魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~ 作:kasyopa
Side 黄昏藍香
文化系の授業は一旦終わり、体育の授業。
皆体操服に着替えて外に出る。
天気に恵まれ外で走り高跳びだ。
「いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく、しーち、はーち」
準備体操。
柔らかい体を思いっきり伸ばして、準備万端にする。
「(さーて、頑張っていこー!)」
「暁美さん? 大丈夫? 随分と顔色が悪いわね……貧血かしら」
頭の中で叫んで左手を大きく振り上げていると、先生の声が聞こえてきた。
「あ……えっと」
『準備体操だけで貧血ってヤバいよね~?』
『半年もずっと寝てたんじゃ、仕方ないんじゃない?』
「――――」
まただ。やっぱり、そういう年頃だから仕方ないのかもしれない。
でも相手に聞こえてしまえばそれはショックになのは変わりない。
いや、まともに言われるよりショックだと思う。
「先生……私、大丈夫です」
「本当に顔色が悪いわよ?」
「でも! あっ――」
バランスを崩す彼女を見た私はすぐに駆けて支えようとする。
間に合って!
「「ほむらちゃん!」」
まどかちゃんと声がかぶる。
その声とほぼ同時に、彼女がほむらちゃんを支える。
「(えっ、あれ?)」
彼女が気付いて駆けたのは私より遅かった。
それに、既に私はまどかちゃんを抜いていた。
私自身も脚には自信があったけど、抜かれるとは思ってもみなかった。
でも、一瞬だけ不思議な感覚を覚えた。
何か、言葉で表せないような何かを。
「え、っと、どうなのかな、何か引っかかる感じが」
「なーに一人でぶつぶつ言ってんの藍香」
「あ、さやかちゃん」
「次藍香の番だからさ、ほーら頑張って行ってこーい!」
「わわわわ!」
背中を押され、助走のスタートラインに立つ。
「た、黄昏藍香、行きまーす!」
高さは140cm。結構高いけど、どうだろ。飛べるかな……?
迂回するように回り左足を思いっきり上げて背面跳び。
背中に柔らかい感触、そして自分の重みが掛る。
「黄昏さん140cmクリア!」
「すごーい! 黄昏さん、運動神経抜群?!」
「え、あ、あはは……」
私が飛べるとしたらこれくらいかな。
体育は一番好きだからいたって普通に飛んでるだけだけど。
マットの上からすぐに移動して、次の人が飛べるように開ける。
次はさやかちゃんみたいだ。体を横に曲げたりして張り切っている。
「美樹さやか、行っきまーす!!」
勢いよく回りながら、私のまねをして右足をけり上げ―――
「あーたった、あーあ!!」
脚を絡めて、マットに直撃。そのまま仰向けに倒れる。
右足なんだから、私とは逆の方から走り込まないといけないのに。
ドッと、笑いがこぼれる。私も一緒に貰い笑い。
「藍香は笑うなー!」
「あはは、なんでー!」
「だから笑うなー!」
その反応が面白くて余計笑ってしまう。
「ほら美樹さん! 次の人が飛べなくなるから!」
「は、はーい」
急いでマットを退こうとするさやかちゃんの手伝い、一緒にマットの近くで次の飛ぶ人を見た。
そこには、まどかちゃんとほむらちゃんの姿が。
それに合わせてなのか、先生は棒の高さを上げる。
155cm。私達が跳んだ高さより15cmも高い。ついでに言うなら、この高さを跳べるのであれば、凄いどころの話じゃ無くなる。
「うわ~、先生もやりますなぁ」
「いとも容易く行われるえげつない行為とは、まさにこの事かな」
「鹿目まどか、いきまーす」
それでも跳ぼうとするまどかちゃん。
よっぽど自信があるのか、それとも……
「はっ!」
そんな掛け声と共に背面跳び。
その背中に棒を掠めることなく飛び越え、彼女はマットの上に落ちた。
「―――」
圧巻。でも、それ以前に不思議な感じがした。
まただ。まどかちゃんがほむらちゃんの元に駆けたのと、同じ何か。
当の本人はほむらちゃんの元へ戻って行った。
「あれ? まどかってあんなに飛べたかなぁ?」
さやかちゃんも首をかしげている。
「さやかちゃん、まどかちゃんってあんなに運動神経いいの?」
「いや、ここまで来ると正直いいとかいう問題じゃないでしょ」
「だよね。うーん……」
「また考え込んだってしょうがないって。ほら、藍香」
「わわわわ!」
背中を押されながら強制的に元いた場所に戻される。
「次はほむらちゃんが跳ぶ番だよ」
「は、はい! 暁美ほむら、いきます!」
私達が戻った時とほぼ同時に、まどかちゃんの言葉に後押しされたほむらちゃんが駆ける。
そこでも同じ違和感を覚えた。
「……………」
ここまで立て続けに起こると、流石に違和感を覚える。
でも、周りの皆は何も気付いていないようにふるまっている。
本当に気付いていないと言ったほうが正しいほどだ。
もしかして、気付いているのは私だけ?
