魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~   作:kasyopa

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「笑わせる…偽物は私の方だったか」 byACLR エヴァンジェ


第十二話『慈愛の少女』

Side 暁美ほむら

 

 

結界はそこまで深くなく、特に何事もなく魔女までたどり着けた。

ただ、まどかを連れているという点を除けば。

 

「まどか、貴女は安全なところで隠れてて」

「う、うん」

 

凱旋門の様な姿の魔女。しかし本物のそれとはデザインが全然違う。

 

何故魔女でさえ、私の過去をえぐり出そうとするのだろうか。

この時間軸は、何かおかしいのか。

黄昏藍香というイレギュラーが介入しただけで、ここまで変わるのだろうか。

 

「(考えていても始まらない。とにかく魔女を倒さなければ)」

 

急がなければ、まどかの命が危機にさらされる。

しかし、私一人で倒せるのだろうか。

いや、倒してみせる。全ての魔女は私が倒すと決めたのだから。

 

周りの使い魔をアサルトライフルで一掃し、時を止め手榴弾を数個投げつける。

そして一斉に爆発。魔女は爆炎に包まれた。

 

「………」

 

まだ倒されていないだろう、自作爆弾のスイッチを押し投げつけ、爆破。

爆音と共に結界は消え去り、空からグリーフシードが落ちてきた。

 

あっけない。でも、後味が悪い。

苦汁を一気に飲み干したほどの苦い思いが私の中を駆ける。

 

「……っ」

 

思わず舌打ち。

魔女を倒す事でも払い切れなかった、この胸の奥の感情を誰にぶつければいい?

まどか? いや、それはない。黄昏藍香?

 

「大丈夫だった、まどか」

「大丈夫。……どうしたのほむらちゃん」

 

顔に出ていたのか、心配して声を掛ける彼女。

お節介なのは彼女も変わりない。

聞き逃した事を改めて聞いてみることにする。

 

「黄昏藍香に何か吹き込まれた?」

「藍香ちゃん? 吹き込まれたって言い方はないと思うけど」

 

「でも、教えてくれたの。大切な事」

「それは何?」

「相手に自分の思いを伝えるって事と、相手を理解すること」

「………」

 

また妙な事を拭きこんでくれたわね、黄昏藍香。

 

「……まどか、彼女の言う事に惑わされては駄目」

「惑わされてなんかないよ! 私は……」

「それが惑わされてるの。彼女は何を考えてそれを言っているのか解らないわ」

「それはほむらちゃんもおんなじだよ」

「………」

「なんでほむらちゃんは魔法少女になっちゃだめって言うの?

 キュゥべえは私に素質があるって言ってくれてるのに、どうしてだめなの?

 ほむらちゃんは、何を知ってるの?」

「………」

 

歯を食いしばる。ギリッ、と音がしたとほぼ同時に私は口を開いた。

 

「貴女には関係ない事よ」

 

言いなれた言葉で突き話す。

 

「ずるいよほむらちゃん」

 

「そんなことばっかり言って、逃げてばっかりで」

「今の貴女には、関係ない。貴女は今のままであればいい」

 

「言ったでしょう? 本当に周りの人が大切だと思うのなら、今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないでって」

 

「さもなければ、全てを失う事になるって」

「……それは違うよ」

 

どうして否定する。あの時は、言われるがまま受け止めていた少女が、何故。

 

「何が違うっていうの? 貴女は何も知らない。魔女の事も、魔法少女の事も」

「知らないよ。でも、それは関係ないよ」

「貴女には知る必要がないって言ってるの!」

 

怒鳴りつける。感情が高まっている事を自分でも知ることが出来なかった。

顔を俯かせ、視線を外す。後悔はない。これで突き離せらればいい。

それなら、また戻れるだろうから。

 

「ほむらちゃん」

「………」

「やっぱり、ほむらちゃんの言ってることは解んないよ」

 

「だから、納得もできないし、信じられないよ」

 

「でもね、私解るの。ほむらちゃんが、悪い子じゃないって。悪い魔法少女じゃないって」

 

「だから、だから、信じたいの……!」

 

彼女の声が震える。

顔を上げると、そこには涙を溜めたまどかの顔があった。

 

「まどか……」

 

貰い泣きしそうになる。

でも泣いてはいけない。このまま負けてはいけない。

私は、昔の私ではないのだから。

 

「ごめんなさい。でも本当に、今は話せないの」

「ほむらちゃん」

「……ごめんなさい」

 

耐えきれなくなって、その場から走り去る。

 

「絶対、信じてるから!」

 

後ろからまどかの声が聞こえてきたが、振り返らずそのまま去ってしまった。

自分のやるせなさと、彼女の意志とが、私の心を苦しめた。

 

 

Side 鹿目まどか

 

 

「……ごめんなさい」

 

そう言って俯いたまま走り出すほむらちゃん。

私はいけないと思って叫んだ。伝えたい事をもう一度。

 

「絶対、信じてるから!」

 

その言葉が届いたのか私には解らないけど、言わずにはいられなかった。

 

