魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~ 作:kasyopa
『フン…所詮旧世代の遺物、か 下らん輩だ…』 byAC4 ポリスビッチ
Side 黄昏藍香
真実を告げても、微動だにしないさやかちゃん。
流石の私も実際のところ驚いている。
こんなに早く彼女自身決心した事も、自分の願いについて理解したことも。
恭介君との関係についてはよく分からないけど。
これならいけるかな。という不意に思った事に素直になってみた。
でも、この状況から流石に不味かったかと私自身後悔する。
そんな事を突然何の前振りも無しに言われて、信じろと言う方が無理な話だ。
すると、さやかちゃんが口を開いた。
「キュゥべえはなんでそんなひどいことしてるのさ」
「宇宙のエネルギー採取って言ったら手っ取り早いかな。詳しい事は彼らが一番知ってる」
「……それじゃあ私達、ゾンビみたいなもんじゃない」
「何が奇跡よ! こんな体にされてまでして、魔法少女が命がけで魔女や使い魔と戦って!」
「それで最後は魔女になって絶望を振りまく! そんなの、ずっと終わらないじゃない!」
「こんなんじゃ……まどかと仁美に合わせる顔ないよ……」
「せっかく、あの時仲良くなったあんたにも……仲良くできないよ……」
涙を零し、その場で泣き崩れるさやかちゃん。
その脆い少女に私は優しく近付き、言葉を掛けた。
「自分の置かれている立場を理解して、そして自分は相手にとってどういった存在なのか」
「っ!」
「それを理解すれば、きっと絶望することは無いと思うよ」
「………」
「それに、さっき見つけたんでしょ? 自分の願いの意味を。今のさやかちゃんなら大丈夫。すぐに立ち直れるから」
「それに、まだ貴女は死んでない。こうして温もりを感じる事が出来る。こうやって……」
そう言って抱きしめる。
「なんでゾンビの私を抱きしめてくれるの? あんただって、気持ち悪いんでしょ?」
「そんなことないよ」
「……そっか。藍香は違うもんね。私達とは、違う魔法少女だもんね」
「違わない。同じ魔法少女」
「違わないわけない! キュウべぇと契約せずに魔法少女になったって言ってたじゃん!」
「それでも、魔法少女は魔法少女。私は、また別の苦しみがあるから」
「え……」
口が滑ってしまったけど、私は優しく、髪を梳きながらさやかちゃんの頭を撫でる。
優しく、温かく。
私はここにいるんだと言う事を、手を伸ばさなくても届く場所にいると言う事を。
自分の存在を、確かに彼女に伝える為に。
さやかちゃんの流す涙が徐々に増して、私の服を濡らす。
「なんでだろ……私……あんたが元々最初っから、友達みたいに思えてきた……」
「私が学校行ってたら、そうだったかも知れないね」
「もう、いいかな……私……」
「素直に涙にして、全部辛い事、洗い流しちゃえばいいんだよ」
「う、うわああぁぁぁ………!!」
広い教会で、さやかちゃんの泣き声が木霊することなく、ただただ受け止めるかのように消えていった。
Side 美樹さやか
落ち着いてから、私が藍香を放す。
「なんか、ごめんね? 急に泣き出しちゃって」
「ううん。気にしてないよ」
気にしてないとは言っても、藍香の服は肩から袖に掛けて涙で随分濡れていて。
もはやそれは気にしない方が可笑しいように見えてきた。
「ほんと藍香って不思議。泣いただけなのになんでもうこんなに清々しいんだろ」
「魔法は使ってないよ?」
「えー!? 絶対使ったでしょ!」
「使ってません。私の魔法は相手の精神をいじくったりする物なんて無いし」
「そんなこと言って誤魔化しても、このさやかちゃんは騙されませんぞー!」
さっきまで抱きしめあったいたから、距離はそんなに空いてない。
手を伸ばせばすぐに届く。
身長もまどかよりちょっと高いくらいだから、まどかと同じくらいの位置に手を伸ばせば捕まえられるだろう。
「うりゃあ!」
「わひゃぁ!?」
横腹辺りを狙って思いっきり掴みかかると、驚くほど簡単に捕まえる事が出来た。
「このさやかちゃんの手にかかれば、可愛い女の子の秘密の一つや二つ暴くなどお茶の子さいさい! さぁ、白状してしまえ~!」
「あ! ちょ! 横腹は止めて! くすぐったいよ! あ、あはははははは!」
「ほうほう藍香はここが弱いのか! ならこれでどうだぁ!」
「りょ、両方はも、もっと駄目だってぇ! あははははは!!」
バァン!