上がった歓声で我に帰る。
何があったのかとさやかちゃんに聞くと、ほむらちゃんが155cmをクリアしたらしい。
驚きながらもそちらの方に視線を向ける。
棒はそのまま。ほむらちゃんはマットの上で体を起こしている。
「ねぇねぇ暁美さん、もういっぺん跳んでみてよ!」
「え、あっ」
「ほむらちゃんファイト♪」
今度は注意して見る。ほむらちゃんを。
今は感じない。気のせいなのかな。
「暁美ほむら、再び行きます!」
元気よく駆けていく彼女。私は、その姿をただ呆然と見ていた。
大きく回り込むように助走をつけ、そのまま……あれ?
「ほむらちゃん!? どこいくの?!」
「あ、あああ解らない! あ、足が、足が止まらない……!!」
「た、助けて!! 鹿目さん!!」
「ほむらちゃん! 待ってて!」
暴走。そう言ったほうが正しい。
そして、今ならはっきり解る。私は何を感じている。
その何かは解らないけど、それをはっきり感じ取ることが出来ている。
ほむらちゃんには何かあった。それが、暴走した。そうとしか言えない。
人ではあり得ない速さで砂塵を上げながら、グラウンドを駆け回るほむらちゃん。
「ほむらちゃん!」
私もいつの間にか走り出していた。
追い付けないと解っていても、走らなければいけない気がして。
後ろから追いかけても簡単に引き離され、先回りして待ち構えても凄い速さですれ違う。
先回りの方法は難しいし、彼女の勢いを急に止めると逆に彼女が危ない。
後ろから追いかけて、彼女の足を地面から離さないといけない。暴走してるのだから、減速させるにはそれしかない筈。
でも、簡単に引き離されてしまう。全力で扱ぐ自転車を追いかけている気分だ。
それでも諦めない。最初の友達だから。ほむらちゃんに対して向けられる陰口を、少しでも減らして彼女を楽にさせてあげたいから。
「(もっと速く! もっともっと速く!!)」
絶対に追いついてみせる。絶対に助けて見せる!
すると途端に脚が軽くなる。それに私は違和感を覚えることなく、逆に好機と取ってさらに脚を動かす。
速度が上がる。いつの間にか、ほむらちゃんに振り切られないほどの速度で走っていた。
でもこれでは足りない。もっと速く。彼女に追い付けないと、意味がない!
「ほむらちゃん!」
「た、黄昏さん!?」
名前を呼ぶ。私の名字で返される。私の事を呼んでくれた事の喜びが、さらに脚を軽くしてついに追い付く事が出来た。
同時に彼女と速度を合わせる。
「ほむらちゃん! 今助けるから!」
「黄昏さん、どうして……」
「だって、友達だもん! ほっとけないよ!」
次の瞬間、ほむらちゃんの側面から左腕を回して、膝の下に右腕を差し入れ持ち上げる。
横抱き、俗に言うお姫様だっこだ。
それを一瞬で行ったので、蹴りあげた足が右腕に当たる事はなかった。
その状態で徐々に速度を落としていき、やがて止まる。
砂煙も落ち着いて、私は胸をなでおろす。
ほむらちゃんは疲れてしまったのか、眠っていた。
「ほむらちゃん!」
まどかちゃんが焦った表情で駆け込んでくる。
「大丈夫、今は寝てるみたい」
「そうなんだ……よかったぁー……」
その言葉で私は安堵を覚えたのか、急に脚に力が入らなくなってへたる。
「あ、あれ? 脚に力が入らないや……?」
「だ、大丈夫藍香ちゃん!?」
「大丈夫だけど、あはは、脚に力が入らなくて。ほむらちゃんのこと、お願いできるかな?」
「うん、藍香ちゃんは「藍香は私に任せて、まどかは保健室に行ってきなよ」さやかちゃん」
まどかちゃんの後ろから現れたのはさやかちゃん。
まどかちゃんはちょっと考えてから、ほむらちゃんを抱いたまま保健室の方へ駆けて行った。
「藍香は大丈夫? 保健室行く?」
「大丈夫、脚に力が入らないだけだから。腰が抜けたのかな」
「んー、藍香が大丈夫って言うならいいけど、動けないんじゃどうしようも……そうだ」
何か思いついたように私に近づいてくる彼女。
近付いてくるのはいいんだけど。
「なんでニヤニヤしながら近づいてくるの?! 怖いよさやかちゃん!」
「いやいやー、さっきは見せつけてくれましたなぁ、と」
「な、何の話かな」
「惚けてもこのさやかちゃんには全てお見通しなのだ! おとなしく捕まれー!」
