魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~ 作:kasyopa
「今はゆっくり休んで。…おやすみなさい」 byAC4 フィオナ・イェル・ネフェルト
Side 暁美ほむら
黄昏藍香がまどかと美樹さやかを連れて場を離れたまでは良かった。
今、ここにいるのは杏子と私だけ。
彼女は菓子を銜えて再びダンスゲームに夢中になっていた。
「で、あんたは藍香と、どう言った関係、なのさ」
「別に。彼女が慣れ慣れしくしてくるだけよ」
「あんたも、魔法少女だろ?」
「ええ。少なくとも、貴女達とはまるで違うわ」
「へぇ、藍香と同じタチ、じゃなさそうだけど、何が違うんだい」
「それは言えないわ。関係ないことだもの」
いつもと違う問いかけ。
ここまで彼女との接触を遅らせるつもりではなかったからだ。
だかこんなことには慣れている。
「同じなのは、キュゥべえと契約した魔法少女って事だけよ」
「それだけ同じなのに違うってどういう事さ」
Perfectを出し、こちらに向いてくる杏子。
「そんなことより、もっと大切な話があるわ。私達魔法少女にとって」
「ワルプルギスの夜だろ?」
「! どうしてそれを」
「んなもん藍香が教えてくれたんだよ。外国のイベントがこの時期だどうだってね」
確かに、この国ではない国では、同名の行事がある。
その魔女の規模、そして襲来の時期に因んで名付けられたのが、ワルプルギスの夜。
「呑み込みが早くて助かるわ。そこで貴女達に話があるの」
「んなもん、ただ単にぶっとばせば済む話じゃん」
「単純に、その程度で終わる相手なら簡単な話で済むわ」
「なんだよ、その以前に戦ったことがあるみたいな言いまわしは」
「ええそうよ。私はワルプルギスの夜を見てきた。何度もね」
当然と言わんかのように振る舞う私に、戸惑いの表情を浮かべる佐倉杏子。
「あんた一体何者だ?」
「………」
沈黙を決め込む。
口は災いの元と言うからだ。
「まぁいいか。人に言えない事なんていくらでもあるからね」
「助かるわ」
想像していた答えと違ったが、逆にこちらからすれば助かった。
聞いてこなければ答えなければいい。それだけのことだ。
「とにかく、一筋縄ではいかない相手よ」
「はいはい解ったよ。どうすんだ、この街にはあんたとあたしを含めて4人も魔法少女がいるぞ」
「勿論、使える物は全て使うわ。取り返しがつかなくなった分の落とし前は付けてもらうつもりだから。ところで、彼女が人数に入ってないようだけど」
「ちゃんと人数に入れてるよ」
「なら人数は5人のはずよ」
私、佐倉杏子、巴マミ、美樹さやか、黄昏藍香。
「あんなひよっ子に、いろいろ預けられっか。逆にお守り(おもり)も出来ねーし」
確かに、それは言えることだ。
例え未熟と言えど、ここまで関わった者が命を落とせば、全体の指揮に異常が起こる。
それに少なくとも、それでまどかが契約に至ると言う可能性が無い訳でも無い。
「賢明な判断ね」
「それに、あいつが死んでもらっちゃ困るんだよ。散々説教する相手が居なくなるからな」
その時の杏子の表情はいつもの強気な彼女ではなく、何処と無く儚さと悔しさが入り交じっていた。
「もしかして貴女、美樹さやかの願いを」
「吹っ切れたみてぇだが、あたしは納得いかない」
「他人の為に使う願いの代償ってやつを説明してやらないとな。さやかには」
それで折れるくらいなら心も貧弱な奴だよ、と言葉を続けて彼女は銜えていたチョコスティックを噛み砕いた。
Side 黄昏藍香
「ワルプルギスの夜?」
「うん。杏子に聞いたんだけど、すっごいサイズの魔女で結界がいらないんだってさ」
「それで……どうなるの?」
「その街は普通ならおしまい、かな」
「そんな……!」
「大丈夫だって。杏子と転校生は置いといて、この町には正義の魔法少女が3人もいるんだから!」