 

*********

 

 

「ただいま」

「おかえり、まどか」

 

パパの優しい声が迎えてくれる。

ママはまだ帰ってきてないみたいだ。

 

「今日も寄り道してたのかい?」

「うん。友達に誘われて」

「あんまり遅くなる時は前みたいに連絡入れてくれれば、後は僕がママに説明しておくから、心配しなくても大丈夫だよ」

「はーい」

 

私は自分の部屋に入って溜息を吐く。

パパも、ママも、魔女の事を、魔法少女の事を知らない。

魔女やその使い魔は知らない人々を喰らい、死に追いやってしまう。

そんなことが起きないように、私は魔法少女になりたいのにほむらちゃんは認めてくれない。

藍香ちゃんも、私の意志を尊重してくれてるような言い方をしてるけど、あんまり私には魔法少女になって欲しくないって言ってるみたいだった。

 

「私の存在の意味……かぁ」

 

私には難し過ぎるよ、藍香ちゃん。

そういえば、藍香ちゃんと『頭で考えるだけの会話』が出来るんだろうか。

もしかしたら出来るかもしれない。

藍香ちゃんの事を考えながら、彼女に言葉を送るようにイメージ。

 

「≪藍香ちゃん……藍香ちゃん……≫」

「≪?! まどかちゃん!?≫」

「≪やった! 届いた!≫」

 

やっぱり届くんだと解った私は胸をなでおろす。

 

「≪え、えっとー。どうかしたの?≫」

「≪あ、うん。ちょっと聞きたいことがあって≫」

 

藍香ちゃんはひどく戸惑っていたけど、それを好機と取って質問してみた。

 

「≪魔法少女って、何か悪いことでもあるの? 藍香ちゃんは別の魔法少女だけど、希望を送る魔法少女だって。だったら≫」

「≪……その話は直にした方がいいと思ってるから、今すぐには出来ないの≫」

 

藍香ちゃんまで、避けようとする。

でも、教えてくれない雰囲気じゃない。

 

「≪でも、今すぐにしてほしいのならすぐに飛んで行くよ。どうする?≫」

「≪お願い。私も、今知りたいから≫」

 

私も、魔法少女としての素質があるから。私も、知る権利がある筈なんだから。

 

「≪じゃあすぐ行くね! とぅっ!≫」

 

思わず噴き出してしまう。まるで昔のヒーローが飛ぶ時に出す声の様な。

全然似合わないのに、それを平気でいう彼女が本当に面白い。

まるでさやかちゃんみたい。

 

「もしかしたらこの窓ガラスを突き破って来ちゃったり」

「いるさっ、ここにひとりな!!」

「それは、まぎれもなく?」

「やつさ」

 

「って! 何言わせるの?!」

 

なんて事を言いながら、乗ってくれる藍香ちゃんにお腹を抱えて笑う。

面白いじゃ表せないほど面白い。お蔭で毎日が面白い。

 

「もー。せっかく乗ってあげたのにそんなに笑う事ないと思うんだけど」

『まどかー、何かあったのかい?』

「な、何でもないよー」

 

呼吸を整えながらも、この場を誤魔化す。

 

「じゃあ、真剣なお話しよっか」

 

真剣な顔で私の目を見る藍香ちゃん。その顔を見て少し身震いする。

怖い、と。それはほむらちゃんを遥かにしのいでいた。

もしそれに怒りの感情が混じっていたなら、私は涙を流していただろう。

 

「魔法少女と魔女の関係と、魔法少女の秘密を」

 

 

「感心しないね。黄昏藍香」

「………」

「きゅ、キュゥべえ?!」

「今まで君は舞台に上った魔法少女達に事実を教えてきた。勿論、佐倉杏子や巴マミ、美樹さやかが僕に対して冷たくなったのも、それが原因だろうけど」

「ど、どう言う事なのキュゥべえ。藍香ちゃんも」

「彼女達は一向に構わない。それで今の自分に納得しない者は絶望し、魔女へ変貌して僕達はエネルギーを集められたからね。前例もあったわけだし」

「『彼女』の事を言わないで」

「まぁ、『彼女』は優秀だったよ。僕達にとって、とても有益な魔法少女だった。ただそれでも受け入れた者が一人居たのは、少々計算違いだったけど」

「……『彼女の親友』は、『彼女』を絶対に裏切らない。それは確かな事」

「『彼女』自身も絶望した時もまた、僕達にとっては意味のあるものだった。しかしそのエネルギーも今、失われつつある」

「過程が間違ってるだけで彼方達の事は見過ごしていたけど、『彼女』の事を悪く言うのは私としても納得いかないね。キュゥべえ」

「僕には理解できないよ。何故地球上に最も存在する一種の生物の一固体が死ぬだけでそこまで感情がゆらぐのか」

「っ?! 何言ってるのキュゥべえ!?」

「彼方達には感情がないからね。彼方達にとって私達の行動が、激動する感情によってどう左右するか解らないと思うよ」

 

