転生郷という麻薬が出回っているので、摩戸才宴はそれを入手した。
独自に研究を重ね、効力を薄めたそれは、麻酔として使えるようになる。
そんな折、坂田銀時たちが診療所へやって来た。
「才宴!」
「はーい。どうしたの? 銀時くん」
肩にかけた白衣をなびかせ、医者は地下室から表に出る。
「新八と神楽が、ヤクを盛られた。診てやってくれ」
「了解。ブツはあるかい?」
「これだ」
転生郷だった。それなら、すぐに中和剤を打てる。
「興味深いね。新八くん、神楽ちゃん、そこにかけて。注射するから」
「はい」
「コイツ、ちゃんと治療出来るアルか?」と、神楽が才宴を睨んだ。
「心配いらねェよ。才宴は昔、“白蛇の医鬼”つって、生きたい奴をどんな手を使ってでも生かしてきた鬼なんだからよ」
「鬼、ですか……」
注射器を用意している才宴を見ながら、とても鬼には見えないと思うふたり。ただの優男に見える。中身は、マッドサイエンティストだが。
「お待たせ。じゃあ、打つね」
そう言うや否や、ふたりに同時に注射をした。精確に。的確に。
「はい、終わり。絆創膏貼っておくね」
またも、ふたり同時に絆創膏を貼られる。
「器用なんですね」
「まあねぇ。戦場では、スピードが必要だったから」
「戦場にいたんですか?」
「うん。少しね。あ、銀時くんの怪我も診るから。そこに座って」
「俺ァ、いいよ」
「よくない。座れ」
「はい……」
一瞬だけ。ほんの一瞬だけ、確かに鬼のような空気をまとう才宴。
銀時の傷を消毒し、手当てをしていった。
「はい。終わり。ちゃんと死ぬ前に来て偉いね」
「はは……」
新八は、乾いた笑いを漏らす。
その後。才宴は、万事屋の三人を見送り、診療所に数人いる入院患者の回診をした。
そして、最後に一番奥の病室を訪れる。
「今日も、目覚めてはくれませんか?」
寝台の上にいる、多くの管に繋がれた人物に話しかけた。
「私を恨んでおいでですか?」
患者には、意識がない。
吊るされた点滴を替え、体を拭いて、床ずれを予防する。
「また明日来ます。おやすみなさい」
摩戸才宴は、珍しく悲しげに笑い、その病室を後にした。
このまま、“彼”を生かすべきか? それとも…………?
才宴には、答えを出せなかった。
摩戸診療所では、それからも診察や検査が行われる。
診療所を閉めた後は、地下室での研究を重ねた。
いつか、生きたい者を生かせる手段になると信じて。
摩戸才宴は、今日もひとりで医術を磨く。
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