腕を振って抵抗するものの、今度は私がお姫様だっこされる。
顔を真っ赤にしながら俯き、皆を出来るだけ見ないようにした。
「お、どうしたどうした~? そんなに顔を赤らめて」
「は、早く運んでよ……」
「そんな藍香は可愛いな~! 藍香も私の嫁になるのだー!」
「お、お嫁さん?!」
「ジョーダンだって」
「あうう……」
それから私が動けるようになったのは、体育が終わって皆解散した時でした。
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S.H.Lが終わってすぐにほむらちゃんは逃げるように教室を出て行った。
私は追いかけたかったけど、まだ脚が思うように動かなかったから無理だった。
「藍香ー、大丈夫?」
「あ、さやかちゃん。まだちょっと」
「そっかー、家ってどの辺?」
「学校から結構遠いの。街の向こうぐらい」
「あ、それなら丁度いいや。ちょっと付き合ってくれないかな?」
「え?」
・
・
さやかちゃんに時折支えられながらも、CDショップにやってきた。
「CDショップ?」
「うん。ちょっと幼馴染のプレゼントにね」
ヴァイオリンのCDが並んでいる所に行く。
ヴァイオリンでもやってるのかな? それとも好きなのかな?
「こっちはこの前送ったし、こっちは……」
数枚のCDを手に、試聴できる場所に行って聞き始めてしまった。
凄く丁寧に探してる上に、事前に調べているようだ。
私は何も言わず、そのさやかちゃんの姿をニコニコと見守る。
適当に座る場所を見つけて腰を掛ける。太ももを揉んで軽くマッサージ。
そういえば、どうして私はあんなに早く走れたんだろう。
今更な疑問が私に浮かび上がる。
それに、走り終えた後全く息を切らしていなかった。その点も考えれば不可解である。
「(私にも何か不思議な力があったり。なーんてね)」
笑みを零していると、さやかちゃんが戻ってきた。
「待たせてごめん。じゃ、次行きますか!」
「え、次って?」
「藍香は黙って私について着てたらいーの」
手を惹かれ、おぼつかない脚を動かしながら次の目的地へと向かった。
・
・
数ある病室の一室に私とさやかちゃん、そしてそこの患者さんがいた。
部屋は個室。それに広く、設備もそれなりに揃っている。お金持ちなんだなぁ。
「恭介、ごめんね? 急に押しかけてきちゃって」
「ううん、僕も今日は来るんじゃないかなって思ってた所だったんだ」
「はいこれ。新しいCD」
「ありがとう。いつも無理させて悪いね」
「このくらいなんでもないよ。幼馴染として当然!」
彼が、さやかちゃんの言っている幼馴染なんだろう。
包帯が巻かれた左腕がぐったりと仰向けでベッドの上で寝ていた。
痛々しいのがひしひしと伝わったくる。
「で、さやか。そっちの子は」
「ああ、まだ紹介してなかったね。今日転向してきた黄昏藍香って子」
「はじめまして、黄昏藍香です。えっと」
「僕は上条恭介。よろしく、黄昏さん」
「ああいえ、こちらこそ。上条さん」
「藍香には敬語は似合わないって。ほらほら、もっと肩の力抜いて」
「上条さんって言うのは堅苦しいから、出来れば別の呼び方の方が僕も嬉しいかな」
二人から言われるものの、初対面で異性なら仕方がない。
緊張もするし、今あったばっかりだ。
深呼吸して言い直す。
「じゃあ、恭介君?」
「うわ、いきなり名前呼びで来るか……」
「あはは、面白い子だね。さやかが一日で友達になったのも頷けるよ」
「恭介、それってどういう意味!?」
盛り上がっている二人を見て、私は自然と緊張がほぐれていくのが解った。
「恭介君は―――」
同時に、私はいけない事を口走ってしまいそうになった。
慌てて口を両手で押さえる。
「? どうしたのさ藍香」「? どうしたの黄昏さん」
「な、何でもないよ?」
―――ヴァイオリンが好きなのか。そう聞こうとしていた。
でも、CDショップでのさやかちゃんの行動といい、さっきからの恭介君の怪我した手の形といい、それは言ってはいけない気がした。
「んー? なになに~、恭介に何を聞きたかったのかな~?」
「な、何でもないって!」
