人の嫌がることは進んでしろ   作:スナエ

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泣きっ面に白蛇

 志村家から出てから、鉄子に言伝てを頼まれた後。

 

「こんばんは、山崎さん♡」

 

 不意に、銀時の見舞いに来たマッドサイエンティストの摩戸才宴に遭遇する。

 

「うわァァァァァァァァァ!?」

「なにしてるの?」

「さ、散歩…………」

 

 嘘をつく真選組の監察方、山崎退。

 

「ご一緒してもいいかい?」

「よくないです!」

「どうして?」

 

 才宴は、首を傾げた。

 

「この際だからはっきり言いますけど、俺は、あんたのことが苦手なんですよ!」

「それは知っているけれど」

「あんたとは関わりたくないんです!」

「そっかぁ。私は、好きだよ」

「俺は、モルモットじゃないですからね!」

 

 実験台として好かれていても全く嬉しくない山崎は、叫ぶように言う。

 

「うん? 山崎さんは、モルモットじゃないよ?」

「へ……?」

 

 予想外のことを言われ、山崎は、ぽかんとした。

 あんなに、実験させろと。注射を打たせろと。嫌がらせばかりしているのに?

 

「山崎さんは、私の————だよ♡」

「……え? 今なんて?」

 

 カラスのうるさい鳴き声にかき消された台詞は、再び才宴の口から出て来ることはなかった。

 

「じゃあ、またねぇ♡ 山崎さん♡ 今夜は星が綺麗だよ♡」

「…………」

 

 才宴は、星空を指差してから、志村家へ入って行く。

 残された山崎は、夜空を見上げた。

 星は、静かに瞬いている。

 その後。才宴は、銀時たちに手土産のドーナツを渡し、お妙に出されたお茶を飲んだ。

 

「才宴先生、この人ったら、すぐに逃げ出そうとするんです」

「筋弛緩剤でも打とうか?」

「そういう薬は、正しく使ってね! 銀さんとの約束!」

 

 銀時は、急いでエンゼルクリームを呑み込み、大声で才宴を威嚇する。

 

「それじゃあ、私が開発した薬を飲んでもらおうかな」

「なんでだよッ!」

「大丈夫。怪我が治るまで眠り続けるだけだから」

「人間って、寝てる時は無防備なの知ってる!?」

「ははは!」

 

 才宴は、銀時に揺さぶられながら笑った。

 そんな様子を見て、お妙は、「仲が良いんですね」と微笑む。

 

「まぁね」

「わりと最近気付いたんだけど、コイツ、友人を実験体にするの大好きだからな! 頭おかしいからな!」

 

 苦い顔をして声を荒げる銀時。

 

「まあ、うふふ」

「全っ然、微笑ましくないからね! 銀さん何度も薬盛られてるから!」

 

 才宴との思い出は、彼に合意なく実験体にされた記憶と共にあった。

 そんな迷惑千万な男ではあるが、彼に助けられたことがあるのも事実で。

 摩戸才宴と坂田銀時は、名状しがたい複雑な友人関係を築いていた。

 きっと、いつまでもこんな風に付き合っていくのだろう。

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