人の嫌がることは進んでしろ   作:スナエ

5 / 12
祭りの熱気に煽られ過ぎてはいけない

 ロッカーのように袖が千切られた隊服の山崎退を見付けて、才宴は、さっと近付いた。

 

「山崎さん♡ ずいぶん注射がしやすい服装をしているね♡」

「きゃあァァァァァァァァァ! 誰か、男の人呼んでェェェェェェェェ!」

 

「はーい♡」と、片手を挙げる才宴。

 

「あんた以外だよ!」

「今日は、真選組がうろうろしているねぇ。誰か捜してるのかい?」

「いや、一般人に言えることじゃないんで……」

 

 そう答えたが、摩戸才宴は、一般人ではなく危険人物である。

 

「まあでも、一応訊きますけど、かぶき町で見知らぬ娘さんを見ませんでした?」

 

 山崎たちが捜しているのは、家出した、そよ姫だ。

 

「見てないなぁ」

「そうですか。じゃ、俺はこれで」

「またねぇ♡ 山崎さん♡」

 

 ぶんぶん手を振りながら、才宴は笑っている。

 その後。そよ姫は無事に見付かった。

 

「お姫様の血液というのも、なかなかレアだよねぇ」

 

 テレビに映る少女を見て、摩戸才宴は呟く。

 

◆◆◆

 

 将軍も来るという祭りの当日。

 摩戸才宴は、夕方に診療所を閉めて、夜店を見物していた。

 

「よう、才宴」

「おや、高杉くん。何か用?」

 

 過激派攘夷志士、高杉晋助。彼も才宴とは昔馴染みである。

 

「また、お前に医者として協力してもらおうと思ってな」

「いいよ」

「即断即決か。相変わらず、てめーは人を生かすことさえ出来ればいいんだな。さすが、白蛇の医鬼だ」

 

 低く笑う高杉。

 

「だが、こうは思わねーのか? 自分が助けた奴が、もし千人殺したらってな」

「その千人も助ける」

「前提を覆すんじゃねーよ」

「私は、生きたい者を生かすだけだよ。それがたとえ、殺人鬼だとしても」

「そうかい」

 

 高杉は、去って行った。

 そして才宴は、パシリにされている山崎を目にする。

 

「山崎さーん♡」

「うわッ!? 出たァ!」

「なにしてるの? 警護? 注射してもいい?」

「よくないです! やめてください!」

 

 たこ焼きを買った後も、才宴は山崎について来た。

 

「なんでついて来るんですか?! 俺、忙しいんですけど!」

「祭りだから、楽しいことがしたいのさ」

「それ、実験ですよね?! いつもと一緒じゃん!」

「毎回、実験内容は違うよ? 今日は、脳を通常の倍働かせられるけれど、三日くらい寝たきりになる薬」

「毎回、ただの悪夢じゃねーか!」

 

 迫り来る厄災を撒き、山崎は小腹が空いたので、たこ焼きを食べる。

 そのせいで、土方にしこたま絞られた。

 その後、源外のカラクリたちが起こした騒動での負傷者を、通りすがりの医者、摩戸才宴は的確に手当てをする。

 それから、名乗りもせずに診療所に帰って行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。