魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~   作:kasyopa

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破滅と救済は、共にもたらされる。しかし、訪れるのは破滅からだということだけだ。


第十五話『もう一回』

Side 黄昏藍香

 

 

桜の木の花が散り、枯れ木のそれと同じになった頃。

見滝原市を大きな嵐が襲った。

 

家族の人がいない私は一人で避難所に駆け込んだ。

その際、役所の人達にいろいろと聞かれたり言われたりしたりしたけど、いつもの遠い親戚の話をして納得してもらう。

 

避難所はとても込み合っている。

避難命令が出てから随分と遅くなってしまった。

情報が入ってくるのが遅かったからだ。

停電に加え、ラジオも使えず、避難を促す車が来てから準備していたから遅くなった。

 

ゴゴゴゴ……

 

激しい風の音と、地響きを上げる音が建物の中に木霊した。

子供は怯え、大人が声をかけて安心させる。

 

ただの風と地響き? 何か違う物があるような。

少し怖くなって誰にも気づかれないように建物を飛び出す。

何が怖いのか解らないまま、ただただ本能に従って人一人いない道を駆ける。

 

それに、あの時感じた不思議な力も感じる。

でもあの時とは全然違う。理解せずとも気持ち悪くなるほどの強い何か。

 

「はぁ、はぁ」

 

息を整えて空を仰ぐ。

そして私は私のしたことを後悔した。

何故空を仰いだんだと。どうして上を見たんだと。

 

「―――――」

 

灰色の世界に浮かぶ、青紫色のドレスに白いフリルを身に纏った逆さまの化け物。

足があるはずの上の方には三段重ねになった大中小の歯車。

あと一つ容姿を付け加えるならとても大きいということ。

 

足がすくみ、腰が抜けた錯覚。足のすくみから震えに代わる。

私は悟る。何に恐れていたか。そして、頭の中にひとつの単語が過る。

 

【魔女】

 

「フフフ―――アハハハハハ―――――!!!」

 

高々とした笑い声と共に、その魔女を中心にして暴風が吹き荒れる。

ガラスが割れ、門が激しく開閉し、木々の枝が悲鳴を上げた。

 

そして次の暴風が吹き荒れた瞬間、私は空に舞い上げられる。

そのまま、廃墟と化したビルに叩きつけられた。

 

「痛……いだけ?」

 

かなりの勢いで叩きつけられたから、普通なら痛いどころか死んでしまうのではないだろうか。

なのに背中に感じるのは瓦礫のゴツゴツした感触と、叩かれた様な痛みだけ。

おかしい。何で生きてるのかが不思議なくらい。

 

と、自分の回りに球体の薄い膜の様なものが展開されていることに気付く。

 

「バリア?」

 

頭に浮かんだのはその言葉しかなかった。

私は立ち上がりその場所から魔女の方を見る。

 

魔女はかなりの速さでどこかに向かっているようだった。

進行方向の先、そこには避難所が。

 

魔女の歯車が上下して再び暴風を巻き起こし、回りにビルを浮かばせる。

そして浮いたビルが勢いよく落ちていく。

落下地点にあるのは、避難所。

 

「っ! やめてえええええええええええええええ!!!!!!!!!」

 

私の必死の叫びは轟音に呑まれ、そして虚空に消えていった。

 

 

////////////////////////////////////

 

 

忘却。脱力。

何もかも破壊尽くされ、廃墟の町と化した見滝原。

以前はかなりの科学力と建築技術で設計された建物も、今では見る影もない。

 

「………」

 

灰色と白の空から降り注ぐ雨は、今の私の気分をさらに湿らせ沈ませた。

 

「私だけ生き残っても、何もないのに」

 

一つだけ自覚していた。私は他の何かとは違う『何か』がある。

でも解りきっていた。その『何か』では現状を変えられないと。

 

「鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい」

 

どこからか、声が聞こえてきた。

聞き慣れた声。その声は私の中の不安を一気に取り除いた。

 

「ほむらちゃん……?」

 

忘却と共に力を失った脚を必死に動かす。希望を求めて。友達を求めて。

 

「さぁ、解き放ってごらん? その新しい力を!」

 