「人んとこで何やってんだお前ら!」
いきなり凄い音がしたと思って扉を見てみれば、そこには扉を蹴り飛ばした杏子が経っていた。
ここからじゃ顔がよく見えないけど、なんとなく不味い気がする。
「ちょ、藍香! ここの主ってまさか!?」
「う、うん。杏子、ちゃんだよ? それが、どうかしたの?」
「どうかしたじゃないって! お、お邪魔しましたー!」
「おい待てよ」
「あぐっ」
一目散に退散しようとしたが、襟を掴まれて急停止。
喉が閉まりむせてせき込む。
「人の縄張りに入っておいて、のこのこに返す奴がどこにいるんだよ?」
「でも藍香に連れてこられたから、私は何も悪くない! 知らなかっただけなんだって」
「藍香が?」
藍香に助けてと視線を送ると、そんなことは解っていると言わんばかりに返された。
「ちょっと魔法少女の真相と、末路についてね」
「……随分と軽く言うな。それにこの様子じゃ、わかってないんじゃねーの?」
「失礼な、単刀直入に言われて解らないわけないでしょ!」
「ショックがでかすぎて思考回路が飛んだとか」
「どうやったら飛ぶのよ!」
何故か杏子とは張り合ってしまう。
あの時のピザだってそうだし、今もそうだ。
やっぱり、利己的に動く魔法少女と、皆の為に戦う正義の魔法少女だからだろうか。
でもこの前のやり取りを見てたけど、そこまで利己的じゃないと思うんだけどなぁ。
ほんとに利己的だったらグリーフシードを返さないだろうし。
「ほらほら、言い合ってないで」
藍香が間に入って言い合いを止める。
「でもなんで教会にまで連れてきたんだよ」
「ここが杏子ちゃんの縄張りだからかな。他に近寄る人はいないし、キュゥべえもあんまりこっちには来ないしね」
「……ま、なんか引っかかるけどそう言う事にしとくよ」
「じゃあ、私達は帰るね。もうすぐお昼だし」
「それならここに勝手に入ってきた応酬としてまたご馳走になろうか」
「いいよ。いつもの事だしね」
「さやかはまた別の事で返してもらうよ」
「だから私は藍香に連れてこられただけだって!」
こんな事に巻き込まれるんだったら、学校行ってた方がよっぽどましだったと思う私であった。
Side 黄昏藍香
お昼は当然外じゃなくて自宅で。
休みの日には皆で外に食べに行きたいなー。
「そういえば杏子って毎回藍香の世話になってるわけ?」
「仕方ねーだろ、こちとら一人身で金もないんだ」
「あれ? でも藍香ってどうやって生計立ててんのよ? 親もいないみたいだし」
「それがねー。私にもよく分からないの。多分親の保険金だと思うんだけど」
「何よその曖昧なこと」
「実際、私に親がいたかどうかも解らないんだ」
「え……」
いつもいつも、家に帰ると一人ぼっちだった。
でもそんなことは気にしていない。
今は干渉して、守るべき人がいる。救うべき人がいる。帰るべき場所がある。
今が一番幸せ。その幸せの中に、『彼女達』が居ればもっと幸せになれるかもしれない。
溺れちゃってるな……『彼女達』に。私も、ほむらちゃんみたいに。
Side 美樹さやか
「そんな言ってやるなよ。私達とは違うったって、藍香だって年頃の女だ」
「そっか……そうだよね。ごめん」
「いいよいいよ。気にしないで」
「「それ言ってばっかりだね(な)。藍香」」
杏子と言葉がかぶり、思わず噴き出す。
「だって本当に気にしてないもん」
「だからって、さっきも使った言葉使わなくても」
「あんまり言葉が出てこないんだよね……本とかあんまり読まないし」
「そうだとは思わないけどな。でないと人を動かせるぐらいの事を言えないだろうしよ」
「私は手を差し伸べてるだけ。その手を取ってるのは貴女達自身だよ」
本当にそれだけなんだろうか。
私を助けてくれたのは、それだけの事なんだろうか。
「勿論、その人によって差し伸べる手と手まで距離を変えてるけどね」
