第一回チキチキかぶき町雪祭り開催。
摩戸才宴は、診療所の代表として雪像を作っている。
「よう、オメーも来てたのか」
「やあ、銀時くん」
「ってオイ! なにその邪神像!? 悪魔崇拝!?」
「やだなぁ、ヒュギエイアの杯だよ」
ヒュギエイアの杯とは、ギリシャ神話のアスクレピオスの娘が持つ蛇が巻き付いた杯で、アスクレピオスの杖と並び医療・医術の象徴であるが、才宴が作ったそれは禍々しい。
「才宴、こんなんガキが見たら泣くぞ」
「それはいいね」
医者は、ニコリと笑う。
「俺ァ、ガキ泣かすのは、どうかと思うよ! お前、ほんっと昔から人の嫌がる顔が好きな!」
「いやぁ、ははは!」
「褒めてないからね! 微塵も褒めてないから!」
それから銀時が去り、才宴が作った雪像は、多くの人々を怖がらせた。
もちろん、泣き出す子供もいる。才宴は、その様子を子供の目線に合わせてしゃがんで見ていた。
「うわぁ~ん!」
「ははは! 元気だねぇ」
そうこうしているうちに保護者がやって来て、早足で子供の手を引いて逃げて行く。
「うん。かなり爪痕は残せたかな」
爪痕どころか、トラウマものである。
その後。何故か、祭りは雪合戦場と化し、才宴も嬉々として雪玉を投げた。
雪を丸めてから薬を注入し、向かって来る敵の顔面にヒットさせる才宴。
才宴の雪玉を食らった者たちは、次々と倒れていく。
摩戸診療所のスペース周りは、死屍累々といった様相になっていた。
「なんですかコレェ?! 戦場?!」
そして。とうとう真選組が出動することになり、山崎退は摩戸才宴が起こした惨劇を目の当たりにした。
「山崎さん♡」
「あんた、今度は何をしたの?!」
「雪合戦だよ。こういうのは本気でやらなきゃ、つまらないでしょう?」
「いや、マジもんの合戦になってるじゃないですか!」
山崎が青ざめているのを見て、才宴は嬉しそうに笑い、頬を紅潮させている。
「えーと、不本意なんですけど、一緒に来てください……」
「はーい♡」
屯所まで連れて行かれて、才宴は取り調べを受けた。
「雪玉に細工してますよね?」
「小細工は無用だよ」
「大細工ならいいってもんじゃないんですよ……」
結局、雪から証拠となる物質は見付からず、またもマッドサイエンティストは野放しとなる。
「またね♡ 山崎さん♡」
「……少しは大人しくしててください」
上機嫌で手を振る才宴を、何かしでかさないように見送り、山崎は溜め息をついた。
それにしても。
「なんで、よりによってあの人を見付けちゃうかなァ……」
偶然、摩戸才宴を調べることになってしまい、山崎は疲弊している。
最近は、彼との間に、ある種の因縁めいたものを感じていた。
それは、摩戸才宴が山崎退の首に巻き付けた包帯かもしれない。