手くいったぞ! 私は天才だ!」
というワケで、町医者の皮を被ったマッドサイエンティストは、近所のモルモットで実験をしようと思い立つ。
才宴が向かったのは、万事屋銀ちゃんである。
「銀時く~ん! 遊びに来たよ! ケーキもあるよ!」
「才宴くん、ようこそいらっしゃいましたァ!」
「お邪魔します」
スッと戸を開き、坂田銀時は才宴を招き入れた。
「はい、苺のショートケーキ」
「ありがとうございますッ!」
しれっと上座に座り、ケーキがふたつ入った箱を銀時に渡す。
「銀時くん、お茶」
「はいッ!」
銀時に緑茶を淹れさせ、湯飲みから茶を啜った。
「ケーキ、遠慮なくどうぞ」
「いただきますッ!」
銀時は、あっという間にショートケーキを平らげる。
「美味しいかい?」
「うめェ…………」
「それは、よかった。私の分もあげるよ」
「ありがとうございますッ!」
ケーキをふたつ食べた銀時は、数分後に意識を失って倒れた。
「記録、3分30秒っと」
才宴は、手帳にメモをする。
片方のケーキには、意識を昏倒させる薬が入っていたのだ。銀時が普通のケーキを選んだから、才宴は自分の分を譲ったのである。
「さて。ジャンプでも読んで待つか」
才宴は、銀時のジャンプを持ち、勝手に読み始めた。
その後。
「……はッ!?」
「記録、3時間20秒。おはよう、銀時くん」
昏倒してから目覚めるまでにかかった時間をメモする才宴。
「てめェェェェェェェ! また何か盛りやがったな?!」
「うん。悪夢を見る薬」
銀時に襟首を掴まれながら、さらりと答えた。
「今ここで俺が見た悪夢を現実にしてやろうか?! クソッ! ふたつあったから油断したッ!」
頭を抱えて後悔する銀時。
「悪夢の内容を詳しく教えてくれ。メモするから」
「鬼! 悪魔! マッドサイエンティスト!」
「鬼と悪魔とマッドサイエンティストが出て来たのかい? 賑やかな悪夢だねぇ」
「今でぇぇぇす! この現実こそが悪夢だよッ!」
才宴の肩を掴み、力いっぱい揺さぶるが、マッドサイエンティストは、「ははは!」とにこやかに笑っている。
実は摩戸才宴は、好感を持った相手に嫌がらせをするのが趣味なのだが、坂田銀時は、そんなことは知らない。
「そろそろ、お暇しようかな。またね、銀時くん」
「二度と来るな! お洒落パーマ野郎ッ!」
才宴は、へらへら笑いながら診療所へ帰って行った。
彼にとって、銀時はモルモットとして最適な成人男性であり、友人でもある。
それは、銀時からすれば、不幸よりの事実であった。