その彼女の言葉でぱたりと脚を止める。

そして、紫色の光が空を貫いた。

 

高い瓦礫に身を隠しながら声のした方を見てみると、そこには彼女の姿は既になかった。

 

「あれ? ほむらちゃん?」

 

辺りを見渡す時、不意に白い物を視界に捉えた。

 

瓦礫の上。横長の丸い顔をした白い猫の様な生き物が、狐のようなしっぽをゆらゆら揺らしていた。

 

「猫……かなぁ?」

「? 君は僕を見る事が出来るのかい?」

「しゃ、喋った!?」

 

驚き、尻もちをつく。

 

「そんなに驚く事はないよ。僕達は君達が理解できる音を発しているにすぎない」

 

「まぁ、それが君達にとって、喋る、という動作に値するんだろうけど」

「て、哲学っていうか、さらりと難しい事言うね」

「……で、さっきの質問に答えてもらっていなかったね。君は僕を見る事が出来るのかい?」

「え? 普通じゃないの? 彼方はそこにいるから。私、何か変な事言ったかな?」

「僕達がその少女の素質に気付き、初めて僕達が姿を現す。だから僕達が初対面の相手に見えるはずがないんだ」

「えっと、それって自分達が許可した相手にしか見えないってこと?」

「簡潔に言えばね。予想外だったけどまた一人見つけたよ」

「?」

「君は、その眠れる力を何かに利用したいとは思わないかい?」

「どう言う事?」

「……やはり君には、単刀直入に言った方が通じるようだ」

「???」

「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

 

契約? 魔法少女? この子、何を言ってるのかな。

でも、こんな不思議な動物がいるんだから、魔法少女もいるのかな?

 

と、足元に違和感。そして下を見ると。

 

「――――」

 

言葉を失った。

 

「まどかちゃん!? まどかちゃん! しっかりして!」

 

揺すろうとして体に触れた時、私は思わず手を離す。

 

「死ん、でる?」

「彼女はワルプルギスの夜に敗れ、生を全うした。それだけのことさ」

「ワルプルギスの夜?」

「君も見たんじゃないかな。その目を持ってすればあの魔女を見るなんて、容易い事だろう」

 

もしかしたら、あの大きな魔女が。

 

「ねぇ彼方、って言ったらおかしいな……名前ってあるの?」

「僕の名前はキュゥべえ。君の名前は?」

「私は黄昏藍香。よろしくねって言いたいところだけど、もうここは駄目だよ」

「君が願えば、この街を元に戻せるかもしれない」

「え?」

「君の中に眠る素質を使えば、この街を元通りにするなんて容易い事じゃないかな?」

「私の素質?」

 

思い当たる点はいくつもある。

転入初日で物凄いスピードで走った事や、ワルプルギスの夜に吹き飛ばされた時に無事だった事。

 

「でも、その代り君は魔女と命がけで戦う事を強いられる。それでもいいかい?」

「その魔女って言うのは、さっきここを襲った魔女も含まれるの?」

「そうだよ。まぁでも、あんな超弩級の魔女はあの魔女しかいないんだけどね」

「でも、命がけだなんて現にまどかちゃんだって……」

「大抵は二つ返事なんだけどね。君もやっぱり考える方か」

「君も?」

「彼女もまたそうだった。ただ、願いが決まらないだけだったんだけど」

「ねぇキュゥべえ、まどかちゃんが望んだ願いって何?」

「黒猫を蘇らせたのさ。ただ、僕にはその意味が解らないけど」

「(黒猫? もしかして、エイミィ?)」

 

でもあの時からずっと、エイミィは元気にしていた。

転入初日も、エイミィはほむらちゃんと接するきっかけを作ってくれた。

でも、まどかちゃんから不思議な感じがしたのは彼女にあってすぐ。

 

と、ここで疑問が一つ頭の中に浮かぶ。

 

「あれ? そういえばほむらちゃんは?」

「彼女はどこかに行ってしまったよ。果たしてどこに行ったんだろうね」

「彼方と契約したんじゃないの?」

「確かに彼女は、僕と契約しその力を解き放った。しかし、それがどう言った結果を生みだすかは僕達にも想像できない」

 