「今は帰ってもらえないかな。大切なお話があるから」

「今彼女にその事を述べれば、当然契約もしなくなるだろう。まぁ、君が言う感情がどこまで大きいかによっては……」

「『帰って』って言ったの。今の私はさっきまでの私より甘い人間じゃないよ」

「……やれやれ、それが君の僕達に対する本性かい。なんら他の少女達と変わらないものだね」

 

そう言ってキュゥべえは去ってしまう。

でもそんなことどうでもよかった。私はそこに立ちつくす。

 

キュゥべえがいった真実。藍香ちゃんの怒り。そして、藍香ちゃんにとって大切な人の事。

 

「ごめんねまどかちゃん。お話しようとしたこと全部キュゥべえに言われちゃった」

「う、ううん、でも……」

「心配しなくても大丈夫。今日杏子ちゃんも、さやかちゃんも、マミさんも見たでしょ。彼女達は絶望してたように見えた?」

「大、丈夫だったよ? でも、でも!」

 

「こんなのって無いよ! 皆希望を信じて願いを込めたのに、これじゃ何の為に!」

 

「藍香ちゃん! なんでキュゥべえはあんなに酷い事するの?! 酷い事言うの?!」

「……それが彼らだから。そもそも、キュゥべえには感情がないからその事は私達で言うただ単な作業として消化されていく」

「そんな!」

「言うならばロボットが自分に与えられた仕事を淡々とやってのける感じ、かな」

 

と、藍香ちゃんの目に涙が浮かんでいる事に気付く。

言ってる本人も、辛いんだろう。当然だ。彼女にも、大切な人がいたから。

それが、『彼女』なんだろう。

 

「ごめんね、私は何でも出来るみたいに見えるけど、そう見せてるだけ」

 

「本当はそう演ずることしかできない、愚かな道化でしかないの」

「そんなことない!」

「まどかちゃん……」

「私知ってるよ。藍香ちゃんが皆の為に頑張ってくれてる事。今日は、ちょっと疲れてただけなんだよね? だから、ゆっくり休んで」

「私が励まそうと思って来たのに、ごめんね。逆に励まされちゃった」

「気にしないで。藍香ちゃんのお蔭で、選ぶべき道が解った気がするから」

「帰る前に、ひとつだけ言わせて」

 

改まった雰囲気で話す藍香ちゃん。私はいたって普通に捉える。

 

「まどかちゃんは無力じゃない。だってこんなに私の事心配して励ましてくれたんだもん。それが私達にとって、どれだけ励みになってるか。心の支えになってるか」

「うん。私、藍香ちゃんと話して解ったよ。ありがとう」

「じゃあさっきの言葉は要らなかったかな?」

「ううん、言ってくれたお蔭で再確認できたから」

「そっか。じゃあね!」

 

「きゃぁ?!」

 

窓から飛び出そうとして足を引っ掛け、ジタバタと暴れる藍香ちゃんの姿に、私は笑う事しかできなかった。

 

 

Outside

 

 

感情の力。その偉大さをインキュベーターは知らない。

それを藍香に語られ、おとなしく引いた彼であったが、やはりその存在は、彼らにとってあまり好ましくない存在であるのは確かである。

 

「人類の生んだ言葉の中に、『果報は寝て待て』という言葉がある」

 

「……さて、どう動くかな。事は」

 

一体の契約者はそうつぶやくと、夜の見滝原の街を見下ろした。

 




動きだすのは、時か運命か。
因果が、世界を狂わせていく…

もう明日で大晦日ですねー。紅白で演歌聞くのが唯一の楽しみで…え? 妙に爺臭い?
そんなわけないじゃないですか、まだ成人してすらいないのに。
さて、諸事情により、次回予告は無しになります。
次回は、ちょっと変わった物をお出ししましょう。

以下おまけ

藍香「で、どうなの? 書き貯め」
俺 「イイジャンベツニ」
藍香「聖徳太子ネタ使ったって無駄だよ?」
俺 「十五話書きあげて十六話が五分の一」
藍香「そんなペースで大丈夫?」
俺 「大丈夫だ、問題ない」
藍香「……今回もダメだったんだね」
俺 「さりげなくまどか出すんじゃない!」
藍香「ほらほら、感想が来てたんだからもっと頑張って書かないと!」
俺 「んーそうだよなー。ホントありがたいよな感想」
藍香「わグルま!なんかやってないでさ。年末年始旅行行かずに家に居るんだし」
俺 「俺の個人情報流出してるんですけど大丈夫ですか藍香さん」
藍香「さーねー。書かない作者さんが悪いんだから、私に罪はありませんよーだ」
俺 「しかし、作者とキャラの対談で作者がぼこられ(物理)ないって新鮮だな」
藍香「でも、更新止まったら容赦なく叩くからね」
俺 「なにで?」
藍香「物理的に攻めた後精神的にメンタルを……」
俺 「まぁ、頑張っておりますので、よろしくお願いします」

ここまで読んだ方凄いなぁ…読まざるを得ない読者の性(さが)か。
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