「嘘を言うな嘘を! 慌てて口を覆うくらいなら出してしまった方が藍香の身の為だぞぉ?」
「い、言わないよ? 絶対言わないよ?」
「ほうほう、じゃあこれならどうだー!」
横腹を掴まれ擽られる。
必死に笑いをこらえながら、言葉をひねり出した。
「あ、ちょっ、さやかちゃん! ここ病室!」
「大丈夫だってー。恭介しかいないもん」
「だからって廊下に響くから!」
「あ、そっか。ごめんごめん(藍香はまどかと同じく横腹が弱いっと)」
何か私の弱点がさやかちゃんにばれてしまったような気がしたが、気にしないようにする。
「黄昏さん、本当に大丈夫? 僕に何か聞きたい事があるんだったら……」
「ああいえ、本当に何にもないんです!」
そんなやり取りの中、診察の時間がやってきて面会はお開きとなった。
私は帰り道、さやかちゃんに恭介君の事を聞いてみる事にした。
「ねぇさやかちゃん、恭介君ってヴァイオリン好きなの?」
「あー。さっきの言いかけた事、やっぱりそれだったか……」
苦笑して、私の顔を見る彼女。
「恭介って、小さい頃からヴァイオリンの奏者で、将来有望だったんだ」
「……それで、今は」
「うん。ある日事故に遭ってね。それで左腕が動かなくなって今は入院中」
「ごめんね? 無理に気使わせちゃって」
「ううん。私ちょっと鋭すぎたのかな。私が悪いだけで」
そう。私が悪いんだ。
過去の記憶2。
地味に恭介初登場ではないのだろうか。
因みに、俺は恭介を罪なお方に仕上げるつもりは全くありません。
罪なのは誠ぐらいでいいだよほんとに。
まぁ、無知は罪なのだが。
16話書き上げました。
感想二件ありがとうございました。
リクエスト、指摘、簡易な感想、なんでもOKです。
全て活用&活力とさせていただいておりますので。
以下雑談という名の現状報告注意
俺 「いやぁまぁ、一時はどうなることやらと思っていたが案外どうにか」
藍香「だよね。やっと作者さんも波に乗ってきたんだし」
俺 「そうそう。17話も順調に書きあげられそうだ」
藍香「もうすぐだね。クライマックス」
俺 「ワルプルギスの夜な。………」
藍香「どうかしたの?」
俺 「いや、俺はパワポケが好きだ」
藍香「いや、そんなこと急に言われても……ってあ、以下特に注意」
俺「諸君、私はパワポケが好きだ。
諸君、私はパワポケが大好きだ。
3が好きだ。6が好きだ。7が好きだ。8が好きだ。
9が好きだ。10が好きだ。12が好きだ。13が好きだ。
サイボーグで、しあわせ島で、甲子園ヒーローで、
特命ハンターで、さすらいのナイスガイで、
甲子園一直線で、電脳野球で、逆襲球児で。
このコナミで行われる野球沙汰が大好きだ。
必死に貯めたお金を一瞬でかっさらっていく亀田が好きだ。
しあわせ草を大量に摂取し、一気に反抗していく主人公達には心躍る。
ヒーロー達の実力行使をガンダーロボを使って撃破するのが好きだ。
大量のサイボーグをワイドショットで次々に破壊した時など胸がすくような気持ちだった。
武美がプログラムを寿命タイマーを解除し、特別なクリスマスを過ごすのが好きだ。
ジャジメントに迎えられる直前の紫杏の告白を、箱の中の猫と返す主人公には感動すら覚える。
ドラコを倒し、後は白馬でパカを迎えるだけとなった主人公などたまらない。
絶体絶命の状況でホンフーに対し、千羽矢が覚悟を持って自らの心臓を差し出したのも最高だ」
藍香「……ちょっと黙ろうか。作者さん」
俺 「すまん調子乗りましたってあの顔笑ってるけど目が本気じゃないですか藍香さん」
藍香「無駄に凝った文章作るくらいなら、頑張って本編書こうか?」
俺 「あの、その超弩級の大砲って、あの幻想砲じゃありませんかね?」
藍香「そうだけど、それがどうかしたの?」
俺 「口径1500mmもあるから大気圏突破余裕とかそんな規模じゃない大砲ですよね?」
藍香「そうだよー? 作者さんが考えた立派な武器だよー?」
俺 「それを何故私に向けるんですか」
藍香「制裁」
俺 「デスヨネー」
藍香「光になれえええええええええええ!!!!」
俺 「イ゙ェアアアア!!!」
ここまで読んでくれた彼方には、賛美を称します。
P.S.9は武美、10はカズ派ですが紫杏も捨てがたい。