「何せ、魔法少女は条理を覆すに値する存在だからね」

 

「さぁ、君はどうするんだい? どのみち、この街の復興には数年は掛るだろうけど」

「私は、この街の復興で願いを使うつもりはないよ。でも、暫く彼方と一緒に居たいの」

「いいよ。君には魔法少女以外の、何かがあるようにも思えるからね」

 

 

///////////////////////////////////

 

 

あれから1年の時が経った。

見滝原市は全くと言っていいほど復興の様子も、面影も感じられない。

 

最初は、何とか無事だった百貨店の食料を漁っていたけど、数日でほぼ全ての加工食品は腐ってしまって、中は悪臭が漂っている。

生鮮食品もその衛生的な面で最悪の環境にあったため、一週間足らずで全部腐ってしまった。

なので、今度は銀行やATMを漁った。銀行は流石に街の中心地にあったため、全滅。

ATMは街から離れた所にもあったから、色々な物を使って破壊し、お金を取った。

そのお金を持って隣町に行き、怪しまれない範囲でお金を使って食料を買い、やりくりしている。

 

「生きる為に必要な事だから……ごめんなさい」

「君も大げさだなぁ。毎度やる事だから、そんなに謝罪の言葉をその度に言わなくてもいいじゃないか」

「でも、人の心には善心と悪心があるの。こういうこと、するたびに善心が痛むの」

「感情という物はよく解らないよ。僕達には」

「……だよね。解ってたよ。最初から」

 

あ、因みにだけど、家は前に住んでいた家を魔法で誤魔化しながら買い戻して、そこに再び住んでいる。

家具も全部新調したし、私だけの新しい生活が戻ってきた。

 

「ねぇキュゥべえ。この街にもやっぱり魔女っているの?」

「そうだね。ワルプルギスの夜が通過したから、ある程度落ち着いてはいるけれど」

「そっか」

 

簡単に、本当に簡単に朝食を済ませて私は自分の魔法の練習をする。

言い方からすれば、今までやってきたように思えるかもしれないけど、今回が初めてだ。

 

イメージ、イメージ。防御のイメージ。

 

目を開くと、目の前に薄い壁が出来上がっていた。

 

「す、凄ーい!」

「へぇ、これは」

 

キュゥべえが前から歩み寄ってきたけど、その壁に触れて止まる。

どうやらこれは本当に魔法で出来た壁みたいだ。

 

「藍香。君は既に、魔法少女だったようだね」

「でも私、キュゥべえと契約してないよ?」

「確かに僕達の知る範囲では、契約した魔法少女しかその個体を知らない。でも、それは僕達の知る範囲だ」

 

「君の様な、『例外』が発生しても何らおかしい事ではないよ」

 

「(まぁ、今まで契約してきた中で、僕達が既にその芽を摘み取っていたのかもしれないけど)」

 

私は面白くなって、もっともっと自分の魔法の探求を続ける。

今度は攻撃……は何か壊しちゃいそうだから、もうちょっと凝ったのを。

縄みたいなのはどうだろう。

 

イメージ、イメージ。

 

「えいっ!」

 

キュゥべえをお縄にかけるイメージで手を前に出す。

するとイメージしたとおりに、鎖がキュゥべえを縛り付けた。

 

「ひどいじゃないか」

「あ、ああ! ごめんキュゥべえ!」

 

魔法を解こうとするけど、どうして解いたものかと戸惑ってしまう。

すぐに、『止める』という選択肢が出てきて難なく解除できたけど。

 

それにしても、かなり応用が利くみたい。

もしかしたらもしかしなくても、攻撃系の魔法が出来るんじゃ?

