人の嫌がることは進んでしろ   作:スナエ

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この世には針刺さるのを見る派と見ない派がいる

「銀時く~ん。遊びに来たよぉ」

「こんにちは。銀さんの友達ですか?」

「おや」

 

 ある日、才宴が万事屋へ行くと、そこには見知らぬ眼鏡の少年がいた。

 

「私は、摩戸才宴。銀時くんとは、古い付き合いさ。君は?」

「志村新八です。ここで働いてます」

「そうかい、そうかい。せっかくこうして知り合えたワケだし、とりあえず採血させてもらってもいいかな?」

「とりあえず採血ってなに!?」

 

 新八が当然のツッコミをする。

 

「アルコールは平気かな? 血が止まりにくかったりしない?」

「人の話聞いてます?! なんで着々と採血の準備してるんですか?!」

「医者だからだよ」

「銀さん! 銀さァん! 医者を名乗る不審者が!」

 

 才宴が注射器を取り出したところで、奥から銀時があくびをしながら出て来た。

 

「なんだよ、うるせぇな……」

「銀さん! この人なんなんですか?!」

「やぁ、銀時くん」

 

 才宴は、笑顔で空いている手を振る。

 

「んだよ、才宴じゃねーか。コイツは、ただのマッドサイエンティストだよ」

「マッドサイエンティストに“ただの”ってつけることなくない!?」

「仕方ねェだろ、そうなんだから。な、才宴」

 

 銀時に話を振られた男は、「私は、しがない町医者さ」と爽やかに言い、新八の腕に注射器の針を刺した。

 

「ほらな、イカれてやがる」

「いつの間にか僕の血が採られてるんですけどォォォォォォォォォォォォォ!?」

「コイツ、人の血をコレクションするのが趣味なんだよ」

「悪趣味にもほどがあるでしょうが!」

「採血終わったよ。はい、指でぎゅっと押さえてねぇ」

 

 小さな絆創膏を貼り、新八に指を添えさせる才宴。

 

「怖いよ、この人! 本当に医者なんですか?!」

「俺が知らねェうちに医師免許剥奪されてなきゃな」

 

「されてないよ」と、才宴が答えた。

 

「それはそれで最悪だよ!」

「ちなみにコイツは、お洒落パーマだ。昔はストレートだったんだよ。腹立つわァ」

「んなことはどうでもいいよ! 血ィ抜かれてんだよ、こっちは!」

「記録、志村新八。眼鏡。ツッコミ気質」

「それメモする必要あります?!」

「いやぁ、活きのいいモルモット……少年だ。素晴らしい……!」

「今、モルモットって言いましたよね?!」

 

 新八が才宴の肩を揺する。

 

「ははは! 今後とも、モルモット兼友人としてよろしくね」

「嫌ですけどォ!」

「俺だって、ずっと才宴のモルモット兼友人やってんだよ。お前も観念しろ、新八」

「アンタは、なんでそれを受け入れてんだよ!」

 

 今度は、銀時の肩を揺すり始める新八。

 摩戸才宴のマッド過ぎる歓迎を受け、志村新八は、こんなところにいていいのかと、また悩むことになった。

 

◆◆◆

 

「銀時く~ん。依頼しに来たよ」

 

 才宴が勝手に戸を開けて中に入る。

 

「まだ寝てるのぉ?」

 

 ずかずかと奥へ進むと、押し入れから見知らぬ少女が目をこすりながら出て来た。

 

「誰アルか?」

「摩戸才宴。銀時くんの友達だよ。依頼しに来たんだ」

「銀ちゃん! 客アル!」

「ああ……?」

 

 銀時が、寝室からやって来る。

 

「おはよう、銀時くん」

「才宴か。ったく朝から嫌なもん見たぜ」

「こちらのお嬢さんは?」

「新しいバイトだ」

 

 観察するように少女を見つめる才宴。

 

「神楽アル。出稼ぎに来たアルよ」

「そうなんだ。よろしくね、神楽ちゃん。採血してもいいかな?」

「銀ちゃん、コイツ変態アルか?」

「マッドサイエンティストだ」

「私は、しがない町医者さ」

 

 才宴は、注射器を取り出して笑う。

 

「さあ、腕を出して」

「嫌アル。指へし折られたいアルか?」

「それは困るな。じゃあ、このお土産を君に全部あげるから、どう?」

 

 才宴は、左手で紙袋を渡した。

 神楽が中を覗くと、お高い羊羹の箱が入っているのが見える。

 そして、「仕方ないアルなァ」と、白い腕を差し出した。

 

「ありがとう、神楽ちゃん」

「ちょっと待て。銀さんへのお土産は?」

「もうないよ」

「ふざけんなよッ! なんで居候に土産全取りされなきゃなんねェんだよ!」

 

 採血中の才宴に掴みかかりそうになる銀時。

 

「まあまあ。また今度、甘いもの持って来てあげるからさ」

「ケーキな! いいか、ホールケーキだぞ!」

「了解~。はい、採血終わり。絆創膏、上から押さえててね」

 

 道具と血液をしまい、才宴は「さて」と言った。

 

「本題なんだけど、万事屋に依頼がある。私の診療所に化物がいるから、倒してほしい」

「なんて?」

「診療所にいる化物を倒してほしい」

「てめー、とうとうバケモン造ったのか?!」

「いやぁ、ははは!」

「ははは、じゃねェ!」

 

 銀時に襟首を掴まれるが、才宴は相変わらず笑っている。

 

「銀ちゃん、この羊羹美味いアル」

「お前は、話を聞け!」

 

 なんやかんやで、後から来た新八も連れて、万事屋たちは摩戸診療所へ向かうことになった。

 

「ここがマッドサイエンティストの研究所アルか」

「診療所だよぉ」

「半分くらい嘘ですよね、それ」

「コイツ、倫理観を母ちゃんの腹の中に忘れて来てるからな」

「なんで医者になれてんですか? そんな人が」

 

 才宴の話によると、入ったらすぐの所に化物はいるらしい。

 三人が入ると、3mくらいある緑色のゲル状の何かが蠢いていた。

「スライムじゃねェか!」と新八が叫ぶ。

 

「ゼリーの怨霊アルか?」

「もっとドラクエみてェな可愛げのあるやつにしろや!」

 

「じゃ、あとはよろしくねぇ」と言い、才宴は外に出て扉を閉めた。

 

「さっさとぶちのめすぞ!」

「はい!」

「分かったアル!」

 

 その後。スライム(?)と戦闘になったのだが、物理攻撃が効かなかったり、新八が丸呑みにされたりしたが、神楽が核らしきものを破壊してなんとか倒した。

「お、終わったぞ……」と、粘液でべとべとになった銀時が報告する。

 

「お疲れ様~。三人とも、ありがとうね」

「もう二度とバケモン造るな!」

「それは約束出来ないなぁ」

 

 摩戸才宴は、へらへらと笑った。

 やはり、マッドサイエンティストである。

 銀時は報酬金を受け取り、その額を見て黙るしかなかった。

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