笑いながら料理を持ってくる藍香。
すんなりと凄い事を言ってくる。
「藍香はさぁ、何の為に魔法少女になったの?」
「何の為に。難しい質問だね」
ミートスパゲッティを盛ったお皿を私と杏子、それに藍香の座る席に置きながら話し始めた。
「詳しい事は終わってから言うけど、今はやっぱりワルプルギスの夜を浄化する事に専念しなきゃね」
「? ワルプルギスの夜って何?」
「まったく新人はこれだから困るよ。ワルプルギスの夜ってのはなぁ――」
突然の杏子の魔法少女講座。
テーマはワルプルギスの夜について。
なんでもワルプルギスの夜ってのは物凄く大きい魔女で、力も強大から結界も必要無いらしい。
ただ強いだけじゃない。それだけで町の一つや二つを壊滅させるほど。
だからこの時ばかりは魔法少女同士手を組んだ方がいいそうだ。
「≪ま、藍香の思惑はそれだけじゃなさそうだけどね≫」
「≪どういうことさ≫」
「≪ただ単純に、友好関係を深めて集めてるだけじゃねぇ。終わった後の事も考えてるのかもな≫」
「≪終わった後のこと、かぁ≫」
確かに、一度一緒に戦ったんなら、一緒に組むことも出来ないわけじゃない。
皆で戦ったほうが楽なのは変わりないし、その後から魔法少女同士で仲良くできるならなおさら。
「「「いただきます」」」
そういえば杏子はどんな願いを叶えてもらったんだろう……
Side 黄昏藍香
その後は3人でボードゲームをやったり、トランプをやったりしていたけど。
それだけじゃつまらないと途中で杏子ちゃんが言いだし、私とさやかちゃんはゲームセンターに案内された。
時間帯的には放課後。
私はちょっと気にしていたけど、さやかちゃんも気にしてないから問題ないと言い聞かせて付いてきた。
で、杏子ちゃんは私達の前でダンスゲームを披露している。
「うわ~、どうやったらあんなの出来るんだろ」
「私にも到底真似できないよ。杏子ちゃんの意外な特技ってところかな」
この前この筺体のランキング見てみたけど、上位スコアが全部杏子ちゃんによるものだったのは流石に驚いた。
「さやかちゃんは何か得意なゲームある?」
「ん~? 私は格闘ゲームかなー。伊達にここに通いつめてるわけじゃないし。そう言う藍香は?」
「UFOキャッチャーかな。コツを掴んだらかなり取れるよ」
「か、かなり……?」
「うん。取ってほしいのが見つかったら遠慮なく言ってね」
杏子ちゃんの方はダンスゲームの結果画面で、『perfect』の文字がその実力を物語っていた。
「ま、私にかかればこんなもんだな」
「杏子はいいなぁ、何時でもここに来れて」
「さやかも学校なんて行ってないで、魔法少女になったんなら自由に生きればいいんだよ」
「そういう生活にもちょっと憧れるんだけど、まだ私は学生で居たいかな」
「なら学校をさぼらずに学業に励むことね。美樹さやか」
「「っ?!」」
私達の視界の外から何気なく表れたほむらちゃん。
制服姿で、肩からかばんを提げているのを見ると、学校帰りなのだろう。
「な……、あんたこそ毎日学校に来なさいよ! 昨日休んでたくせに!」
「先生から聞いたでしょ、体調不良よ」
「嘘だ! 杏子によれば藍香と一緒に魔女を倒したそうじゃない! ねぇ、杏子」
「ああ、藍香が言ってたからな」
ちらりと私の方に視線を向けるほむらちゃんに対し、私はさあ? と惚けてみる。
一瞬苦い表情を浮かべたと思ったら、杏子ちゃんの方に視線を移した。
「で、あんたがそのほむらってわけか」
面白い物を見つけたような表情を浮かべて彼女を見る杏子ちゃん。
「貴女と会うのは初めてかしらね。佐倉杏子」
「?! なんであたしの名前を知ってやがる……?」
「知っているから知っている。それだけのことよ」
「(藍香に聞いたのか? さっきも藍香に視線送ってたから何かあっただろうが)」