 

「あ、そうだ!」

 

お風呂場に駆けこんでイメージ、そして湯船に向かって指をさす。

湯船の底から、ではなく自分の指先から水が沸き出てきた。

 

「もっともっと!」

 

掛け声に応えるかの如く、水が指先から溢れ出て浴槽を満たしていく。

その水の色はとっても綺麗なシアン色をしていた。

水を出すのを止めて、思わず一口飲んでみる。

 

「(美味しい! って、それは当然か。自分で作ったんだし)」

「かなり応用が利く用だね、藍香」

「あ、キュゥべえ。うん、そうみたい」

 

面白いからどんどんやってみようと思ったけど、体の節々が痛くなってる事に気が付いた。

もしかしたら、やり過ぎると体に負担がかかるのかもしれない。

 

とりあえず今は痛いからベッドで寝る事にしよう。

 

 

//////////////////////////////////

 

 

二階のベランダから日が沈んでいくのを眺める。

今日はかなりの進展があった、と思う。

因みにキュゥべえは何処かへ行ってしまった。

 

「………」

「ごきげんよう」

「っ?!」

 

上から不意に声を掛けられる。

上を向いても誰もいない。多分、ベランダの死角になる場所に居るんだと思う。

 

「誰? 私に何かあるの?」

「確かに、何もないって言ったらウソになるね。彼方にちょっとした用事があって私はここに来たの」

「それってどう言う意味? 彼方は誰? こっちに来て!」

「あはは、それは無理かな~。私は彼方に伝えたい事があるだけだから。

「伝えたい事?」

「うん。何もかもやり直したいときがあったら、左手でフィンガースナップしてみて」

「フィンガースナップ?」

「あー……、指パッチンって言ったら解るかな? 指を鳴らす事」

「こう?」

 

左手を鳴らしてみる。でも何も起きない。

 

「そんな、何の意思も無しに魔法は使えないでしょ? 特に彼方の魔法は」

「えっ!? 何で私の魔法を知ってるの?」

「まぁね。じゃあ、伝えるべき事は伝えたから、私はお暇するよ」

 

指の鳴る音が聞こえて、それから全く声が聞こえなくなった。

 

「やり直す意思、かぁ」

 

そもそもやり直すとはどういう意味なのだろうか。

すごろくでいう、スタートに戻るってことなんだろうか。

なんとなく、そんな気がする。

 

やり直すという意味。やり直すという事。

全部、全部やり直せるなら、それは、とっても、嬉しいかなって。

 

……やってみる価値はある。

 

そう思った私は、意思を持って左手を鳴らした。

 

 

/////////////////////////////////////

 

 

「ふわぁ……」

 

日光の眩しさと、鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ます。

 

「……あれ?」

 

同じ光景をどこかで見た事があるかもしれない。いや、見た事がある。

体が覚えている。

 

……やり直せたのかな? ホントに。

 

……とりあえず、学校に行こう。

一度行った学校に。




もう一回、もう一回と。
少女は回る。輪廻という名の輪の中で。

※今回は普通の記述で長いです。読まなくても大丈夫です。
 今回次回予告あるんで最後まで飛ばしていただければ。

過去編終了。そして次の過去編はありません。
そもそもこの話(13~15話)自身書くつもりなかったっていう。
ローリンガールを意識した題名でございます。
藍香の魔法解説回でもありましたね。

はてさて、出てきましたよフィンガースナップ。もとい指パッチン。
なぜ左なのかって? 藍香が左利きだからさ。
とりあえず、エルシャダイネタは使用したかったんです。
何かと万能ですし、それにストーリーも、ね。
ストーリーが完成されている作品からは結構参考にしたりしてますんで。
ネタ発言等、多いかもしれませんが笑っていいんですよ?一部を除いて。

PC新調しました。しかしワードがないんでちょっと更新ペースが狂うかもです。
いやー、長いですねこれも。もう15話ですよ、週一投稿で。
ほかの人の長い奴と比べたらアカン。
と言っても自分の世界観大事にしたいんで投稿し始めてから全く読んでませんが。

正直オリ主最強伝説と言っても、そこまで強くありません。←ぇ
彼女自身、この万能魔力によって助かっているも同然ですから。
それに『生身の人間』ですから魔法少女達より脆いです。
究極生命体カーズとかマスターアジアとかコブラとかとは全く違います。

次回は平凡な暮らし。戦いはありません。

次回予告 CV:黄昏藍香

家庭。家族。
皆にある、最後の信頼の砦であり、帰る場所にいる人の代表。
私の記憶をいくら探っても登場する事はない、失われた物でもある。

『最後の砦』
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