40cm位のイヌのぬいぐるみを背負い、そう言って右腕でガッツポーズを作るさやかちゃん。
彼女が背負っているぬいぐるみは、勿論私が取ったもの。
冗談で言われたのを真面目にやったら取れたという、所謂嘘から出た真というやつだ。
回りのお客さんがさやかちゃんを見てクスクスと笑われていた。
こんな公の場でいい年した女の子が一人魔法少女って大きな声で言ってたら、当然の事なんだろうけど。
一方のまどかちゃんは励まされたにも係わらず、不安を隠せないでいた。
やっぱり、まどかちゃんの使命感は強すぎる。
キュゥべえからとてつもない才能があると言われ、自分で意思を固めてもほむらちゃんが抑制する。
ほむらちゃんの行動の真意を知らない故に戸惑い、混乱して疑問が浮かぶ。
そのジレンマと、答えを聞いても答えてくれない理不尽さが、逆にまどかちゃんを追い詰めているんだ。
「まどかちゃん」
「ん? どうしたの藍香ちゃん」
「今度の週末、お泊まりしに行っていい?」
「えっ?! なんでそんな急に」
「なんとなく。まどかちゃんのお父さんお母さんにご挨拶したいし」
「なんていうか、藍香って変なとこで律儀じゃない?」
「そんなことないと思うけど。どう、まどかちゃん?」
「ま、待って、パパに連絡しなきゃ」
あたふたと携帯を取り出す彼女の様子は、本当に可愛らしかった。
≪ちょっと、まどかちゃんを説教といこうかってね≫
≪ああ、なるほど。まどかのこの考えだけは、どうにもならないからね≫
≪ねぇ、藍香≫
≪ん?≫
≪私にもしもの事があったら、頼むよ。まどかの事≫
≪……何言ってるの、まだまだ時間はあるし、それに皆生きて帰るの≫
もう、自分を犠牲にして戦う人はあってはならない。
【彼女の親友】と同じ道は誰も歩ませないし、ましてや死なせる事は絶対に。
「藍香ちゃん、どうしたの?」
「ん? 何?」
「えっと、何だか怖い顔してたから」
あぁ、顔に出てたかな。
最近は気が緩むどころか引き締め過ぎて昔の事に浸り過ぎている。
一人ひとりが真実を受け止め、覚悟を決めた時の雰囲気が、あの救済の魔女と対した時の二人の雰囲気によく似ているのだ。
はっきり言ってしまえば、その二人の方がはるかに大きな気迫、覚悟を纏っていた。
だけど、その時を思い出すには十分。そう。十分だからこそ、浸ってしまう。
「大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけ」
「そうなんだ……あ、お泊まりいつでも大丈夫だよ!」
「ありがと、まどかちゃん。いっぱいお話しよっか?」
「うん!」
さて……と。
もうすぐ、といっても2週間後まで暇がある。
という訳ではない。
今は、やるべき事がある。
魔法少女皆覚悟を決めた後にも、必要な事がある。
まずは、まどかちゃんにいろいろお話して、いろいろな事教えてあげて。
次は皆とお稽古。特に、さやかちゃんは多少なりとも鍛えてあげないと危ない。
「あら、鹿目さんに美樹さん、それに黄昏さんも」
「あ、マミさん」
「「マミさん、こんにちは」」
と、ここで偶然にもマミさんに出会う。
ソウルジェムは指輪の状態で、魔女探しをしている訳ではなそうだ。
「マミさんはどうしてここに?」
「美樹さんを探しにね。今日休みだったらかもしかしてと思って」
「あ、あははは」
「まったく、学校はサボっちゃ駄目よ。情報伝達も遅れるんだから」
「え!? それじゃあ魔女が」
「いえ、今日はある程度落ち着いてるわ。何故かは解らないけど、大方佐倉さんね」
そういえば、と。教会でドアを蹴り飛ばした時杏子ちゃんがグリーフシードをいくらか持っていたような気がする。
また浄化して上げないとなー。なんとなく考えていると。
マミさんの視線が、まどかちゃんとさやかちゃんの持っているぬいぐるみに移った。