少々戸惑う杏子ちゃんと何食わぬ顔のほむらちゃん、驚きを隠せないさやかちゃん。
ちょっと張りつめた空気が漂う中、そこに現れた一人の少女によってその空気が崩される。
「あ、ほむらちゃーん」
「げ、まどか……」
さやかちゃんは不味いと思ってどこかに隠れようとするが、間に合わずに見つかってしまう。
「あれ、さやかちゃん。確か今日学校休んでたんじゃ……?」
「な、なんでかなー。そ、そうだ! 藍香に無理矢理連れ出されちゃって、藍香って杏子と仲いいからそれでゲーセンまで……し、仕方ないなぁ二人ともー!」
「……さやかちゃん」
「あー……えっと、その、ごめん。さぼってた。それで藍香に捕まって、いろいろ話してもらって」
「話?」
「それは―――」
「さやかちゃんストップ」「黙りなさい美樹さやか」
彼女が言ってしまう事は無いと思うけど、制止の声を掛ける。
ほむらちゃんも私と同じ事を思ったのか、同じく制止の声を掛けた。
「んー、まぁ、ちょっとね」
「……?」
「それよりまどか、せっかくだし遊んでこうよ。藍香のおごりで」
「え、私?!」
「え、さっき言ってたじゃん。『取ってほしいのが見つかったら遠慮なく言ってね』って」
「確かにおごりって形になるけど……まぁいいや」
「藍香ちゃん、無理しなくても私お金出すし」
「いーのいーの、人のご好意に甘えようよ」
「さやかちゃんはもっと遠慮した方が良いと思うよ」
「う、うぐぅ」
痛いところを突かれたのか、反論できなくなるさやかちゃん。
「杏子ちゃん、ほむらちゃんは何か取ってほしい物ある?」
「ん? あたしは別にかまわねーぞ」
「私は結構よ」
ざっくりと切り捨てられたほむらちゃんの返答は、解っていながら辛いものだった。
私達はUFOキャッチャーのある場所に向う。
「まどかちゃんは何にする?」
「私は……あ」
ふと足を止めるまどかちゃん。
その視線の先にあるのは15cmくらいの黒猫のぬいぐるみ。
「………」
それを見るまどかちゃんの顔は、どこはかとなく懐かしさを感じているようだった。
私にはそれが何故か解る。どことなく、このぬいぐるみはエイミーに似ているのだ。
「これがいいの?」
「あ、うん……」
「どうしたのまどか? もしかして、その猫の愛らしさに心奪われたり~?」
「そ、そんなことはないけど、でも」
私は硬貨を機械に入れて、その猫のぬいぐるみをいとも簡単持ち上げて穴に入れ、取る。
「はい、まどかちゃん」
「ありがとう藍香ちゃん。……ねぇ、もう一個いい?」
「えっ、どうして?」
「おお! ついにまどかが遠慮しなくなった?!」
「そういうのじゃないの! 藍香ちゃん、いいかな?」
「んー。いいよ」
また硬貨を投入して、今度は持ちあげずに滑り落とすように穴へ落とす。
「ありがと」
今度は凄くうれしそうに受け取った彼女の顔を見て、少し癒される。
懐かしいような、そうでないような。でも、幸せ。
そういえばと、別の時間軸でキュゥべえを思いっきり抱きしめて、嬉しそうにしてた魔法少女を思い出す。
「さやかちゃんはどうする?」
「そうだなー。何にしよっかなー」
にやにやとあたりを見渡すさやかちゃんは、何かよからぬ事を考えているように見えた。
二人の因果を受け、おぼろげな記憶の中で生きる無知な少女達。
はたしてそれが、吉と出るか凶と出るか。
全員集合(仮)
ここから、まどか無双が始まる……?
更新遅れて誠に申し訳ありません。
今週は普通に日曜日に更新いたしますので、長い目で見守ってください。
あ、やばい、これ10話じゃん……15話までは書き終えたが大丈夫だろうか。
次回予告 CV:鹿目まどか
自分の思いを受け取ってほしいから、その近づきになれたら。
そして、ほむらちゃんの気持ちを解りたいから。
『輪廻』