「あら、そのぬいぐるみどうしたの?」
「藍香ちゃんがUFOキャッチャーで取ってくれたんです」
「マミさんもどうですか? 藍香のおごりですよ?」
「確かにいいけど、流石に藍香さんにそこまで奢らせるつもりはないわ」
「と言っても、300円ですけどね」
「え……?」
マミさんは信じられない物を見るような目で私を見る。
「ほんと藍香って凄いですよ! これ全部一回で取っちゃったんですから!」
「ほんとに?」
「ほんとですよ? なんならマミさんの欲しいの取ってあげましょうか?」
自慢げではなく、いたって普通に尋ねる。
すると彼女は何かないかなと、探し始めた。
「なら、あれでいいかしら?」
マミさんの指さす方向にあったのは、
さやかちゃんが背負っているイヌのぬいぐるみぐらい大きなクマのぬいぐるみ。
「うわ、マミさんも凄いのを要求しますね……」
「でも取れなくはないんでしょう?」
ちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべる彼女に苦笑しながらも、私は硬貨を投入してうまくUFOを操っていく。
人形に上手くひっかけて滑り落ちるように誘導する。
もうちょっとで取れるかなー。
「ねぇねぇ藍香」
「ん、なにさやかちゃん?」
肩を叩かれなんだろうと振り返ると、さやかちゃんの指が私の頬をつついた。
「あはは! ひっかかった!」
「もー、さやかちゃん!」
怒りながらも笑い、クマのぬいぐるみを獲得。
それをマミさんに渡した。
「ほんとに一回で取れるものなのね」
「藍香はおかしいだけですって。私だって10回やっても取れませんから」
「さやかちゃん、その言い方はないと思うよ?」
私は苦笑しながらも、皆と杏子ちゃんとほむらちゃんのいる方へ戻った。
Side 鹿目まどか
藍香ちゃんが取ってくれた黒猫のぬいぐるみを見る。
どことなく懐かしい雰囲気。どこかで見たことがあるような気がする。
一個は私の為に取ってもらったけど、もう一個は……
と、杏子ちゃんとほむらちゃんを見つける。
相変わらずのほむらちゃんは冷たい表情で、杏子ちゃんは少し笑みを浮かべながら会話しているように見えた。
「ほむらちゃん」
藍香ちゃんを抜かしてほむらちゃんの前に出る。
ゲームセンター特有の音で掻き消されたのかと思ったけど、私の声に気付いてくれた。
「どうしたのまどか」
「あの、えっと、これ!」
黒猫のぬいぐるみを差し出す。
彼女の独特の雰囲気に威圧されそうになったけど、目をしっかり見て、自分自身も真剣な目で。
『そんな弱気になっちゃいけないね。そんな事を思いながらじゃ絶対に自分の想いは届かない』
藍香ちゃんの言葉を自分の中で繰り返す。
自分の思いを受け取ってほしいから、その近づきになれたら。
そして、ほむらちゃんの気持ちを解りたいから。
最初は驚いた表情を浮かべていたけど、またすぐ元の冷たい表情に戻った。
そして私の目を見る。彼女から放たれる雰囲気に押されそうになったけど、負けじと目を見つめた。
「……私は結構って言ったはずよ」
視線を逸らすほむらちゃん。視線の先には藍香ちゃんがいるんだろう。
それでも私は視線を外さず見つめる。
「私のこと気にしてていいの? まどかちゃんを見てあげなよ」
藍香ちゃんが少々きつめの言葉を飛ばしてくる。
お陰でほむらちゃんの視線を戻してくれた。
「ほむらちゃん、受け取って」
「……結構よ」
「いいから!」
「っ!?」
ついに押し勝つ。
彼女は驚いて少し後退り。それを利用してぬいぐるみを渡した。
「まどか」
「これでお揃いだね♪」
そして自分の中で決めていた〆の一言を言って笑う。
「……ええ」
少しだけ、ほむらちゃんの表情が緩んだ。
それと一緒に、本当の彼女が顔を出したんじゃないのかな、と思った。
Side 黄昏藍香
まどかちゃんは変わった。
ほむらちゃんを逆に威圧してしまったぐらいに。
自分の固い意志を持ち始めた。
彼女を、暁美ほむらという人間を理解したいという想い。
その為の関係を今築こうとしているのだ。
太陽と月の様に対照的な二人。私とほむらちゃん以上に違う、彼女との関係。
今も昔も変わらない。彼女が変わろうが、それだけはずっと。
周りの3人には適当に説明して誤魔化す。
一番驚いていたのはマミさんだけど。ほむらちゃんと杏子ちゃんがここにいたからっていうのもあるから。
説教の必要性はないかもしれない。
ここまで意志を固めれば、いずれほむらちゃんから魔法少女の真実を聞きだすだろう。
それから、皆帰るべき家に帰って行ったかと思ったけど、まどかちゃんだけはほむらちゃんに着いて行った。
いやいやながらもそれを呑んだほむらちゃんのその時の顔は、私でさえも驚かせるものだったのは言うまでもない。
Side 暁美ほむら
二人で橋の上を歩く。
「それでね、街中の喫茶店のケーキがすっごく美味しいんだ~」
「鹿目まどか、何故私に付きまとうの?」
「え~? そんなことないよ」
嘘だ。絶対に嘘だ。
何故ここまでになった?
この時間軸では弱気で決断力もなく、それなのに使命感を強く持つまどかが。
私と一緒に居ようとして共に歩き、仲を深めようと話を積極的に振ってくる。
間違ってもそんなことが起きないように、私は自らの弱い部分を隠して彼女と冷たく接してきたというのに。
それさえも今のまどかには通用しない。
ゲームセンターで、しかもあんな短い期間で何があった。
やはり原因は黄昏藍香なのだろうか。
しかし、そこまで彼女にまどかを変えられる力があるのか。
「まどか、黄昏――」
「あ! 名前で呼んでくれた!」
「!」
しまった、と思うが、覆水盆に返らず。後の祭りだ。
こうなればもう、普通に呼んでしまおうか。
だが、それではいままで私がやってきた事を否定することになる。
どうすれば……
「ほむらちゃん、これからは名前で呼んでね」
「お断りよ」
「えー! さっき呼んでくれたのに!」
「それに、私は貴女に名前で呼んでいいって言った覚えはないんだけど」
言葉を告げてから少し後悔する。
流石の今のまどかでも、今の言葉は響くだろう。
「……ごめんなさい、今のは言いすぎたわ」
彼女の顔を見ずに謝る。罪悪感が私の中に生まれる。
「そんなこと関係ないよ。それに、もったいないよ。ほむらちゃんの名前」
「もったいない?」
「なんかさ、燃え上がれー! って感じでカッコイイと思うな~」
「―――――!!!」
衝撃。
背後から鈍器で殴られる程、強い衝撃が全身を走る。
偶然? 偶然にしても、何故、どうしてこの言葉を放ったのか。
「? どうしたのほむらちゃん」
「いえ、何の問題もないわ」
私は何とか再起動して平常心を取り戻す。
「話を戻すけど。貴女、黄昏藍香に何か吹き込まれた?」
「貴女じゃないよ。まどか、だよ」
「……鹿「名前で呼ばないと返事してあげないよ?」……」
ついに本人から禁止令を出されてしまった。
彼女に何かを伝えたい時は、どう呼べばいいのだろうか。
もちろん、まどかと呼ばずにだ。
考えていると、魔女の気配を察知する。
場所は……此処。
「まどか」
「やっと呼んで「魔女がくる」えっ?!」
警告する前に、まどか共々結界に呑まれてしまった。
昔の記憶を抉る、少女の言葉。
大切な人だからこそ、知りたいんだ。
もう駄目だぁ……お終いだぁ……(書き貯め的な意味で)
いや本気でやばいって言うか不味い。
いつかスローペースになると思いますが、
そこは長い目で見ていただけると本当にありがたいです。
次回予告 CV:暁美ほむら
貰い泣きしそうになる。
でも泣いてはいけない。このまま負けてはいけない。
私は、昔の私ではないのだから。
『慈愛の少女』